[嫉束 界魔]
「え、えっとー……」
刹那の堂々たる登場に、固まる嫉束と笹妬である。
[笹妬 吉鬼]
「……?」
[刹那 五木]
「そぉーんな、ビビられちゃうか〜」
と言って、刹那は『たはは』と笑ってみせた。
[笹妬 吉鬼]
「知り合いだっけ?」
急に話し掛けて来た刹那に、笹妬は警戒している。
[刹那 五木]
「いやいや! 全然、初対面でーす」
対して刹那は、ヘラヘラして気にしていない。
[笹妬 吉鬼]
「誰こいつ、お前の知り合い?」
[嫉束 界魔]
「いや、特には……」
笹妬は、嫉束に視線を移す。
刹那そっちのけで、小声で話しだす嫉束と笹妬。
[嫉束 界魔]
「えとぉ……刹那くんだよね? サッカー部の……」
嫉束は、刹那の名前と肩書きだけを知っている。
[刹那 五木]
「あー、そうそう! 刹那五木です! よろしくねー」
刹那は爽やかな笑顔と共に、ふたりに友好的な態度を見せる。
[嫉束 界魔]
「え? よ、よろしく」
[笹妬 吉鬼]
「よろしく……」
嫉束と笹妬は若干、刹那に押され気味。
[刹那 五木]
「で、話を戻すけどさ。 これ、君達も参加するの?」
再び壁に貼られている、募集ポスターのほうに話題が振られる。
[嫉束 界魔]
「あー……まあ、興味はあるかなって感じ」
[刹那 五木]
「だよねー! じゃあおれも」
[嫉束 界魔]
「え? 君も?」
刹那も王子役に応募すると聞き、焦る嫉束。
[刹那 五木]
「うん! てか、さっき名前教えたんだから、君とかで呼ばないでよ。 ね?」
[嫉束 界魔]
「あ、うん。 そうだね、刹那くん」
嫉束はそう言って、刹那に微笑み掛ける。
[刹那 五木]
「わ〜っ! やっぱ嫉束くんって、カッコ良いよね」
刹那は感動したように、嫉束の顔面を褒めていく。
[嫉束 界魔]
「ありがとう……」
[嫉束 界魔]
(男子に言われるの、新鮮かも)
嫉束はここで、軽く受け流していく。
[刹那 五木]
「えっと、そっちの君は……」
刹那は笑顔を保ちつつ、笹妬のほうに視線を向ける。
[笹妬 吉鬼]
「……?」
[嫉束 界魔]
「こっちは、笹妬吉鬼だよ」
[笹妬 吉鬼]
「おい、勝手に……」
[刹那 五木]
「笹妬くん? うわぁ〜、ふたり共イケメンだね!! 勝てる気がしないな〜」
嫉束と笹妬は、リアクションに困っている。
[嫉束 界魔]
(なんだろう……『勝てる気がしない』とか言いつつ、刹那くんからは絶対の自信を感じる。 この人、強い……)
刹那に対して、ただならぬものを感じる嫉束。
[刹那 五木]
「あっ。 そうだ、ねぇねぇ! 主役の
刹那は、自慢するかでもようなテンションでそう言った。
[嫉束 界魔]
「えっ、それって幼馴染みってやつ? そうなんだ……」
[嫉束 界魔]
(そう言うことか……なんなの、マウントのつもり?)
嫉束は笑顔を作りつつも、心の中でそう考える。
[笹妬 吉鬼]
「ふーん」
[笹妬 吉鬼]
(俺らに、なんのアピールだよ……)
嫉束と笹妬は、大空に男の幼馴染みがいたことを、ここで初めて知らされる。
[1組男子A]
「おーい、五木ー! そろそろ戻って来いよー!」
刹那が、クラスメイトに呼ばれる。
[刹那 五木]
「おーう!」
刹那は、それに返事をする。
[刹那 五木]
「あははー。 じゃあ、おれそろそろ行くわ〜。 またねー、" イケメンなおふたりさん " っ!」
そう言い刹那は、廊下を歩いて行ってしまった。
[嫉束 界魔]
「フレンドリーな人だったね」
[笹妬 吉鬼]
「……ああ言うの、なんて言うんだっけ」
笹妬が、嫉束に問い掛ける。
[嫉束 界魔]
「多分、陽キャラってやつだよ」
[笹妬 吉鬼]
「それだ」
嫉束の答えに、納得が出来た笹妬。
[嫉束 界魔]
「なんだろう? あの幼馴染みくんに、遠回しに " 顔だけの奴 " って、言われた気がする!」
ここで嫉束が言う幼馴染みくんとは、刹那五木のことである。
[笹妬 吉鬼]
「そうか? 考え過ぎじゃね?」
刹那の微かな悪意に気付いている嫉束に対して、笹妬はあまり気にしていない様子。
[嫉束 界魔]
「えー! 絶っ対そうだよ! ねぇ、なんか悔しくない!? 吉鬼も一緒に、応募しようよ〜」
嫉束は必死に、笹妬を誘う。
[笹妬 吉鬼]
「えぇ……。 いやぁ、俺らが出ても悪目立ちするだけだろー……」
嫉束界魔は校内では一目置かれ、笹妬吉鬼は一部の生徒から避けられている。
[笹妬 吉鬼]
「こう言うのはもっと……人望とか? そう言うのある奴のほうが、
嫉束が王子役をやるとなると、話題になるどころの騒ぎじゃない。
大大大スクープである。
[嫉束 界魔]
「そ、そうかもだけどさ! やっぱり……」
嫉束は、募集ポスターのほうに目を向けて、『姫役は朝蔵大空ちゃん』と書かれている所の文字を見る。
その下に、小さく『王子役の候補は卯月くん&木之本!!』と、書いてあるのを見つける。
[嫉束 界魔]
「……!」
[嫉束 界魔]
(あっ、大空ちゃんが言ってた卯月くん! ……ライバル、多いみたい!)
燃える嫉束。
[嫉束 界魔]
「……取られたくないよ、
[笹妬 吉鬼]
「……チャンスか」
……。
──そして、私達の教室。
[永瀬 里沙]
「へぇ、狂沢くんも参加してくれるの!?」
[狂沢 蛯斗]
「ええ! やります!!」
ふーん、狂沢くんね……条件1のイケメンは難無く、果たせているとは思う。
でも身長、私と一緒じゃん。
狂沢くん、本番で暴走しないか不安だなぁ。
[巣桜 司]
「はわわ……」
暴走と言えば、もうひとり……。
[巣桜 司]
「く、狂沢くんがやるなら、ぼくも……なーんて」
司くんもやる気なんだ……。
司くん、そもそも舞台立てるのかな?
また真っ白に、枯れたりしない?
[永瀬 里沙]
「あら! 巣桜くんまで! オーケー、オーケー! おふたりの美貌なら、やれる! 王子やれます!」
里沙ちゃんは、そう言って席から立ち上がり、元気良くグッドポーズ。
里沙ちゃん、超〜嬉しそうなんですけど。
[卯月 神]
「……」
卯月くんが、隣で不機嫌そうな顔してる。
私らが、うるさくしてるからかな、ごめんね卯月くん。
……あ、狂沢くんが卯月くんの近くに……。
[狂沢 蛯斗]
「すみませんね、卯月くん! 大空さんとの仲を、邪魔してしまったみたいで!」
うわぁ!!
なんか狂沢くん、卯月くんに煽ってるよ!?
てか、私との仲ってどう言うこと?
[卯月 神]
「あー、そうですか」
卯月くんは本読みをしたまま、狂沢くんのことをほぼ無視している。
[巣桜 司]
「うう、うわぁ〜! ダメだよ狂沢くん! そう言うの良くないよ〜! ご、ごめんなさい卯月くん! 狂沢くんがっ……」
[卯月 神]
「気にしてません」
卯月くん、即答だ!
[狂沢 蛯斗]
「なっ……!? 貴方、なに保護者面してるんですか!」
狂沢くんは、司くんに怒りを向ける。
[巣桜 司]
「ひぃ〜!! ごめんなひゃーい!!」
えっ!!?
狂沢くんの代わりに、司くんが謝った?
ひょっとして司くん、ちょっとは度胸付いたのかな?
一緒に行動する人が、アレだと似るってよく言うよね。
それでも司くん、狂沢くんに変な影響受けてないと良いけど……。
[木之本 夏樹]
「くそっ! なんだよ7人って、多すぎだろ! 俺があいつの代わりに、王子やる作戦だったのに……」
[文島 秋]
「お前が王子ふたりでやれば良い、とか提案するから複雑になったんだろ〜」
[木之本 夏樹]
「大体! あいつらが付き合ってるってのは、ホントなのかよ!」
木之本は、大空と卯月の席に目を向ける。
[文島 秋]
「なんだろうね? 聞いても、『付き合ってない』ってふたりとも答えるし」
[木之本 夏樹]
「なんだよ! 付き合ってるなら付き合ってるで、そう言えば良いだろ。 ムカつく!」
[文島 秋]
「お前、朝蔵ちゃんのこと気にしてたもんな〜」
そう言って、文島はクスクスと笑う。
[木之本 夏樹]
「あっ! おい馬鹿! 言うなよ!」
文島に、大空のことを言われて、顔を真っ赤にする木之本であった。
……。
──そして放課後。
[朝蔵 大空]
「ミギヒロ、あんたのところは文化祭何やんの?」
今日は、たまたまミギヒロと帰りが重なったので、ふたりで帰り道を歩いていた。
[加藤 右宏]
「ヤターイ!」
[朝蔵 大空]
「ん? 屋台のこと? なんの?」
なんとか分かったけど、独特な発音だったな……ミギヒロの住む世界では、屋台とか無いのかな?
[加藤 右宏]
「ンー。 よく分かんなかったけド、うめぇもん売るらしーゼ!!」
[朝蔵 大空]
「ふふ、そうなんだ。 じゃあ、楽しみにしてるわ」
真昼に接客してもらいたーい!!
絶対行くー!!
私は今から、文化祭当日が楽しみになった。
[加藤 右宏]
「あ、オレ用事あるかラ」
と言ってミギヒロは、別の道に反れて行こうとする。
[朝蔵 大空]
「そう……ご飯までには戻って来るのよー」
外出とか珍しい、でも良いねたまには。
どこ行くんだろ? と、少し気になるけど……プライベートだから、あんまり聞いちゃ悪いよね。
……。
[加藤 右宏]
「オーい! 来たゾー! いるかァー?」
──ここはどこかの路地裏。
[???]
「ん、いるよ」
黒い影から、何者かが現れる。
[加藤 右宏]
「アリリオー! オラに " 魔力 " を分けてくレー!」
ミギヒロは、アリリオと言う少年に駆け寄り、何かを
[アリリオ]
「魔力、大事に使ってよね。 ボクだって、いちいち人間界に来るの面倒臭いから」
[加藤 右宏]
「これでも節約してるヨー」
アリリオは、ミギヒロに怪しげな
[アリリオ]
「たまには、魔王様の所に里帰りしたら? 心配してるよ」
[加藤 右宏]
「やだよーこえーもン……それにオレ! 勉強は嫌だ! アッチで修行するより、コッチのほうが自由だもン! まァ、あの天使様も嫉妬深くて、機嫌取るにモひと苦労だけどナ!」
[アリリオ]
「そうなの?」
[加藤 右宏]
「アア! そりゃあもう! アイツ、顔には出ないけド内心メラメラよ! 最近なんて特にヤベーっゾ!」
[アリリオ]
「ふーん……まあ、天使は貞節で独占欲が強い生き物。 仕方無いと言える」
アリリオは
[加藤 右宏]
「オレの苦労が分かったダろ?」
[アリリオ]
「と言うか、お母様のほうにはバレてるよ? ここでやってること……」
[加藤 右宏]
「親父にバレなきゃ良いよ、母さんだっテ、黙っててくれてるんダろ?」
[アリリオ]
「みたいだね。 と言っても、時間の問題だと思うけど」
[加藤 右宏]
「まっ! 上手くやるサ! それに親父も、まさかオレ様が人間界に降りて来てるとも思わないダろー!」
[アリリオ]
「そうかな?」
[加藤 右宏]
「ア、そうそう。 アリリオお前、アイツの家のポストにこれ、入れたダろー」
ミギヒロが懐から、いつしかの例の封筒を取り出す。
[アリリオ]
「うん、頼まれたからね。 ダメだった?」
[加藤 右宏]
「ダメダメ! アイツに問い詰められそうになったワ、急いで隠したけド!」
[アリリオ]
「話したほうが、良いと思うけどな」
[加藤 右宏]
「こんなん黙っときゃ良いんダよ! アイツとは役目が終わり次第、バイバイなんだから」
[アリリオ]
「……寂しくならないの?」
アリリオの言葉に、ミギヒロは固まる。
[加藤 右宏]
「……なるワケ無いだろ〜。 ニンゲンなんかに情は抱かなイ。 オレは、悪魔なんだかラ」
ミギヒロの物言いに、アリリオは少し悲しそうな顔をした。
[アリリオ]
「そう。 じゃあ、頑張って」
アリリオはそう言って、ミギヒロを路地裏に残してどこかへ消えて行く。
[加藤 右宏]
「……なんだアイツ」
……。
[朝蔵 大空]
「……」
私は帰り道を、ひとりで歩いていた。
[朝蔵 大空]
「暑くなってきたなぁ」
季節は春を過ぎて、春と夏の間の季節になる。
[???]
「あー、くそ……」
どこからか、人の声が聞こえた。
[朝蔵 大空]
「……? えっ!?」
道路の反対側を見ると、水路に人がハマっていた。
しかも……。
[車椅子の男]
「ここをなんとか……あーだる」
それは今朝見掛けた、" 車椅子の少年 " だった。
「ハマってしまった!」おわり……。