今は、放課後の人けの無い通り。
そこを、私と卯月くんはふたりで歩いている。
[卯月 神]
「どうなっているんですか」
……そ、そう言えば付き合ってること、内緒にしようって言ってたんだった。
私なんて、舞い上がって平気で顔赤くしちゃってたよ!!
[朝蔵 大空]
「ごめん、なんか……皆。 雰囲気で、気付いちゃったみたいだね? 私達がその……つ、付き合ってること」
全員じゃないだろうけど、里沙ちゃんは絶対、他には木之本くんとか、文島くんとか……気付いてる。
皆、よく見てる。
[卯月 神]
「ふん、認めなければ良いんです。 引き続き、黙ってて下さいね?」
そう言って卯月くんは、私に念を押してくる。
[朝蔵 大空]
「う、うん」
もーっ、里沙ちゃんが変に茶化すからー!
……で、でも卯月くんも、皆が見てる前で私に、あの態度はどうかと思う!
あんな見るからに、『特別扱い』!!
[朝蔵 大空]
「きょ、教室ではとりあえず他人……と言うことで」
憧れのカレカノになれたけど、こればっかりは仕方無いね。
卯月くん、皆にバレたくないんでしょ?
[卯月 神]
「……そうですね、そのほうが良いかもしれません」
ここで卯月くんまで、寂しそうな顔しないでよ……。
でも、出来ないことは無いよね?
──他人行儀。
そう考えると、急に胸が苦しくなった。
うん、出来るよね? きっと出来る。
[卯月 神]
「じゃあ、僕はバイト行って来ます」
卯月くんが、道の角で立ち止まる。
[朝蔵 大空]
「あーそうなんだ……え?」
今……卯月くん、バイトって言った?
[朝蔵 大空]
「バ、バイト?」
[卯月 神]
「はい」
[朝蔵 大空]
「えー!? 天使なのにぃ?! バイトするのぉー!?」
私は声が出てしまう。
[卯月 神]
「声が大きいです」
私ったら思いっきり、『天使』とか言っちゃった……。
[朝蔵 大空]
「あっ、ごめん……卯月くんもバイトとかするんだね」
──『バイト』。
生まれてこの方、私はしたことが無い。
[卯月 神]
「まあ……お金も、無いと困るので。 そりゃ、バイトぐらいしますよ」
[朝蔵 大空]
「それはそうだね……」
天使でさえバイトしてる!!
私は
[卯月 神]
「じゃ」
卯月くんはそう言って、道の角を曲がって行ってしまった。
卯月くん、どこでなんのバイトしてるんだろ?
そう考えてる内に私は、卯月くんを見失ってしまった。
……。
[狂沢&巣桜]
「「大空さん!」」
[朝蔵 大空]
「わわっ! ど、どうしたの? ふたりして……」
朝、自分の席に着いたばかりに、ふたりが私に話し掛けて来た。
[狂沢 蛯斗]
「せーっの……」
[狂沢&巣桜]
「「連絡先、交換して下さーい!!」」
息を合わせるふたり。
[朝蔵 大空]
「わ、私の?」
[狂沢 蛯斗]
「貴女以外、誰がいるんですか」
[朝蔵 大空]
「うん……いいよ」
そう言って私は、ポケットからケータイを取り出してみせる。
[巣桜 司]
「お、お願いします」
[朝蔵 大空]
「オッケー」
私はまず、司くんと連絡先を交換する。
[狂沢 蛯斗]
「大空さん、ボクのも」
[朝蔵 大空]
「あ、うん……」
狂沢くんまで……狂沢くんには、あんまり教えたくないなぁ。
かと言って、司くんには教えたのに、狂沢くんだけ教えないってのは可哀想か。
[狂沢 蛯斗]
「はい、大空さん」
[朝蔵 大空]
「はーい」
私は流されて、狂沢くんとも連絡先を交換してしまった。
[朝蔵 大空]
「でもふたりとも、いきなり連絡先とか……どうしたの?」
私は気になったので、ふたりに聞いてみた。
[巣桜 司]
「あっ、えっとー……その、特には……」
[狂沢 蛯斗]
「ボクは大空さんのこと、もっとよく知りたかったので!」
[巣桜 司]
「あっ……うん! ぼくも!」
[朝蔵 大空]
「か、可愛いこと言うね? ふたりとも……」
なんか、ありがとうね。
[狂沢 蛯斗]
「ちょっと巣桜くん! 真似しないで下さい!」
狂沢くんが、司くんのほうをジッと見る。
[巣桜 司]
「そそ、そ、そんなつもりは……」
あれっ?
[朝蔵 大空]
「無い? …………無い」
五木くんの連絡先が、消えてる……?
なんかのバグ?
それとも私、間違えて消しちゃった?
ガララっ……。
[二階堂先生]
「よしお前ら、席着け〜。 ホームルームを始めるぞー」
教室に、二階堂先生が入って来た。
恒例の、
[二階堂先生]
「文化祭の準備は各自順調みたいだ、俺らもそろそろ本気出さないとな」
来た来た! 文化祭の劇。
どうなるか分からないけど、こんな私がようやく貰えた主役!
これから私なりに、ちょっとずつ頑張ってみよう。
[二階堂先生]
「演目は『白雪姫』、主役の姫と王子は朝蔵と卯月、だったよな?」
『だったよな?』とか、言ってるけど決めたの貴方でしょ。
と、思いつつも私は黙って小さく、首を縦に振った。
[二階堂先生]
「じゃあ、そのほかの役も決めていきたいんだが……」
その時、誰かが手を挙げたのが見えた。
[木之本 夏樹]
「はい」
え、木之本くん?
挙手するなんて、珍しい……。
しかもこのタイミングで?
[二階堂先生]
「おー、なんだ木之本?」
[文島 秋]
「どうした?」
文島くんが不思議そうに、木之本くんに呼び掛ける。
[木之本 夏樹]
「俺が王子やります」
[朝蔵&卯月]
「「えっ」」
私は耳を疑った。
私と卯月くんはふたりして、『えっ』と言う声が出る。
ざわざわ……ざわざわ……。
周りも
[二階堂先生]
「なんだ木之本、やりたかったのか?」
[木之本 夏樹]
「はい」
木之本くんが、私のほうを見ている気がする。
[朝蔵 大空]
「うん?」
木之本くんって、役とかやりたがる人だったんだ?
なんか意外だったな。
でも、王子役は前から卯月くんに決まってたのに……。
[永瀬 里沙]
「ちょっと! ちょっと! 何言ってんのよ木之本ー!」
[木之本 夏樹]
「なんだよ」
[永瀬 里沙]
「あんたさ、空気読みなさいよ。 あんたが王子なんて、なれる訳無いでしょ?」
[文島 秋]
「そうだよ、木之本。 役やりたいんだったら、他にもあるし」
[木之本 夏樹]
「は? 俺は、王子がやりたいんだよ!」
木之本くん、どうしても王子の役がやりたいみたい!
[永瀬 里沙]
「あーんたみたいな、ガサツな王子いないわよ! だったら、地味な卯月くんのほうが良いわ!」
[卯月 神]
「……」
サラッと、卯月くんをディスらないであげて……。
それにしても木之本くん、なんでそんなに王子役にこだわるんだろ?
[文島 秋]
「だってさ、諦めろよ木之本」
[木之本 夏樹]
「だったら別に、王子をふたりにすれば良いだろっ!」
へ!?
王子が、ふたり……?
[永瀬 里沙]
「あはは! もっと有り得ないって! 王子がふたりとか、お話変わっちゃうし〜」
里沙ちゃんは、木之本くんの発言が面白かったようで、声を出して笑う。
[木之本 夏樹]
「な、なんだよ! 普通にやったら面白くないだろーがっ!!」
" 面白い " か……。
[文島 秋]
「木之本、それはさすがに無理が……」
[二階堂先生]
「おっ! 良いな木之本! それ、アリだな」
[文島 秋]
「えっ」
静まり返る教室。
二階堂先生まさか、木之本くんの意見に肯定的!?
[二階堂先生]
「実はな……
二階堂先生の掛け声に……教室内でひとり、またひとりと手を上げていく。
[永瀬 里沙]
「あー、なんか良いじゃん。 面白そうだし、私も賛成〜」
そう言って、手を上げる里沙ちゃん。
里沙ちゃんまで……。
こんなのって、アリ!?
[卯月 神]
「ふーん」
隣に居る卯月くん、何か言いたげな御様子。
[朝蔵 大空]
「な、なんか……予想にもしないことが起きちゃったね?」
[卯月 神]
「あの人、木之本くん。 何がしたいんでしょうね」
[朝蔵 大空]
「さ、さぁ……?」
木之本くん、ほんとに急にどうしちゃったんだろ?
普段、『飯のことしか考えてねー!』……って、感じだったのに。
[永瀬 里沙]
「あ! せんせーい! 私も良いこと思い付きましたー!」
これ以上余計なこと言わないで、里沙ちゃん!!
[二階堂先生]
「お? どうした、どうしたー。 言ってみろ〜」
[永瀬 里沙]
「思い切って! 『白雪姫と7人の王子様』……とか! どど、どうですか?」
興奮した様子で、堂々と言い放つ里沙ちゃん。
こいつ
[木之本 夏樹]
「はぁっ!?」
木之本くんはびっくりして、里沙ちゃんのほうへと振り返る。
里沙ちゃん、それはちょっと思い切りすぎでしょ〜!!
7人の王子様って……。
ハーレム系少女漫画の設定か何かですか??
[二階堂先生]
「おー! 7人の小人じゃなくて、7人の王子様か! いいなぁ……それで行こうじゃないか!」
ちょっ……皆が私ら主役を差し置いて、色々と話を進めてってる!?
7人の王子様か……でも、私も一体どんなお話なるのか、ちょっぴり気になる。
[二階堂先生]
「でも7人かぁ……あと5人、どうする?」
木之本くんと卯月くんでふたり、7人にはあと5人王子役が必要。
……ひ、姫は私ひとりだけで良いのかな?
[二階堂先生]
「よーし、やりたい野郎は手を上げろ!」
先生の掛け声と同時に、教室の全男子がふざけて手を上げまくる。
[狂沢 蛯斗]
「!!」
狂沢くん、めっちゃ挙手の姿勢綺麗っ!!
[木之本 夏樹]
「お、おいお前ら! 挙げるな!」
そう言って木之本くんが、男子達を睨み付ける。
お、お、多すぎ〜!!
[二階堂先生]
「おいおい、お前ら全員上げてどうすんだよー! 欲しいのは5人までだって!」
ほんとだよ!!
これじゃ何人の王子様になるのよ……。
[文島 秋]
「あはは……」
乾いた笑いをする文島くん。
学級委員だよね? 皆をとめてよ。
[巣桜 司]
「ひぇ……すぎょい」
ビビり散らかす司くん。
……あ、文島くんと司くんだけ手上げてない。
確かにふたりは、そんなに前に出るような性格じゃないもんね。
良かった、ふたりはまともみたい。
[二階堂先生]
「よし! 3日後、王子役オーディションを開催する! 参加者は、野郎全員! ……で、良いな?」
だから、文島くんと司くんだけは、挙手してないんだってば。
でも、良いや……皆やる気になってるし。
私が、なんか言える空気じゃないよね。
[木之本 夏樹]
「な、なんでこうなるんだよ……」
貴女がとんでもないこと、言い出すからでしょ。
里沙ちゃんも、完全にふざけてるなぁ。
劇……どうなるんだろ。
不安だ。
……。
──その日の夜。
[加藤 右宏]
「ウーん……」
[朝蔵 大空]
「なぁに? 調子悪いの?」
ベッドの上、隣で丸くなって小さく
私は心配になって、ミギヒロの様子を確かめる。
熱は無いみたいだけど……。
[加藤 右宏]
「ダ、大丈夫ブ……先に寝てくレ」
[朝蔵 大空]
「うん……早く寝なよ〜」
心配ながらも、明日も学校なので私は目を閉じて、眠りに入る。
明日の学校、楽しみ……。
[加藤 右宏]
「ハァ、はぁ……
──この夜、ミギヒロの体に変化が訪れた。
「エバースプリング」おわり……。
第1傷「真紅」 〜完〜
以上、13話(26部分)を
最後に、ここまで読んで下さった優しい読者様にお願いがあります。
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頑張りますのでどうかこれからも、『悲恋の大空』をよろしくお願い致します!