【急募】幼女アイズの幻覚見えてるんだけどどうしたらいい?【ロリコンではない】   作:透明な器

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3話目です、よろしくお願いします。


酒場の出来事

 

『……なんでにげちゃったんだろ』

「ま、まあすこし気が動転してたのかもしれないですし……ね?」

 

そうやって慰め続けること数十分。

どうやらなかなかショックを受けてしまっているらしい。

まあじゃがまるくんを作ってあげれば機嫌を直してくれるかもしれないが、話し合いで機嫌が直るならそのほうがいい。

 

そんなこんなで、なんとか機嫌を直したアイズさんと共に外に出る。正確にはアイズさんが勝手についてきているだけだが。

廃教会の外に出ようとすると、突然声が掛かった。

 

「あれ?コウスケさん?」

「ん?ベルくん?」

 

我らが主人公、ベルくんだった。

同時に珍しいとも思った。この時間に起きていることはこの一ヶ月であまりなく、健康優良児である彼には珍しいことだった。

 

「どうしたんだ?なんかあったっけ………あー、なるほど?」

 

どうしたのかを聞こうとして、やめた。

なんとなく理由がわかったからだった。まああれだけ昼間言っていればおのずとわかるというものだ。

 

「さては、()()()のことを考えていたんだな?」

「えっ!?なんでわかっ……あっ」

 

相変わらずわかりやすいことだ。

もちろんあの日からとはアイズさんのことであり、この純情ボーイの初恋の相手だ。

本人(幻覚)がいるため名前では呼ばなかったが。

まあ純情で純粋なことが悪いとは言わないが。もちろんいいとこだし。

 

「ほんと、わかりやすいよなお前」

「ううっ……意地悪ですよ、コウスケさん……」

「悪い悪い」

 

少しわらって言えば許してくれるベルくんだからこそ、こんな冗談も言えるのだ。

 

まあ、冗談はこのくらいにして。

 

「まあ、確かにフワフワするのも分かるけど、しっかり寝ろよ?」

「わかりました……」

「ああ、じゃあおやすみ」

 

用事を果たすために、廃教会の外に出ようとする。

だが、その前に言っておいたほうがいいこともあった。

 

「ベル」

「は、はい?」

「あの人は、噂だけどジャガまるくんが好きらしいぞ」

「!!ありがとうございます!!」

 

ほんの少しのアドバイスだが、言わないよりマシだろう。

それを聞いたベルくんは、ウキウキでうれしそうな顔をしてお礼を言いながら寝室に向かっていった。

 

それを見届けてから、ようやっと外に出て目的のものを手に取る。それは、木でできた剣を模したもの─────まあ木剣だ。

それを手に取り、振るう。

 

人生で初めて握ったと言ってもいいくらいには、こんなものは握ったことがなかった。

マンガで見たようなうごきを少し真似してみたり、普通に素振りをしてみたり、たくさん振るったがわかったことがある。

 

「下手すぎワロタ……」

 

クソほど下手だった。

恐らく本職から見れば、鼻で笑われるどころか視界にすら入らないレベルで下手だ。

しかし、それも当然だった。なにも使ったことがない道具の使い方が分からないように、知らないことはできないのだ。

 

()()()()でも使えば多少マシなのだろうが、あまり使えないから仕方がない。

昔、転生したばかりのころに使ってみて大惨事になってしまった経験から使うのを躊躇してしまっているのだ。

 

まあ下手なのは最初からわかっていた。

精一杯頑張ってはみるが、多分自分には才能がないためにあまり強くはなれなさそうだなと考えながら木剣を振るい───

 

 

『───おしえてあげる?』

「え?」

 

そんな声が掛かったのは、その時だった。

少し離れたところで見ていたアイズさんが、そう言ってきたのだ。いつの間にか近くにも来ていた。

だが、自分には別の疑問があった。

 

「教え……れるんですか?」

『うん、フィンたちにおしえてもらったから』

 

当然、自分の幻覚ならばこの年齢のアイズさんが知らないことも知っていてもおかしくはないが、だからってまさかそんな提案をされるとは考えても居なかった。

 

だが、冷静に考えればこれは第一級冒険者の指導を受けれるのと同意ではないだろうか。

いくら幼女の姿だろうと、幼女そのものではないのだ。

確実にこのアイズさんには、今までのノウハウが蓄積されている。

つまりは、受けるメリットのほうが大きい。

 

「………すこし、教えてもらってもいいですか?あとでジャガ丸くんクリーム味作るんで」

『!!わかった』

 

こうして、報酬をジャガ丸くんに指定して少し歪な特訓が始まった。まあ尤も─────

 

 

 

 

『……や、やりすぎた』

「────────」

 

アイズさんがとてつもない教え下手で、スパルタなのを忘れていたのだが。

翌日普通に体が痛かった。

 

 

◆◆────────────◆◆

 

 

「行ってきます!」

「「いってらっしゃい」」

 

二人してダンジョンに潜るベルくんを見送り、自分たちも準備を開始する。

今日も新聞配りのバイトから始まって、またもや豊穣の女主人へ料理の仕込みへと行かなければならないので少し急ぐ。

 

「ねえ、コウスケくん」

「ん?どうしたんです?ヘスティア様」

 

その時、ヘスティア様が声を掛けてきた。

まあ声をかけてくるのは珍しくないが、それでも少し声色が違ったので気になった。

 

こういう真面目な声色のときは、大抵ホントに真面目な話題なのでなるべく耳を貸すようにしている。

 

「まだ、ダンジョンに行くのは怖いかい?」

「………」

 

その話題だとは思っていなかったが。

 

「もちろん、無理に行けとは言わないけれど………本当は行きたいんじゃないかって思うんだ」

「………まあ、行きたくないとは思いません。でも───」

 

 

「まだ、怖いんですよ。本当に」

 

情けないことに、自分は一度ダンジョンに行って逃げ帰っている。素人とはいえ、それはベルくんだって同じだ。言い訳にはならない。

 

あのモンスターからの目線が、殺意が、迷宮の空気すべてが自分を怖じ気づかせた。

あの時からずっと、もう自分には無理だと思ってしまったから。有り体に言えば逃げているのだ。

 

「……そっか……大丈夫!きっといつか行ける日が来るって!」

「……ありがとう、ございます」

 

ホントに、情けない。

 

 

 

「じゃあ僕も行ってくるね!コウスケくんも頑張ってね!」

「はい、気を付けて」

 

そう言って出ていったヘスティア様を見送り、少し考える。

先のこともそうだけど、それよりももっと憂慮すべきことがある。それは────

 

「………今日なんだよな、ベルくんがベートさんに貶されるのって」

 

ベルくんが奮起するイベントでもあり、転換点だ。

あれがなければ、ベルくんは強くなれたか分からない。

だからこそ重要なイベントなのだ。

 

……そう、たとえそれがあの純真無垢な少年が無意味にけなされることだとしても。仕方ないことなのだ。

そう、この胸に宿る罪悪感もまた仕方がない。いまさら何をしたってできることなどないし、たとえあの狼に喧嘩を売っても一方的にやられるだけなのだから。

 

「そう……だから、仕方がない………」

 

だが、いくら言い訳を重ねても罪悪感は全く消えてくれない。

 

たったそれだけのためにあんないい子のことを貶すのを放っておくのか?自分のためだけに?家族を貶すのを見過ごすのが?

そんな考えが浮かんでは消えていく。

 

「……やめだやめ、考えたってどうしようもない。さっさとバイトに行こう」

 

そう言って考えを無理矢理中断し、ドアを開けてバイトへと向かった。

 

 

◆◆───────────◆◆

 

 

「ボクはバイトの打ち上げがあるから、それに行ってくる。君もたまには一人で羽根を伸ばして、寂しく豪華な食事でもしてくればいいさっ」

 

そう言って、勢いよく扉が閉められる。

呆然とするベルくんをよそに、まあこうなるよなとおもった自分はベルくんに言った。

 

「ま、まあヘスティア様も機嫌が悪い時くらいあるさ」

「そう……ですかね?」

「ああ、あと今日どこか行くんじゃなかったっけ?」

 

「ああ!そうでした!」と言って急いで準備を始めるベルくんに、やはり罪悪感が湧いてしまう。

こんなにもワクワクしていた彼に、今から現実が突きつけられるのかと。

 

確実に今日で彼は走り出し、オラリオ有数の冒険者になっていくのだろうけれど。

それとこれとは話が別だろう、いくら強くなったからといって傷つけていい訳はない。

彼が罵倒さえ原動力に変えられる人間とはいえ、心の傷はそう簡単には癒えないのだから。

 

「……ベルくん」

「はい?なんですか?」

 

準備をしている彼に、意を決して声を掛けた。

 

「ちょっとついて行ってもいいか?」

「え?いいですけど、どうしたんですか?」

「いやー、なんか今日は外食したい気分でさ」

 

嘘だ。真っ赤な嘘である。 

止められないのなら、せめて目に焼き付けようと思っただけだ。自分が何をやろうとしているのかを。そして一人の少年に世界を押しつける覚悟をするために。

せめて自分だけは見ていようと。そう身勝手に思ったに過ぎない。

 

「わかりました!一緒に行きましょう!」

「ありがとう、ベルくん」

 

「楽しみですね!外食!」となぜか先ほどよりもウキウキしている彼に今日ばかりは自分が全部奢ろうとおもったのだった。

 

今夜は、やけに優しい風が吹いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ベルさん!来てくれたんですね!……あれ?コウスケさん?」

「あはは、付き添いみたいなもんで気にしないでください」

「うーん、わかりました!さあこちらです!」

 

さあそうやってやってきたのは、皆さんご存知豊穣の女主人。

言わずとしれたダンまち名物のお店である。

 

案内された席にベルくんと二人で座り、料理表を見ていく。

まあバイトの都合上、この店のメニューはよく知っているのだが。

だっていつも作ってるの俺とミアさんだし。

 

隣で値段に驚愕していたベルくんが、目の前に出てきた料理に驚愕しさらに出てきた料理の値段に顎が外れそうになっていたが、まあそれは些細な問題だろう。

 

「おや、あんたも来たのかい?休み取ってただろう?」

「ええまあ、無理言って来させてもらいました」

 

「おい真っ黒頭!そんなとこ座ってないでミャーたちを手伝うのにゃ!」

「そうニャそうニャ!あと隣の少年の尻触らせろニャー!」

「ミアさんお願いします」

「くだらないことを言ってないでさっさと仕事しな!!バカ娘ども!!」

「「ニャー!??」」

 

なんか妄言をいって来たアーニャ先輩とクロエ先輩は、ミアさんのゲンコツに沈んだ。

あとクロエ先輩のは言うとしても俺にいうことではない。

いや本人にも言っちゃいかんが。

 

「な、仲いいんですか?あの人たちと……」

「ただのバイトの先輩だよ、悪くはないと思うけど」

 

そう聞いてきたベルくんに答えつつ、俺も少し自分のものを注文する。今日はフライがいいな。

 

さて、そろそろだろうか。

 

 

「ニャー……こほん、ご予約のお客様!ご来店ニャー!」

 

少しまだ痛むのか、頭を擦りながらそう言ったアーニャ先輩によってその人たちは案内されてきた。

 

多種多様な種族の人々に、かなりの顔面偏差値を有するその団体はひどく目立っており、注目を引きつけていた。

山吹色の髪のエルフに、そのエルフの王族。アマゾネスの美人姉妹にイケメンのパルゥム。

 

そして、金髪金眼の女神にも劣らない容姿の少女。

それらが一斉に入ってきた。

 

「……ロキ・ファミリア」

 

そう自分は、無意識の内に呟いていた。

周りの喧騒も、ベルくんの驚愕顔も少ししか目にはいらない。強者とはそれだけで目を引くものなのかと感じるし、さらに言えばこれほど強さを感じられる自分にも驚いていた。

 

そして、視線はようやく金髪金眼の少女に移る────時だった。

 

「───ッ?」

 

目が合った気がした。

いやそんなことはあり得ない。だって目を合わせる理由がない。もとよりこちらが一方的に知っているだけであるし、幻覚も自分が作り出しているものだ。

こちらが知る動機はあれど、向こうが知る動機はない。

はず……だ。

 

この時点で、嫌な予感がしていた。

もしくはここで逃げるようにお金だけ払って退店していれば、もしかしたら今後の()()()はなかったかもしれない。

 

まあしかし、そんなたらればの話をしてもしょうがない。

だって、ここでベルくんの事を置いていくわけには行かなかったから。

ここで目をそらすわけにはいかなかったから。

 

でも、それは失敗……だったかもしれない。

 

 

◆◆─────────────◆◆

 

 

「ダンジョン遠征お疲れさん!今日は宴やー!飲めー!!」

 

「「「「「「うおおおお!!!」」」」」」

 

神ロキの号令によって、ロキ・ファミリアのテンションが爆上げする。まるでいつもの我慢が解放されるかのように、皆が酒や飲み物を口に運んでいく。

 

それはこの店ではいつもの光景だが、少し前に働き始めた自分にとっては見なれぬ光景。

そして、同時にどこかで見た光景だった。

 

「ロキ・ファミリアさんは、うちのお得意さんなんです。彼等の主神であるロキ様に、私たちのお店がいたく気に入られてしまって」

 

「コウスケさんも覚えておいてくださいね?」と、従業員としての言葉を俺に送る。

それは純粋な先輩からのアドバイスだろう、ありがたく受け取っておくようにする。

それを聞いたベルくんの方は、アイズさんを見ながら期待に満ちた眼差しをしていた。

 

俺はといえば、普通に目線を逸らしていた。

もともと直で見れた感動はあったが、なんだか嫌な予感しかしないためだ。

 

「おいアイズ!そろそろあの話してやろうぜ!!」

 

そして、来てしまった。

なんかキョロキョロしていたアイズさんが、その言葉にベートの方を向いた。

ああ、これから始まってしまう。そう、これが始まりだった。

 

「あの話?」

「あれだって、帰る途中で何匹か逃がしたミノタウロス!最後の一匹、お前が始末したろ!?そんで、ほれ、あん時いたトマト野郎の!」

 

ああ、言われてしまった。

それと同時に、ベルくんのほうを見る。

まるで凍りついたように動かなくなってしまった彼を見て、後悔が湧き上がってくる。

 

それでもその狼人は、言葉を止めない、止めてくれない。

その言葉は、なぜか自分に向かって言われているような気さえしてくるほどだった。

憶病者、恥知らず、家族を庇わない卑怯者。いくつもの罵倒が浮かんでは消え失せる。

 

「──────それにだぜ、そのトマト野郎、叫びながらどっか行っちまってっ………うちのお姫様、助けた相手に逃げられてやんの!」

 

やめろ、やめてくれと願ってもやまない言葉の暴力に、ベルくんの顔を確認するのが怖くなってくる。

彼はどんな顔をしているのだろう、もしかしたら自分に対して庇ってくれないことに怒っているかもしれないと、彼なら絶対にないことを心配してしまう。

 

ああ、自分が前に思っている時以上に、この場面は相当精神的負荷が強いらしい。

それはまさに、自分がこれから一生後悔するだろうことだった。

 

そして、放たれる最後のとどめが響く。

 

「雑魚じゃあ、アイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わねえ」

 

それと同時に、ベルくんが椅子を倒し駆け出していく。

行ってしまったと思うと同時に、情けない気持ちでいっぱいだった。これだけ家族が言われているのに、あの狼が怖くて言い返すこともできない。

原作のためだなんだと理由を付け、そう思い込んで。

 

本当に、最低だ。

 

 

「……ミアさん、あいつのことは、怒らないでやってください。お金は払いますから」

「………わかったよ」

 

それだけ伝えて、自分も退店しようとする。

しかし、そうはならなかった。

 

 

「大丈夫……ですか?」

 

下を向きながら歩いていた自分に、誰かが話しかけてきていた。こんな自分に話しかけるなんて、物好きだなと思った。

自分で言うのもなんだが、かなり暗い雰囲気を出していたはずだ。

そんな雰囲気のやつに話しかけるのは、あまりしないだろう。

 

「はい………ちょっと自分の事を死んじまえと思っただけですので、お構いなく………」

「え?」

 

それほど凹んでいたのか、自分でも気づかない内に本音が漏れ出てしまったようだ。

そして、話しかけてきた人物の顔を見ようと頭を上げ───

 

 

「はっ?」

「だめ、ですよ……そんなふうに思ったら」

 

そこにアイズ・ヴァレンシュタイン(メインヒロイン)がいた。

 

 




ちなみに、コウスケが豊穣の女主人で働き始めた理由は料理の腕を見込んでミアさんに誘われたのが理由です。
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