ピピピッ! ピピピッ!
[朝蔵 大空]
「う、うーん……」
朝の部屋に、アラーム音が鳴り響く。
その音で、私は目を覚ましたんだ。
[朝蔵 大空]
「うんっ……うーん」
私はベッドから体を起こして、座ったまま、『うん』と腕を伸ばして背伸びをする。
[朝蔵 大空]
「ふんっ、よーし……」
昨日の晩は、お風呂で髪にトリートメントをして、いつもより早めに寝て、目覚ましは9時に仕掛けた。
だって今日は、朝蔵大空の人生初めてのデートの日なのだから!
ブォォォォォォ……!!
[朝蔵 葵]
「あら大空、早いわね。 今日は土曜よ?」
私が水分補給をしに、リビングまでやって来ると、床に掃除機をかけて掃除をしている、お母さんが居た。
お母さんは、私が学校の日と間違えて、早くに起きて来てしまったのだと、勘違いをしているみたいだ。
[朝蔵 大空]
「べ、別に? たまたま早起きしちゃっただけ!」
お母さんには、今日デートがあることを教えてはいない。
だから私は、慌ててなんでも無いと誤魔化す。
だって、家族の人に言うのは恥ずかしいじゃん!?
[朝蔵 葵]
「そうなの? まあ、健康的で良いわね」
私は急いで、出掛ける準備に取り掛かった。
服は……昨日の内に決めといたから、用意は出来てるけど。
[朝蔵 大空]
「うーん……」
私は自分の、下ろしっぱのミディアムヘアを撫でる。
常日頃から、髪には気を使ってサラサラに仕上げてはいる。
だけどこれでは、いつもと変わり映えの無い私になってしまう。
[朝蔵 大空]
「なんか……なんかしたいな?」
私はお母さんを探しに、リビングに戻る。
すると、お母さんはソファでテレビを見ていた。
[朝蔵 葵]
「あら〜♡ この塩顔の子も、涼しさの中に愛らしさがあって、とっても良いじゃない♡」
やっている番組は、イケメン特集……。
相変わらずだなぁ、と私は思う。
[朝蔵 大空]
「あの……お母さん? お願いがあるんだけど……」
私は悪いと思いながら、テレビに夢中になっているお母さんに、声を掛けてみる。
[朝蔵 葵]
「ん?」
するとお母さんが、こちらに振り向く。
[朝蔵 大空]
「私の髪、可愛くして?」
[朝蔵 葵]
「あら……」
私はお母さんの横に座り、丁寧に髪を
[朝蔵 葵]
「大空? 貴女、好きな男の子出来たでしょ?」
ドキッ……。
[朝蔵 大空]
「えっ!?」
……す、好きな男の子!?
[朝蔵 葵]
「ふふっ、ママにはなんでもお見通しよ」
[朝蔵 大空]
「えーっと……」
普通にしてたつもりなのに、なんでバレたんだろ?
[朝蔵 葵]
「今度、聞かせてね。 その子のこと♡」
[朝蔵 大空]
「う、うん」
私がそう答えると、お母さんはそれ以上は何も聞いてこなかった。
[朝蔵 葵]
「はい、どうかしら?」
私は手鏡で自分の髪を見る、綺麗にハーフアップで整えられている。
[朝蔵 大空]
「可愛い!」
ハーフアップって簡単な髪型だけど、これだけでも印象違うなぁ。
[朝蔵 葵]
「あ、そうだ。 ちょっと待っててね」
そう言って、お母さんはソファから立ち上がって、リビングから出て行ってしまった。
それからしばらく待つと……。
[朝蔵 葵]
「ちょっとジッとしててね……はい、出来たわよ」
[朝蔵 大空]
「な、何したの?」
私はもう一度、手鏡で髪を確認する。
すると、私の左側のサイドの髪に、白いリボンが結ばれていた。
[朝蔵 大空]
「おー!」
白いリボンは、私の黒い髪によく映えている様に見える。
目立ちすぎない、
[朝蔵 葵]
「どうかしら?」
私は感動して目を輝かせ、頬を赤く染める。
[朝蔵 大空]
「ありがとう! めっちゃ良い感じっ」
[朝蔵 葵]
「ふふっ」
その時、私はリビングの壁掛け時計に目が行く。
時計の短い方の針が、10時の数字にかなり近くなっていた。
[朝蔵 大空]
「あっ! ありがとうお母さん!」
そろそろ出ないと!
と思い、私は荷物をまとめる。
[朝蔵 葵]
「いってらっしゃい」
私は急いで家を出て、学校まで向かう。
ちょっと勇気を出して履いてみた、ミニスカートに気を配りながら……。
[朝蔵 大空]
「ん……?」
途中で、信号待ちをしている時だった。
なんか、人に見られてる気がする……。
さすがに私の、自意識過剰だよね?
にしても、久し振りにオシャレしたから、ちょっと落ち着かないな。
[朝蔵 大空]
「しっかりしろ、私……」
私は、周りに聞こえないような声でそう吐き捨て、両頬を軽く叩く。
そして目的の学校は、もう目の前。
[卯月 神]
「はぁ……」
あっ! あれ、卯月くんだよね!?
もう先に待ってる!
校門の前で、卯月くんらしき人が立っているのが見えて、私は走って駆け寄る。
[朝蔵 大空]
「卯月くーん!」
私は大声で、卯月くんに呼び掛ける。
[卯月 神]
「えっ……」
そうすると、卯月くんはこちらに振り向いて、驚いた顔を見せた。
[朝蔵 大空]
「卯月くん!」
[卯月 神]
「あ、朝蔵さんですか?」
[朝蔵 大空]
「え? そうだけど? えっと……そこのバス停から、バスに乗ろ!」
私達は、近くのバス停まで移動してくる。
ブロロロロロ……。
しばらくして、待っていたバスが来た、私達はそれにふたりで乗り込む。
[卯月 神]
「これは?」
卯月くんが、私に整理券を見せてくる。
[朝蔵 大空]
「うん、それ降りるまで持ってて」
卯月くん、バスに乗るのは初めてそう?
最近、そう言う人多いよね。
バス内はそんなに混んでなかったので、私達は前後に席に座る。
私が前の席で、卯月くんがその後ろ。
[アナウンス]
「ピポーン♪
バスが、目的地に停車をしようとしている。
──『海美溜海水浴場』。
[朝蔵 大空]
「そこにお金入れてみて」
[卯月 神]
「? ……はい」
卯月くんが、投入口に代金を落とす。
ジャラララ……ポーン♪
[バスの運転手]
「ありがとうございましたー」
降りる人が居なくなると、バスはどこかへ道沿いに走り去って行く。
[卯月 神]
「バス……? ああやって乗るんですね」
[朝蔵 大空]
「うん! 私もそんな乗らないんだけどね」
なんせ、外出することがそんなに無いから。
[卯月 神]
「……?」
卯月くんが、辺りを気にし始めた。
[朝蔵 大空]
「どうしたの?」
[卯月 神]
「いえ、なんでもないです」
??
[朝蔵 大空]
「えっと、ちょっと待っててね……」
[卯月 神]
「はい」
私は昨日学校で、里沙ちゃんに貰った海美溜周辺について、詳しく書かれているパンフレットを開いた。
あっそうだ……せっかくなら。
[朝蔵 大空]
「ねぇねぇ! どこが気になる?」
私は、卯月くんにもパンフレットを見せる。
せっかくなら、一緒に見て決めたいもんね!
ズキンっ……。
[朝蔵 大空]
「いっ……」
──『一緒に読もっ!』。
また……私。
一瞬、頭に強い衝撃が走った。
頭の痛みは、短い時間であっさり引いた。
……私の中に残る、胸のざわめき。
この、記憶みたいなのは何?
[卯月 神]
「……いっぱいありますね」
[朝蔵 大空]
「……」
[卯月 神]
「? ……朝蔵さん?」
卯月くんに呼ばれて、私はハッと意識を取り戻す。
[朝蔵 大空]
「あ、ごめん…………なんだっけ?」
[卯月 神]
「えっと、ここってなんですか?」
卯月くんは、パンフレットのある箇所を指さす、私はそれを追って見る。
『海美たまり水族館』。
[朝蔵 大空]
「あっ、そこは水族館だね。 良いね! 私もそこに行きたい」
他にも楽しそうな所はあるけど、水族館か!
私も最初に行くなら、そこって思ってたんだよね、卯月くんとは気が合うかも!
[卯月 神]
「スイゾッカン??」
卯月くん、水族館も分からないのかな?
[朝蔵 大空]
「うん、とりあえず行ってみよっか」
[卯月 神]
「そうですね」
『海美たまり水族館』までは、徒歩で行ける距離だったので、ふたりで歩いて行く。
[朝蔵 大空]
「わー……」
大きな水槽に、多種多様な魚達。
皆が、あちらこちらに自由に泳ぐ。
これを見るのが、水族館の
[卯月 神]
「……」
はしゃぐ私に対して、後ろのほうで突っ立っている卯月くん。
お父さんかよ。
[朝蔵 大空]
「ほらほら! 卯月くんも、こっち来なよー」
私は振り向いて、卯月くんに手招きする。
[朝蔵 大空]
「きゃー、クマノミ可愛い♡」
イソギンチャクから出てきた、1匹のクマノミに私は夢中になる。
[卯月 神]
「……これがサカナ。 ふーん」
卯月くんは大して、ときめいていない様に見えた。
[朝蔵 大空]
「もー! 卯月くん反応薄いよっ!」
[卯月 神]
「ご、ごめんなさい?」
私が怒ると、卯月くんがすんなり謝ってくる。
まあ、感性は人それぞれだからね。
──数10分後。
[朝蔵 大空]
「クマノミー……」
[卯月 神]
「そ、そろそろ他に行きましょうよ」
[朝蔵 大空]
「あ! ごめん! 行こうか」
[卯月 神]
「はい……」
お次は、深海魚コーナー。
こちらはかなり、部屋が暗い。
お互いの様子を見ながら歩かないと、すぐにはぐれてしまいそう。
[朝蔵 大空]
「おー……」
[卯月 神]
「うわぁ……」
深海魚は、個性的な見た目の生き物が多い。
なんとも神秘的だぁ……。
[朝蔵 大空]
「あ! カニだ!」
私は、足の長ぁーいカニに目が止まる。
[卯月 神]
「カニ?」
[朝蔵 大空]
「うん……」
美味しそう……。
ぐーぎゅるるるるる……。
[朝蔵 大空]
「あっ……!? 誰? 卯月くん??」
その時、お腹が鳴るような音が聞こえた。
[卯月 神]
「貴女ですよ……」
[朝蔵 大空]
「私か!」
どうやら、腹の虫を鳴らしてしまったのは私らしい。
そう言えば、お昼を食べるにはもう良い時間。
[卯月 神]
「どうしますか?」
[朝蔵 大空]
「うーんそうだね……あっ」
そう言えば、館内でちょっと食べ物が買えるような場所がある、って書いてあったな。
[朝蔵 大空]
「うみたまりカニバーガー、と言うやつにしてみましたー!」
[卯月 神]
「じゃあ、僕もそれで」
[店員]
「はい! かしこまりましたー」
私達ふたりとも、カニバーガーを頼んだ。
[卯月 神]
「カニって、さっきの?」
[朝蔵 大空]
「あ! そうかも! 深海魚食べれるなんて、貴重な体験だね!」
[店員]
「あ、そちらは普通の毛ガニですねー」
[朝蔵 大空]
「あっ……そうですか」
なーんだ、深海のカニじゃないのかー。
まあでも実際、毛ガニのほうが美味しいよね。
[店員]
「お待たせしましたー、うみたまりカニバーガーでーす」
[朝蔵 大空]
「あ! 卯月くんの分も来たよ! 受け取って」
[卯月 神]
「ありがとうございます」
商品を受け取ると、私達は座れる場所を探す。
[朝蔵 大空]
「あ、そこにイスがあるよ!」
[卯月 神]
「はい」
いざ、実食!!
[朝蔵 大空]
「うん! 美味しー!」
[卯月 神]
「へぇ……」
卯月くんも、『美味しい!』って言えば良いのに。
まあ、そう言う性格じゃないのは分かるけど。
って言うか、私が聞けば良いのか!
[朝蔵 大空]
「お味はどう?」
[卯月 神]
「どうって……美味しいと思います」
100点満点の『美味しい』ではないけど、卯月くんの口に合ったみたいで良かった。
[朝蔵 大空]
「一緒の物食べるって、なんか良いね!」
私は嬉しくて、子供のように笑ってしまう。
[卯月 神]
「……ははっ、そうですね」
と言って、卯月くんは控えめに笑う。
あ! 嘘でしょ!?
[朝蔵 大空]
「えっーー!!?」
私は思わず、大きな声が出てしまう。
[卯月 神]
「な、なんですかいきなり」
だって! だって!
[朝蔵 大空]
「卯月くんの笑った顔! 初めて見た!」
[卯月 神]
「? ……僕の?」
[朝蔵 大空]
「だって! だって! 卯月くんと言ったら、無愛想で、笑顔が無くて!」
[卯月 神]
「えっ」
[朝蔵 大空]
「感情が無くて、いっつも無表情で。 何やっても、いっつもつまんなそうなのが、卯月くんじゃん!」
[卯月 神]
「ふーん」
[朝蔵 大空]
「はっ……!?」
……し、しまった。
私ったら、勢いで色んなこと言っちゃった!
[朝蔵 大空]
「って言う……クールな所が、卯月くんの良い所だよね!」
私は急いで、自分の失言にフォローを入れる。
[卯月 神]
「……そうですね。 貴女も、そうやってすぐに焦って、落ち着きが無くて。 感情が顔に出やすくて、情緒不安定なそう言う、" バカ正直 " な所が、良い所なのではないでしょか?」
[朝蔵 大空]
「うっ……バカ正直?」
は、初めて言われた……って言うか、完全にカウンターかまされた〜。
と言うか、そんな私の短所が今みたいに、スラスラ出てくるって言うことは……。
[朝蔵 大空]
「卯月くんさ? 私のこと、実はよく見てくれてるんだね?」
[卯月 神]
「……調子に乗らないで下さい」
うわっ! お、怒らせちゃった?
な、なんでー!?
とりあえず謝らないと!
[朝蔵 大空]
「ご……ごめんなさい〜!!」
つづく……。