それでも良いという方は読んでいただけると幸いです。
今はむかし…でもなく、超未来でもない。
今となんら変わらない時代で起きたちょっとしたかぐや姫との物語から10年後のお話。
「ねえねえ彩葉彩葉!はい!これどうぞ!!」
「ん?なにかぐ……うっま。え、ほんとうにうっま」
「ふふん♪かぐやはスシレベルが更にあがった!!」
「いいないいな~ヤチヨも食べないな~」
「あ、ごめんねヤチヨ。もう少しでボディのメンテナンス終わりだからね」
「安心してヤチヨ!ヤチヨの分もしっかり残してあるから!!」
「わ~い!感謝感激雨アラモード!」
今私達がいるこの研究所。なんとあの物語から10年後の彩葉が所長を務める研究所なのですよ。
それも私達と再会する為だけにここまで頑張ってくれて…
いやはや彩葉には私達のせいでご迷惑をおかけしました。よよよよ。
「え?ヤチヨどうしたのその説明?え?誰にしてるの?」
「そこは気にしちゃいけません!」
「ヤチヨ大丈夫?ウイルスでも食べた?」
「いくら味覚が再現されてもそれは食べたくないですなぁ~!」
そう!なんとこの彩葉はかぐやのアバターボディの制作に成功しただけではなく、ヤチヨのボディまでも制作。更にはツクヨミにおいてこれまで再現が難しかった味覚、触覚の再現に成功したのです!!
おかげでヤチヨは念願だった彩葉の手作り料理を現実でもツクヨミでも味わえる幸せな日々を過ごしているのですよ。
今でも覚えているなぁ~彩葉の作ってくれたパンケーキ。もうね、クッソまずいの(笑)
けど、そのクソまずいパンケーキが、ヤチヨにはとっても嬉しかった。
もう食べられないと思ってた彩葉のパンケーキをまた食べれる日が来るなんて……
「ねえ彩葉」
「ん?どうしたのヤチヨ?」
「…ありがとうね。私達の為に頑張ってくれて」
「どういたしまして。けどこれで満足しちゃダメだからね。ヤチヨには8000年分の幸せを今からもっと味わってもらわないと」
「彩葉……」
嗚呼、彩葉…
8000年の間ずっと苦しかった。彩葉に会いたくても会えなくて……
けどいつか彩葉に会えるって信じてたから耐えられた。
ツクヨミで再会してからも何度も叫びそうになった。
けどそうしちゃダメだってずっと我慢して、辛かったよ。
けど、そのおかげで今がある。
皆が、彩葉が連れて行ってくれたハッピーエンドに私がいる事が出来たんだよ。
だからね、彩葉ーーー
「彩葉…大好きだよ」
心の底からの本心を言葉にする。
もう何度目だったか忘れたけど、それでも口にする。
何度も何度も、この思いを彩葉に伝え続ける。
きっと何度も伝えても、それでも足りない程に彩葉への思いが強いから。
「…うん、私も大好き」
そして彩葉もまた笑ってそう言ってくれる。
そう返ってくると分かっていても、それでも嬉しくて嬉しくてたまらなくなる。
何度も何度も聞きたくなってしまうけれどーーーー
「こらあ!!さっきから私を無視して盛り上がるなぁ!!」
そろそろあっちの私が限界ですかね。
「ごめんごめんかぐや。かぐやの事も大好きだから許してね」
「むゥ~!彩葉!!今日は私と寝るからね!!」
「はいはい分かりましたお姫様。あ、準備終わったんだね」
「彩葉がヤチヨといちゃついている間に終わりました~」
「もう本当にごめんってかぐや」
あ、そうそう。
実を言いますと今からちょっとしたパーティーが行われる事になりまして。
ツクヨミにおける味覚、触覚の再現の一般公開が決定してそのお祝いパーティーが実施される流れでございます。
いや~ヤチヨだけ先に楽しんじゃいました味覚と触覚の再現。遂に皆さんにも公開となってヤッチョも少し緊張していますが、彩葉が作ったシステムは完璧なのできっと大丈夫だとも思っておりまする~
さてさて、そんな流れにて行われる本日のパーティー。
本当はヤッチョとかぐやで準備をするつもりでしたが!なんと!よりによって!!急遽ボディがメンテに!!
なのでヤッチョにはお手伝いが出来ないのでかぐやにお任せしているのですよ~
ごめんねかぐや~
「あ~あ、ヤチヨもお手伝いしたかったな~」
「そんなヤチヨに朗報で~す。ボディのメンテ終わったよ」
お~!流石は彩葉!!
さっそく入るよ~!!と意気込むと同時にーーーピンポンと機械音が鳴る。
「あれ?予定時間よりちょっと早いけどもう着いたのかな?はーい」
「彩葉座ってて♪かぐやが行ってくる!!」
「それならヤッチョもいきまーす♪彩葉は座っててね~」
ボディに入ると同時に身体を動かして彩葉の研究室の入り口へ向かう。
所長をしているのもあってか彩葉の研究室は結構大きい。タワーマンションの部屋よりも大きいかもしれない。
そんな研究室の扉は彩葉の座っている場所からすると死角に近い。扉を開けても誰がいるのかが分からないだろう。
だからこそ、だろうか。
「はーい」
「どちらさまですーーーーーーか」
ーーーその扉の先にいる存在が何者かに、彩葉が気付くのが遅れた。
「デュアアアアアアアアアアアアア!!!!!????」
「ええええええええええええええええええええ!!!!!????」
「ッ!!?ちょ、どうしたの2人とも変な声出して?」
ヤチヨのボディメンテを終えてちょっと休憩でも、と椅子から立ち上がりコーヒーに手を伸ばそうとした瞬間に聞こえた2人の絶叫。
慌てて研究室の扉へと向かいつつ、どうしたのだろうか?と考える。
今日のパーティーに呼んだのはいつもの面々。
芦花、真実の2人と兄貴とその友達でありあの決戦の時に手を貸してくれた乃依と雷の《Black onyX》のメンバーのみだ。
とてもではないがこの面々を前にしてあんな叫び声をあげる要素なんて何処にもないのに、と考えながら2人の元へたどり着く。
「どうしたの2人とも?いきなりそんな大きな声を……だし…て…………」
研究室の入り口の前で驚愕して何かを見つめている2人。
だから私は特に何も考えずに、その視線を追いかけてーーーー
カランコロンと。
もう二度と聞くはずもない。聞きたくもないこの音を私は知っている。
白い無機質な腕。提灯の様な頭。人知が及ばない異形の存在を私は知っている。
「……な………んで……」
其処にいたのはーーー月人。
かつてかぐやを迎えに来た月の住民が、そこにいた。