月からの訪問   作:にゃるまる

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《注意》
ヤチヨ、かぐやが別人格で存在しているなど独自設定があります。
それでも良いよという方はどうぞ。



第2話

 

 

 

やおよろ~!月見ヤチヨで~す!神々のみんな~!今日も元気だったかな~?

ん~?いきなりの挨拶で皆戸惑っちゃったかな?

それはだね~、今ヤチヨは彩葉の研究室にかぐやと彩葉と一緒にいるんだけどね~

 

「ーーーーーーーー」

《-----》

 

もうね、空気最悪状態なので現実逃避をしているのですよ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(……う………そ……)」

 

一瞬、今いる場所が現実かツクヨミか分からなくなった。

目の前にいる存在が、あの日かぐやを月に連れて帰った存在が、私の中を滅茶苦茶にする。

どうして月人がいるのか?どうしてこの場所を知っていたのか?ツクヨミ以外にも姿を出せたのか?

いや、そもそもいったい何をしにとまで考えてすぐに気づく。気づいてしまう。

彼等が姿を現す理由なんて、1つしかない。

 

「ーーッ!!かぐやッ!!ヤチヨッ!!下がってッ!!!!」

 

これほどまで大きな声を出したのはいったいいつぶりだろうか。

傍にあった箒を手に、高まる感情のまま叫ぶと2人を背に隠す様に月人の前に立って箒の先端を向ける。

 

「何しに来たのッ!!?帰ってッ!!かぐや達は絶対にもう月に帰させないからッ!!!!

 

必死だった。

興奮と恐怖で震える手。私はそれを必死に抑えながらも箒の先端を月人に構え続ける。

だが、そんな私の動きに対して月人は何もしない。

ただ姿を現した時と同じ姿のまま、こちらを眺めている。

その姿はまるで、どんな抵抗も意味はないと言っている様にさえ錯覚するほどだ。

 

「(まあ実際そうなんだけれども……ッ!)」

 

まだ此処があの時と同じツクヨミであればいくらでも対抗する手段があった。

だがしかし、此処は現実の世界。縦横無尽に駆け巡る事もブレードを展開する事も出来ない。

あるのはただ非力な人間のこの体1つのみだ。

現実世界においての月人の能力は一切不明だが、地球の現文明よりも圧倒的に優れた技術を持つ彼らが、人間よりも格下……何てことは絶対にあり得ない。

 

「---ッ」

 

その事実に理解させられてしまう。

抵抗しても無意味だと。抗っても意味がないのだと。

学生の頃は文武両道なんてもてはやされていたけど、所詮私はスーパーマンでもなければ超人でもない。どこにでもいるただの普通の人間でしかないのだ。そんな人間がこんな理解の範囲外にいる存在相手に勝てるなんて到底思えないし、容易く倒される未来が簡単に予測できてしまう程に力の差を感じてしまう。

 

ーーだけど、それがなんだ?ーー

 

この10年でやっと取り戻せたんだ!

とても大変で、多くの人に支えてもらって、その果てにやっと取り戻せたんだ!

かぐやもヤチヨも、やっと一緒に笑えるハッピーエンドにたどり着けたんだ!!

それをもう1度奪おうっていうなら、私は何をしてでも足掻いて見せるッ!!!

もう絶対に!!かぐや達を奪わせないッ!!!!

 

「かぐやもヤチヨも私が守るッ!!もう絶対にッ!!月になんて連れて帰らせないッ!!!!」

 

絶対の覚悟を以て箒を構える。

どれだけ勝機がなくても、例え何度倒れたって立ち上がって絶対に2人を守ってみせる!そう心の底から誓って、構える。

 

《ーーーーーーー》

 

そんな私を見ていた月人が初めて動きを見せる。

あの白い手がゆっくりとした動作で動き、背後から何かを取り出そうとする。

それが何かは分からないが、今しかないと私は持っていた箒を振り上げるが……

 

「ちょ、彩葉ストップストップ!」

「落ち着いて彩葉!いやヤチヨ達が驚いたのもいけないんだけどさ!ちょっと待って!!」

 

その手を想像もしていなかった2人に止められた。

 

「え!?な、なんで!?」

 

どうして止めるの!?と2人に叫ぼうとした瞬間、2人は何とも言えない面持ちで同時に指を向ける。

その指先が月人に向けられているのを見て、私もまた指を追いかける様に視線を動かしていくとーー

 

《ーーーーーーーー》

 

其処には恐らく手土産であろう名前に月が関係する銘菓の紙袋を持った月人の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、お茶でーす……」

「………」

《ーーーーーー》

 

やあやあ、再度ヤチヨだよ~

いや~、あれから机に向き合う様に座っている彩葉と月人だけどね~もうね、本当に空気が最悪だね……

あ、だけどあれだね。わざわざ手土産に日本各地の月に関係する銘菓を持ってやってくるなんて、律儀だよね~

ヤッチョとかぐやもいくつか食べたけど,美味しかったよ!

……まあ、彩葉は一切手を付けてない所か、まだ箒握ったままでいつでも殴り掛かれる形でいるんだけどね。

 

「……それで?いったい何の用で来たの?もしもかぐや達を連れて帰るって話なら!」

「彩葉落ち着いて落ち着いて!」

「そうだよ落ち着いて彩葉~」

 

彩葉完全に怒ってるね~……

いやさっきの彩葉カッコよかったし、守ってくれるなんて言ってくれて嬉しかったけど、流石にお痛はちょっとねぇ……

 

「それで本当に何をしに来たの?あ、月には帰らないからね!」

 

お、かぐやが聞いてくれましたか。

確かに今の月からすれば、10年前に月に帰ったかぐやがまだ月にいる状態なので、ヤッチョとかぐやを連れて帰る理由はない筈…

なのにこうしてわざわざツクヨミではなくて、現実に出現したその理由は流石に気になるかなぁ。

まあ、ないとは思うけど…本当に月に連れて帰るって話になるなら本気で抵抗するけどね。

 

《モウシワケゴザイマセン。ホンジツトイニマイリマシタ》

「…とい?え?といって…問いの事?」

 

彼の首が縦に揺れ同意の意思を示すのを見て、流石に戸惑う。

問いってどういう意味なのか?それを追求しようとしたが、それより先に彼の指が動く。

まっすぐに、その指は目の前にいる彩葉へと向けられておりーー

 

 

《アナタノカクゴヲ、トイニキマシタ》

 

 

ーーそう発したと同時に、彼の身体が光り輝いた。

 

「ーーッ!?この光ってッ!?」

 

それが私が経験した8000年の記憶をFUSHIが彩葉に見せた時と同じ光であるとすぐに気づいた私は、思わず叫ぶ。

 

「ま、待って!?いったい彩葉になにを見せる気なのッ!!?」

 

必死に叫ぶも時既に遅く。

光は瞬く間に研究室全体を包み、そして私の意識はーー途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《アナタノカクゴヲ、トイマス》

《カノジョヲウケイレルカクゴヲトイマス》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「---んぁ?」

 

目を覚ますと知らない部屋だった。

そんな小説やライトノベルによくあるテンプレ経験をする日が来るとは……

 

「……あれ?私…何してたんだっけ?」

 

寝ぼけているせいか可笑しな事を言ってしまった。

知らない部屋って…何言ってるんだろう私。此処、私の部屋じゃん。本当に疲れてるのかな?まあ昨日忙しかったからなぁと1人愚痴りながら寝ていたソファーから立ち上がると机の上に置きっぱなしの大量の荷物が目に入る。ああ、今日特売だったから買い物行って、帰ってそのまま寝ちゃったのかと納得する。

 

「かつての成績優秀、品行方正、文武両道の完璧女子高生も今では何処にでもいるダメ大人の1人ですよ~って事ですな」

 

自虐めいた言葉を吐きながら、やるかあと机の荷物整理を始めていく。

鼻歌交じりに荷物を整理しながら、そう言えばと思う。

何故かは分からないけど、とても長くて楽しい夢を見ていた気がするな、と。

とても楽しい夢だったと感じさせる充実感。もう内容は思い出せないけど、とても楽しくて、とても失いたくなくて、とても幸せだったなと感じさせる不思議な夢だった。

 

「いったいどんな夢を見てたんだ私は」

 

ハハと乾いた笑みを浮かべながら時計を見ると時間は既に夕方。

そろそろ帰ってくるかな、そう思っていると予想通り玄関から鍵を開ける音が聞こえるくるが、よっぽど疲れているんだろう。足音が重く、玄関から疲れた~と泣き言が聞こえてくる。

その声に、しゃあない今日は優しくしてあげますかと決めて、リビングに入ってきたその人物を私は抱きしめて迎え入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかえり、芦花」

「ただいま。彩葉」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして2人だけの挨拶をする。

ピースからの、チョッキンからの、こん。そして最後に左手の薬指につけられた指輪を合わせる。

それが私の結婚相手である芦花とずっと一緒にしてきた大事な挨拶だ、

 

 

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