悲恋の大空   作:暴走機関車ここな丸

16 / 47
第8話「かくしごと」後編

 ──そして翌朝。

 

 

 朝の、ホームルームの時間にて。

 

 

 静まる教室からスタート。

 

 

 

[二階堂先生]

 「よし、今から席替えするぞ」

 

 

 

 

 

 うおぉーーーーーー!!!!!

 

 

 

 

 

 キメ顔をした二階堂先生の、突然の席替え宣言に、クラスの人間がドッと湧いた。

 

 

 楽しそうにワクワクと、嬉しそうにしてる人と……。

 

 

 仲良い人と、離れるかもしれないことに残念がる人が、半々……。

 

 

 

[永瀬 里沙]

 「じゃあね〜」

 

 

 

 笑って手を振りながら、私にそう告げる里沙ちゃん。

 

 

 嬉しそうに見える。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「酷いよっ!」

 

 

 

 もちろん里沙ちゃんの、そう言うノリだって言うのは、長い付き合いだから分かってるけど。

 

 

 ちょっと傷付くなぁ〜。

 

 

 

[二階堂先生]

 「俺の席替えはくじ引きだから〜、文句言うなよー」

 

 

 

 二階堂先生が、自分の足下(あしもと)から、大きめの箱を持ち上げて、教卓の上に置いた。

 

 

 

[二階堂先生]

 「それじゃあ、出席番号順に来い」

 

 

 

 教室の全員が、出席番号1番の子が出てくるのを、待っている。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「……」

 

 

 

 だけど、誰も出て来る気配が無い。

 

 

 

[二階堂先生]

 「どうした1番」

 

 

 

 二階堂先生が、私のことを見てる。

 

 

 ──『朝蔵』の " あ "。

 

 

 あっ。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「私じゃん」

 

 

 

 察した私は、すぐに席から立ち上がって、二階堂先生が持っている箱の前まで、歩いて出て行く。

 

 

 それから続けて出て来た、2番と3番が私の後ろに着いた。

 

 

 

[二階堂先生]

 「はい、どうぞ」

 

 

 

 私は目の前の、箱の穴に上から手を突っ込んで、ゴソゴソと中の様子を(うかが)うように、掻き回す。

 

 

 箱の中でたくさん、紙の様な感触がする。

 

 

 どーれにしよーぉかなっ?

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「これで……」

 

 

 

 私はその中の、ひとつの紙切れを掴み取って、引き上げる。

 

 

 するとオーソドックスな、二つ折りにされた小さな紙が出てきた。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「えーっと……」

 

 

 

 私は、ふんわり折ってあった紙を、開いてみる。

 

 

 するとそこには、『窓側の1番後ろの席』と書いてあった。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「おぉ……」

 

 

 

 これは、主人公が座る席!!

 

 

 私の胸が高鳴る。

 

 

 

[永瀬 里沙]

 「やっほー、どこだった?」

 

 

 

 里沙ちゃんも、紙を取って来たようだ。

 

 

 あーん、でも里沙ちゃんと席が遠かったらやだなぁ……。

 

 

 友達と、(はな)(ばな)れになるのは、寂しいし。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「ここー!」

 

 

 

 私は里沙ちゃんに、自分が持っている紙を開いて見せる。

 

 

 里沙ちゃんはそれを、覗き込んで注視した。

 

 

 

[永瀬 里沙]

 「おっ、じゃああんたの右斜め前が、私の席ってことになるわねー」

 

 

[朝蔵 大空]

 「やったー、よかったぁ」

 

 

 

 やった!

 

 

 また里沙ちゃんと、席が近くなった!!

 

 

 これはもう、私と里沙ちゃんは運命の赤い糸で、繋がってるに違いないよね?

 

 

 

[永瀬 里沙]

 「ほれ、『負けヒロインの席』って書いてあったし」

 

 

[朝蔵 大空]

 「それ……ほんとに、席合ってるの?」

 

 

[卯月 神]

 「……」

 

 

 

 私はふと、右横に意識が行く。

 

 

 卯月くんとは結局、あんまり喋らなかったけど、最後の挨拶ぐらいはしとこうかな?

 

 

 うーん……。

 

 

 やめとこっ!

 

 

 小心者(しょうしんもの)の私は、卯月くんに声を掛けることを、辞めといた。

 

 

 

[二階堂先生]

 「よし、これで全部だな」

 

 

 

 先生の言葉に、ワラワラと机を動かしだす者共。

 

 

 私は、左斜め後ろに動かすだけだから、移動が楽だ。

 

 

 席替えの苦手なところは、今より遠い所に移動する時に、別の誰かに道を塞がれやすいこと、それもお互い様だけど。

 

 

 

[文島 秋]

 「またよろしくな」

 

 

[木之本 夏樹]

 「おう」

 

 

 

 文島くんは、廊下側の1番前の席。

 

 

 きっと、『学級委員の席』だ!!

 

 

 んで、木之本くんはその後ろ。

 

 

 

[巣桜 司]

 「こ、こんにちは……」

 

 

[朝蔵 大空]

 「おー、司くん。 今度は逆に、司くんが私の前になるんだね」

 

 

[巣桜 司]

 「あははっ、そうですね!」

 

 

 

 司くん、にっこにこ!

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「あっ」

 

 

 

 そう言えば、私の隣は……。

 

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「よいしょっと……」

 

 

 

 ゲッ……狂沢くん。

 

 

 

[卯月 神]

 「……チッ」

 

 

 

 申し訳無いけど、ちょっとやだなぁ。

 

 

 司くんは嬉しそうだから、こう思うのは悪いけど……。

 

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「すみません!」

 

 

 

 皆が移動し終わったタイミングで、手を挙げる狂沢くん。

 

 

 

[二階堂 先生]

 「ん、狂沢か? どうした?」

 

 

 

 それに先生が気付いて、応える。

 

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「ボクは背が低いので、背の高い永瀬さんの後ろでは、黒板がよく見えません!」

 

 

[永瀬 里沙]

 「わ、悪かったわね……」

 

 

 

 確かに里沙ちゃんは、女の子の平均身長より、だいぶ高いよね。

 

 

 ん?

 

 

 狂沢くん……なんでそう言うこと、移動する前に言わないの?

 

 

 

[二階堂 大空]

 「そうか……じゃあ卯月、替わってやれないか?」

 

 

[卯月 神]

 「はい」

 

 

[二階堂先生]

 「悪いな」

 

 

 

 2列目の、1番前に座っていた卯月くん。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「えっ」

 

 

 

 狂沢くんと卯月くんの位置が、逆になるってことは、また私の隣が卯月くん?

 

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「助かりました」

 

 

[卯月 神]

 「いえ」

 

 

 

 なんだか、2年生最初の席替えの結果は、代わり映えの無い景色になってしまった。

 

 

 これは、偶然なんだよね?

 

 

 ……。

 

 

 

[卯月 神]

 「朝蔵さん」

 

 

 

 今は午前の、国語の授業の時間だ。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「ん? 何? えっ……」

 

 

 

 卯月くんは何も言わずに、自分の机を私の机にくっ付けてくる。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「な、何?」

 

 

 

 私は、突然の卯月くんの行動に動揺する。

 

 

 

[卯月 神]

 「教科書忘れたので、一緒に見ても良いですか?」

 

 

 

 そう言う卯月くんの机には、確かに国語の教科書が見当たらない。

 

 

 卯月くんが何か物を忘れる、なんて珍しいな。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「あ、なんだそんなことか。 いいよ」

 

 

 

 と言って、私と卯月くんは同じひとつの、教科書を共有する。

 

 

 ん?

 

 

 なんかこの感じ……覚えがある。

 

 

 

 

 

 ──『一緒に読もっ!』。

 

 

 

 

 

 何……この記憶。

 

 

 私が絵本を持ってて……誰かがいて……。

 

 

 これ、誰なの……?

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「あっ、鳥」

 

 

 

 窓の外を見たら、鳥の大群が遠くに飛んで行くのが見えた。

 

 

 凄い数だなぁ……。

 

 

 良いなぁ、私も人生に1度は空を、飛んでみたいな。

 

 

 私にも、翼があればな……。

 

 

 

 

 

 キーン♪ コーン♪

 

 

 カーン♪ コーン♪

 

 

 

 

 

[二階堂先生]

 「今日はここまで、腹減ったー……」

 

 

 

 と言って、教室から出ていく二階堂先生。

 

 

 席を離れて、個人行動をし始める生徒達。

 

 

 お昼休みの時間だ。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「ん? 何これ」

 

 

 

 国語の授業で使った、ノート閉じようとすると、隅に書いた覚えの無い文字が見えた。

 

 

 そこには、『早く思』と小さく書かれていた。

 

 

 " 早く思 " って何?

 

 

 しかも、私の字じゃないし。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「消しちゃお」

 

 

 

 私は消しゴムを動かし、その字を消そうとする。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「あれ?」

 

 

 

 と思ったが、字はなかなか消えない。

 

 

 多少薄くなったが、消えはしなかった。

 

 

 どんだけゴシゴシしても、文字は完全には消えてはくれない。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「もー、いいや」

 

 

 

 頑張ってもダメだったので、私はその字を消すのを諦めた。

 

 

 そう言えば、さっきの授業……。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「ねぇ? これ書いたの、卯月くん?」

 

 

 

 まさか、と思って問い掛けようとして横を見ても、卯月くんは居なかった。

 

 

 早く思って何?

 

 

 卯月くんが書いたの?

 

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「食べません」

 

 

 

 ん?

 

 

 

[巣桜 司]

 「えっ……でも」

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「食べたくありません」

 

 

 

 狂沢くんと、司くん?

 

 

 ……何をモメているんだろ?

 

 

 

[巣桜 司]

 「でも、ちゃんとお肉も食べたほうがいいよ…?」

 

 

 

 お肉??

 

 

 あれ?

 

 

 でも狂沢くん、前に唐揚げ食べてたよね?

 

 

 私があげたやつ。

 

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「いや大丈夫です」

 

 

[巣桜 司]

 「そんなっ……豚さん残されて悲しい、って言ってますよ?」

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「死肉(しにく)は言葉を発しません」

 

 

 

 死肉って……なんか表現グロいなぁ。

 

 

 さすが狂沢くん。

 

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「巣桜くん、食べていいですよ」

 

 

 

 そう言って豚肉を、司くんのほうに押し付ける狂沢くん。

 

 

 

[巣桜 司]

 「わ、分かりました……」

 

 

 

 狂沢くん、豚肉嫌いなのか。

 

 

 

[永瀬 里沙]

 「大空〜、ご飯行こー」

 

 

[朝蔵 大空]

 「あ、うん」

 

 

[巣桜 司?]

 「…………おい」

 

 

 

 私が席を去ろうとした、その時だった。

 

 

 

[巣桜 司?]

 「ツカサが、せっかく作ってやったって言うのに、食わねぇのかよ」

 

 

 

 へ?

 

 

 今の、司くん?

 

 

 なんかいつもと、口調違くない?

 

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「なんですか?」

 

 

[巣桜 司]

 「あっ! いや、なんでもありません!」

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「なんです? 文句あるなら言って下さい」

 

 

 

 焦って何かを誤魔化そうとしている司くん、それにイライラしている狂沢くん。

 

 

 

[巣桜 司]

 「ご、ごめんなさいぼく……御手洗に行って来ますー!」

 

 

 

 司くんは走ってどこかへ行ってしまった。

 

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「全く。 言いたいことあるんなら、言えば良いのに……」

 

 

 

 今の……本当に司くんだったのかな、なんだか人が違った気さえする。

 

 

 まるで、司くんとは別の意思があるみたいな、そんな感じだった。

 

 

 ……。

 

 

 

[巣桜 司]

 「はぁはぁ……」

 

 

 

 息切れしながら、トイレの鏡と向き合う巣桜。

 

 

 

[巣桜 司]

 「誰も居ないよね……?」

 

 

 

 誰も居ない男子トイレに、巣桜ひとり。

 

 

 

[巣桜 司]

 「もう……困るよ。 ()()() くん」

 

 

 

 鏡に映る自分を見て、誰かの名前を呼び掛ける巣桜。

 

 

 

[巣桜 司]

 「ぼくは巣桜司、ぼくは司なんだ!」

 

 

 

 巣桜は、鏡に向かってそう叫んだ。

 

 

 ……。

 

 

 

[加藤 右宏]

 「ドいつも、こいつモ……」

 

 

[卯月 神]

 「狙い通り、訳有りな方が多いようだ」

 

 

 

 反対側の別校舎で、景色を眺める卯月とミギヒロ。

 

 

 

[加藤 右宏]

 「マあ! オレ様にかかれバ、こんなもんダ!」

 

 

 

 ミギヒロは、誇らしげに胸を張る。

 

 

 

[卯月 神]

 「調子に乗らないで下さい。 彼女、目的を忘れています。 あまり……恋愛に積極的ではないようですし、先が思いやられます」

 

 

[加藤 右宏]

 「ウほぉーん……副作用がドうも、邪魔するもんダなぁ」

 

 

[卯月 神]

 「彼はどうですか?」

 

 

 

 卯月の視線の先に、【嫉束 界魔】。

 

 

 

[加藤 右宏]

 「嫉束か……アイツはとにかく、あの熱狂的なファンが邪魔ダな。 アイツを苦しめる元凶ダし、(おもて)でアクションを起こすのは危険ダ。 コイツの攻略では、かなりの慎重さと、ここゾって時の大胆さが、同時に試されるナ」

 

 

[卯月 神]

 「あの一匹狼の彼は?」

 

 

 

 卯月の視線の先に【笹妬 吉鬼】。

 

 

 

[加藤 右宏]

 「笹妬か、アイツは……オレ様でもよく分からないゾ。  分かるのは、レアキャラってことだけデ……」

 

 

[卯月 神]

 「それ、なんの情報にもなってないですよ」

 

 

[加藤 右宏]

 「トにかく地味〜……な、学校生活をしているようダな。 誰ともつるまズ、誰にも頼らなイ。 遅くに登校し、時間になったらすぐ帰ル。 色々謎だ、アっ! 周囲の人間に恐れられてルって言うのも、ポイントだな!」

 

 

[卯月 神]

 「ふーん……では、あの人達は?」

 

 

 

 卯月の視線の先に、【狂沢 蛯斗】と【巣桜 司】。、

 

 

 

[加藤 右宏]

 「狂沢の奴は、エキセントリックで強引。 カメラが好きなようダな! あと大空は、アイツに苦手意識を持っているナ」

 

 

[卯月 神]

 「それだけですか?」

 

 

[加藤 右宏]

 「は、はイ……アっ、そう言えば。さっき巣桜の野郎が、変なモーションをしてたな」

 

 

[卯月 神]

 「彼も何か抱えているようですね」

 

 

[加藤 右宏]

 「アあ。 奴の中には、別の性格のようなものガあるみたいダ。 転校してきた理由も怪しいシ。 大人しそうに見えテ、実は凶暴なのかもしれん」

 

 

[卯月 神]

 「さすがの僕らも、精神的な中身については、読み取ることが出来ません」

 

 

[加藤 右宏]

 「……マあ、また出て来てくれるのヲ、待つしかないナ」

 

 

[卯月 神]

 「そうですね。 僕は、あの彼が1番気になります」

 

 

 

 卯月の視線の先に【刹那 五木】。

 

 

 

[加藤 右宏]

 「刹那か、アイツはひと言で言うと、思春期野郎ダな」

 

 

[卯月 神]

 「朝蔵さんが、過去のことを忘れているのを良いことに、嘘をついていました」

 

 

[加藤 右宏]

 「嘘つきは泥棒の始まりだゾ〜」

 

 

[卯月 神]

 「それは知りませんが。 あの人、過去にとんでもないことを、起こしたみたいですね……」

 

 

[加藤 右宏]

 「ソのことなら、アノ女が詳しいんじゃねーのカ?」

 

 

 

 ふたりは、【永瀬 里沙】に視線を向ける。

 

 

 

 

 

 「かくしごと」おわり……。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。