Over the Horizon of Dawn. 作:榛桐 玲
「ま、能書き垂れるのはこれくらいにして……そろそろ行きましょうか。2時を過ぎましたし」
鳳翔がそう言って愛車のZ32に乗り込むと、イグニッション・キーを捻ってVG30DETT改 3.2L仕様が目を覚ます。
「───よし、俺達も行こう!」
鳳翔のZ32の咆哮を聞いたカイルも、それに触発されたように愛車・FD3SのEgを始動させる。純正の13B-REWに替わって、そのボンネットの下に納まる3ローターRE・20B-REWが『狼の遠吠え』とも称されたREサウンドを響かせる。
それぞれの勢力を代表する2台に続き、市川PAに集まった他のマシンも次々とその心臓を目覚めさせていき、地を震わせるような轟音を轟かせる。
総勢で20台を越える台数のランナー達は暖気運転代わりにゆっくりとクルマを発進させ、ビスマルクのケーニッヒ・C62を先頭に隊列を組みながら合流路に向けてクルマを進めていく───
本線合流路加速車線の終端にある高架の継ぎ目をスタートラインとし、それを踏み越えたクルマから次々に全開走行へと移行する。
「さぁ、行くわよ───C62ッ!」
ビスマルクの呼び掛けに応えるかの如く、C62のキャビン直後に納められた930ターボ譲りの3.4L 空冷式フラット6 SOHCツインターボ・930/60改が高らかに吠える。
「───ッ、速い……!」
ビスマルクのすぐ後ろに着き間髪入れずにアクセルを踏み込んだはずの鳳翔も、ケーニッヒ・スペシャルズの手で公道走行仕様車としてリメイクされたポルシェ・962C───ケーニッヒ・C62の加速には舌を巻いた。
彼女が常用と設定しているブースト1.2kg/cm2時の最高出力はおよそ680ps。そのパワーが1,100kgという軽量な車体を押し進めている───パワーウエイトレシオは1kg台というのだから、その加速は推して知るべきだろう。
それに食らい付こうと足掻くのは、電子制御式スタンバイAWDシステム『アテーサE-TS』の恩恵を受け、4輪全てにトラクションを掛けられるリオンの34GT-R、ナナリーのステージア、ハロルドの35GT-Rだった。
「っ、やっぱりGT-Rは首都高の王者と言えるわね……その姉妹車のステージアも、言わずもがな!」
鳳翔は車体が大きいナナリーのステージアを風避けとすべく、その長い車体の背後へとZ32を滑り込ませる───もちろん、Z32の宿命である排熱性の悪さも頭からは抜けておらず、水温計・油温計とにらめっこしながらになるのだが。
「ひーっ!!流石はスポーツプロトそのまんまなC62だぜ!あっという間に消えちまった……リオンさん、ナナリー、ハロルドが追っ掛けてったが、こーいうトラクションが必要な場面は四駆の強さが光るよなぁ……」
ビスマルクのC62による桁違いの加速を見たロニは、背後から追い立ててくる80スープラやGT-R勢を抑えつつ、件の四駆乗り3人と自らのアリストの『路面を掴む力』の差を実感している。
「カイルのFDや、件のお姉さん方のアメ車2台もトラクションの確保に一苦労してるみたいだが……リアラのNSXがココで前に出てきたか!」
リアミッドシップレイアウト故にしっかりと掛かるトラクションに加え、その心臓であるC32B改 3.5L仕様×GTスーパーチャージャーが発生させる低速トルクで、リアラのNSX-Sはグイグイと前へ出ていく。
「───イケる、追いついてる……!パワー控え目になりがちなホンダ車だからって、ナメないでよね……!」
前方を行く、2台のアメ車───その片割れであるサウスダコタのバイパーの背後へと滑り込み、スピードを伸ばしていくリアラのNSX-S。スーパーチャージャーによる過給によって、500psを越える出力を絞り出すC32B改 3.5L仕様が甲高く咆哮する。