──見えますか?
ここは、主人公達の住む世界ではない、どこかの神秘的で、白く明るい世界。
[部下A]
「リン様ー! 彼女、目覚めたようです!」
[リン]
「分かりました、ありがとうございます」
[部下A]
「はい! では、失礼致します!」
これが毎朝のルーティン。
[リン]
「シン……一体、何をしているのですか」
……。
なんだろう、狂沢くんが昨日からずっと、カリカリしてる気がする。
[狂沢 蛯斗]
「カリカリ」
私は、後ろの席に座っている司くんに、声を掛ける。
[朝蔵 大空]
「ねぇ、アレどうしたの?」
[巣桜 司]
「え……あー、多分カメラを壊されたからだと」
[朝蔵 大空]
「えー!」
あんな、高そうなやつを!?
まさか例の、五木くんがやったって言うの?
[巣桜 司]
「ぼくも狂沢くんが怖くって……話し掛けられないんです……」
そりゃあんな見るからに、攻撃的な態度取ってたら、恐ろしくもなるよね。
[狂沢 蛯斗]
「ボクの悪口でも言ってるんですか?」
気付くと、私達の近くに狂沢くんが立っていた。
傍に居る司くんも怯えた表情をしている。
[朝蔵 大空]
「ひっ……!? い、いや違うよー。 狂沢くん、今日なんか機嫌悪いなー、って話してて」
[巣桜 司]
「ふへへ……」
私と一緒に、気まずそうに笑う司くん。
[狂沢 蛯斗]
「そうそう! あの人、刹那五木に壊されたんです!」
やっぱりそうなんだ……。
──狂沢の回想。
[狂沢 蛯斗]
「刹那五木くん。 ボクのカメラ、持って行きましたよね? 返して下さい」
[刹那 五木]
「えっ! あ、君……ごめん」
狂沢にカメラを返せと言われ、額に汗をかいて、後ろめたいことでもあるかの様な刹那五木。
[狂沢 蛯斗]
「なんですか?」
[刹那 五木]
「じゃ……ジャーーン」
ボコボコになった原型の無いカメラが、狂沢の前に用意される。
[狂沢 蛯斗]
「ぎゃああああ! ボクのカメラが!!」
ざわ……ざわ……。
他の生徒も、狂沢と刹那にざわざわと、騒ぎながら大注目。
[刹那 五木]
「ごめん! 友達と追い掛け回ってたら、蹴飛ばしちゃったみたいで……か、必ず弁償するから!」
土下座でもするかのような勢いで、狂沢の前で地面に膝を着き、上半身を前に倒して謝る刹那。
刹那五木は2年からサッカー部のキャプテン、その足からは尋常じゃない威力のキックが繰り出される。
[狂沢 蛯斗]
「それで……許されると思わないで下さいね!! 失礼します!!!」
狂沢は、『もういい』と言わんばかりの顔で、2年1組の教室から出て行こうとする。
" 絶対に許さない " と、心に怒りの炎を燃やしながら……。
[刹那 五木]
「あっ、ちょっと待ってよー……!」
それを、マズイと思った刹那が追い掛けるが、狂沢は振り向きもせずに行ってしまう。
──狂沢の回想終了。
……。
[狂沢 蛯斗]
「酷すぎます! この前、嫉束界魔にやられたやつも、修理に出す羽目になったって言うのに! あれはもう、完全に死にました! 修復不可能なんですー!」
あ、嫉束くんにやられた時もなのね。
それはそれは、大変な不幸が重なりましたなぁ……。
[狂沢 蛯斗]
「あの人達……超人気者とか、
嫉束くんの時は、貴方も貴方でなんか、変だったよ……??
結局この時、狂沢くんのイライラはまだ治まらなかった。
……。
[永瀬 里沙]
「大空ー、行こ〜」
[朝蔵 大空]
「今行くー」
今は2時間目が終わったところで、これから体育の授業を受けに、運動場まで向かうところだ。
私達は、昇降口から運動靴に履き替えて、屋外に出て来る。
[永瀬 里沙]
「日焼けしちゃーう……」
天空を眺めて、日光を嫌がる里沙ちゃん。
[朝蔵 大空]
「里沙ちゃん、充分肌白いじゃん」
光に当たって輝いてる里沙ちゃん、可愛い♪
[永瀬 里沙]
「いやいや……。 って言うか、肌白いってそれなら、あんたのほうが白いでしょ?」
[朝蔵 大空]
「そ、そうかな?」
それは私が、休日も外に出ないことが多いから、陽の光を浴びる機会が少ないからであり……。
『白さ』を保つ秘訣はずばり、" 引きこもり " なのです。
[朝蔵 大空]
「……あっ」
その時、見覚えのある男子生徒が、運動場のほうから歩いて来るのが、見えた。
[笹妬 吉鬼]
「……」
──笹妬くんっ!!
[笹妬 吉鬼]
「……はぁ」
笹妬くんだと確信した私は、気付くと彼に向かって駆け出していた。
[永瀬 里沙]
「え、ちょっと! あっ、あれは……」
突然駆け出す大空に驚く里沙が、何かの異変に気付く。
[朝蔵 大空]
「笹妬くん! 笹妬くーん! 笹妬くーん!!」
あの時の、お礼がしたい!
彼に気付いてほしくて、笹妬くんの名前を何回も呼んでみる。
そうすると狙い通り、笹妬くんの目が、私の姿を
彼は、タオルで自分の頬の汗を拭きながら、その場に立ち止まる。
[朝蔵 大空]
「笹妬くん!」
久し振りに姿を見たけど、やっぱり笹妬くんはカッコ良いなぁ……。
[笹妬 吉鬼]
「……あ、大空か?」
[朝蔵 大空]
「うん! あっ、覚えててくれたんだ?」
私は、笹妬くんに名前を呼ばれて、嬉しい気持ちになる。
[笹妬 吉鬼]
「うん、まあ……」
笹妬くんは、ちょっと照れたように一瞬、視線を逸らした。
きっと、さっきまで笹妬くんも体育だったんだ、クラスのメンツからして……3組かな?
笹妬くん、3組の人だったんだ!
[笹妬 吉鬼]
「え、えっと……」
[朝蔵 大空]
「この前は、ありがとう。 色々と面倒見てもらっちゃって……笹妬くんには、感謝してるよ!」
[笹妬 吉鬼]
「お、おう。 それなら、良かった? けど、うん……」
[朝蔵 大空]
「えへへっ」
私は、自然と笑顔になる。
[朝蔵 大空]
「あっ……」
私は、里沙ちゃんを置いて来てしまったことを、思い出す。
[朝蔵 大空]
「じゃあ、じゃあね!」
[笹妬 吉鬼]
「あぁ、うん」
やばい、里沙ちゃん怒ってないと良いけど……。
[朝蔵 大空]
「里沙ちゃーん! ごめーん!!」
私は里沙ちゃんを見つけて、急ぐ。
[永瀬 里沙]
「ね、ねぇ?」
[朝蔵 大空]
「うん?」
グラウンドに、先に着いていた里沙ちゃんの様子が、なんだかおかしい。
[永瀬 里沙]
「し、知り合いだったんだ?」
[朝蔵 大空]
「え? あ、笹妬くんのこと? そうだよー。 あっ、そうだ! 助けてもらったって言う人、あの人なんだぁ実は……」
[永瀬 里沙]
「あ……あれそうなんだ。 うんと……な、仲良いの?」
[朝蔵 大空]
「えっと特に、仲良いとまでは言えないかもー……」
まだ、話して2回目だよ。
[永瀬 里沙]
「そ、そう……」
あれ?
本当に里沙ちゃん、どうしたんだろ?
どこか、怯えている様にも見える。
[永瀬 里沙]
「ま、まあ
[朝蔵 大空]
「えっ?」
[女性体育教師]
「集まってますか? 授業始めますよー」
里沙ちゃんとの話の途中で、授業が始まってしまった。
里沙ちゃんが言ってた噂って、なんの噂だったんだろ?
笹妬くんについての噂ってこと?
里沙ちゃん、言いにくそうな雰囲気だったし、私からは聞きづらいな。
──私は、聞かないことにした。
[永瀬 里沙]
「あのことなんだけどさ……あれから、あいつのファンから、何も攻撃されてない?」
今は各組で準備体操中。
[朝蔵 大空]
「いや? 特に何も無いよ? なんか、誤解があったみたいで。 嫉束くんが、誤解を解いてくれたんだってー」
[永瀬 里沙]
「へ、へぇ……そうなんだ。 ねぇ、嫉束くんと付き合うの?」
[朝蔵 大空]
「えっ!? うっ、ごほっごほっ……」
私は驚いて声を出した時に、変な所に唾が入ってしまったのか、激しくむせる。
[永瀬 里沙]
「だ、大丈夫?」
里沙ちゃんが、私の背中を
[朝蔵 大空]
「はぁはぁ。 う、うん……」
私は、なんとか息を整えようとする。
[永瀬 里沙]
「え? もしかして、そう言うのじゃなかった?」
……そ、そんな訳無いよー。
[朝蔵 大空]
「ち、違うよー! あれはまあ、なんと言いますか……」
[永瀬 里沙]
「な、何よ?」
[女性体育教師]
「ちょっと、永瀬さん達! ちゃんとやって!」
大きな声が聞こえてきた。
[大空&里沙]
「「は、はい!!」」
サボってる様に見えたんだ、喋ってたら先生に怒られた。
──そして、あっという間に昼休みの時間になった。
[巣桜 司]
「狂沢くん!」
[狂沢 蛯斗]
「は、はい?」
あれ?
司くん、また狂沢くんに声掛けてる……。
しかも今、司くんにしては大きな声だったなぁ、誰かと思ったよ。
[巣桜 司]
「あの、これ……」
狂沢くんに司くんが、恥ずかしそうに何かを差し出した。
[狂沢 蛯斗]
「……これは?」
司くんの手には、ふたり分のお弁当袋。
[巣桜 司]
「く、狂沢くんのお弁当です!」
[狂沢 蛯斗]
「え、ボクのって……」
司くん、もしかしてあのお弁当……。
[巣桜 司]
「はいっ! 作って来ました! め、迷惑じゃなかったら……お願いします」
ほー!
司くんったら、狂沢くんの為にわざわざ、お弁当を作って来たんだ?!
昨日、チラッと見た司くんのお弁当、美味しそうだったな。
てっきり、燕さんに作ってもらってるのかと思ってたけど、司くん料理出来たんだ!?
[永瀬 里沙]
「あら〜」
戸惑いながらも、司くんからお弁当を受け取る狂沢くん。
[狂沢 蛯斗]
「あ、ありがとうございます……」
狂沢くんと司くん、今日は教室で一緒にお弁当を食べるみたい。
……私は何かふたりに、大きな可能性を感じた。
[朝蔵 大空]
「里沙ちゃん? 行かないの?」
私もいい加減お腹が空いたので、里沙ちゃんを食堂に誘おうとする。
だが、里沙ちゃんは……。
窓側の前から3番目の狂沢くんの席で、お弁当を一緒に食べる司くん達を見つめたまま、その場から動こうとしない。
[文島 秋]
「へぇ、やるね」
あとよく見たら、近くで座ってる文島くんの表情も、なんだか微笑ましそうだ。
[木之本 夏樹]
「ムシャムシャムシャっ!!」
対して木之本くんは、それに一瞥もくれず弁当にガッツいている。
[朝蔵 大空]
「行こーよ……」
[永瀬 里沙]
「嫌よ! 私、一生ここから動かない!!」
うわ、めんどくさいなぁ……!
[朝蔵 大空]
「ほら行くよー」
[永瀬 里沙]
「イヤー!!」
この日の昼は、私が無理やり里沙ちゃんを引っ張って行った。
──そして時は過ぎ、あっという間に放課後。
ポツ……ポツっ……。
帰りの準備をしていたところ、前触れも無く雨が降ってきた。
[朝蔵 大空]
「やば……」
急に雨なんか降って来られても、今日は傘持って来てないよ〜。
……最悪。
家までそんな遠くないけど、濡れて帰るのやだなぁ。
私は嫌だなと思いつつも、とりあえず昇降口に向かう。
外まで出てきた時だった、入口で印象的な赤髪の男子生徒が、立っているのに気付く。
[朝蔵 大空]
「あっ……」
私が本能で感じる、この人もしかして……。
[朝蔵 大空]
「い、五木くん? 刹那くん……」
私はその男子に向かって、両方の名前を呼んでみた。
[刹那 五木]
「え……あ、はい?」
私に名前を呼ばれた彼が、こちらに振り返った。
当たってた!
たとえ成長してたって、この私が五木くんのことを、忘れる訳無いもん!
それにしても……体格とかもそうだし、背とか高くなってる!
めっっっちゃカッコ良くなってる、凄い!
こりゃあ、モテますわぁ〜。
[朝蔵 大空]
「私のこと、覚えてる?」
私からは名乗らなかった、だって覚えてないならそれで、もう良いもん。
[刹那 五木]
「お前……!? な、なんで話し掛けてくんの?」
[朝蔵 大空]
「えっ!?」
私のことを、覚えてる覚えてない以前に……『話し掛けてくんの?』って、何??
何その言い方……。
[朝蔵 大空]
「え……。 私だよ? 朝蔵大空だよ? 覚えて……ない?」
私は悲しくなって、つい自分から自分の名前を、言ってしまった。
[刹那 五木]
「えっ、違っ……覚えてる、覚えてるよ」
五木くんが、私のことを覚えていると聞いて、ホッとした。
[朝蔵 大空]
「よかった……あのっ、私達さ! 小学校振りだね!」
[刹那 五木]
「……え」
五木くんは、眉をひそめた。
[刹那 五木]
「中学振りだろ……?」
私の記憶が、否定された。
「バイバイメモリー」おわり……。