ちなみに、誰もまともに笑わなかった。
世の中、
[増田先生]
「じゃ、帰りまぁす……」
増田先生は、自分だけスベってしまったのがショックだったのか、
[巣桜 司]
「……」
司くんはと言うと、文字通り真っ白になって、机に持たれている。
[二階堂先生]
「これでホームルーム終わりまーす」
朝のホームルームが終わると、二階堂先生は教室から出て行く。
ざわざわ……ざわざわ……。
ホームルーム後の休み時間、ざわざわと賑やかな私達の教室。
皆、司くんの席の周りに集まっている。
そのそれぞれが、司くんに質問攻めだ。
[巣桜 司]
「あっ、とー、えとー……」
司くんはキョドりながらでも、頑張って皆の質問に答えている。
……皆どうしたの?
卯月くんの時は、誰もこんな騒がなかったよね?
まあ、卯月くん自体が人を避けてるし、なんか……寄せ付けないオーラがあるもんね、今だって隣に座ってるけど。
あとは、タイミングかなー?
丁度、新学期なこともあったし。
[永瀬 里沙]
「すっごい可愛い……狂沢くんとかとは、また違った可愛さ……うちのクラスに美少年が、いや……美少女が!」
ほわ〜、とした惚れたような顔で、美少年・美少女を崇める里沙ちゃん。
[朝蔵 大空]
「何言ってるの里沙ちゃん……」
確かに司くんはお肌が白くて、ショートボブぐらいの髪の長さであるし、お
と言っても司くん、
顔に似合わず、スラッとしていて、スタイルが良い様に見える。
[巣桜 司]
「はひ」
これはしばらくは、司くんの話題で持ち切りだろうなー。
この調子だと、他のクラスの人達にも、司くんの人気が漏れそう。
本当にこの高校、イケメンや可愛い子に目が無いんだから!
[狂沢 蛯斗]
「巣桜くん! 写真に興味はありませんか!?」
皆もう気が済んで、司くんの周りから人が散った頃だった。
怖いくらい大人しいな、と思っていた狂沢君がついに、司くんへ絡んで行った。
[巣桜 司]
「写真!?」
うわぁ……。
私以外にも、狂沢くんの鬼の勧誘の魔の手が、哀れな被害者が……司くん、気弱さんみたいだし、断れなさそー。
こう言う時、やっぱり私が助けに行くべきかな?
でも相手は狂沢くんだし、巻き込まれたくないなぁ、と言う気持ちもある。
[巣桜 司]
「写真……しゃしゃしゃ、しゃ写真!? い、嫌ですー! 写真は嫌なんです!」
おっと、これはまずい流れ……。
また泣き出してしまうぞ〜。
[狂沢 蛯斗]
「い、いきなりなんですか?」
号泣しだした司くんに、狂沢くんはびっくりしている。
[巣桜 司]
「いやぁー! と、撮らないで下さいぃ!! 出てきちゃいますー……」
出てくる? って、何が?
写真が嫌すぎて、
[狂沢 蛯斗]
「う、うるさいですよ! 静かにして下さい」
このふたり、もしかして揃って、情緒不安定系男子?
関わってて思うんだけど、ふたりとも感情の起伏が激しいよね。
疲れないのかな……?
司くんがイヤイヤ言いながら、泣き叫ぶ。
そんな司くんに、狂沢くんもイライラしている様子だった。
クラスの皆も、司くんに視線を集める。
[巣桜 司]
「う、うっ、わん……ひ、ひっく……」
狂沢くんに怒鳴られて、司くんは無理に泣き止もうとしている。
けど、なかなか落ち着けない様子だ。
普段、人をドン引かせる側の狂沢くんが、額に汗をかいて引け目を感じている様だった。
[永瀬 里沙]
「デリケートな子だねぇ……」
[朝蔵 大空]
「ね」
司くん、これから先ここでやって行けるのかな?
また前の学校みたいになったら、残念だな。
……な、何を黙って見ているの私!
私が司くんをフォローしてあげないと!
私が司くんを、泣き
[狂沢 蛯斗]
「巣桜くん! 君は弱い、弱すぎます!」
ん?
『それ今、言う?』って、思われるかもしれないこと言うけど……。
あれ、よく見たら狂沢くんカメラ替えたんだ。
この前のと少し、見た目が違う気がする。
[巣桜 司]
「ふぇ、えっと……?」
司くんは涙を
[狂沢 蛯斗]
「そんなことでは、いつか
[巣桜 司]
「は、はい?」
狂沢くんの発言にただ困惑する司くん。
[狂沢 蛯斗]
「今ボクから君に言えることは、それだけです! 失礼します!」
と言って狂沢くんは、席に戻って授業の準備をし始めた。
狂沢くんったら、さっきの発言はどう言うつもりなんだろう?
確かに、司くんみたいな見た目が可愛くて、気が弱い子って、人から簡単に搾取されちゃいそう。
そう考えると司くんも、今のままではダメだよね。
それは私も思ってるけど、本人には言えないんだよね。
[巣桜 司]
「うーん……」
司くんはと言うと、涙は乾いた様でひとり、考え込んでいた。
狂沢くんに言われたことが、
[永瀬 里沙]
「言ったねぇ……」
狂沢くん……あの子は本当に凄いな、なんでも他人にズバズバ言えちゃうんだもん。
ってなると、私より狂沢くんのほうが、司くんの面倒をよく見れちゃったり?
……いや、そんな訳無いか!!
司くんは繊細な子だもん、卵黄の膜を割らないように、大切に優しく扱わないといけない子なはず。
[狂沢 蛯斗]
「巣桜くん! こんな所で何やってるんですか? サボらないでちゃんとやって下さい!」
今は理科の実験の授業中。
[巣桜 司]
「だ、だって……火とか薬物とか、怖くってー……」
理科室の隅のほうで、怯えた様子で縮こまっている司くん。
たかが理科の実験で、そんなに怖がる人っているんだ……。
司くんってほんと、女の子みたい。
[狂沢 蛯斗]
「ただのマッチと塩ですよ、薬物ではなく食品です。 高校生ならそれぐらい、分かりますよね? しっかりして下さい」
[巣桜 司]
「あ、そうなんだ……怪しい粉かと思った……」
司くん!?
[狂沢 蛯斗]
「なんのことを言ってるんですか?」
司くんの問題発言に、狂沢くんはよく分かっていない様子だった。
そして国語の授業、の
[狂沢 蛯斗]
「巣桜くん! なんなんですかさっきの! 噛み噛みじゃないですか! 君のせいで、全然話が入って来なかったんですけど!」
[巣桜 司]
「ご、ごめんなひゃい……き、緊張しひゃって……」
司くんは涙目になりながら、謝るかの様に頭を上げ下げする。
[狂沢 蛯斗]
「現在進行形で噛んでます! 噛むのはガムだけにしといて下さい!」
[巣桜 司]
「は、はひっ! 今すぐ買って来ます!」
[永瀬 里沙]
「いつの時代のヤンキー漫画だよ……」
司くんは教室を飛び出して、恐らく購買のほうに走って行った。
[狂沢 蛯斗]
「え、何を……か、買って来ないで良いです! 戻って来なさい!」
狂沢くんはそのまま、司くんを追い掛けて教室から出て行ってしまった。
[永瀬 里沙]
「うんうん」
[朝蔵 大空]
「うんっ」
それを見て、顔を見合わせる私と里沙ちゃん。
[永瀬 里沙]
「結構良いんじゃない?」
[朝蔵 大空]
「" 友達 " って感じ」
司くんがここに来て、初めて出来た友達ってことになるのかな?
[永瀬 里沙]
「まっ、少し奇妙だけどね」
あのふたりが仲良く出来ると良いな。
早速、燕さんが喜んでくれそうな実績が出来たかも。
私は何もしてないけどー。
[狂沢 蛯斗]
「捕まえ……たっ!」
[巣桜 司]
「ふぎゃっ!?」
足の早い狂沢に、足の遅い巣桜はすぐに追い付かれてしまう。
[狂沢 蛯斗]
「さぁ、戻りますよ」
巣桜を引っ張って教室に戻ろうとする狂沢、引っ張られる巣桜。
[巣桜 司]
「嫌! 嫌なんです! 乱暴しないでー!」
[狂沢 蛯斗]
「ひ、人聞きの悪いこと言わないで下さい!」
その時、廊下の向こうから何かが近付いて来る。
その前方には、取っ組み合う狂沢と巣桜。
そしてスピードをつけて、迫り来る何か……。
ふたりがそれに気付かないと、そのままぶつかって来てしまいそうだ。
[???]
「
[狂沢&司]
「「!?」」
気付いた時には、もう遅い。
何者かがふたりの所に、猛スピードで突っ込んできた。
まるでボーリングのピンのように、サイドに散らばる狂沢と巣桜。
[狂沢 蛯斗]
「痛た……な、なんなんですか」
[???]
「あ、ごめんね! 誰だか知らないけどっ」
[モブA]
「ぜ、全然追い付けない……」
その人物はひと言ふたりに謝ると、廊下の向こうへと友達であろう男子生徒と一緒に、走って行ってしまった。
[狂沢 蛯斗]
「あれはサッカー部エースの
[巣桜 司]
「ぷしっ……」
強い衝撃で気を失う巣桜。
[狂沢 蛯斗]
「あれっ!? カメラが、ボクのカメラは…?」
いつの間にか、狂沢が首に掛けていたカメラが、
狂沢が廊下を探しても、カメラは見つからない。
焦る狂沢、意識が
……。
[永瀬 里沙]
「あ、帰って来た……」
カリカリした落ち着かない様子で、教室に帰って来た狂沢くん。
その後ろに続けて、司くんも戻って来た。
[永瀬 里沙]
「どしたん?」
[巣桜 司]
「狂沢くんのカメラが……失くなっちゃったみたいで……」
[大空&里沙]
「「えーー!!?」」
カメラなんて、高級な物を失くしたとなると、それは大変だ。
[朝蔵 大空]
「走ってる途中で落としちゃったとか?」
[巣桜 司]
「えっと……」
[狂沢 蛯斗]
「あの人です! アレがぶつかって来てから失くなったんです」
……アレって何。
[巣桜 司]
「ぼく、気を失ってて見てなかったんですけど、
[狂沢 蛯斗]
「刹那五木です! あの人が、ボクらにぶつかって来たんです!」
[巣桜 司]
「誰?」
" 刹那五木 "、私はその名前の人物を昔から知っている。
[永瀬 里沙]
「あ、あいつが……」
[朝蔵 大空]
「……五木くん」
小さい頃よく一緒に遊んでた、千夜お兄ちゃんとは別の、私のもうひとりのお兄ちゃんの様な存在。
確か同い歳の男の子だけど、いつしか話さなくなっちゃったなぁ。
…………なんでだっけ?
昔、隣に住んでたはずだけど引越しちゃって、そこは今は巣桜
気付けば全然、接点も無くなっちゃって、私は知らなかったけど、あの人高校同じだったんだ?
優しくて、頼りになる私の古い幼馴染み。
今も、それは変わってないはず。
[永瀬 里沙]
「じゃ、じゃあそれじゃない? 間違って持ってっちゃったんじゃない?」
[朝蔵 大空]
「そんなことある?」
人のカメラを、間違って持ってくとかあるかな?
[永瀬 里沙]
「ほら、カメラを首掛ける
[朝蔵 大空]
「そ、そんなことあるー?」
里沙ちゃんは、狂沢くんのカメラを五木くんが持っていると言いたい様だ。
[狂沢 蛯斗]
「運良くないです! 運悪くです!」
[永瀬 里沙]
「うん、まあ……それはどっちでも良いんだけどさー」
里沙ちゃんは分かりやすく、面倒臭そうだ。
[巣桜 司]
「ど、どうしよう……」
[狂沢 蛯斗]
「そう言うことなら、すぐに取り返しに行きます!」
また
[巣桜 司]
「ま、待って下さい狂沢くーん!」
司くん、狂沢くんに着いて行くのが基本になって来てるのね。
今のところ、上下関係はしっかりあるっぽいけど、これから良い関係になりそう!
[永瀬 里沙]
「大空、さっきの話……大丈夫?」
里沙ちゃんはマジな顔で、私にそう聞いてきた。
[朝蔵 大空]
「えっ」
なんで……?
「気絶許」終わり……。