つらい。
そう感じ始めたのはいつからだろうか、
昨日?それともそもそも最初から?
もう、いっそのこと全てを投げ出して、放り出して、ありのままの姿で『夢の世界』に逃げ出せたなら…
これは、そんな願いから始まった逃避行のお話。
─────────
[昨日]
Rio:じゃあまた明日って事で! 18:11
[今日]
⚪︎音声通話が開始されました 18:21
⚪︎音声通話が終了されました 22:34
来賀:海って明後日6時にいつものとこ集合ー? 23:11
Aki:そうだよー
めっちゃ楽しみ‼︎:Hikari 23:22
Rio:ねー!いっぱい道具持ってて楽しも‼︎
23:22 [❤️×7]
────────
「はぁ」
思わずため息が出る
なんでこうなっちゃったんだろ
テレビで反射した自分に目を合わせながらそう思う。
少し前では考えられなかった自分の髪色、家に溢れかえるありえない量の服、様々なメイク道具。
それらを見るたびにこれは全て現実だと引き戻される感覚。
なんでこんな事を思っているのかと疑問に思うかもしれないけど私は元々そういうのとは一切無縁の関係だった、はずなのだ。
でもいつの間にかこんなナリになってしまった。
もともと校則が緩い学校とはいえ、何度か校則どころか犯罪スレスレの事に巻き込まれそうになったことさえある。
どうしてこうなったのか、振り返るにはもう、私が入学した初日にまで戻る他ない。
──────────
入学式が終わり、SHRで先生が明日の連絡を済ませて挨拶をし、各々が鞄の整理をして帰ろうとしていた。
私も私で、とりあえず帰宅のため新しい教科書類を鞄に入れていったんだけど、声をかけられた。
今思えば、この子が全ての始まりだったのかもしれない。
「ねぇねぇ!あなたの名前って日向輝で合ってる?」
「え、う、うん」
その当時の私に話しかけてきた少女の名は水無月 梨穂
天然陽キャ。この言葉がよく似合う彼女は不幸にも私に話しかけてきたのだ。
そんな彼女が放った言葉は今でも衝撃的だった。
「あの!一目惚れです、友達になってくれない?!」
「は、え、えぇ?」
腑抜けた声をあげながら、私はこの野球ならデッドボールみたいなド直球な友達要求にこの後私は応じてしまったのだ。
そしてそれからその日の内にトントン拍子で事は運んでいき、この梨穂が入学前に事前に作った友達を紹介されることになった。
しかももう既にsnsでグループも作られていたようでそこにも流れで参加。
そこから大多数が同じ組だったこともあって翌日から行動をグループでするようになった。
正直私はドがつくほどのインドア派。
しかもあまり陽キャという生き物のノリについていけない人間なのだ。
当然少し避けるようにしようとした。したのだが、梨穂が子犬のように尻尾を振ってついてグループに誘導してくるのだ。
これが天然なものなんだからたまったもんじゃない。
そんなこんなで他に話し相手ができても他クラスの陽キャ。
他の私と同類っぽい子との仲は良くてクラスメイト、悪くて他人という何かの壁を介して喋っている感覚だった。
そうしてそんな日々を送っていると周りに染め上げられていくわけで。
「このコスメおすすめだよ!」
「髪みんなで一緒に染めようぜ。」
「洋服もっと可愛いの着てみない?」
「可愛いのに勿体無いよ!」
「俺はもっと派手で明るい方が好きだけどな」
「チャレンジしてみよ!」
「せっかくなら一緒にネイルしよー」
最初は断った。けどその時に聞いた言葉が頭から離れなくなって───
途中から、断る事をやめた。
───だって、それは、その言葉はあの人がかけてきた言葉とまるで同じで、
『ノリ悪…』
ボソッとわざと聞こえるような小声のあの声のようで、私は────
────────────
「ハァッ、ハァッげほっげほッッ‼︎」
───もう、やだなぁ。、
心臓の音がうるさく聞こえてくる。
このまま死ぬまでこうなのだろうか、きっと高校を卒業してもこの姿を抜け出せなくて、いつか、どこかで死ぬまでこのままなのだろうか。
自問自答が頭を巡る。
巡って、めぐって、メグッて。
「あぁぁあぁ……」
間抜けな声しか喉から出ない。
ゴトッ
「んぇ?」
そんなときスマホが床に落ちた衝撃か、もがき苦しんで誤操作してしまったのかはわからないけどネットニュースの欄が出てきていた。
そんなトップ記事にはこう書かれてあった。
『家出続出!?その原因の訳とは。』
「…これだ」
これしかない、この地獄から抜け出すには。
思い立ったが吉日。今日の日ばかりは神様を信じたい。
そうして荷物をまとめて私は、家の鍵を閉めた。
っぱギャルはいいね^ ^