第1話「ハマってしまった!」前編
──素晴らしい朝が来た。
[朝蔵 大空]
「はむはむはむっ……」
私は、朝ご飯を口にかき込む。
んー! お米が美味しい〜!
[朝蔵 葵]
「もー、
食事を終えた私は、学校カバンを持って食卓から立ち上がる。
[朝蔵 大空]
「行って来まーす!!」
今日も、私は学校へ行く。
[朝蔵 葵]
「早いわねー、あの子……」
[朝蔵 真昼]
「お姉ちゃん、最近元気だね」
[朝蔵 千夜]
「ふーん?」
私が、早く学校に行くようになったのは、会いたい人が出来たから。
私は学校が、楽しいと思えるようになった。
カラカラカラ……。
[朝蔵 大空]
「……?」
カラカラと、車輪が回る。
うちの制服を着た男の子が、車椅子に乗っていた。
[車椅子の男]
「……」
珍しい、車椅子の子とかいるんだ……もしかして、1年生かな?
ひとりで車椅子は、ちょっと大変そうだな。
足が悪い子なのかな?
私は特に干渉はせず、その横を通り過ぎる。
キーン♪ コーン♪
カーン♪ コーン♪
皆さん、初めまして……。
じゃなくて改めまして、朝蔵大空です!
私は、今年から高校2年生になったどこにでもいる、冴えない女子。
だったのですが……。
[卯月 神]
「……」
きゃあ〜♥
今日もカッコ良いよ! 卯月くんっ!
この人は私の彼氏! 卯月神くん!
私の、彼氏いない歴
[卯月 神]
「なんですか……」
私が見ていたら、卯月くんがこちらに気付いた。
[朝蔵 大空]
「あ、ごめんごめん! つい、ボーッとしてたよ〜」
私ったら知らない内に、卯月くんのこと見つめすぎちゃってたみたい。
皆は、彼のことを地味地味言うけど、きっと卯月くんは私の運命の人だと思う。
まあ周りには、一応付き合ってるとは言ってないけどね。
ふたりだけの【秘密】ってやつ。
いや……ふたりだけじゃなかった、ミギヒロも知ってるんだった。
あいつ……。
[卯月 神]
「まったく……」
やだなぁ私、卯月くんのことばっか考えちゃう。
私の顔が、幸せで
[二階堂先生]
「朝蔵〜、ここ答えてみろー」
[朝蔵 大空]
「へ!?」
ガタッ。
突然先生に
[朝蔵 大空]
「え、えとー……」
やばい、何聞かれてるんだろう私……。
話全然聞いてなかったから、答えられないよ〜!
[永瀬 里沙]
「ほら、今ここやってんの」
右斜め前に座っている里沙ちゃんが、こちらに振り返る。
[朝蔵 大空]
「どこ? あー、そこか」
この子は、私の中学からの親友の里沙ちゃん。
こうやって、私のことをいつも助けてくれる、王子様のようなカッコ良い女の子です。
[二階堂先生]
「ちゃんと集中してくれ〜」
[朝蔵 大空]
「あはは……ごめんなさい」
王子様と言えば、先日から【王子役オーディション】ってのが、宣告されました。
今年の文化祭はなんと、私達のクラスは劇をやらされることになっている。
土屋高の伝統行事らしい、私は知らなかったけど。
演目は、オリジナルストーリーの『白雪姫と7人の王子様』、なーんてものだ。
台本は小説を書くのが得意な、文芸部の子が書いてくれたらしいです。
主役の白雪姫は変わらず、この私です。
まっ、私のリアル王子様は、卯月くんだけなんだけどねー!
[永瀬 里沙]
「ねぇねぇ、例のオーディションってさ。 何するんだろうね?」
今は、お昼休みの時間。
里沙ちゃんと一緒に、学食でお昼を食べている。
[朝蔵 大空]
「さ、さぁ? 演技力テストとか?」
まあ劇だし、やっぱり演技力が試されるのかなー?
私も演技とかしたこと無いから、そこだけ少し不安だなぁ。
本番アガっちゃうかもしれないし。
って言っても、学生の文化祭レベルのクオリティだと思いますけどね。
[永瀬 里沙]
「演技! も、大事だけど〜……やっぱり顔! じゃない!?」
[朝蔵 大空]
「か、顔」
イケメン好きの里沙ちゃんは、演技力よりもやはり顔か。
[永瀬 里沙]
「だって、王子よ!? 王子なんて、イケメンがやらなきゃ許されないって! 演技だけ上手いブサ
うわー、里沙ちゃん厳しぃ〜……。
まあ気持ちは分かるし、うちの高校の人達は特にそれっぽい。
[朝蔵 大空]
「ま、まあ今の時代メイクとかで、なんとかなるんじゃない?」
[永瀬 里沙]
「そんなのダメダメダメ! 天然のイケメンじゃなきゃ! 美味しく頂けない!」
[朝蔵 大空]
「美味しく? えっ?」
ちょっとよく分からない。
その時、私達の傍に二階堂先生が通りかかる。
[二階堂先生]
「ふぅ、食った食った」
先生は、もう昼食を終えたようだ。
[永瀬 里沙]
「先生もそう思いますよね!」
里沙ちゃんが、二階堂先生に声を掛ける。
[二階堂先生]
「おっ、そうだな。 やっぱ顔は大事だよな」
[永瀬 里沙]
「えへへー、ですよねー。 それとー、オーディションって具体的に、何をするんっすかー?」
[二階堂先生]
「オーディション? あー、そんなことも言ったなぁ」
二階堂先生、自分で宣告しといて忘れてたの?
[永瀬 里沙]
「えっ? やるんですよね?」
里沙ちゃんはなんか、必死だなぁ。
私は別に、誰でも良いんだけどな。
[二階堂先生]
「うーん……言うて俺も、よく分からないんだよなー。 オーディションって、何やれば良いんだ?」
やいやい、先生も分かってないのか。
まあ、演劇部の顧問でもなんでもないしな、二階堂先生。
[永瀬 里沙]
「えー、私達に聞かれても困りますよー。 先生しっかりして下さーい」
里沙ちゃんがブーブー言っている。
[二階堂先生]
「うーん、
……せ、先生でさえも完全に、顔で選ぼうとしてるじゃん。
[朝蔵 大空]
「あ、あのー……ほんとに王子って、7人も要るんですか?」
[二階堂先生]
「何言ってるんだよ。 台本だってもう、それ専用に書き上がってるんだぞ?」
私も、貰った台本一応読んだけど、私にはちょっと理解が出来なかった。
[永瀬 里沙]
「そうよ大空! 王子は何人いても良いんだから! むしろお得よ! お得!!」
[朝蔵 大空]
「お得って……スーパーじゃないんだから」
里沙ちゃんと先生、謎に意気投合してる。
[朝蔵 大空]
「私はひとりで良かったと思うけどなー」
[二階堂先生]
「よし! 王子集めは、お前らに任せる。 期限は、1週間以内で見つけてくること。 頼んだぞ〜」
[永瀬 里沙]
「あっ、え?」
二階堂先生、私達に丸投げしてったよね?
[二階堂先生]
「あっ。 クラスで居なかったら、別のクラスから持ってくるのも、アリだから〜」
二階堂先生はそれだけ言い残して、食堂から出て行ってしまった。
[朝蔵&里沙]
「「別の……クラス?」」
え? 2年2組の出し物なのに!?
別クラスから持ってくるのもアリって……。
あの人どこまで、アウトロー教師!?
[朝蔵 大空]
「って言う訳だけど……どうする?」
シュバババっ……!
[朝蔵 大空]
「!?」
目にも止まらぬ速さで、ペンで紙に何かを書き出している里沙ちゃん。
[朝蔵 大空]
「って、もうなんか書いてるし!?」
[永瀬 里沙]
「出来た!」
[朝蔵 大空]
「何が出来たの?」
私は、書き上げられたものを見てみる。
[朝蔵 大空]
「えっ、何これ」
ふざけた文書と言うか、勧誘と言うか。
[永瀬 里沙]
「これを、そこの廊下に貼るわ。 これで王子の入れ食い状態よ!」
[朝蔵 大空]
「こんなので上手くいくかなぁ〜?」
でも、里沙ちゃんがせっかく書いてくれたものだし、やるだけやってみよう。
ざわざわ……ざわざわ……。
そうすると狙い通り、人がまるで木の蜜に集まる虫のようになった。
[モブA]
「何これ?」
[モブB]
「参加資格、2年生のイケメンって……」
[モブC]
「俺らには関係無いな」
昼休み、廊下でまあまあな人集りが出来ていた。
[永瀬 里沙]
「皆見てくれてるっぽい!」
先ほどの募集ポスターが、思ったより話題になってるようだ。
[朝蔵 大空]
「うん! どう? 顔良い子いた?」
[永瀬 里沙]
「うーん……全員フツメン……」
[朝蔵 大空]
「そっか……」
なかなか里沙ちゃんの、お眼鏡に
[永瀬 里沙]
「左から、フツメン、フツメン、フツメン、ブサメン、フツメン……」
[ブサメン]
「ガーン……!!」
[朝蔵 大空]
「あー! も〜、やめなよ!」
……。
──そして午後が始まる。
[女子生徒A]
「あっ……」
[女子生徒B]
「目合わせちゃダメだよ……」
何かを恐れている女子達。
[笹妬 吉鬼]
「……はぁ」
その視線の先は、この男。
[嫉束 界魔]
「おーい! 吉鬼ー!」
[笹妬 吉鬼]
「うわ」
休み時間、笹妬がひとりで廊下を歩いていた時だった。
[嫉束 界魔]
「ちょっと待ってよ吉鬼ー!」
[笹妬 吉鬼]
「着いて来るなよ」
嫉束が後から、笹妬に追いついて来る。
[嫉束 界魔]
「まあまあ、そんな寂しいこと言わずに。 友達だろ? 僕ら」
[笹妬 吉鬼]
「思ってもないこと、言うもんじゃない」
笹妬は嫉束とは目を合わせない、その代わりに笹妬の目に入ったのは……。
[笹妬 吉鬼]
「……?」
[嫉束 界魔]
「どうしたの、吉鬼?」
[笹妬 吉鬼]
「いや、これ……」
[嫉束 界魔]
「ん?」
嫉束は、壁のほうに目を向ける。
[嫉束 界魔]
「あ、こんな所に張り紙……ってなんか、急いで書いた感凄いね」
[笹妬 吉鬼]
「お、おう」
ふたりが今見ているのは、お昼に里沙が書いたあの【募集ポスター】。
[嫉束 界魔]
「えーっと、なになに……王子募集中? 2組は、文化祭で劇をやります。 王子役をやりたい人は、クラス関係無く集まれー!(参加資格2年生のイケメン)。 ちなみに、姫役はクラス1の地味女子……朝蔵大空ちゃんでーす! って、えっ!?」
[笹妬 吉鬼]
「どう言うこと?」
[嫉束 界魔]
「そのままの意味だよ、吉鬼! 大空ちゃんの王子役ってことは、合法的に大空ちゃんに近付けるチャンス!」
[笹妬 吉鬼]
「はぁ、お前応募すれば?」
笹妬はあまり、乗り気ではないご様子。
[嫉束 界魔]
「吉鬼は?」
[笹妬 吉鬼]
「は……? あ、いや俺は……」
[嫉束 界魔]
「まあ、そっか。 吉鬼はどっちかって言うと、悪役だもんねー」
そう言って嫉束は、笹妬を馬鹿にするように笑う。
[笹妬 吉鬼]
「……」
その時、もうひとり人の影が……。
[刹那 五木]
「なーんか、面白そうなことやってるよねー」
右から嫉束、笹妬と並んでその横に刹那が並ぶ。
[嫉束&笹妬]
「「……」」
嫉束と笹妬のふたりは、刹那とは初対面だ。
刹那はコミュ強なので、知らない人でもガンガン話し掛けていく。
[刹那 五木]
「あ、ごめん。 これこれ、これの話ね」
刹那が、壁に貼られている募集ポスターを、指でトントンとつつく。
[嫉束&笹妬]
「「……誰?」」
つづく……。