Over the Horizon of Dawn.   作:榛桐 玲

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Series.2 『業と共に、北へ』

行きつけのガソリンスタンドにて燃料補給とオイル・クーラント・タイヤ空気圧のチェックと窓拭きを済ませた後、首都高速湾岸線の起点・幸浦インターチェンジから首都高へ上がった鳳翔とZ32。しばらく道なりに北上した先にある本牧ジャンクションを越えて横浜の名所の1つ・ベイブリッジに差し掛かって以降、時おり対向車線である湾岸線西行きを走るクルマの流れへ目を遣りながら平均時速110km/hというペースをキープし、最初の目的地である千葉県市川市の市川パーキングエリアを目指す。

 

「少しばかり上がるのが遅れちゃったわね……間に合うかしら」

そう言ちりながらも、鳳翔は坦々としたペースを乱す事なくZを北へ向けて走らせる。ダッシュボード部分に埋め込まれたデジタル時計は1時8分を示していた。

 

「無暗にペースを上げてオービスやパトカーに捕まりたくは無いし……間に合う事に期待して、このままのペースで走るしかなさそうね……」

 

赤いZ32は、ただひたすらに千葉を目指して湾岸を北上する。が……その折に鳳翔は度々、恐ろしい想像を脳裏に浮かべてしまう。湾岸最高速は平均速度200km/hオーバーの超高速域。その極限の状況でクラッシュしてしまえばどうなるか……容易く想像出来る。普通の人間よりも強靭な身体を持つ艦娘と言えどもタダでは済まない。元が人間だとは思えないような姿になって即死するのは間違いないだろう。

 

ただ、もしクラッシュして死ぬ事になったとしても単独で済めばまだマシな方だと言える。一番最悪なケースは無関係な一般車を巻き込んで事故を起こしてしまった場合───それも相手を死なせてしまった場合だ。

 

事故を起こした張本人が死亡しても、それで終わりとは決してならない。加害者と関係のある家族・親族・知人・勤務先への終わりの見えない責任追及と苛烈なバッシングが始まるのだ。1人が引き起こした過ちが多くの人間を巻き込んで取り返しの付かない事態へと発展する───湾岸最高速界隈ではしばしば聞く話だ。

 

自身が引き起こしてしまうかもしれない身の毛もよだつ恐ろしい事態を想像してしまう度、鳳翔は思わず表情を強張らせ額から冷や汗を流す。ステアリングを握るその掌にもじっとりとした嫌な汗を滲ませる。だが───彼女の心中に引き返そうという気持ちは毛頭無かった。

 

(───私達のやっている事は決して許されない犯罪行為だし、それで起こした過ちは何もかも全てを壊してしまう……最悪、今夜にも命を落としてしまうかもしれない……私だけじゃなく無関係な他人までも……そこまで解っているのに……怖れているのに……私は自分を止められない……この場所から、降りられない───)

 

「……我ながら愚かしいモノだわ。本当に、ね……」

そう吐き捨てるように自嘲すると、鳳翔は前方を睨み付けた後にほんの少しだけアクセルを踏み足して、僅かにスピードを上げる。真っ向から向き合うべき黒いモノを受け入れて、全て飲み込んでいくように───

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