──前回、朝蔵大空は卯月神に告白をした。
[卯月 神]
「……」
[朝蔵 大空]
「……?」
あ、あれ?
卯月くん、黙っちゃってる?
もしかして私……告白失敗しちゃった!?
[卯月 神]
「……」
唖然としている、卯月くん。
焦りが止まらない私。
[朝蔵 大空]
「あ……えとー……」
ダメだ……私、振られるんだ……!
その場の空気に、耐えられなくなった私は、卯月くんの横を通り過ぎて走り去ろうとする。
ここに居たら、泣いちゃいそう!
[卯月 神]
「えっ、ちょ、ちょっと待って下さい」
後ろから、卯月くんの声が聞こえる。
[朝蔵 大空]
「わーん! ごめんなさい〜! 私、調子に乗りすぎました〜!」
『待って』と言われても、ヤケになった私は待たないで走る。
ポツリポツリと、雨が降っていて濡れたとしても、空の下を私は突っ走る。
[卯月 神]
「……っ、待ってってば!!」
追って来た卯月くんは、私の腕を引いて私を後ろから抱き寄せる。
卯月くんの大きな声、初めて聞いた……。
[朝蔵 大空]
「きゃっ……な、何するの?」
突然抱き締められて、恥ずかしくなった私は暴れまくる。
[卯月 神]
「あの! ごめんなさい、貴女が急に言うものだから……」
[朝蔵 大空]
「え?」
私は動きを止める。
た、確かに……私、割と情緒的な感じに告白しちゃったかも。
[卯月 神]
「ありがとうございます。 僕も、貴女が良いです……。 好きです、朝蔵さん」
[朝蔵 大空]
「!!」
……い、今の言葉は、OKってことだよね?
わ、私も何か応えなきゃ!!
[朝蔵 大空]
「よ、よろしくお願いします……」
その時だった。
パーンっ!!!
[加藤 右宏]
「オメデトウございまーす!!」
!?
……こ、これはお祝い事でよく使われるクラッカー??
って、言うか!
[朝蔵 大空]
「ミギヒロ!? なんで……あんた、ここにいるの?」
目の前に、何故かミギヒロ。
は??
[卯月 神]
「ミギヒロくん……」
[朝蔵 大空]
「え?」
卯月くん、ミギヒロのこと知ってんの!?
[加藤 右宏]
「いやァ、コレで晴れて、両思いと言うことデ。 イや! ここまデ地味に長かったですネ! シン様!!」
[卯月 神]
「……まあ」
ん? シン様??
あー、卯月くんの下の名前か……ん?
シン……?
どっかでも聞いたことあるような、気がする。
[朝蔵 大空]
「ちょっと待って! どゆこと!?」
[加藤 右宏]
「どゆことも何モ、付き合うんダろ? オマエら」
[朝蔵 大空]
「それはっ……」
……あ、改めて " 付き合う " って。
なんか、
[加藤 右宏]
「ア、付き合うにしてモ、周りにはバラすなよ??」
[朝蔵 大空]
「え? なんでぇ?」
うちの高校、別に恋愛禁止じゃないけどね。
[卯月 神]
「……それは僕からもお願いします、朝蔵さん」
[朝蔵 大空]
「卯月くんまで……まあ、卯月くんがそう言うなら」
周りに言えないのはちょっと寂しいけど、男子心ではそう言うの言われるの、恥ずかしいのかな?
……理解してあげないとなぁ。
[加藤 右宏]
「二ヒヒ……」
ミギヒロが怪しく笑う。
[朝蔵 大空]
「ふたりは……知り合い?」
このふたり、何故か顔見知りみたいだけど……。
[卯月&加藤]
「「え? ……あー、まあ」」
[朝蔵 大空]
「……?」
ピカ!
ゴロゴロゴロ……!!
ザー……!!
[朝蔵 大空]
「きゃー!」
来た、天気予報の土砂降りの雷雨だ。
[加藤 右宏]
「なんダ今の音!?」
[卯月 神]
「こ、これは確か……なんでしたっけ?」
[加藤 右宏]
「イヤ、分からないんかイ!」
……ふ、ふたりとも雨に濡れながら平気な顔してるよ!
女の子からしたら、髪も服もびしょびしょになって、最悪なのに!
こう言う時、男の子は良いなぁっと感じる。
[朝蔵 大空]
「あ……あ……嫌ー!」
私は、バス停のほうに走り出す。
[卯月 神]
「朝蔵さん?」
[加藤 右宏]
「イきなりどうしたんだ、アイツ……」
もう! これだから雨嫌い!!
あと、頭痛くなるし!!
[朝蔵 大空]
「あ、丁度バス来た……」
[卯月 神]
「ああ……」
[朝蔵 大空]
「乗りまーす!」
私と卯月くんは、バスに乗り込む。
[加藤 右宏]
「待っテー! オレも乗るゥーー!!」
後から追い掛けて来ていたミギヒロは乗れず、バスの扉が閉められる。
[朝蔵&卯月]
「「あ」」
[加藤 右宏]
『待って〜……!』
窓の外を見ると、後方に必死に走るミギヒロが見える。
お構い無しに、バスは走るスピードを上げていく。
[朝蔵 大空]
「あー、もう最悪……」
髪が濡れて、せっかくお母さんにヘアセットもしてもらったのに、台無しだよ。
これじゃ私、可愛くないよ……。
[卯月 神]
「大丈夫ですか?」
横を見ると、卯月くんの顔。
[朝蔵 大空]
「きゃっ……」
いつの間にか卯月くんが、私の隣に座ってる!
[朝蔵 大空]
「あ、あんまり見ないで……今の私、可愛くないから……」
雨のせいで、前髪もビチョビチョのスカスカだし……。
[卯月 神]
「え…………か、か……」
[朝蔵 大空]
「……?」
卯月くんが、何か言いたげ。
[卯月 神]
「可愛いですよ、全然……」
言い慣れてないのか、ぎこちない卯月くん。
[朝蔵 大空]
「……! そ、そっか……」
卯月くん、今私に『可愛い』って言ったよね!?
こんなダサい私に、嬉しい……。
今日は、卯月くんの色んな顔が見られた気がするな……。
私、今幸せかも。
[朝蔵 大空]
「んー……」
バスで帰る途中、雨に濡れて体温が下がってしまったので、少し寒い。
[卯月 神]
「……?」
[朝蔵 大空]
「……」
卯月くん、気付いてくれないかな?
私はわざと、自分の二の腕を摩ってみる。
[卯月 神]
「……?」
あ、ダメだこりゃ。
[朝蔵 大空]
「もういい」
[卯月 神]
「えっ」
私は、卯月くんの横にピッタリくっ付いて、身を預けてみる。
わぁ、あったかい。
[卯月 神]
「あの……」
そうすると、卯月くんが話し掛けて来たが、私は無視して卯月くんの体温を感じる。
ちょっと疲れちゃった、このまま寝たフリでもしとこ。
──数10分後。
[アナウンス]
「お次は、土屋高前〜土屋高前〜」
[朝蔵 大空]
「あっ」
着いた、降りなきゃ。
私達はバスから降りて、校門の前に立つ。
この場所はまだ、雨は小粒で降っていた。
[卯月 神]
「じゃあ……」
[朝蔵 大空]
「うん! また明日学校でね!」
[卯月 神]
「はい」
優しい卯月くんの表情、好きだなぁ。
[朝蔵 大空]
「えへへ」
離れるのは名残惜しいけど、雨が強くなる前に帰らなきゃ。
私は、卯月くんに手を振って挨拶をし、家に帰って行く。
[卯月 神]
「……」
[加藤 右宏]
「ぜーはー……せーはー……」
どこからともなく、現れるミギヒロ。
[卯月 神]
「おや、意外と早かったですね」
[加藤 右宏]
「死ぬかと思ったゼ……」
しんどそうな顔の、ミギヒロ。
[卯月 神]
「飛んで来たんですか?」
[加藤 右宏]
「ああ……人間に見られなイように、雲の上ヲ……ちょっと迷ったけドな」
[卯月 神]
「……ミギヒロくん、2日後は学校で……」
[加藤 右宏]
「ん? アァそうだな」
……。
[朝蔵 大空]
「あ、朝からなんですか……」
朝っぱらから、学校の会議室に呼び出される私。
──その相手はと言うと……。
[卯月 神]
「すみません」
[加藤 右宏]
「サーセン」
なんにも申し訳無さそうじゃない、卯月くんとミギヒロ。
よく分かんないけどこの状況、なーんかデジャブ感があるんだよな?
なんでだろ?
[卯月 神]
「単刀直入に言います、僕達ふたりは人間ではないんです」
[朝蔵 大空]
「へ?」
今、とんでもないセリフが聞こえてきた気がする。
ふたりが、人間じゃない?
[加藤 右宏]
「ソウ。 オレが魔界の悪魔で、コイツが天界の天使ってワケ」
[朝蔵 大空]
「へ?」
なになに? 理解が追い付かない。
[朝蔵 大空]
「ま、魔法使いってのは?」
[加藤 右宏]
「あ、ソレまだ覚えてたんダ? ウン、魔法使えるけド。 厳密な種族は悪魔なんだ、オレ」
ミギヒロが悪魔で?
卯月くんが……天使!?
ミギヒロが普通の人間じゃないってことは知ってたつもりだけど、卯月くんが天使って!
伏線あった!?
完全に初耳なんですけど?
[卯月 神]
「……天使には見えなかったかもしれませんが、本当です。 天使なんです、僕」
信じられないけど、ふたりとも冗談を言ってる訳ではないみたい?
[朝蔵 大空]
「そんな……人じゃないって……」
[卯月 神]
「……幻滅しましたか?」
私に、悲しそうな顔をする卯月くん。
[朝蔵 大空]
「そ、それは無い! 人間じゃなくても好きだよ!」
私の気持ちは、そんなことでは変わらない!!
[卯月 神]
「……! よ、良かったです///」
少し、頬を赤らめる卯月くん。
[加藤 右宏]
「へへへっ♡」
何故か、自分も嬉しそうなミギヒロ。
あんたには言ってないけど……。
……。
[嫉束 界魔]
「……」
昼休み、ここは学校の裏庭。
[笹妬 吉鬼]
「……っ、はぁ」
珍しく何も喋らない嫉束に、違和感を覚えてしまう笹妬。
笹妬は気まずくて、息が詰まるような思いをしている。
[嫉束 界魔]
「吉鬼」
[笹妬 吉鬼]
「うわっ!? きゅ、急に喋んな……」
突然、話しだした嫉束に笹妬はびっくりする。
[嫉束 界魔]
「……大空ちゃん、付き合ってるかも」
[笹妬 吉鬼]
「は? 付き合うって……誰とだよ」
[嫉束 界魔]
「……吉鬼には言わない」
[笹妬 吉鬼]
「なんだよそれ…………彼氏がいるような子には見えなかったけど。 お前の勘違いなんじゃねーの」
[嫉束 界魔]
「……同じクラスの人だって」
[笹妬 吉鬼]
「は? 同じクラスとか…………ずる」
ボソッと呟き、笹妬はジュースのパックを握り潰す。
[嫉束 界魔]
「ははっ、焦っちゃうよね。 ほーんと!」
隙アリ、と嫉束は笹妬の弁当からリンゴをひとつ摘む。
[笹妬 吉鬼]
「うわ、やられた」
……。
[朝蔵 大空]
「あー!」
[永瀬 里沙]
「どどど、どしたん?」
[朝蔵 大空]
「教科書忘れたー……」
私の机にもカバンの中にも、これから国語の授業で使う、国語の教科書が無かった。
[永瀬 里沙]
「あちゃー」
[卯月 神]
「朝蔵さん、僕が……」
そう言って、卯月くんは自然に机をくっ付けてくる。
[卯月 神]
「見せるので、安心して下さい」
[朝蔵 大空]
「あ、ありがとう……」
なんとスマートな……。
[永瀬 里沙]
「ヒュー! ヒュー! もーっ、憎ったらしいほどラブラブねっ!」
里沙ちゃんは、私達を冷やかすのに楽しそうだなー。
[木之本 夏樹]
「お、おいどう言うことだよ……」
[永瀬 里沙]
「あ、木之本。 はははっ、最後に笑うのはクーデレよ! ツンデレ
[木之本 夏樹]
「はっ……!? べべべ、別にっ! ツンデレとかじゃねーしっ……ど、どうでも良いってのっ!!」
必死に否定する、木之本。
[文島 秋]
「あー……」
何かを察した、文島。
[狂沢 蛯斗]
「はー! 分かりやすいですね!」
[巣桜 司]
「あ、あれ付き合ってるんですかね?」
[狂沢 蛯斗]
「絶対そうですよ! いやらしい」
[巣桜 司]
「んぅ、大空さん……」
巣桜と狂沢が、教室の外で話す。
[刹那 五木]
「あ……あー! 狂沢くーん! 巣桜くーん!」
狂沢と巣桜を見つけて、嬉しそうに駆け寄って来る刹那。
[狂沢 蛯斗]
「うわなんか来た……」
[巣桜 司]
「ふぇ……よ、陽キャ」
[刹那 五木]
「何話してたの?」
刹那は、狂沢の頭に腕を乗せる。
[狂沢 蛯斗]
「……新カップル誕生みたいですよ」
[刹那 五木]
「へー、良いじゃん。 君らのクラスで?」
[狂沢 蛯斗]
「アレです」
[刹那 五木]
「……?」
刹那は、狂沢の視線の先を見る。
[朝蔵 大空]
「ありがとね? 卯月くん……こ、このお礼は絶対いつかっ……!」
[卯月 神]
「別に……貴女が困ってたら、助けたいんです。 大切だから」
そう言って卯月は、" 大空にだけ " の優しい笑みを見せる。
[朝蔵 大空]
「……っ!?」
胸がきゅんとして、赤面の大空。
[巣桜 司]
「うわん……NTRは地雷なんです」
[狂沢 蛯斗]
「あーもう、全然、全然ダメです! あんなの……大空さんの隣には合いません。 全く美しくない!!」
[刹那 五木]
「…………誰?」
嘆く狂沢達の横で刹那は、口元だけで笑った。
[朝蔵 大空]
「こ、これからもよろしくです?」
[卯月 神]
「はい」
あ、あたし今……幸せ!!
つづく……。