悲恋の大空   作:暴走機関車ここな丸

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第8話「かくしごと」前編

 ──大空の回想。

 

 

 

 

 

 ……現在から、およそ4年半前。

 

 

 まだ私達が、小学生だった頃のお話です。

 

 

 

[いじめっ子A]

 「泣け〜! 泣け〜!」

 

 

[朝蔵 大空(小学生)]

 「や、やめて……」

 

 

[いじめっ子B]

 「悔しかったら怒ってみろよー!」

 

 

 

 気の弱い私は、同級生にいじめられることが多くて、いつも一方的に泣かされていた。

 

 

 大きな声を出す男の子が、怖いって言う気持ちと、いじられて怒りたいって言う気持ちと、何も言い返せない自分が悔しくて、涙を流す。

 

 

 

[刹那 五木(小学生)]

 「あっー!! おい! やめろー!」

 

 

 

 私がいじめられてるところに、見掛けた五木くんが助けに来てくれた。

 

 

 五木くんの姿を見て私は、助かった、良かった……って言う気持ちなり、目から流れる涙は、安心から来る涙へと変わる。

 

 

 

[いじめっ子A]

 「うわっ! 来た来た!」

 

 

[いじめっ子B]

 「逃げろ〜!」

 

 

 

 男子達は、五木くんの声を聞いた途端に、逃げて行く。

 

 

 

[朝蔵 大空(小学生)]

 「あ、ありがとう……」

 

 

[刹那 五木(小学生)]

 「大丈夫?」

 

 

 

 五木くんが私を心配して、傍に居てくれる。

 

 

 

[朝蔵 大空(小学生)]

 「うんっ!」

 

 

 

 いつもありがとう。

 

 

 だけどある日……。

 

 

 

[朝蔵 大空(小学生)]

 「五木くん遊ぼー!」

 

 

[刹那 五木(小学生)]

 「もう遊ばない」

 

 

 

 そうやって私の遊びの誘いを、キッパリと断ってくる五木くん。

 

 

 私はそれを聞いて、ドキッと胸が鳴った。

 

 

 

[朝蔵 大空(小学生)]

 「えっ」

 

 

 

 この時から五木くんは、段々と私を避けるようになった。

 

 

 

[刹那 五木(小学生)]

 「" 女子 " と遊んで来いよ」

 

 

 

 以前と違って、私に冷たくなった彼。

 

 

 ……私は、寂しくて。

 

 

 

[朝蔵 大空(小学生)]

 「う、うん……」

 

 

 

 今は、五木くんと遊びたいのに……。

 

 

 

[刹那 五木(小学生)]

 「お前といると、おれまで揶揄(からか)われんだよ」

 

 

 

 登校中、休み時間、お昼休み、放課後……五木くんは、私を無視するようになった。

 

 

 それで、私は…………。

 

 

 

 

 

 ──大空の回想終了。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 

 

[刹那 五木]

 「中学振りだろ?」

 

 

 

 ……あ、あれ?

 

 

 私の記憶と、五木くんの情報が、一致しない。

 

 

 でも、だって、でも……。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「えっ? えっ、違うよ〜。 中学は、別だったでしょ?」

 

 

 

 五木くんと、中学校が同じだった記憶は、私には無い。

 

 

 だって、五木くんは小学校を卒業してすぐに、私の家から遠い所へと、引っ越して行ったのだから。

 

 

 だから、そんな訳は無いし。

 

 

 

[刹那 五木]

 「何……言ってんだよ」

 

 

[朝蔵 大空]

 「え、そう……でしょ?」

 

 

 

 私はしつこく、五木くんにもう一度確かめた。

 

 

 

[刹那 五木]

 「…………ああ。 そうだったな、ごめん。 おれ、忘れてたわ」

 

 

 

 その言葉を聞いた瞬間、私は安心した。

 

 

 よかった、私がおかしいのかと思った。

 

 

 私の覚えてることが、間違ってるなんて……無いよね?

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「もう! ふざけないでよー」

 

 

 

 私は五木くんに近付き、彼の右腕に触れる。

 

 

 ブランクは()れど、私と五木くんは生まれた時から幼馴染み、軽いボディタッチくらいなら、(なん)無くこなすことが出来る。

 

 

 昔から私達には、そう言う遠慮とか無かったし。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「わぁ! 五木くんの腕、凄いね! わー、ムキムキだぁ〜」

 

 

 

 何年か振りに、再会することが出来た五木くんの腕、服越しからでも分かるほど硬く、鍛えられていた。

 

 

 サッカー部って、こんなに筋肉付くんだ……。

 

 

 

[刹那 五木]

 「ちょ、ちょっと……?」

 

 

 

 私は両手で五木くんの腕に抱き着き、筋肉の感触を楽しむ。

 

 

 

[刹那 五木]

 「お前って奴は……」

 

 

 

 五木くん、引き気味で更に私に、何か言いたげな様子。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「くすぐったい?」

 

 

 

 私は揶揄うように笑って、聞いてやった。

 

 

 

[刹那 五木]

 「あのね。 おれらもう、高・校・生なの。 だからそう言う、スキンシップは……」

 

 

[朝蔵 大空]

 「えっ!? ごめんっ、嫌だった?」

 

 

 

 私はすぐに、五木くんの腕から手を離して、彼に謝る。

 

 

 前の私達なら……これぐらいのこと、当たり前のことだったはず、なんだけど。

 

 

 この空白の時間で五木くんに、私は嫌われちゃったのかな……?

 

 

 

[刹那 五木]

 「あーいやっ、嫌じゃないけど……さ」

 

 

[朝蔵 大空]

 「ごめんなさい……」

 

 

 

 私は、俯きながら謝る。

 

 

 

[刹那 五木]

 「……はぁ」

 

 

 

 あ、ため息吐かれた。

 

 

 やっぱり私、嫌われて……?

 

 

 そう、『悲しいなぁ』と思った時だった。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「えっ」

 

 

 

 急に私の頭に、何かが(かぶ)さって来たかと思ったら、次の瞬間に頭がほんのり、暖かくなった。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「五木……くん?」

 

 

 

 なんだと思って、五木くんの顔を見上げる。

 

 

 その時の五木くんの表情は、とても穏やかな顔で、しかも優しい目で私を見ててくれていた。

 

 

 

[刹那 五木]

 「そんなにションボリすんなよ、おれがいじめたみたいになんだろ?」

 

 

 

 そう言って私の頭を、優しく撫でてくれる五木くん、そして少しだけ乱れる私の前髪。

 

 

 昔より成長した、五木くんの大きくてゴツゴツの手、でも優しさはあの頃と、あまり変わらない。

 

 

 その手が、私のメンタルを回復してくれる。

 

 

 私は香る五木くんの匂いに、一気に懐かしい気持ちになった。

 

 

 

[刹那 五木]

 「だから泣くなよ、な?」

 

 

[朝蔵 大空]

 「なっ、別に泣きはしないけど……」

 

 

 

 私は五木くんに対して……ここぞ、っとばかりに強気な態度を、見せてみる。

 

 

 そうすると、五木くんはニヤニヤっと笑うのだ。

 

 

 

[刹那 五木]

 「いやいや! お前はそうやって、すーぐ強がるよな〜。 素直じゃないのは、可愛いくないぞー」

 

 

 

 可愛くないっ……!?

 

 

 心外(しんがい)なっ!!

 

 

 私は怒った。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「か、揶揄ってんでしょっ……!」

 

 

 

 私は、五木くんの言葉に少し、腹が立ったので声を荒らげる。

 

 

 それに全く動じてない五木くん。

 

 

 

[刹那 五木]

 「アハハっ!! お前が怒鳴ったって、なんも怖くないって! 小型犬(こがたけん)が吠えてる様にしか、見えないんだわ!」

 

 

 

 大袈裟なくらい派手に笑い、私を馬鹿にしてくる五木くん。

 

 

 わざとらしい笑い方……。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「小型犬って……私、人間なんですけど」

 

 

[刹那 五木]

 「あーごめん。 今のは、例え的なやつだから。 ごめんなー、お前にはちょっと難しかったかー!」

 

 

 

 え?

 

 

 思い出以上に、意地が悪いんですけどこの人、こんなんだっけ?

 

 

 五木くんって、こんな人だったけ??

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「う、うるさいわっ! それぐらい分かるよっ!」

 

 

[刹那 五木]

 「はははっ! ひ、久し振りにこんな笑ったわ〜」

 

 

[朝蔵 大空]

 「あー、そうですか……」

 

 

 

 この人の相手、するだけ無駄では?!

 

 

 

[刹那 五木]

 「あ、そうだ。 これおれの連絡先、追加しといてー。 じゃあおれ、部活あるから行くわー」

 

 

 

 と言って私の左手に、何かの紙切れを握らせる五木くん。

 

 

 ポケットから、すぐ取り出してたな……。

 

 

 きっと日頃から、ケータイの連絡先とか聞かれるんだろうなぁ……。

 

 

 リア充めっ!!

 

 

 

[刹那 五木]

 「じゃあなー」

 

 

 

 別れの言葉と共に、五木くんはグラウンドへと走って行く。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「う、うん」

 

 

 

 私は手に持っている、五木くんの連絡先が書かれたメモを見る。

 

 

 やっば……サッカー部、しかも五木くんキャプテンだったっけ?

 

 

 サッカー部のキャプテンの連絡先、手に入れちゃっても……い、良いんですか?

 

 

 まあ私も言うて、五木くんの幼馴染みだから、その辺の女子達より一線、超えてる訳だし、特別だと思うけどね。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「し、仕方無いわね〜。 い、一応追加しといてやるかぁー」

 

 

 

 と言って、『渋々追加しましたよ』みたいな感じで、私はケータイを操作した。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「最初は……『よろしく』で、いっか」

 

 

 

 

 

 ……ピッ。

 

 

 

 

 

 私は、一番初めのメールで五木くんに『よろしく』と送信して、ケータイを閉じる。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「さ、雨も()んだし」

 

 

 

 我が()に帰るとしましょう!

 

 

 ……。

 

 

 

[加藤 右宏]

 「たっダいまー!!」

 

 

 

 大空より先に、朝蔵()に帰って来ていたミギヒロ。

 

 

 

[加藤 右宏]

 「アレっ? 誰からも返事が帰ってこなイ……」

 

 

 

 ミギヒロが帰って来ても、『おかえり』と返す人は居ない。

 

 

 

[加藤 右宏]

 「誰もいないのカー? 大空〜?」

 

 

 

 大空を探して、大空の自室まで来るミギヒロ。

 

 

 

[加藤 右宏]

 「なんダぁ、オレ様ひとりかァ……」

 

 

 

 その時、ミギヒロがベッドの下に、何か落ちているのに気付く。

 

 

 ミギヒロは手を伸ばして、それを手に取る。

 

 

 

[加藤 右宏]

 「……」

 

 

 

 ミギヒロが掴んだのは、大空が隠し持っていたはずの、例の怪しい封筒。

 

 

 ミギヒロは、着けていたゴーグルを外して、封筒を見て固まる。

 

 

 ……。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「あれー? ねぇ、ここに置いてあった封筒、知らなーい?」

 

 

 

 私はお風呂から上がって、ミギヒロにあの時の封筒のことを、相談しようとしていた。

 

 

 枕の下に忍ばせておいた封筒が、どこを探しても無い。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「ねぇ、聞いてるー?」

 

 

 

 私は返事が無いミギヒロに、もう一度呼び掛ける。

 

 

 

[加藤 右宏]

 「んー……」

 

 

 

 ミギヒロは、面倒臭そうに返事をする。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「ちょっと! 封筒見てない?」

 

 

[加藤 右宏]

 「なんのー?」

 

 

 

 私が大きな声をあげると、やっと返事らしい反応が、ミギヒロから返ってきた。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「なんか、変な柄の封筒! 私の名前が書いてあるんだけど……カタカナで」

 

 

 

 私は封筒の大きさを手で表して、ミギヒロにジェスチャーする。

 

 

 

[加藤 右宏]

 「知らないヨー」

 

 

 

 ミギヒロは、こっちを向かない。

 

 

 少しくらい探すの、手伝ってよ。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「えー! もう、どこ行っちゃったんだろー」

 

 

 

 私はベッドの下を覗く、薄暗いベッドの下に微かに見えるのは、少しの(ほこり)だけ……あ!

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「あった! 失くしたドラマCD!」

 

 

 

 封筒は……。

 

 

 

[加藤 右宏]

 「……」

 

 

[朝蔵 大空]

 「無い……」

 

 

 

 封筒がマジで無い、私は焦り始める。

 

 

 

[加藤 右宏]

 「ママが捨てたんジゃないのカー?」

 

 

[朝蔵 大空]

 「えー。 お母さん、私の部屋勝手に入らないもーん」

 

 

 

 昔から部屋の掃除は、お母さんに任せないで自分でしてるし。

 

 

 

[加藤 右宏]

 「ジゃあ知らなーイ」

 

 

[朝蔵 大空]

 「まあ良いや。 ねぇあのさ、魔王試練とか、そのパートナーとか書いてあったの! ミギヒロ、何か知らないの?」

 

 

 

 私は、手紙に書いてあったことを思い出して、ミギヒロに再度聞いてみる。

 

 

 

[加藤 右宏]

 「何言ってるか分かんないゾー」

 

 

 

 ミギヒロは布団を深く被って、あっちを向いて寝てしまった様だった。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「ちょっとー、はぁ……」

 

 

 

 なので私も、一旦封筒の件は諦めることにした。

 

 

 見つかったドラマCD、聞きたいな……いやダメだ。

 

 

 ミギヒロが寝てるし夜も遅い、明日も学校があるし。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「おやすみ……」

 

 

 

 しばらくして、私は眠りについた。

 

 

 ……。

 

 

 

[加藤 右宏]

 「……よし、詠唱終わりっと」

 

 

 

 深夜に起きて、怪しい行動をしているミギヒロ。

 

 

 そしてその手には、大空が部屋(じゅう)探し回っても、見つけられなかった例の封筒。

 

 

 

[加藤 右宏]

 「バレないように、しないとナ」

 

 

 

 ミギヒロは、何も無いところから分厚い本を取り出し、封筒を本の間に挟んで仕舞った。

 

 

 

[加藤 右宏]

 「アッチになんか戻るもんカ……」

 

 

 

 

 

 つづく……。

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