Over the Horizon of Dawn.   作:榛桐 玲

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Series.9 『東京港トンネル-1』

ビスマルクのC62とハロルドの35GT-Rを先頭に、一同は東京港トンネルへと突入。ディズニーコーナーでの攻防と葛西~有明間でのスラローム合戦を経て、集団の間隔が開き始めていた。

 

「……少しばかり、置いていかれているな」

「先頭の2台のペース、桁違い……とまでは言わないけれど、とんでもなく速いわね……」

「まったく……ハロルドはいつも変わらないっていうか……」

 

少しずつ、少しずつ……というペースで小さくなっていくC62と35GT-Rのテールランプを見ながら、リオン、鳳翔、ナナリーはそれぞれごちる。

 

「Oh, Jesus Christ……コレだけ差を付けられちゃ、追い付けそうにないわね……」

「予想よりもチギられるのが早かったな……!せめて川崎航路トンネルの出口まではもたせたかったんだが……BismarckのC62はもちろん、あの35GT-Rも飛んだ食わせモノだったワケか……!」

「ハロルド……!速すぎよ、もう……」

 

中団グループの一角を形成している、C4ベットのアイオワ、SRバイパーのサウスダコタ、NSX-Sのリアラは先頭2台のペースの速さに呆気に取られるしか無かった。

 

「おいカイル、どうすんだ?もう先頭2台には追い付けそうにねぇぞ!」

「もちろん、最後まで諦めないさ!後ろにも、まだまだ何台もいるしね!ロニはもうギブアップ?」

「……へっ、バカ言うな!ベイブリッジを渡りきるまでは危なくならねぇ限り踏み続けてやるよ!」

 

10台の集団の内、殿に位置しているカイルとロニは先頭2台との差は把握しながらも、最後まで走りきる決意を改めて明らかにする。

 

「───もう大井の手前……コース全体の半分近くは消化してるのに、まだ食らい付くワケ……!?このGT-R……!!」

「ふふんっ……GT-Rにとっちゃ、ポルシェとREは宿命のライバルなのよんッ!だから、意地でも退けないワケ……!!」

 

最早、意地の張り合いという領域に入っているビスマルクのC62とハロルドの35GT-Rのデッドヒート。無風のトンネル内、下り勾配という条件も合わさって、その最高速は───湾岸最高速では前代未聞の350km/hに達しようとしていた。

 

「……こんな速い相手と巡り逢って、走り合える……コレこそ、湾岸最高速の醍醐味よねッ……!ヘル・シマも言ってたっけ……首都高で逢ったなら、最後はこの場所(湾岸)で走り合わなきゃ分からない……って!!」

「……ココで走る全ての走り屋は仲間であり……この場所で戦うべき相手……!誰かがそう、言ってたっけね!!」

 

互いにアクセルペダルはフラットアウト(全開)。それでも尚、間隔は縮まらない───完全に拮抗状態にあった。

 

一方、その2台を追う後続車達───先頭を追う事を諦めてはいないモノの、それぞれ分断された中での勢力争いに移り変わろうとしていた。

 

第2集団はリオンの34GT-R、鳳翔のZ32、ナナリーのステージア。第3集団がアイオワのC4ベット、サウスダコタのSRバイパー、リアラのNSX-S。そして、前の2集団を追って合流を目指す殿───カイルのFDと、ロニの147アリスト。

 

先頭2台にチギられても、戦いはそこで終わらない。自分がどこまでヤれるのか───それを確かめるべく、側を走るライバルと火花を散らす。彼ら彼女らの更に後方に控える集団も同様だ。

 

場面は戻って───先頭2台は出口近くの登り勾配を、まるで無きモノだとばかりの勢いで駆け上がり東京港トンネルを脱出。その直後に待ち構える、大井の左コーナーをクリアするべくブレーキング。流石に350km/hというスピードでは、追い縋る後続車達をその異様なペースで振り切ろうとしていた2台でも、クリアする事は不可能だ。

 

「……ッ、く……!」

「……っ、ふ……!」

 

互いの意地の張り合いはコーナー直前まで続き、ギリギリの所でレイトブレーキング。340km/hオーバーの超高速域から一気に270km/h近くまで減速。キャリパーパッドに挟みつけられたディスクローターは赤熱し、ブレーキング時のGによって、身体を支える4点式ハーネスが彼女達2人の肩に食い込む。

 

先に旋回態勢に移ったのはビスマルクだったが、ハロルドは彼女の更に反車身分アウト側のラインからアプローチ。エイペックスから先の立ち上がり時に、更に緩やかで直線的なラインを描く事でオーバーテイクを目論む。

 

「───Unglaublich!? そこから、刺してくるつもり!?」

「だから、言ったでしょ───天才、ハロルド・ベルセリオス様を舐めてもらっちゃ……困るって!」

 

大井コーナーのエイペックス手前で、ビスマルクのC62とハロルドの35GT-Rがクロスライン。ターンインからクリッピングまではラインがキツくなる分、C62が前に出ていくが───クリッピング先の立ち上がりで、よりアクセルを踏み込める35GT-Rがジリジリと前を奪っていった。

 

「───撃墜よ、シュヴァルツェ・クレーエ!」

「……やられたわ。見事に……私の判断ミスね、コレは……」

 

そして、脱出───ハロルドの35GT-Rが、完全に前へと躍り出た。だが、ビスマルクも当然諦める筈はなく、川崎航路トンネルからゴールの本牧JCTまで続く直線区間での巻き返しを狙い、C62の低い車体を35GT-Rの大柄が作り出すエア・ポケットへと潜り込ませる。

 

「……んふふっ、やっぱり諦めるワケが無いわよねぇ♪ そう来てくれなきゃ!」

「逃がさないわよ、絶対に───今夜、必ず撃墜(オト)すッ!!」

 

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