Over the Horizon of Dawn.   作:榛桐 玲

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Series.8 『荒川を渡って』

荒川湾岸橋を渡りきり、千葉県から東京都に入った一同が葛西JCTの高架の下を潜り抜けると、その先に待っていたのはC2中央環状線から合流してきた一般車達の群れだった。

 

ストレートの長い湾岸線といえど、トラフィック(一般車)という存在は切り離せない故に全開はそう長くは続かない。

 

アクセルを抜いてペースを落とし、一般車の隙間を縫うようにかわすスラロームへと移行する一同。ここでは絶対的なパワーよりも、車体を一瞬でも早く前へと進めてくれるトルクとレスポンスがモノを言う。

 

大排気量NAのアメリカンV8 / V10を搭載するC4ベットとSRバイパー、そして高回転型NAをスーパーチャージャーで底上げしているリアラのNSX-Sは、このシチュエーションで強みを発揮するのだ。

 

「Wow! あのNSXのコ、このSituationをチャンスと見計らって一気に来たわね!」

「ミドルサイズの車体にミッドシップってバランスの良いレイアウトと、私達と同じNAっていうのがココで効いてきたみたいだな!けれど、重量配分って面では私のバイパーだって悪くはないんだぜ!」

 

サウスダコタはそう自慢気に言うと、その名───『Viper(毒蛇)』の通りに車体をくねらすようなライン取りで一般車の群れを捌いていく。長大なノーズがあってこそ、巨大なV10Egを搭載していても『フロント・ミッドシップ』というフロントEg車にとって理想的なレイアウトを実現させている。

 

「っ、なんて豪快なスラローム……!まるで踊ってるみたい……バイパーやコルベットって、車体が大きいからコーナーはそれ程得意じゃないイメージがあったけど、認識を改めなきゃね……!」

 

自身のNSXに負けず劣らずの旋回性で、一般車の群れの中を泳いでいくアメ車2台を見て、リアラは驚嘆する。バイパーだけではなく、CY15B型───俗に『C4』と呼ばれる4代目シボレー・コルベットも侮れない存在だった。『ヨーロッパ車とも渡り合える本格的なスポーツカーへの進化』を命題に、GMがそのシャシーチューニングに本気で注力しているからだ。

 

「すごいや、リアラ……!NSXの真価は、こーいう状況下で発揮されるのか……俺も続きたいけど、いかんせんローターを増やしてもREは低中回転域のトルクが細目で……!」

「どうしたカイル!ココで終わりか?ムリだと思ったら、さっさとアクセル抜け!」

 

強い叱責と共にカイルの前へと躍り出たのは、ロニが駆る銀色のJZS147アリスト。国産Egきっての極太トルクを誇る2JZ-GTEを搭載した流麗なフォルムのサルーンセダンは、同じEgを搭載するJZA80型スープラと並んで『和製マッスルカー』と言える存在だった。

 

「着いてこい、カイル!俺が道を開いてやるッ!」

 

ロニのアリストは2JZならではのトルクを活かし、その巨体からは予想出来ないような瞬発力を見せる。彼が通り抜ける事で拡げた隙間を、カイルのFDが抜け道として辿っていく。

 

「ロニ……ありがとうッ!」

「へっ───チームってのは、こーいうモンでもあるだろ?」

「へへっ……そうだね!」

 

2人はハンズフリー状態に設定したスマートフォンのDiscordグループで通話しながら笑い合う。

 

「そっちはどうにかなってるみたいだね!にしても、この交通量───RB26にはツラいよッ!」

「国産ターボEgには珍しい、高回転域重視型の設計だからな……ターボラグを誤魔化せる程の太い低中速トルクは、僕とナナリーには無い。それは僕の後ろに迫っているZ32も変わらないんだが……!」

 

2人の会話に、同じグループで通話中のナナリーとリオンも割って入る。

 

「ま、2人は有明と大井を過ぎて、都心方面に向かうクルマがいなくなってからがチャンスじゃない?ナナリーは車体の大きいステージアだから、このスラロームは余計にしんどいでしょ?」

「まぁ、ね……アテーサE-TSのお陰で、鼻の入り自体は良いんだけど……車体の後ろが慣性に引っ張られちゃうからね……!」

 

ハロルドからの問いに、苦々しげな口調で応じるナナリー。それでもなお彼女のステージアは、鳳翔の駆るZ32との間隔をジリジリと詰め始めていた。

 

一同はスラロームを続けながら辰巳・東雲の両JCTを通過。最高速の伸びが無意味となるこの状況下───ナナリーはアテーサE-TSによる高度な可変トルク配分機能をアクセルワークで駆使し、ステージアにステーションワゴンらしからぬ瞬発力を与えて鳳翔のZ32に食らい付く。

 

「───このスラローム……しんどい事には変わり無いけど、あたしにとっちゃチャンスになったみたいだねッ!捉えたよ、鳳翔さんッ!」

「───ッ、ナナリーさん……!貴女、もうココまで……!?」

 

FRと四駆の瞬発力の差を活かし、荒川湾岸橋では1度後れを取った鳳翔のZ32───そのテールを、ナナリーのステージアは射程距離へと収めていた。

 

「目標視認(ターゲット・インサイト)───絶対に逃がさないからねッ!!」

「大柄なステージアで、この交通量の中をスラロームで縫っていく技量と度胸───称賛しないワケにはいかないわね、ナナリーさん……けど、この有明から先は交通量が少し減って……その先の大井では更に一般車は少なくなる。最高速の伸びる私のZ32が有利になるわ……それ迄に私の前へ出られるかしらッ!?」

 

鳳翔は4速から3速へとシフトダウン。減速によって落ち込んだ回転数を強制的に高回転域へと持っていき、得られたトルクを与えて車体を前に進める。Z32はマフラーからアフターファイアを吐き出して加速。ステージアとの間隔を拡げようとする。

 

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