【急募】幼女アイズの幻覚見えてるんだけどどうしたらいい?【ロリコンではない】 作:透明な器
オラリオの朝は早い。
よる遅くまで街は動き、そして早くから動き出すのだ。
そして、俺も目を覚ました。
日の光と小鳥の囀りに起こされた自分は、ぬかるみに取られそうになる意識を無理矢理覚醒させる。
遅くまでバイトをしていれば、眠いのは当然かも知れないが。
昨日はチビアイズさんにジャガ丸くんを作っていたので、少し寝るのが遅くなった。
そして、目を覚ましたらやはりアイズさんは消えていた。
「……やっぱり幻覚なのかなぁ?」
そう呟き、ベッドで眠る我が主神に小声であいさつをして朝ご飯の準備をする。
トーストに目玉焼きのあまり特徴のないものだが、まあないよりマシだろう。
ほんとうはもっと手の込んだものを作りたいのだが、バイトとの掛け合いが少し悪くあまり準備ができないのだ。
「わぁ~〜〜!?!?遅刻遅刻!!」
そう言って上に上がってきたのは、我らが主神───
「おはようございます、ヘスティア様」
「おはよう!!でもできれば起こしてほしかったな!!」
「寝てるのに悪いかなって……って」
「そうだけど、そうじゃなーい!!」
そう言って言い慣れていなさそうに文句をいう女神が、俺の主神のヘスティア様だ。
やさしくてお人好し、まあだらしないところを除けば女神みたいな人だ。女神だけど。
「ていうかまだ時間ありますよ、バイトまで」
「へっ?ほんとに?」
「はい」
「なんだそっか〜……」と気の抜けた様子で言うヘスティア様に、朝ご飯ができたから座ってくださいと言って席に案内する。
そして、二人して手を合わせて言った。
「「いただきます!」」
そうして、真に俺たちの朝が始まった。
───────────────────
「いやー、相変わらずコウスケくんのご飯はおいしいね!」
「そう言ってもらえるとうれしいですよ」
そんな会話をしながらも、バイトのための準備を進めていく一人と一柱。
ゆるゆるの雰囲気だが、これでいいと思っている。
そうして、準備が終わって二人して外に出る。
「さあ、今日も頑張っていこうぜ!コウスケくん!」
「はい、頑張りましょう」
そう言って分かれた二人は、別々のバイト先に向かう。
コウスケは新聞配りのバイトだ。
これはこれで、街の人達とのコンタクトが取れるためいい仕事だと思っている。
色々な家を回り、ひたすら配る。
その過程で挨拶をしてくれたり、子供たちに絡まれたり、色々あったが別に嫌ではなかった。
というか嬉しかった。あまりコミュ力のない自分だが、それでも人並みの付き合いはできているのだと。
そうして、あっという間に時間は昼になっていた。
「あー……終わった〜」
「結構時間かかるなー」なんて呟きながら、ベンチに座って休憩をとっていた。
先ほどようやく新聞配りの仕事が終わったため、こうして休んでいるわけだが。まあまたこれからバイトが始まるわけだ。
今度は荷物運びの仕事だから、体力を少しでも回復させておきたいという腹づもりだ。
「しっかし、お腹すいたな……」
「ウラカワさん?」
「へっ?」
そうして声を掛けてきたのは、薄緑色の髪に美しい顔立ち、スレンダーな体形の給仕服のエルフだった。
「リュー先輩?」
「ええ、何か疲れているようでしたが、大丈夫でしょうか」
「ええまあ、少しお腹はすいてますけども」
バイトの先輩たる、リュー・リオンだった。
まあ言わずとしれたポンコツエルフさんであり原作のヒロインだ。
こんなこと言ったら叩かれそうだけど。
「そうでしたか、貴方はいつも仕事に駆け回っていますから少し休んでもいいのでは?」
「まあそうなんでしょうけど、生活もあるので」
そうやって優しくアドバイスしてくれるのも、彼女のいいとこだ。ポンコツ以外には欠点が見当たらない。
「……さっきから失礼なことを言われているような……」
「……キノセイジャナイデスカ?」
「…………そういうことにしておきます」
危なかった、危うくバレるところだった。
流石にお優しいリューさんといえど怒ることは怒るから注意しないと。なんとなく見逃してもらっただけの様な気もするが。
それからは、少しの間世話話をしていた。
店でのバイトのこと、他の仕事はどうなのかみたいな話をした。
まあこちらを案じてくれているのはわかるので、会話の合間に聞かれる体調のことには正直に答えておいた。
「───そういえば、ウラカワさんは独り言が多いとシルに聞きましたが」
「え゛?」
そんなだから、唐突に差し込まれたその話題にはギョッとした。まさか、あのシルさんから聞いていたとは。
まあ自分に言わせれば、それは仕方のないことなのだが。
だってあのちびアイズさん無視すると泣きそうになってくるからしょうがないではないか。
まあなぜか昼間には現れないからそこは助かったが。(もし昼間に現れたら本格的に幻覚を見る異常者になってしまう)
……幽霊という線もあり得るかもしれない。
「仕事の最中にそのようなことはあまりよろしくない、すこし改善してみてほしい」
「はい、ホントにすみません………」
そんなこんなで、リューさんと取り留めもない話をして分かれながら、次のバイトへと向かっていった。
◆◆───────◆◆
それから、夜になってほんの少し経ってからホームに戻る。
それは今働いているメインのバイト───豊穣の女主人の制服を取りに行っているからだ。
流石に私服で行くわけにもいかない、まあ一番怖いのはミアさんだが。
「ただいまです」
「おかえりー!」
ヘスティア様が出迎えてくれた。
まあ直ぐに出ていってしまうが、それでも出迎えてくれたようで嬉しかった。
そして、ヘスティア様に何やら違和感があった。
「……なにかありました?」
「あっ、やっぱりわかっちゃうよね?」
そう言ってヘスティア様は奥へと案内してくる。
そこはいつもの廃教会のなかだが、違っていることが一つあった。そこにいる人物だ。
白い髪に赤い瞳、そしてウサギを思わせる雰囲気。
端的に言って、まあ
白髪にルベライトの瞳、そしてこの時期にこのファミリアに入ってくる人物。それだけでもうわかってしまった。
「紹介するよ!新しくファミリアに入る────ベルくんさ!」
そう、原作の開始だ。
今からより、この世界が救われる物語が始まるのだから。感動もするというものだ。
それは、転生者としては必然の感動とさえ考えてしまう。
「べ、ベル・クラネルです!よろしくお願いします!」
「こっちこそよろしく、頼りない先輩だけどな」
そうやってあいさつを交わし、少しの間話をして今日は一旦解散となった。自分もバイトがあるし、ベルくんも少し疲れているみたいだったから。
そうして自分は、また豊穣の女主人へのバイトへと向かっていった。
バイトが終わり、大体の人たちが寝静まった頃。
また自分は、幻覚を見た。
『さっきのひとが、あたらしいファミリアのひと?』
「そうですね、きっと大物になる人ですよ」
『そうなの?』
具体的には君を救ってくれる人だよとは言わなかったが、まあそのうちわかるだろう。そもそもこの人本人じゃないけど。
ちなみに、もうジャガまるくんは作り終えている。
またねだられたので仕方なくだ。
ここからはもう寝るだけ、明日に備えるのみである。
ソファに寝っ転がりながらそう言って、少し目を瞑る。
そうして思い浮かぶのは、この世界の未来───原作のことだった。
原作どおりにはなるだろう、なにも干渉しなければそういう流れだ。そもそも変えられるかどうかも分からない未来を変えるつもりもないが。よりひどい結果になるのは目に見えているのだし。
ただ、いいなぁという気持ちがないと言えば嘘になる。
そりゃあ誰だって主人公のような活躍はしたいだろう、当然だ。ただまあ─────
「そんな勇気もないんだけど……」
『?』
「何でもないですよ、独り言です」
というか、なぜ。
「なんで一緒に寝転がってるんです?」
『?ねむいから』
「いやそうじゃなくて……」
子供特有なのか女の子特有なのかは分からないが、少し柔らかい体が密着していた。
もちろんこの程度で興奮などしないが、仮にも男女がこうやってくっつき合っているのはよくないと思うのだが。
まあそんなことはこの幼女(精神的にも)には期待できないか。
『あとかみさまがいってた』
「えっ何を……」
『おとこのこがおちこんだときはこうするといいって』
「今すぐ忘れてください」
なんちゅうこと教え込んでるんだ神々は。
まあ十中八九ロキではないほかの神だろうけど。
アイズさんを溺愛しているあのロキ神がそんなことは教えないだろう。冗談ならともかく。
寝る前なのにどっと疲れた気がする。
もうこの際さらに引っ付いてきたアイズさんはあまり気にしないようにしよう。そうしよう。
「おやすみなさい、アイズさん」
『おやすみ』
そうしてまた、眠りに落ちた。
◆◆─────────◆◆
それからの一ヶ月ほどは、何も変わらない日々が続いた。
朝おきて、バイトに行って、日の終わりの夜になってアイズさんの幻覚を見る。
まあそのなかでも、ベルくんの冒険者としての収入が入って少し贅沢できるようになったり、ベルくんが髪飾りをヘスティア様にプレゼントしてイチャイチャしたり、アイズさんにまたまたデザートを作ったりと忙しいといえば忙しい日々が続いた。
まあベル君くんはこれからもっと忙しくなるから今のうちに休んでほしいと思うが。
まあ平穏な日常と言える日々だった。
もっとも、これからはヘスティアファミリアとして巻き込まれることも多くなるだろう。自分を守る技術くらい身につけておきたいが、誰にでも頼めるというわけでもないからどうしようと思ったりもする。
そもそもステイタスの伸びがベルくんというバグに比べて弱いので、強くなるのが間に合わないという問題もあるのだが。
まあそれより今は、目の前の問題だろう。
「……ど、どうしたんですかアイズさん?」
『…………うさぎさんににげられた』
そうやって頬を膨らませ膝に乗るちびアイズさんを見て、いちおう本体と情報は共有できるのかとくだらないことを考えてしまうのだった。
いちいち読み返しながら書く必要が出てくるほど、うる覚えなことがわかったので読み返しながら書いて行きます。