──大空の回想。
……現在から、およそ4年半前。
まだ私達が、小学生だった頃のお話です。
[いじめっ子A]
「泣け〜! 泣け〜!」
[朝蔵 大空(小学生)]
「や、やめて……」
[いじめっ子B]
「悔しかったら怒ってみろよー!」
気の弱い私は、同級生にいじめられることが多くて、いつも一方的に泣かされていた。
大きな声を出す男の子が、怖いって言う気持ちと、いじられて怒りたいって言う気持ちと、何も言い返せない自分が悔しくて、涙を流す。
[刹那 五木(小学生)]
「あっー!! おい! やめろー!」
私がいじめられてるところに、見掛けた五木くんが助けに来てくれた。
五木くんの姿を見て私は、助かった、良かった……って言う気持ちなり、目から流れる涙は、安心から来る涙へと変わる。
[いじめっ子A]
「うわっ! 来た来た!」
[いじめっ子B]
「逃げろ〜!」
男子達は、五木くんの声を聞いた途端に、逃げて行く。
[朝蔵 大空(小学生)]
「あ、ありがとう……」
[刹那 五木(小学生)]
「大丈夫?」
五木くんが私を心配して、傍に居てくれる。
[朝蔵 大空(小学生)]
「うんっ!」
いつもありがとう。
だけどある日……。
[朝蔵 大空(小学生)]
「五木くん遊ぼー!」
[刹那 五木(小学生)]
「もう遊ばない」
そうやって私の遊びの誘いを、キッパリと断ってくる五木くん。
私はそれを聞いて、ドキッと胸が鳴った。
[朝蔵 大空(小学生)]
「えっ」
この時から五木くんは、段々と私を避けるようになった。
[刹那 五木(小学生)]
「" 女子 " と遊んで来いよ」
以前と違って、私に冷たくなった彼。
……私は、寂しくて。
[朝蔵 大空(小学生)]
「う、うん……」
今は、五木くんと遊びたいのに……。
[刹那 五木(小学生)]
「お前といると、おれまで
登校中、休み時間、お昼休み、放課後……五木くんは、私を無視するようになった。
それで、私は…………。
──大空の回想終了。
……。
[刹那 五木]
「中学振りだろ?」
……あ、あれ?
私の記憶と、五木くんの情報が、一致しない。
でも、だって、でも……。
[朝蔵 大空]
「えっ? えっ、違うよ〜。 中学は、別だったでしょ?」
五木くんと、中学校が同じだった記憶は、私には無い。
だって、五木くんは小学校を卒業してすぐに、私の家から遠い所へと、引っ越して行ったのだから。
だから、そんな訳は無いし。
[刹那 五木]
「何……言ってんだよ」
[朝蔵 大空]
「え、そう……でしょ?」
私はしつこく、五木くんにもう一度確かめた。
[刹那 五木]
「…………ああ。 そうだったな、ごめん。 おれ、忘れてたわ」
その言葉を聞いた瞬間、私は安心した。
よかった、私がおかしいのかと思った。
私の覚えてることが、間違ってるなんて……無いよね?
[朝蔵 大空]
「もう! ふざけないでよー」
私は五木くんに近付き、彼の右腕に触れる。
ブランクは
昔から私達には、そう言う遠慮とか無かったし。
[朝蔵 大空]
「わぁ! 五木くんの腕、凄いね! わー、ムキムキだぁ〜」
何年か振りに、再会することが出来た五木くんの腕、服越しからでも分かるほど硬く、鍛えられていた。
サッカー部って、こんなに筋肉付くんだ……。
[刹那 五木]
「ちょ、ちょっと……?」
私は両手で五木くんの腕に抱き着き、筋肉の感触を楽しむ。
[刹那 五木]
「お前って奴は……」
五木くん、引き気味で更に私に、何か言いたげな様子。
[朝蔵 大空]
「くすぐったい?」
私は揶揄うように笑って、聞いてやった。
[刹那 五木]
「あのね。 おれらもう、高・校・生なの。 だからそう言う、スキンシップは……」
[朝蔵 大空]
「えっ!? ごめんっ、嫌だった?」
私はすぐに、五木くんの腕から手を離して、彼に謝る。
前の私達なら……これぐらいのこと、当たり前のことだったはず、なんだけど。
この空白の時間で五木くんに、私は嫌われちゃったのかな……?
[刹那 五木]
「あーいやっ、嫌じゃないけど……さ」
[朝蔵 大空]
「ごめんなさい……」
私は、俯きながら謝る。
[刹那 五木]
「……はぁ」
あ、ため息吐かれた。
やっぱり私、嫌われて……?
そう、『悲しいなぁ』と思った時だった。
[朝蔵 大空]
「えっ」
急に私の頭に、何かが
[朝蔵 大空]
「五木……くん?」
なんだと思って、五木くんの顔を見上げる。
その時の五木くんの表情は、とても穏やかな顔で、しかも優しい目で私を見ててくれていた。
[刹那 五木]
「そんなにションボリすんなよ、おれがいじめたみたいになんだろ?」
そう言って私の頭を、優しく撫でてくれる五木くん、そして少しだけ乱れる私の前髪。
昔より成長した、五木くんの大きくてゴツゴツの手、でも優しさはあの頃と、あまり変わらない。
その手が、私のメンタルを回復してくれる。
私は香る五木くんの匂いに、一気に懐かしい気持ちになった。
[刹那 五木]
「だから泣くなよ、な?」
[朝蔵 大空]
「なっ、別に泣きはしないけど……」
私は五木くんに対して……ここぞ、っとばかりに強気な態度を、見せてみる。
そうすると、五木くんはニヤニヤっと笑うのだ。
[刹那 五木]
「いやいや! お前はそうやって、すーぐ強がるよな〜。 素直じゃないのは、可愛いくないぞー」
可愛くないっ……!?
私は怒った。
[朝蔵 大空]
「か、揶揄ってんでしょっ……!」
私は、五木くんの言葉に少し、腹が立ったので声を荒らげる。
それに全く動じてない五木くん。
[刹那 五木]
「アハハっ!! お前が怒鳴ったって、なんも怖くないって!
大袈裟なくらい派手に笑い、私を馬鹿にしてくる五木くん。
わざとらしい笑い方……。
[朝蔵 大空]
「小型犬って……私、人間なんですけど」
[刹那 五木]
「あーごめん。 今のは、例え的なやつだから。 ごめんなー、お前にはちょっと難しかったかー!」
え?
思い出以上に、意地が悪いんですけどこの人、こんなんだっけ?
五木くんって、こんな人だったけ??
[朝蔵 大空]
「う、うるさいわっ! それぐらい分かるよっ!」
[刹那 五木]
「はははっ! ひ、久し振りにこんな笑ったわ〜」
[朝蔵 大空]
「あー、そうですか……」
この人の相手、するだけ無駄では?!
[刹那 五木]
「あ、そうだ。 これおれの連絡先、追加しといてー。 じゃあおれ、部活あるから行くわー」
と言って私の左手に、何かの紙切れを握らせる五木くん。
ポケットから、すぐ取り出してたな……。
きっと日頃から、ケータイの連絡先とか聞かれるんだろうなぁ……。
リア充めっ!!
[刹那 五木]
「じゃあなー」
別れの言葉と共に、五木くんはグラウンドへと走って行く。
[朝蔵 大空]
「う、うん」
私は手に持っている、五木くんの連絡先が書かれたメモを見る。
やっば……サッカー部、しかも五木くんキャプテンだったっけ?
サッカー部のキャプテンの連絡先、手に入れちゃっても……い、良いんですか?
まあ私も言うて、五木くんの幼馴染みだから、その辺の女子達より一線、超えてる訳だし、特別だと思うけどね。
[朝蔵 大空]
「し、仕方無いわね〜。 い、一応追加しといてやるかぁー」
と言って、『渋々追加しましたよ』みたいな感じで、私はケータイを操作した。
[朝蔵 大空]
「最初は……『よろしく』で、いっか」
……ピッ。
私は、一番初めのメールで五木くんに『よろしく』と送信して、ケータイを閉じる。
[朝蔵 大空]
「さ、雨も
我が
……。
[加藤 右宏]
「たっダいまー!!」
大空より先に、朝蔵
[加藤 右宏]
「アレっ? 誰からも返事が帰ってこなイ……」
ミギヒロが帰って来ても、『おかえり』と返す人は居ない。
[加藤 右宏]
「誰もいないのカー? 大空〜?」
大空を探して、大空の自室まで来るミギヒロ。
[加藤 右宏]
「なんダぁ、オレ様ひとりかァ……」
その時、ミギヒロがベッドの下に、何か落ちているのに気付く。
ミギヒロは手を伸ばして、それを手に取る。
[加藤 右宏]
「……」
ミギヒロが掴んだのは、大空が隠し持っていたはずの、例の怪しい封筒。
ミギヒロは、着けていたゴーグルを外して、封筒を見て固まる。
……。
[朝蔵 大空]
「あれー? ねぇ、ここに置いてあった封筒、知らなーい?」
私はお風呂から上がって、ミギヒロにあの時の封筒のことを、相談しようとしていた。
枕の下に忍ばせておいた封筒が、どこを探しても無い。
[朝蔵 大空]
「ねぇ、聞いてるー?」
私は返事が無いミギヒロに、もう一度呼び掛ける。
[加藤 右宏]
「んー……」
ミギヒロは、面倒臭そうに返事をする。
[朝蔵 大空]
「ちょっと! 封筒見てない?」
[加藤 右宏]
「なんのー?」
私が大きな声をあげると、やっと返事らしい反応が、ミギヒロから返ってきた。
[朝蔵 大空]
「なんか、変な柄の封筒! 私の名前が書いてあるんだけど……カタカナで」
私は封筒の大きさを手で表して、ミギヒロにジェスチャーする。
[加藤 右宏]
「知らないヨー」
ミギヒロは、こっちを向かない。
少しくらい探すの、手伝ってよ。
[朝蔵 大空]
「えー! もう、どこ行っちゃったんだろー」
私はベッドの下を覗く、薄暗いベッドの下に微かに見えるのは、少しの
[朝蔵 大空]
「あった! 失くしたドラマCD!」
封筒は……。
[加藤 右宏]
「……」
[朝蔵 大空]
「無い……」
封筒がマジで無い、私は焦り始める。
[加藤 右宏]
「ママが捨てたんジゃないのカー?」
[朝蔵 大空]
「えー。 お母さん、私の部屋勝手に入らないもーん」
昔から部屋の掃除は、お母さんに任せないで自分でしてるし。
[加藤 右宏]
「ジゃあ知らなーイ」
[朝蔵 大空]
「まあ良いや。 ねぇあのさ、魔王試練とか、そのパートナーとか書いてあったの! ミギヒロ、何か知らないの?」
私は、手紙に書いてあったことを思い出して、ミギヒロに再度聞いてみる。
[加藤 右宏]
「何言ってるか分かんないゾー」
ミギヒロは布団を深く被って、あっちを向いて寝てしまった様だった。
[朝蔵 大空]
「ちょっとー、はぁ……」
なので私も、一旦封筒の件は諦めることにした。
見つかったドラマCD、聞きたいな……いやダメだ。
ミギヒロが寝てるし夜も遅い、明日も学校があるし。
[朝蔵 大空]
「おやすみ……」
しばらくして、私は眠りについた。
……。
[加藤 右宏]
「……よし、詠唱終わりっと」
深夜に起きて、怪しい行動をしているミギヒロ。
そしてその手には、大空が部屋
[加藤 右宏]
「バレないように、しないとナ」
ミギヒロは、何も無いところから分厚い本を取り出し、封筒を本の間に挟んで仕舞った。
[加藤 右宏]
「アッチになんか戻るもんカ……」
つづく……。