──そして翌朝。
朝の、ホームルームの時間にて。
静まる教室からスタート。
[二階堂先生]
「よし、今から席替えするぞ」
うおぉーーーーーー!!!!!
キメ顔をした二階堂先生の、突然の席替え宣言に、クラスの人間がドッと湧いた。
楽しそうにワクワクと、嬉しそうにしてる人と……。
仲良い人と、離れるかもしれないことに残念がる人が、半々……。
[永瀬 里沙]
「じゃあね〜」
笑って手を振りながら、私にそう告げる里沙ちゃん。
嬉しそうに見える。
[朝蔵 大空]
「酷いよっ!」
もちろん里沙ちゃんの、そう言うノリだって言うのは、長い付き合いだから分かってるけど。
ちょっと傷付くなぁ〜。
[二階堂先生]
「俺の席替えはくじ引きだから〜、文句言うなよー」
二階堂先生が、自分の
[二階堂先生]
「それじゃあ、出席番号順に来い」
教室の全員が、出席番号1番の子が出てくるのを、待っている。
[朝蔵 大空]
「……」
だけど、誰も出て来る気配が無い。
[二階堂先生]
「どうした1番」
二階堂先生が、私のことを見てる。
──『朝蔵』の " あ "。
あっ。
[朝蔵 大空]
「私じゃん」
察した私は、すぐに席から立ち上がって、二階堂先生が持っている箱の前まで、歩いて出て行く。
それから続けて出て来た、2番と3番が私の後ろに着いた。
[二階堂先生]
「はい、どうぞ」
私は目の前の、箱の穴に上から手を突っ込んで、ゴソゴソと中の様子を
箱の中でたくさん、紙の様な感触がする。
どーれにしよーぉかなっ?
[朝蔵 大空]
「これで……」
私はその中の、ひとつの紙切れを掴み取って、引き上げる。
するとオーソドックスな、二つ折りにされた小さな紙が出てきた。
[朝蔵 大空]
「えーっと……」
私は、ふんわり折ってあった紙を、開いてみる。
するとそこには、『窓側の1番後ろの席』と書いてあった。
[朝蔵 大空]
「おぉ……」
これは、主人公が座る席!!
私の胸が高鳴る。
[永瀬 里沙]
「やっほー、どこだった?」
里沙ちゃんも、紙を取って来たようだ。
あーん、でも里沙ちゃんと席が遠かったらやだなぁ……。
友達と、
[朝蔵 大空]
「ここー!」
私は里沙ちゃんに、自分が持っている紙を開いて見せる。
里沙ちゃんはそれを、覗き込んで注視した。
[永瀬 里沙]
「おっ、じゃああんたの右斜め前が、私の席ってことになるわねー」
[朝蔵 大空]
「やったー、よかったぁ」
やった!
また里沙ちゃんと、席が近くなった!!
これはもう、私と里沙ちゃんは運命の赤い糸で、繋がってるに違いないよね?
[永瀬 里沙]
「ほれ、『負けヒロインの席』って書いてあったし」
[朝蔵 大空]
「それ……ほんとに、席合ってるの?」
[卯月 神]
「……」
私はふと、右横に意識が行く。
卯月くんとは結局、あんまり喋らなかったけど、最後の挨拶ぐらいはしとこうかな?
うーん……。
やめとこっ!
[二階堂先生]
「よし、これで全部だな」
先生の言葉に、ワラワラと机を動かしだす者共。
私は、左斜め後ろに動かすだけだから、移動が楽だ。
席替えの苦手なところは、今より遠い所に移動する時に、別の誰かに道を塞がれやすいこと、それもお互い様だけど。
[文島 秋]
「またよろしくな」
[木之本 夏樹]
「おう」
文島くんは、廊下側の1番前の席。
きっと、『学級委員の席』だ!!
んで、木之本くんはその後ろ。
[巣桜 司]
「こ、こんにちは……」
[朝蔵 大空]
「おー、司くん。 今度は逆に、司くんが私の前になるんだね」
[巣桜 司]
「あははっ、そうですね!」
司くん、にっこにこ!
[朝蔵 大空]
「あっ」
そう言えば、私の隣は……。
[狂沢 蛯斗]
「よいしょっと……」
ゲッ……狂沢くん。
[卯月 神]
「……チッ」
申し訳無いけど、ちょっとやだなぁ。
司くんは嬉しそうだから、こう思うのは悪いけど……。
[狂沢 蛯斗]
「すみません!」
皆が移動し終わったタイミングで、手を挙げる狂沢くん。
[二階堂 先生]
「ん、狂沢か? どうした?」
それに先生が気付いて、応える。
[狂沢 蛯斗]
「ボクは背が低いので、背の高い永瀬さんの後ろでは、黒板がよく見えません!」
[永瀬 里沙]
「わ、悪かったわね……」
確かに里沙ちゃんは、女の子の平均身長より、だいぶ高いよね。
ん?
狂沢くん……なんでそう言うこと、移動する前に言わないの?
[二階堂 大空]
「そうか……じゃあ卯月、替わってやれないか?」
[卯月 神]
「はい」
[二階堂先生]
「悪いな」
2列目の、1番前に座っていた卯月くん。
[朝蔵 大空]
「えっ」
狂沢くんと卯月くんの位置が、逆になるってことは、また私の隣が卯月くん?
[狂沢 蛯斗]
「助かりました」
[卯月 神]
「いえ」
なんだか、2年生最初の席替えの結果は、代わり映えの無い景色になってしまった。
これは、偶然なんだよね?
……。
[卯月 神]
「朝蔵さん」
今は午前の、国語の授業の時間だ。
[朝蔵 大空]
「ん? 何? えっ……」
卯月くんは何も言わずに、自分の机を私の机にくっ付けてくる。
[朝蔵 大空]
「な、何?」
私は、突然の卯月くんの行動に動揺する。
[卯月 神]
「教科書忘れたので、一緒に見ても良いですか?」
そう言う卯月くんの机には、確かに国語の教科書が見当たらない。
卯月くんが何か物を忘れる、なんて珍しいな。
[朝蔵 大空]
「あ、なんだそんなことか。 いいよ」
と言って、私と卯月くんは同じひとつの、教科書を共有する。
ん?
なんかこの感じ……覚えがある。
──『一緒に読もっ!』。
何……この記憶。
私が絵本を持ってて……誰かがいて……。
これ、誰なの……?
[朝蔵 大空]
「あっ、鳥」
窓の外を見たら、鳥の大群が遠くに飛んで行くのが見えた。
凄い数だなぁ……。
良いなぁ、私も人生に1度は空を、飛んでみたいな。
私にも、翼があればな……。
キーン♪ コーン♪
カーン♪ コーン♪
[二階堂先生]
「今日はここまで、腹減ったー……」
と言って、教室から出ていく二階堂先生。
席を離れて、個人行動をし始める生徒達。
お昼休みの時間だ。
[朝蔵 大空]
「ん? 何これ」
国語の授業で使った、ノート閉じようとすると、隅に書いた覚えの無い文字が見えた。
そこには、『早く思』と小さく書かれていた。
" 早く思 " って何?
しかも、私の字じゃないし。
[朝蔵 大空]
「消しちゃお」
私は消しゴムを動かし、その字を消そうとする。
[朝蔵 大空]
「あれ?」
と思ったが、字はなかなか消えない。
多少薄くなったが、消えはしなかった。
どんだけゴシゴシしても、文字は完全には消えてはくれない。
[朝蔵 大空]
「もー、いいや」
頑張ってもダメだったので、私はその字を消すのを諦めた。
そう言えば、さっきの授業……。
[朝蔵 大空]
「ねぇ? これ書いたの、卯月くん?」
まさか、と思って問い掛けようとして横を見ても、卯月くんは居なかった。
早く思って何?
卯月くんが書いたの?
[狂沢 蛯斗]
「食べません」
ん?
[巣桜 司]
「えっ……でも」
[狂沢 蛯斗]
「食べたくありません」
狂沢くんと、司くん?
……何をモメているんだろ?
[巣桜 司]
「でも、ちゃんとお肉も食べたほうがいいよ…?」
お肉??
あれ?
でも狂沢くん、前に唐揚げ食べてたよね?
私があげたやつ。
[狂沢 蛯斗]
「いや大丈夫です」
[巣桜 司]
「そんなっ……豚さん残されて悲しい、って言ってますよ?」
[狂沢 蛯斗]
「
死肉って……なんか表現グロいなぁ。
さすが狂沢くん。
[狂沢 蛯斗]
「巣桜くん、食べていいですよ」
そう言って豚肉を、司くんのほうに押し付ける狂沢くん。
[巣桜 司]
「わ、分かりました……」
狂沢くん、豚肉嫌いなのか。
[永瀬 里沙]
「大空〜、ご飯行こー」
[朝蔵 大空]
「あ、うん」
[巣桜 司?]
「…………おい」
私が席を去ろうとした、その時だった。
[巣桜 司?]
「ツカサが、せっかく作ってやったって言うのに、食わねぇのかよ」
へ?
今の、司くん?
なんかいつもと、口調違くない?
[狂沢 蛯斗]
「なんですか?」
[巣桜 司]
「あっ! いや、なんでもありません!」
[狂沢 蛯斗]
「なんです? 文句あるなら言って下さい」
焦って何かを誤魔化そうとしている司くん、それにイライラしている狂沢くん。
[巣桜 司]
「ご、ごめんなさいぼく……御手洗に行って来ますー!」
司くんは走ってどこかへ行ってしまった。
[狂沢 蛯斗]
「全く。 言いたいことあるんなら、言えば良いのに……」
今の……本当に司くんだったのかな、なんだか人が違った気さえする。
まるで、司くんとは別の意思があるみたいな、そんな感じだった。
……。
[巣桜 司]
「はぁはぁ……」
息切れしながら、トイレの鏡と向き合う巣桜。
[巣桜 司]
「誰も居ないよね……?」
誰も居ない男子トイレに、巣桜ひとり。
[巣桜 司]
「もう……困るよ。
鏡に映る自分を見て、誰かの名前を呼び掛ける巣桜。
[巣桜 司]
「ぼくは巣桜司、ぼくは司なんだ!」
巣桜は、鏡に向かってそう叫んだ。
……。
[加藤 右宏]
「ドいつも、こいつモ……」
[卯月 神]
「狙い通り、訳有りな方が多いようだ」
反対側の別校舎で、景色を眺める卯月とミギヒロ。
[加藤 右宏]
「マあ! オレ様にかかれバ、こんなもんダ!」
ミギヒロは、誇らしげに胸を張る。
[卯月 神]
「調子に乗らないで下さい。 彼女、目的を忘れています。 あまり……恋愛に積極的ではないようですし、先が思いやられます」
[加藤 右宏]
「ウほぉーん……副作用がドうも、邪魔するもんダなぁ」
[卯月 神]
「彼はどうですか?」
卯月の視線の先に、【嫉束 界魔】。
[加藤 右宏]
「嫉束か……アイツはとにかく、あの熱狂的なファンが邪魔ダな。 アイツを苦しめる元凶ダし、
[卯月 神]
「あの一匹狼の彼は?」
卯月の視線の先に【笹妬 吉鬼】。
[加藤 右宏]
「笹妬か、アイツは……オレ様でもよく分からないゾ。 分かるのは、レアキャラってことだけデ……」
[卯月 神]
「それ、なんの情報にもなってないですよ」
[加藤 右宏]
「トにかく地味〜……な、学校生活をしているようダな。 誰ともつるまズ、誰にも頼らなイ。 遅くに登校し、時間になったらすぐ帰ル。 色々謎だ、アっ! 周囲の人間に恐れられてルって言うのも、ポイントだな!」
[卯月 神]
「ふーん……では、あの人達は?」
卯月の視線の先に、【狂沢 蛯斗】と【巣桜 司】。、
[加藤 右宏]
「狂沢の奴は、エキセントリックで強引。 カメラが好きなようダな! あと大空は、アイツに苦手意識を持っているナ」
[卯月 神]
「それだけですか?」
[加藤 右宏]
「は、はイ……アっ、そう言えば。さっき巣桜の野郎が、変なモーションをしてたな」
[卯月 神]
「彼も何か抱えているようですね」
[加藤 右宏]
「アあ。 奴の中には、別の性格のようなものガあるみたいダ。 転校してきた理由も怪しいシ。 大人しそうに見えテ、実は凶暴なのかもしれん」
[卯月 神]
「さすがの僕らも、精神的な中身については、読み取ることが出来ません」
[加藤 右宏]
「……マあ、また出て来てくれるのヲ、待つしかないナ」
[卯月 神]
「そうですね。 僕は、あの彼が1番気になります」
卯月の視線の先に【刹那 五木】。
[加藤 右宏]
「刹那か、アイツはひと言で言うと、思春期野郎ダな」
[卯月 神]
「朝蔵さんが、過去のことを忘れているのを良いことに、嘘をついていました」
[加藤 右宏]
「嘘つきは泥棒の始まりだゾ〜」
[卯月 神]
「それは知りませんが。 あの人、過去にとんでもないことを、起こしたみたいですね……」
[加藤 右宏]
「ソのことなら、アノ女が詳しいんじゃねーのカ?」
ふたりは、【永瀬 里沙】に視線を向ける。
「かくしごと」おわり……。