──今は、里沙ちゃんとお昼の食事中。
[永瀬 里沙]
「で? デートの場所は?」
里沙ちゃんの顔面付近から、『ドンッ!』と言うフォントが出てる様に見えた。
[朝蔵 大空]
「もう里沙ちゃん、朝からそればっかり〜」
『いきなりデート』って言われても、お付き合い経験の無い私だけじゃ、決められっこないよ。
[永瀬 里沙]
「だーって! 親友が初めて、
死ぬほど騒がしい里沙ちゃんに、周りで食べてる人が、チラチラ・クスクスと見てくる。
恥ずかしいなぁ。
[朝蔵 大空]
「里沙ちゃん……私より楽しみにしてくれてるみたいで、何よりだよ」
うーん……日頃外に出ないから、特にここに行きたい! って所も無いしなぁ。
卯月くんって、普段どこに出掛けるんだろ?
[永瀬 里沙]
「はぁ……しょうがないわね。 場所なら私、良い所知ってるわよ? 教えてあげよっか?」
[朝蔵 大空]
「ほ、ほんとに?」
そう言うと、里沙ちゃんがテーブルに置いてあったケータイを、手に取り操作しだす。
[永瀬 里沙]
「えーっと……よいしょ……ここよっ!」
[朝蔵 大空]
「ここは……ビーチ? 泳ぐの? まだ春なのに、寒いじゃん」
里沙ちゃんにケータイの画面を見せられて、そこには
でも今の季節は春、泳ぐにしてもちょっと……水が冷たい気がする。
[永瀬 里沙]
「ビーチ
[朝蔵 大空]
「お、お子ちゃま!? ……そ、そう?」
里沙ちゃん、いつにも増して得意気だな〜。
まあ私よりは、恋愛の経験はあるんだろうけどさ……。
[永瀬 里沙]
「カップルが集まるから、雰囲気も良いはずよ。 だってここ、ここらで1番の……【ラブラブパワースポット】なんですもの!」
[朝蔵 大空]
「ら、ラブラブパワースポット!?」
な、なんか女児向けアニメの必殺技みたいだ……。
[永瀬 里沙]
「知らないの? 恋する乙女なら、誰でも知ってるのよ?」
" 恋する乙女なら " か……私、恋なんて今までまともにしたこと無かったから、分かんなかったな。
[朝蔵 大空]
「へ、へー……」
私は、関心があるフリをする。
[永瀬 里沙]
「ここ、ほんとにオススメなんだからー! 『ふたりの絆が一生結ばれる』って、言い伝えもあるぐらいなの!」
卯月くんと私を縁結びさせて、どうするつもりなの里沙ちゃん……。
[朝蔵 大空]
「あー、よくあるやつね」
ふたりの愛が結ばれる〜、とか
怪しいな、あんまり
[永瀬 里沙]
「あ! 信じてないわね。 とにかく、ここならあんま遠くないし、行ってみなさいよー?
[朝蔵 大空]
「う、うん……愛し??」
そっか、私これから卯月くんと、デートしに行くんだ。
卯月くんと、海辺のデートか……。
私達がそんな所、楽しめるかな?
[永瀬 里沙]
「デートはいつ行くの?」
[朝蔵 大空]
「あ、うん。 今週の土曜日にしようかと思ってて……」
学生のデートって言ったら、週末しか無いしね。
でも、放課後デートって言うのも憧れるなぁ……。
[永瀬 里沙]
「そうすると……あと2日後ね。 なら、早く誘ったほうが良いわ。 相手の都合もあるだろうし」
確かに、タイミング失ったら一生行けなさそう。
文化祭の準備とかもうすぐ始まるだろうし、早めに行かないとっ!
[朝蔵 大空]
「う、うん! 私、今から行って来るよ!」
私はやる気になって、席から立ち上がる。
[永瀬 里沙]
「健闘を祈るわ」
私は先に食器を片付けてから、里沙ちゃんを置いて食堂を出た。
[朝蔵 大空]
「……あれれ?」
私はとりあえず、卯月くんが教室に居ると思って、教室に来てみた。
けれど、卯月くんの姿は見当たらない。
[文島 秋]
「あれっ、朝蔵ちゃん。 永瀬ちゃんとは一緒じゃないの?」
私は教室内をひとりでキョロキョロしていると、文島くんが話し掛けに来てくれた。
そうだ、文島くんに聞いてみよう!
[朝蔵 大空]
「あ、ごめん文島くん。 卯月くん、どこ行ったか知らない?」
[文島 秋]
「卯月くん? 彼なら……そう言えば、昼休みとかすぐどっか言っちゃうよね? ごめん、僕にも分からないや」
[朝蔵 大空]
「そ、そっか……」
うーん、誰も卯月くん見てないのかな?
他の人にも聞きたいけど、私のコミュ力じゃとても……。
[文島 秋]
「なんか……話し合いでもするの?」
[朝蔵 大空]
「う、うん! 私ちょっと、探しに行くよ!」
さすがに、学校の外に出て行っちゃってることは、無いと思うけど……。
[朝蔵 大空]
「ごめんなさい! 先生、卯月くんを見ませんでしたか?」
私は、廊下で偶然すれ違った二階堂先生にも、卯月くんの居場所を聞いてみる。
[二階堂先生]
「卯月か? いや……俺は見てないな」
[朝蔵 大空]
「そうですか……分かりました。 失礼します!」
[二階堂先生]
「おう」
[二階堂先生]
(あいつ、最近元気だな……)
私は校内
[朝蔵 大空]
「どこにも居ない……」
学校中、歩き回って私の足が疲れた。
今の時代、ケータイでメールやら、電話やらで約束のひとつぐらい、簡単に出来るのに。
私はまだ、卯月くんの連絡先を知らない。
こんなことなら、先に連絡先聞いておけば良かったー!
私のバカー!!
[朝蔵 大空]
「疲れちゃったっ……な」
私は、裏庭の近くまで来ていた。
[朝蔵 大空]
「ん?」
誰かの、話し声が聞こえる?
あっちのほう、からだ……。
声はひとり、そして人はふたり?
[嫉束 界魔]
「そのリンゴ頂戴よ」
[笹妬 吉鬼]
「やだよ」
あっ、あのふたり……嫉束くんと、笹妬くんだ。
友達同士で、仲良くベンチでお食事中?
[笹妬 吉鬼]
「あっち行ってもう」
だけど、あんまり良い雰囲気には見えなかった。
笹妬くんのほうが、嫉束くんのことを、嫌がっている様にも見える。
[嫉束 界魔]
「隙アリ!」
[笹妬 吉鬼]
「ちょっと……」
嫉束くんが、笹妬くんの元からリンゴを奪う。
[嫉束 界魔]
「うまっ」
嫉束くんが、リンゴを美味しそうに食べている。
[笹妬 吉鬼]
「おい……」
ん??
嫉束くんのほうは、仲良くしたそう?
ふたりって確か、知り合いなんだよね?
良いなぁ、カッコ良い男の人がふたりも。
[笹妬 吉鬼]
「リンゴ、食べたんだからあっち行けよ」
[嫉束 界魔]
「そんな約束はしてないけど?」
ほー! 良い目の保養だ、こりゃ。
出来れば、このまま隠れて見ていたい!
私は目的を忘れて、ふたりを陰から見守ることにした。
[嫉束 界魔]
「あ、そうだ。 お前さ、この前の体育の時、大空ちゃんと話してたよな?」
あれ? 大空ちゃんって……私の名前。
もしかして、私の話をされてる?
[笹妬 吉鬼]
「うっぐ……はぁ、はぁ……」
飲み物を飲んでいた笹妬くんは、嫉束くんの言葉に驚いてむせる。
[嫉束 界魔]
「大丈夫? 水、飲む?」
[笹妬 吉鬼]
「……見てたのかよ」
笹妬くんは、嫉束くんから水を受け取らずに、自分で息を整える。
[嫉束 界魔]
「もちろんっ。 だって僕、いっつも吉鬼のこと見てるし!」
嫉束くんは、『当然!』と言うかの様な、王子様フェイスで笑みを見せる。
[笹妬 吉鬼]
「あの時は……話し掛けられたんだよ。 心配しなくても、俺からじゃない」
[嫉束 界魔]
「ふーん、良いなぁ。 堂々とあの子と話せて。 僕はむやみに、目すら合わせられないよ」
[笹妬 吉鬼]
「……別に」
そして、しばらくふたりの間に、沈黙が流れた後……。
[嫉束 界魔]
「ねぇ、好きなんじゃないの?」
嫉束くんから、話を切り出した。
[笹妬 吉鬼]
「……えっ? 何が?」
笹妬くんは、なんのことか分からない様子だ。
[嫉束 界魔]
「フンっ。 でも僕、あの子の連絡先持ってるしー。 ファンの奴らに消されかけたけど……つまり、僕のほうが吉鬼より上だ!」
嫉束くんは、笹妬くんにマウントを取ったつもりでいる。
[笹妬 吉鬼]
「は? ……もう勝手に言ってろよ」
ふたりとも、一体なんの話をしてるの?
遠くから聞いてるだけだから、よく聞こえないよぉ〜。
[嫉束 界魔]
「素直じゃないな、吉鬼は……じゃあね」
嫉束くんが、笹妬くんに別れを告げて、ベンチから立ち上がる。
やばい!
嫉束くんが、こっちに来る!
私は日影の壁に、ピタッと張り付いて息を
[嫉束 界魔]
「……」
結局、嫉束くんはこちらを振り返らずに、そのまま行ってしまった。
気付かれなかったようだ。
[朝蔵 大空]
「ふぅ……」
なんだか、仲が良いのか悪いのか、分からないふたりだったな。
そう思いながら、私もその場から離れようと準備をする。
[笹妬 吉鬼]
「大空」
[朝蔵 大空]
「きゃっ……!?」
背後からいきなり名前を呼ばれて、私の心臓がドキンっと鳴る。
ドクドクと脈打って、とても痛い。
[朝蔵 大空]
「ぬ、盗み聞きしてました! ごめんなさい!」
私は謝罪だけして、逃げようと走り出した。
[笹妬 吉鬼]
「待って」
その声と同時に、私は石につまづいてその場に、すっ転んでしまった。
そしてスカートのポケットから、私のケータイが飛び出す。
[笹妬 吉鬼]
「あっ……お、おい」
[朝蔵 大空]
「痛た……」
[笹妬 吉鬼]
「……」
地面に落ちている、私のケータイに笹妬くんが気が付き、それを拾い上げる。
[朝蔵 大空]
「あ、それ私の……」
[笹妬 吉鬼]
「ちょっと待って」
笹妬くんが、私のケータイを触りだした。
[朝蔵 大空]
「え? 返してよ……」
[笹妬 吉鬼]
「はい」
笹妬くんは、私にケータイの画面を見せた。
『笹妬吉鬼』……と言う名前が、メール欄に追加されていた。
私は笹妬くんから、ケータイを返してもらう。
[朝蔵 大空]
「え、これって笹妬くんの?」
卯月くんの連絡先もまだなのに、先に笹妬くんのほうを貰っちゃった……。
[笹妬 吉鬼]
「そう。 盗み聞きしてた罰ね?」
[朝蔵 大空]
「ご、ごめんなさい」
私は、気まずくて手首が
[笹妬 吉鬼]
「ははっ」
そうすると笹妬くんに笑われた。
[朝蔵 大空]
「え……な、何?」
てか、盗み聞きしてた罰が連絡先交換って、よくよく考えたら意味が分からないし。
[笹妬 吉鬼]
「いや、素直に謝るんだって思って」
笹妬くんは、小さく笑うのを続けていた。
[朝蔵 大空]
「……笹妬くん、酷いよ」
この人、私がふたりのこと見てること、最初から気付いてたんだな。
こっそり見てたつもりだったのに、普通にバレてたなんて恥ずかしい。
もしかして、通り過ぎてった嫉束くんも、本当は私に気付いてた?
いや、これはさすがに私の被害妄想か。
[笹妬 吉鬼]
「……? どうした?」
[朝蔵 大空]
「もー! 気付いてるなら言ってよ!」
[笹妬 吉鬼]
「そう?」
私としたことが、安心してイケメンふたりを眺めちゃってたじゃない!
これじゃ里沙ちゃんと一緒だよ!
[朝蔵 大空]
「王子の嫉束くんと、私のめっっっちゃタイプな、笹妬くんがふたりで話してたら、そりゃ見ちゃうでしょ!」
[笹妬 吉鬼]
「ちょ、ちょっと。 そんなお世辞言わなくても……俺が悪かったよ」
そこで私は我に返る。
[朝蔵 大空]
「あっ……」
私、今……物凄く恥ずかしいことを、口走ってしまった気がする。
しまった、つい心の中のセリフが……。
[笹妬 吉鬼]
「その……嘘だって分かってても、照れるよ」
笹妬くんが照れて、そっぽを見る。
嘘でもないし、お世辞でもないけど!!
[朝蔵 大空]
「わ、忘れて下さーい!!」
私は今度こそ、その場から逃げた。
[笹妬 吉鬼]
「変な奴……」
つづく……。