[卯月 神]
「なるほど、永瀬さんですか……確かに、彼女は朝蔵さんと仲が良い、仲が良すぎます」
拗ねた様に里沙を見て、睨んでしまう卯月。
[加藤 右宏]
「アイツ、何か知ってル感じだったゾ〜。 聞いてみたラ、良い情報が得られルんじゃないのカー?」
と言って、卯月の顔を見るミギヒロ。
[卯月 神]
「……僕は嫌ですよ。 下手なことして永瀬さんに怪しまれたら、大空さんの傍にも居られなくなるじゃないですか」
昔のことを、急に無関係な人が聞き出そうとすれば、普通の人間なら怪しんで警戒するだろう。
しかも、それは親友の
[加藤 右宏]
「お、オう……」
[加藤 右宏]
(コイツ、本当に大空のこと大事なんダなー……)
卯月の大空への愛を、改めて感じるミギヒロであった。
[卯月 神]
「なので、ミギヒロくん。 君が代わりに行って来て下さい」
[加藤 右宏]
「エー!? なんでオレ様がァ? ちょ、押すなっテ、落ちっ……落ちるっテばー!! ぅゎ……ぅゎ……」
突然、卯月に背中を押されて、焦って抵抗しようするミギヒロ。
ミギヒロの足元がふらつく。
[卯月 神]
「良いから、ほら今! 今、行って来なさい」
卯月が無理やり、ミギヒロを屋上から突き落とした。
[卯月 神]
「頼みましたよー」
下に落ちて行くミギヒロを、無表情で見守る卯月であった。
ヒューン!!
[加藤 右宏]
「ヴわぁああああぁあ!!!」
ミギヒロは、マジな叫び声をあげながら、反対側の校舎のほうへ落ちて行く。
そして向かう先は、都合良く開いていた窓の隙間へ……。
ギュウ……ドーンっ!!
[加藤 右宏]
「ぴげぎぃ!!!」
ミギヒロはそのまま、顔面のほうから廊下に行き着いた。
ミギヒロがもし人間だったのなら、この時点で骨折、最悪の場合死に至っても当然だったが、ミギヒロは人外なので結構無事だったりする。
[モブA]
「なんだ!?」
[モブB]
「空から人が……!?」
校舎の2階にて、ミギヒロのまさかの登場の仕方により、周りは騒然とする。
[加藤 右宏]
「イタい……なんでオレ、空飛べるのに飛ばなかったんダろ……?」
床に這いつくばったまま、ショックで動こうともしないミギヒロ。
[永瀬 里沙]
「だ、大丈夫?」
丁度、廊下にひとりで歩いていた里沙が、ミギヒロを心配して声を掛ける。
[加藤 右宏]
「ハッ! 里沙様っ……」
[永瀬 里沙]
「
ミギヒロは、声の主がターゲットの里沙だと気付くと、顔を上げてその場に正座をし、両手を膝に揃えた。
[永瀬 里沙]
「えっ?!」
いきなり目の前で正座されて、どうしたら良いのか分からなくなる里沙。
ほぼ初対面で、緊張した様子のミギヒロ。
[加藤 右宏]
「こ、コンニチハ〜……は、ハジメマシテー」
ぎこちない挨拶から、里沙との会話を始めようとする、
そこで里沙が、『あっ』と何かに気付く。
[永瀬 里沙]
「ん? 君、大空の家に居候してるって言う、例の……右宏くん? だっけ」
里沙が、ミギヒロの最大の特徴である、白く分厚いゴーグルを見て、ミギヒロが右宏だと言うことに気付く。
[加藤 右宏]
「エっ、あ、そうデす」
[永瀬 里沙]
「やっぱり! なーんか、見覚えがあると思ったのよねー!」
と言って、パチンと両手を合わせて叩く里沙。
[加藤 右宏]
「ハハハ、そうですネ……」
愛想笑いをしながら、いつ里沙に話を切り出そうかと考えるミギヒロ。
[加藤 右宏]
「ア! あの! 永瀬先輩、チョっと人の居ない所で話せませんカ?」
ミギヒロは唐突に、里沙にふたりきりで話をしないかと誘ってみる。
そして、それに対して里沙は……。
[永瀬 里沙]
「えっ! い、良いけど……」
里沙は、ミギヒロの顔をしっかり見ていないのに、勝手にイケメンだと信じているので、誘われて嬉しい気持ちになってしまう。
[永瀬 里沙]
(ひゃあ、私もついに……モテ期かしらっ?!)
次の瞬間だった、里沙は自分が立っている所が、学校ではないことに気付く。
[永瀬 里沙]
「…………あれっ!? ここどこ?」
里沙が今立っているのは、いつしか誰かさんも迷い込んだ、一面薄紫色の世界。
相変わらず環境音も、BGMも無い。
[永瀬 里沙]
「えっ!? えっ? えっ!!」
訳が全く分からず、その場で周りをキョロキョロすることしか、出来なくなる里沙。
[加藤 右宏]
「ごほんっ……アーアー、聞こえますカー?」
またどこからか、まるで天の声のように里沙に呼び掛けるミギヒロ。
その姿は見せずに……。
[永瀬 里沙]
「この声……右宏くんでいらっしゃいますか?」
里沙は聞こえてくる声で、声の主がミギヒロだと言うことに、一発で気付く。
[加藤 右宏]
(そうだけド、答えなくて良いヤ……トにかく、さっさと質問しないト……エーっと)
まさかの質問することを、直前になって考えだすミギヒロ。
この
[永瀬 里沙]
「あ、あれ? 誰もいないの……?」
見知らぬ場所で、自分ひとりしか居ないと思った里沙は、不安で萎縮する。
[加藤 右宏]
「アっ! エーっと! 里沙様にいくつカ、お聞きしたいことガあるんですけドー」
[永瀬 里沙]
「あ! やっぱり右宏くんいるじゃない!! どこに居るのー?」
ミギヒロの声が聞こえてきて、すぐに笑顔を取り戻す里沙。
[加藤 右宏]
「【朝蔵 大空】と【刹那 五木】、このふたりの間に何があったカ、聞きたくてですネ」
[永瀬 里沙]
「えっ? 大空と、刹那くん? が、何?」
里沙は、ミギヒロから急にそんな話が出てきて、不思議に思う。
[加藤 右宏]
「ハイ、恐らく何年か前に……何か事件ガあったのデはないでしょうカー?」
ミギヒロは里沙に悪いと思いつつ、探っていく、探っていく……。
[永瀬 里沙]
「えっ……」
[永瀬 里沙]
(まさか、中学の時のことを言ってるの……? でも、なんでこの子がそんなこと、わざわざ探ってくるの?)
そう拳をギュッと握って、喋り出すことを躊躇う里沙。
[永瀬 里沙]
「それは、言っちゃダメなことだと思うから、言わない……」
" 言わない " と堅い意思の里沙。
[加藤 右宏]
(マ、そうだよネ。 仕方無い、この
ミギヒロは深呼吸をする。
[加藤 右宏]
「ナガセリサ、アナタは口が軽くナール、軽くナール〜……」
ミギヒロは里沙に、真実を話してしまう術を掛ける。
[永瀬 里沙]
「な、何!?」
里沙はミギヒロの、不思議な力がこもった言葉を聞いた途端、目を回して意識が朦朧としてくる。
[永瀬 里沙]
「…………う、ん? わ、私……私、何か質問されてませんでしたっけ?」
術が掛かった
[加藤 右宏]
「ですかラ、朝蔵大空と刹那五木の間にあった過去、について聞きたいんデすー!」
先ほどの質問を、繰り返すミギヒロ。
[永瀬 里沙]
「あー! そのことですか! それはですねー……」
さっきまでの態度とは違い、気分良く答えようとする里沙。
[加藤 右宏]
「うん」
……。
──それは、里沙達が中学生の頃。
[永瀬 里沙(中学生)]
「あのさ! あんたのやってることは、" いじめ " だよ? 分かってんの?」
それは、中学1年の秋だった。
[刹那 五木(中学生)]
「……」
里沙の言葉に、何も応えようとしない刹那。
[永瀬 里沙(中学生)]
「……!! なんか言ったら?」
里沙は黙ってる刹那に、イライラして怒鳴る。
[刹那 五木(中学生)]
「……おれは悪くない」
刹那は、そう言って里沙から目を逸らし、首を横に振る。
[永瀬 里沙(中学生)]
「は? 最っ低……」
里沙は、刹那の言葉が信じられなかった、刹那を軽蔑する目で睨みつける。
[刹那 五木(中学生)]
「永瀬には、関係無いだろ」
[永瀬 里沙(中学生)]
「は……? 関係あるわ、あんたね!」
里沙がそう叫ぶのに、刹那は食い気味に……。
[刹那 五木(中学生)]
「ごめんだけど。 もう、口を出さないでもらえるかな? 君より、おれは大空のこと分かってるつもりだし、ただの女友達でしょ? 正直そう言うの、うざい」
これまた平気な顔をして、里沙に毒を吐く刹那。
[永瀬 里沙(中学生)]
「は!? 何それ! 幼馴染みだからって、調子に乗んなよ! あんたのせいで、大空はあんなんになったんだよ? 分かってんの?」
怒りに任せて、まくし立てる里沙。
[刹那 五木(中学生)]
「あいつは、元々弱いんだよ」
刹那はそう言って、ため息を吐く。
[永瀬 里沙(中学生)]
「……っあんたのせいでしょ!?」
泣きそうな里沙の声が、裏返る。
[刹那 五木(中学生)]
「……」
刹那はまた、黙った。
[永瀬 里沙(中学生)]
「ねぇ!!」
黙り込む刹那に、里沙はしつこく呼び掛ける。
[永瀬 里沙(中学生)]
「何考えてんの?! 何考えてんの?!!」
里沙がそう叫んでも、刹那は背中を向けて離れて行く。
──これが中学1年の時のお話。
……。
[卯月 神]
「あっ、帰って来た。 お疲れ様です」
[加藤 右宏]
「……」
珍しく大人しいミギヒロに、卯月は首を傾げてみる。
[卯月 神]
「……? 聞いて来ましたか?」
ミギヒロに、成果を尋ねる卯月。
[加藤 右宏]
「……」
[卯月 神]
「……?」
[加藤 右宏]
「…………あ、何……?」
[卯月 神]
「ミギヒロくん?」
[加藤 右宏]
「は、はい! 天使様……」
卯月に名前を呼ばれてやっと、はっきり受け答えが出来るようになるミギヒロ。
[卯月 神]
「永瀬さんから、情報を聞けましたか?」
[加藤 右宏]
「はい……えっと、ですね……」
言いにくそうに、モジモジするミギヒロ。
[卯月 神]
「ん?」
ミギヒロは、卯月に耳を貸してもらうように頼み、卯月もそれに素直に応える。
[卯月 神]
「そう……ですか」
[加藤 右宏]
「どうすル?」
[卯月 神]
「分かりませんけど、それは忘れさせたままのほうが、良いかもしれません」
[加藤 右宏]
「そ、ソうですよね」
卯月の言葉にミギヒロは、うんうんと何回か頷く。
[卯月 神]
「彼は……この歳になって、少しは変わったのでしょうか? それとも、変わってないのでしょうか?」
[加藤 右宏]
「さ、さァ? それはドうなんでしょうカ……?」
[卯月 神]
「……不快だ」
……。
放課後になった。
里沙ちゃんは、午後の授業が受けられないほど体調を悪くしたらしく、昼休みに早退して行った。
[朝蔵 大空]
「あーもう、今日も雨ー? でも……」
バサッ!!
私は手に持っていた、自分の傘を開く。
[朝蔵 大空]
「えへへーん、今日はちゃんと持って来たもんねー」
私は嬉しそうに、傘を肩に掛けて舞うように歩き出した。
つづく……。