Over the Horizon of Dawn. 作:榛桐 玲
湾岸線の終点・高谷JCTを超え、東関東自動車道の湾岸習志野ICで折り返す。湾岸線西行き方面へしばらく進むと市川本線料金所に到達する。目的地の市川PAは料金所からは目と鼻の先だ。
ETCレーンを通過して自動で料金を払うと、鳳翔はZ32のノーズを市川PAへの流入路へと向ける。デジタル時計の時刻表示は1時43分を示していた。
「ふぅ……何とか間に合ったみたいね」
安堵と共に微笑みを浮かべながら鳳翔はそう口にすると、駐車できるスペースを探しながらゆっくりとしたペースでPA内へZを進ませる。
「あっ……よし、ここに停めさせてもらいましょう」
知り合いの乗るクルマの右隣に空いている場所を見つけ、鳳翔はこれ幸いとその駐車スペースにZ32を手際よくバックさせて滑り込ませた。
「ターボタイマーもセットして……うん、これで大丈夫ね」
オイルの油膜切れによるタービン周りの焼き付きを防ぐ為、エンジンオフの位置にセルを回しても一定時間アイドリング状態を維持する「ターボタイマー」が作動した事を確認した鳳翔はクルマから降り、敷地の隅で談笑している一団へと歩み寄る。
「Hi! Good evening, 鳳翔!今夜はちょっと遅かったんじゃない?」
「こんばんは、アイオワさん。ちょっと片付けに時間が掛かっちゃいまして……」
一団に交ざって談笑していた横須賀鎮守府所属の艦娘・アイオワに声を掛けられ、鳳翔も微笑みながら挨拶を返す。所々が跳ね上がるようにカールした彼女の金色のロングヘアーが水銀灯の光に照らされてキラキラと煌めいている。
「私も上がってくる最中、一応西行き側へ目は通してましたけど……流れの方はどうですか?」
「Hmm...掲示板の情報も合わせて見たカンジじゃnot badってトコロかしら。工事や事故渋滞はあまり無いけれど、traffic(交通量)はそれなりみたいね」
「と、なると……最高速の伸びよりも中回転域からの瞬発力が問われる状況になりそうですね」
「Yep, それと判断力もね」
そう言葉を交わしてから、鳳翔は自らのZ32の左隣に佇んでいるアイオワの愛車───鮮やかなコルベットイエローに塗られたCY15B(C4)型 シボレー・コルベット ZR-1に視線を移す。
「それにしてもアイオワさんのコルベット、調子よさそうですね。停まってEgを切っていても、立ち姿でわかりますから」
「Yeah! 流石は鳳翔ね!私のVette、オーバーホールからのナラシも終わった所で、まさしくベストコンディションよ!貴女の300ZXはどうなの?」
「首都高(うえ)に上がる前、行きつけのスタンドのピットを借りてコンディションは確認しましたけど……見た限りでは問題はなかったですね。後は実際に走ってみない事には……」
「Hmm……まぁ、ね」
事前に情報を得る事は、情報戦の基本ではある───が、やはり実際に走ってみない事には分からない事もまた多い。鳳翔のそんな意図を汲み取ったであろうアイオワも、少し難しい表情を浮かべつつ肯定する。