魔術の一生   作:匿名

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魔術教師・ベテルギウス

 

 

 

石造りの魔術実習室は、まだ朝の冷気を孕んでいた。

 

高い天井近くに設えられた細長い窓からは、淡い群青色の朝光が差し込み、宙を舞う埃の粒を白く照らし出している。その静寂を、鋭い魔力の奔発音が引き裂いた。

 

 

パチン、という乾いた音と共に、少年の目の前に小さな火の玉が浮かぶ。

 

「ロカ君。それは悪い」

 

背後から届いたのは、低く、しかし有無を言わせぬ重みを持った声だった。

 

ロカはびくりと肩を揺らし、握っていた短杖を下ろした。まだ十代半ばの彼の頬は、高揚感で赤らんでいる。

 

いま彼は、教科書の数ページにわたって記述されている魔術の基本詠唱を完全に無視し、ただイメージの力だけで火を灯してみせたのだ。

 

 

「無詠唱で魔術を使ってはならないよ。一度悪い癖がついてしまえば、君の魔力回路はその形に固まり、二度と元には戻せない。きちんと、正しい言葉を紡ぎなさい」

 

 

「そして、火は私が良いと言うまで危ないから使ってはならないよ。」

 

 

声の主、ベテルギウスは、部屋の隅にある重厚な木製デスクに腰を下ろしていた。

 

彼は愛用の杖を、まるで使い古した農具のように無造作に膝に置いている。

 

その杖は節くれ立ってこそいるが、数多の年月を共に過ごしてきたことを物語るような油の鈍い光沢を放っていた。

 

木こそ最もポピュラーな補助具の素材だ。杖は、その体積を最大にしつつ、最も利用しやすい形として使われる。

 

 

「ベテルギウス先生、納得がいきません」

 

 

ロカは不満を隠さず、真っ直ぐに師を仰ぎ見た。彼の手にあるのは、自分の腕の長さに合わせて精密に調節された、新品の短杖だ。

 

 

「本にはこう書いてあります。無詠唱こそが魔術の純粋な形態であり、思考と行使の間の空白を排除する極限の効率化であると。戦場や、あるいは一瞬の判断が命を分ける場面で、悠長に呪文を唱えている暇があるのでしょうか?」

 

 

ベテルギウスは、少年の瞳の奥に宿る、特有の万能感を見つめた。

若く、才気溢れる者が必ず陥る近道への誘惑。彼は小さく溜息をつくと、教え子を手招きした。

 

 

 

「なるほど、効率か。実に見事な探究心だ。……ではロカ君、君がそこまで効率を求めるのなら、二重魔術というものがどうやって使われるか、その真髄を知っているかな?」

 

 

 

 

ロカは自信ありげに頷き、師のデスクへと歩み寄った。

 

「知っています。同時に二つの事象をイメージし、魔力の流れを二分して行使する技術です。教科書には『精神の分割』と記載されていました」

 

「よろしい。では、君にその適性があるかどうか、簡単なテストをしよう。」

 

ベテルギウスは引き出しから、一枚の紙と、一本の不思議な棒を取り出した。

 

それは一般的な羽ペンではなかった。細長い木の中に、鈍い光沢を放つ黒い芯が埋め込まれている。ロカはその道具を初めて見た。

 

 

「これは……?」

 

「私の私物だ。黒鉛を芯にしたペンだよ。インクを浸す手間も、器を倒す心配もない。長く書き続けられる道具だ。」

 

「では、机に戻りなさい。」

 

ロカは促されるままに、その鉛筆を手に取って椅子に向かった。指先に伝わる適度な重み。

 

 

羽ペンのような軽やかさはないが、確かな手応えがある。

 

 

彼はこれまでに感じたことのない高揚を覚えながら、真っ白な紙に向き合った。

 

「左手で正三角形を、右手で正方形を。同時に、完璧な精度で書きなさい」

 

師の命令は簡潔だった。

 

ロカは深呼吸をし、神経を左右の腕に分断するようなイメージをした。魔術を無詠唱で扱える自分なら、これしきの分割、容易いはずだった。

 

 

 

 

 

カツ、と鋭く尖った黒鉛の先が紙に触れる。

 

(……四角。……三角。直角を維持して、斜めに線を引く……)

 

紙の上を黒い芯が躍るたび、さらさらという摩擦音が静かな室内に響く。

 

ロカの額に、じわりと冷や汗が浮かんだ。意識を右に向ければ、左手の線が丸くなる。左手の頂点を尖らせようとすれば、右手の角が崩れる。

目線を左右にチラリチラリと向けつつ、書く。

数秒の格闘の後、ロカはペンを止めた。

 

 

 

 

 

紙の上に残されたのは、完璧な正方形。

 

しかしその隣にあるはずの三角形は、無理やり角を増やそうとして歪んだ、不格好な直角三角形だった。

 

 

「……できません」

 

絞り出すような声だった。これまで天才と称され、独学で無詠唱の域にまで手を伸ばした少年にとって、この失敗は十分すぎるほどの挫折だった。

 

「左手は三角形を書こうとするが、右手は四角形を書こうとする。脳が、あるいは精神そのものが、別々の法則を同時に完遂することに慣れていない。これを自然体にこなせるほどの『思考の並列化』ができないなら、二重魔術を実戦で使うことは不可能だよ。慣れが必要だからね。」

 

 

 

ベテルギウスは、紙を浮かせて自分のデスクに持ってきた。そこに詠唱はなく、まるで先程した無詠唱の、さらに先の御業を見せつけられたかのような感覚に陥る。

 

そうしている間にも、ベテルギウスは歪んだ図形を優しく指先でなぞった。

 

 

 

「無詠唱で魔術を扱おうとするなら、イメージの維持という問題は顕著だ。」

 

「呪文あるいは詠唱と呼ばれるものは全て目的が一致している。」

 

「人間が、詠唱という補助なしで二つのイメージを維持し続けるのは、荒れ狂う嵐の中で二本の針に糸を通すようなものだ。ほぼ不可能と言ってもいい。」

 

 

ロカは黙り込み、自分の未熟さを噛み締めるように拳を握った。

 

 

「……無詠唱なら、もっと自由になれると思っていました」

 

「自由、か。それはいい響きだ。だがね、ロカ君。無詠唱という自由には、君がまだ想像もしていないほど重たい代償が伴うのだよ。」

 

「極めるといっても小手先で、決して自慢できるものではない。詠唱をするなら詠唱を、無詠唱をするのなら無詠唱を極めるのが1番いいのさ。」

 

 

 

 

 

「無詠唱に代償……本当にあるのですか?」

「何も唱えなくとも発動できます。唱える側としては手順を省けて楽じゃないですか」

 

 

「そう。確かに楽だ。でも無詠唱で魔術を使えるというのはね、他人の目から見れば、絶対に見えない刃物を常に突きつけているのと同じなんだよ」

 

 

ベテルギウスはゆっくりと椅子から立ち上がり、呟き始める。

 

 

この実習室を出たのなら。すぐ近くには王都の喧騒が広がっている。車の車輪が街道を叩く音、人々の笑い声。その平和な景色があるのだと、ベテルギウスは呟いた。

 

 

「想像してごらん。もし、いきなり街角で火の手が上がったとする。人々はパニックになり、憲兵が駆けつけるだろう。だが、鎮火した後に犯人が見つからなかったらどうなる?」

 

 

 

「……調査が行われます」

 

 

 

「その通り。では、もしその場に、無詠唱で火を操れる君がいたとしたら?」

 

「 君がどんなに高潔な人格者であっても、どんなに火事とは無関係な用件でそこにいたとしても、周囲の人間は君を『いつでも、誰にも気づかれずに火を放てる怪物』として見る。アリバイなど無意味だ。君の手には常に、透明な火種が握られているのだからね。」

 

 

ロカの背筋を冷たいものが走った。自分が誇っていた技術が、社会という枠組みの中では凶器の秘匿と同義であるという事実に、初めて気づかされたのだ。

 

 

 

 

「僕は、魔術をそんなふうに使いません」

 

 

「君は確かに口先だけならそう言えるだろう。だが、周りの人は君がどんな人かを知らない。」

「君が無詠唱魔術師であるという事実しか分からないんだ。犯人が不明な放火事件。暫定犯の中から犯人を絞り込む際、無詠唱の使い手というのはそれだけで最優先の容疑者になる。無実を証明する手段がない、というのは恐ろしいことだよ」

 

 

ベテルギウスは、デスクから立ち上がって歩く。やがて、ロカの机にたどり着いた時、ゆっくりとロカの震える肩に手を置いた。

 

「無詠唱というのは、決して良いことばかりではない。自由であることは、時に他者からの信頼を放棄することにも繋がるのさ。」

 

 

「根本の話をするのなら、当たり前だけどこの世の生物には魔力回路があって、それに流れている状態でイメージを固めることで魔術は用いられる。」

 

「じゃあ無詠唱魔術師だったら?」

 

 

 

ロカは、逡巡する暇もなく、一瞬で答えた。

 

 

「イメージしただけで魔術が使えます」

 

 

ベテルギウスは、その回答に首をかしげた。

 

「うーん、無詠唱を万能視し過ぎだよ。そんな簡単に無詠唱も魔術を使えないよ。でも、世間一般はそんな感じで無詠唱のことを見ている。」

 

 

 

「ベテルギウス先生。でも……」

 

 

ロカは食い下がった。彼が夜通し読んだ、図書館から借りてきた古びた本の一節が、頭を離れなかったのだ。

 

 

 

「本にはこう書いてありました。非文明人と文明人の境界線は魔術と生活様式から推定できる、と。昔の人はほとんど全員が無詠唱で魔術を使えた。現代の人は司法に縛られ、本来自由であるはずの人間の思考そのものが、教育によって狭められているのだ……と。これは本当ですか?」

 

 

ベテルギウスは、少しだけ意外そうに眉を上げたが、すぐに困ったような笑みを浮かべた。

 

 

 

「うーん。それは……誤りかな」

 

 

「何故ですか、先生」

 

 

「理由は二つある。一つは現実的な社会基盤の問題だ。昔の社会には、教育を全員に施せるほどの余剰がなかったんだよ。少数の才能ある者が、野生の勘で魔力を振り回していた時代を『自由』と呼ぶのは勝手だがね」

 

 

師はデスクの上にある、精密な感覚で点が刻まれた定規を指でなぞった。

 

 

「もう一つは、科学的視点だ。魔術がここまで普及したのは、科学によって同じ事象を共通の言語で見ることができるようになったからだよ。文明化をどこに起点とするかで議論は分かれるが……無詠唱魔術師が多数派だった社会が、なぜ現代のように詠唱魔術師ばかりの社会に取って代わられたのか。歴史を見れば一目瞭然だよ」

 

 

ロカは息を呑んで耳を傾ける。

 

「あ、そうそう。二重魔術の話に戻るけどね、あれって単純に、一つの複合魔術で済んじゃう話なんだ」

 

 

 

 

「えっ」

 

 

ベテルギウスは続ける。

 

 

 

「考えてごらん。わざわざ右手の火で水を温め、左手で温度を調整するなんて手間をかけるより、最初から『適温の温水』をイメージした方が、思考の労力も魔力の消費も少なくて済むだろう? イメージを二つに割るより、より洗練された一つのイメージを持つ。それがより洗練された魔術の進化なんだ。」

 

「なにせそもそも、無理に二重魔術を使わなくともいいじゃないか。自由な発想があるのはいいけれど、できそうなのに誰もやりたがらない事にはそれなりの理由があるのだよ。」

 

 

 

ロカの脳裏に、先ほどの歪んだ三角形が浮かぶ。二つのことを同時にやろうとして崩れるより、一つの完璧な目的を遂行する方が、遥かに効率的で美しい。

 

 

「無詠唱の利点は、一見すると素早さにあるように思える。だがそれは、一回きりの行使に限った話だ。繰り返し魔術を使い、精度を保ち、誰にでも教えられるように体系化するなら、詠唱という『手順書』はあまりにも強力だ。私が詠唱と無詠唱の利便性を天秤にかけるなら、迷わず詠唱を選ぶよ。」

 

 

「先生……よく分かりました。つまり、無詠唱というのは……一種の欠陥品なのですね?」

 

 

ベテルギウスは否定しなかった。ただ、静かに頷いた。

 

 

「目的が同じなら、より少ない労力で、複数回に渡って確実に再現できるのが至高だ。無詠唱が淘汰された最大原因は、単純に詠唱と比べて非効率すぎたこと。……ああ、欠陥品と言ってしまっても、現代の魔術体系においては間違いではないね」

 

 

 

 ロカは、自分が手にしていた短杖をまじまじと見つめた。

 無詠唱という近道に手を伸ばし、他人より一歩先へ進んだつもりでいた。しかし、その実態は文明の歩みを逆行し、自らを社会的な孤立と非効率の闇に追い込む行為だったのだ。

 

 

「……先生。僕は、愚かでした」

 

 少年の落胆は、冬の枯れ葉が落ちるように静かで、重かった。

 

 

「効率を求めていたはずが、一番遠回りをしていた。無詠唱なんて、ただの自己満足でしかない。なのに、なぜ世の上位貴族たちは、魔術の多様さを競い、あえて二重魔術のような複雑な技を披露し合うのですか? 彼らこそ、もっとも合理を重んじる人々のはずでしょう?」

 

 

 

 

 ベテルギウスは、窓から差し込む陽光に目を細め、どこか遠い場所を懐かしむような顔をした。

 

「いい質問だね。では、もうひとつ例え話をしようか。ロカ君、君はロウソクの火を知っているね。その香りと、ゆらゆらと細く揺れる火の形を想像しながら魔術を使ったら、どんな火が付くと思う?」

 

 

 

 

「それは……ロウソクのような、静かで明るい火です」

 

 

「では、暖炉の火はどうかな? 薪が爆ぜる音、激しく燃える火の粉、立ち上る煤の臭い……それを想像しながら放つ火は?」

 

 

「暖炉のように、激しく力強い火になります」

 

 ベテルギウスは深く頷いた。

 

「では、そのイメージの元となるものは、一体どこから来ると思う?」

 

 

 ロカは思案した。

 

 

「体験……。いや、経験。実際にそれを見た、ということですか?」

 

 

 

 

「その通りだ。身分が低く、日々の生活に追われる者には、イメージの源泉となる『見聞』を得る余裕がない。一方で、上位貴族は広大な領地を巡り、最高の教育を受け、世界中の珍品や絶景を目にする機会がある。つまり、彼らにとって多様な魔術を使えるということは、『私はこれほどまでに豊かで広い世界を知っている』という、圧倒的な知性と財力の誇示なんだよ」

 

 

 ベテルギウスは、デスクの上に置かれた鉛筆を指先で弄んだ。

 

 

 

「そして、さっきの話と矛盾するようだけど、彼らがよく使うのは二重魔術だ。先ほど私は二重魔術を非効率だと言ったね。だが、上位貴族という人種は、誰よりも『タイムパフォーマンス』というものを気にする人々でもあるのさ。」

 

 

 

 ロカは意表を突かれたような顔をした。これほど複雑で無駄の多い技術が、時間を大切にする人々に愛されているという矛盾。

 

 

 

「タイムパフォーマンス、ですか? むしろ時間がかかるのでは?」

 

 

 

「逆だよ、ロカ君。想像してごらん。高位の貴族が主催する披露宴を。招待されたゲストたちは、社交のために数時間を費やす。

 

 

ホストは自分の力を誇示しなければならないが、かといって、ひとつひとつの魔術を順番に、一人一人に何時間もかけて見せびらかされたらどう思う?」

 

 

「……退屈、でしょうね。早く帰りたいと思うかもしれません」

 

 

 

 

「そうだろう。だからホストは二重魔術を使う。同時に二つの高位魔術を披露することで、自分の実力を瞬時に示し、披露宴の時間を短縮するのさ。ゲストはホストの凄さに圧倒されつつ、心地よい数時間で帰路につける。これは、主人のゲストに対する最高級の『気遣い』であり、もてなしなんだよ」

 

 

 

 ベテルギウスの言葉は、魔術というものを個人の武力から社会的な言語へと昇華させていった。

 

 

 

「彼らは領地を長く空けられない。誰かに乗っ取られるかもしれない、という危機感を常に持っている。だからこそ、全権を委任した領主代行に任せている間に、最小限の時間で最大限の外交成果を得る必要がある。二重魔術は、そのための洗練されたツールなのさ」

 

 

 

 

 ロカは、師の言葉をひとつひとつ噛み締めるように、深く息を吐いた。

 

 魔術の深淵は、ただ威力を高めることや、発動を速めることだけにあるのではない。そこには、歴史、法、そして人間社会の調和が含まれているのだ。

 

 

 

 

「君は好奇心が旺盛で、何でも知りたがる。それは素晴らしい才能だ。」

 

「貪欲な探究心は何よりも素晴らしく、唯一無二のものだからね。」

 

 ベテルギウスは、ロカに優しく微笑みかけた。

 

 

 

 

「だが、無詠唱の不便さと、その裏にある社会的リスクが分かったなら、今後は詠唱をきちんとなさい。そうでなければ……ロカ。君は、先人たちが積み上げてきた歴史と伝統、そして他者への敬意を、軽んじることになってしまうからね」

 

 

 

 

「はい。ベテルギウス先生……分かりました。僕は、僕たちの文明を信じて、もう一度基礎からやり直します。」

 

 ロカの返事は、最初のような不遜さは消え、清々しい決意に満ちていた。

 

 

「よろしい。……ちなみにね、二重魔術なんてものが高位貴族以外にも残っているのは、魔術師としての精神の成熟を測るのにピッタリだからだよ。」

 

「もしもあらゆる魔力を数値化できる不思議な装置が開発されたら、二重魔術を使ったテストなんて真っ先に廃れるだろうね、ただ……テストそのものは無くならないだろうけど。」

 

 

 ベテルギウスは悪戯っぽく笑い、先ほどロカが失敗した紙を自分の手元に引き寄せた。

 

「でも、そんな便利な装置は、当分作られそうにない。往々にして、既に解決済みの事柄に対して、人は新たな力を割かないものだからさ」

 

 

 

 

ベテルギウスはそう話を締めた。

 

 

 

 ロカが丁寧な礼をして実習室を去った後。

 ひとり残されたベテルギウスは、ロカが置いていった黒鉛ペンを握った。

 彼は視線を落とし、紙の余白にさらさらとペンを滑らせる。

 

 

 右手が描く、寸分違わぬ正方形。

 左手が描く、鋭く完璧な正三角形。

 

 

 二つの図形は、一切の迷いなく同時に描き出された。

 

 

「……やれやれ。あの子を納得させるのも、年々大変になってくるな」

 

 ベテルギウスは、弟子の書いた歪んだ三角形を愛おしそうに眺め、それをそっとデスクの机に仕舞った。窓の外では、王都の鐘が昼の終わりを告げる音を響かせていた。

 

 

 

ベテルギウスの杖だけが、その日の授業を永遠に聞いていた。

 

 

 

 

 

 

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