ざわざわ……ざわざわ……。
[女子A]
「秋祭り早く来ないかなー!」
[女子B]
「もうその話してんの? まだ文化祭も終わってないってーの」
[女子A]
「今年は絶対、彼氏と行くんだー」
[女子C]
「作れんの?」
[女子A]
「作れるもんっ!」
教室で楽しそうな会話が聞こえる中、今私はひとりで寂しく、自分の席に座っている。
[朝蔵 大空]
「すぅー……ふぅん」
里沙ちゃん大丈夫かなぁ、ああ見えてすぐ意地張っちゃうとこあるから、心配だなぁ。
ああ、私ったらどうしても、そわそわしちゃうなぁ。
いっそのこと、私も様子見に行っちゃおうかな?
あ、これは決して私が
単純に、意地っ張りな親友が心配ってだけ!!
[木之本 夏樹]
「お、おい。 ひとりなのか?」
ひとりでボーッとしている私に、木之本くんが声を掛けて来てくれる。
[朝蔵 大空]
「あ、木之本くん……ごめん」
私は目の前の木之本くんには、あまり構わず席から立ち上がる。
やっぱり気になるから……心配だから!
私も、裏庭に向かおう。
と思い、私が教室から出た時だった。
ドンっ!!
[朝蔵 大空]
「ふぐっ、ほげっ!?」
……な、何か " 硬めの弾力のあるモノ " にぶつかったよ!!
しかもその反動で、私は後ろに尻餅をついてしまった。
いったーい!! もー、なんなのよ?
[刹那 五木]
「くははっ、お前なんて声出してんだよっ」
頭上から、笑い声が聞こえてくる。
あっ、人にぶつかっちゃったみたい。
[朝蔵 大空]
「ごめんなさ……って、五木くんじゃん!」
[刹那 五木]
「おれだよ」
……なるほど。
さっきの無駄に反発力のあるものは、五木くんの胸筋だったのか、納得。
よく知らない人にぶつかったんじゃなくて、良かった……。
[刹那 五木]
「お前……見えるよ?」
[朝蔵 大空]
「はい? 何が?」
何が、『見える』って言うの?
五木くんが見ている箇所を、私は目で追う。
すると、スカートが大変なことになっているのに気付いた。
なんと、履いているスカートが大胆に
[朝蔵 大空]
「ちょっ……見たのぉ!?」
私は急いで、おかしくなったスカートを直す。
いやん、五木くんにパンツ見られちゃったかも、恥ずかしい……!!
[刹那 五木]
「誰もお前のパンツなんかで、興奮しないよ〜」
と言って五木くんは、私に手を差し出して来た。
[朝蔵 大空]
「見たかどうか聞いてるんだけど〜!!」
[刹那 五木]
「立ち上がらないの? お姫様?」
五木くんが
[朝蔵 大空]
「へ?」
ざわざわ……ざわざわ……。
!?!?
[生徒A]
「なんだ? あの、良い感じなの」
[生徒B]
「青春〜??」
[生徒C]
「もしかして、あれかな? 例の……劇の練習的な!」
[生徒A]
「すっげー! テンション上がって来たー! 本番楽しみ〜!」
!?!?
最悪……私達、変な感じに目立っちゃってるよ!?
もーう! イケメンと関わるとっ……こうなるんだっ!!
こんな感じで、いつも自分達だけ目立ってるんだ……ムカつく。
この注目度、さぞモテるんでしょうね。
[朝蔵 大空]
「……ありがとう、いいよ」
[刹那 五木]
「ん……」
私は、五木くんのその手は借りずに、自分の力だけで立ち上がってみせる。
ここで彼の手を握ったら、なんだか負けな気がしたから。
[刹那 五木]
「なんだよ、ノリ悪いなぁ。 それでもお姫様なのか?」
[朝蔵 大空]
「さっきから……それ、なんのこと?」
私のこと、お姫様お姫様って、急に変な呼び方して……。
[刹那 五木]
「え? だってお前、白雪姫の劇に出るんだろ?」
[朝蔵 大空]
「なんで知ってるのー?」
[刹那 五木]
「つっても。 あんなとこに、あんな面白いポスターがあったら、そりゃ皆見るよ」
と言って、五木くんは掲示板のほうを指さす。
[朝蔵 大空]
「……?」
あ、なるほど。
五木くん、あれを見たのか。
里沙ちゃんが描いた、あのふざけたポスター。
あのポスター、色々説明が足りてない気がするんだよね……。
[朝蔵 大空]
「……何よ、悪い?」
私のこと、馬鹿にしようとしてるでしょ……。
[刹那 五木]
「ふっ。 悪いなんて、ひと言も言ってないだろ? お前が楽しくしてるみたいで、おれも嬉しいよ」
[朝蔵 大空]
「え?」
私が…………楽しく?
[刹那 五木]
「お前、昔からすっげぇ引っ込み思案だっただろ? なのに、主役とかすげーじゃん。 何があったのかは知らないけど、成長したな!」
[朝蔵 大空]
「そんな……あ、ありがとう」
まさか五木くんが、そんなこと言ってくれるなんて……。
今の私は、里沙ちゃんや卯月くん達のおかげで、毎日楽しい!
ちょっと前まで、学校なんて面倒臭いだけだったのに。
つまらなかったのに。
でも私、そんなに楽しそうに見えてるの?
[刹那 五木]
「それでー、なんだけど。 おれも、王子役に立候補する」
[朝蔵 大空]
「い、五木くんもー?」
[刹那 五木]
「うん」
五木くんは、他クラスなのに……。
確かにあのポスターには、『他クラスでも可』みたいな、ニュアンスで書かれてるけど。
[朝蔵 大空]
「い、良いと思う! あ、そうだ。 そのこと、里沙ちゃんにはもう言ったの?」
王子役にはまず、里沙ちゃんの厳しい審査に通らないと、ダメなんだよねー。
[刹那 五木]
「そうだなぁ……」
五木くんは私の言葉で、一瞬テンションが下がった様に見えた。
[刹那 五木]
「今日辺りに、言おうと思ってたところ」
[朝蔵 大空]
「それなら、急いだほうが良いよ! 締め切り、一応明後日までなの!」
急がないと……実はなんだけど、もう居る人は居る人で、練習軽く始めちゃってるんだよね。
[刹那 五木]
「うーん。 永瀬かぁ、なーんか話し掛けにくくてな。 悪いけど、お前から永瀬に言ってもらうことって、出来るか?」
[朝蔵 大空]
「私から……」
里沙ちゃんって、話し掛けにくいかな?
私は男子と話すの苦手だけど、里沙ちゃんはよくクラスの男子達と、バカ騒ぎしてるのをよく見る。
それに五木くんなら、誰とでも話せそうだけど……?
……。
[嫉束 界魔]
「そ、それで永瀬さん、どうかな? 王子役、やっても良いかな? 僕……」
[永瀬 里沙]
「……嫉束くんって、もしかして大空のことが好きなの?」
[嫉束 界魔]
「えっ!? ま、ま、まさか! 僕と大空ちゃんは、ただの友達だよ〜」
嫉束くんったら、そんなにほっぺたをピンク色に染めて慌てられても、こっちは困るんだけど。
[永瀬 里沙]
「あ、そう」
ただの友達?
クラス違うし、大空とは接点無いはずなのに。
嫉束くんみたいな、カッコ良くて人気のある人が王子やってくれたら、そりゃ文化祭も盛り上がるけど。
嫉束くんとまでなると、人気が " 有りすぎる " のよねー……。
それに、
[永瀬 里沙]
「ごめん、嫉束くん。 貴方みたいな、超絶イケメンが出てくれるのは嬉しい。 でも、せっかくだけど……今回はご縁が無かったと言うことで、諸事情により!」
私はそう言って、多少強引に嫉束くんの前から、おサラバすることにした!
[嫉束 界魔]
「あれっ?」
さぁ、走るわよ! 全力疾走でねっ!
……。
──午後の、合同体育の時間。
[笹妬 吉鬼]
「逃げられちゃったな」
[嫉束 界魔]
「なんで!? カッコ良ければ、誰でも採用じゃないの?」
[笹妬 吉鬼]
「そりゃお前みたいな、トラブルメーカーと関わりたくないからだろ」
ピッ!♪
その時、ホイッスルの音が聞こえてくる。
[体育教師]
「おい!! 嫉束! サボるな〜!!」
笛を
[嫉束 界魔]
「は、なんで僕だけ言われんの? ……サボってませーん」
嫉束は、悪態をついて答える。
[狂沢 蛯斗]
「いーえ、サボってました。 くだらない、無駄話で」
そこで、近くに居た狂沢が
[嫉束 界魔]
「は!? くだらなくないしっ」
嫉束は、狂沢に向かって
[狂沢 蛯斗]
「では、なんの話をしていたんですか?」
[嫉束 界魔]
「ふっふーん! 聞いて驚くなよ? 実は僕……王子役に立候補したんだー!」
[笹妬 吉鬼]
「不採用だったけどな」
[嫉束 界魔]
「もー! 吉鬼は余計なこと、言わなくて良いのー!」
[笹妬 吉鬼]
「寄るな、アツい」
笹妬は、近くに寄って来た嫉束から、一歩後ろに下がって離れようとする。
[狂沢 蛯斗]
「そうですか、それは残念でしたねー」
[巣桜 司]
「はぁハァ……狂沢くん、ぼくはもう倒れそうですぅ……!」
狂沢は、疲労を訴える巣桜を無視して、嫉束と話し続ける。
[狂沢 蛯斗]
「まっ! ボクは、OKをもらえましたけど」
[嫉束 界魔]
「何に? 木の役に?」
ニコニコした嫉束が、すかさず狂沢にそう言い放つ。
[狂沢 蛯斗]
「……違いますよ、王子です」
[嫉束 界魔]
「君が王子〜?」
嫉束は、狂沢の答えを聞いてクスクスと、馬鹿にするように笑う。
[狂沢 蛯斗]
「なに?」
[嫉束 界魔]
「だって君、ちっちゃいじゃーん!」
[狂沢 蛯斗]
「は?」
嫉束は、狂沢の地雷を踏んだ。
[巣桜 司]
「あぅ……」
[狂沢 蛯斗]
「ボ、ボクはもちろん、これから高くなるんです! 将来は、180センチになる予定なんです! 貴方なんか……
[嫉束 界魔]
「あははっ! ナイナイ!」
[笹妬 吉鬼]
「おい……やめとけよ、お前」
流石にまずいと思った笹妬が、調子に乗り気味な嫉束を、背後からやんわりと止める。
[巣桜 司]
「だ、だからぼくも言ったんです! 狂沢くんだったら、小人役のほうが良いんじゃないかって!」
[狂沢 蛯斗]
「貴方も余計なことは、言わなくて良いです!!」
[巣桜 司]
「ひいぃ……! ごめんなさい!!」
狂沢に怒鳴られた巣桜は、泣いてしまった!
[嫉束 界魔]
「あーん泣いちゃった……」
[笹妬 吉鬼]
「大丈夫?」
笹妬が、涙目の巣桜に寄り添う。
[巣桜 司]
「あ、ありがとうございます。 全然、大丈夫ですっ!」
[嫉束 界魔]
「お、お願いだよ狂沢くん!
[狂沢 蛯斗]
「いーーや、知らないですけど……」
図々しい嫉束に、さすがの狂沢も苦笑する。
[嫉束 界魔]
「なんで?!! 頭良いでしょ!!」
[狂沢 蛯斗]
「……まあ、ひとつ言うとしたら。 本気なら、諦めないことをオススメします」
[嫉束 界魔]
「ハッ!! 諦めないこと……そ、そうだよね!」
[狂沢 蛯斗]
「そうですよ。 大体のことは、ゴリ押しでなんでもいけるんですよ」
[笹妬 吉鬼]
「…………」
狂沢がそう言うと、笹妬も賛成するかのように、何回か静かに頷く。
[嫉束 界魔]
「……!! 分かった!」
……。
──午後の、休み時間。
[朝蔵 大空]
「えーー!!? まさかまさかのーー?」
[永瀬 里沙]
「誰にも言っちゃダメよー?」
あの後、里沙ちゃんは息を切らしながら、教室に戻ってきた。
今話を聞いたら、手紙の相手は嫉束くん達だったみたいで。
どうやら、嫉束くんの方が私達の劇に、参戦したがってるらしい。
[朝蔵 大空]
「
[永瀬 里沙]
「入れる訳ないでしょ。 あんな爆弾、面倒見れないわよ」
もったいなーい!
……けど、しょうがないよね。
[永瀬 里沙]
「とりあえず、移動しよ」
[朝蔵 大空]
「う、うん」
次は理科の授業で、理科室への移動になる。
[嫉束 界魔]
「待ってーぇ!」
ズザァーっと、誰かが私達の足元を這い
[朝蔵 大空]
「きゃっ!」
[永瀬 里沙]
「な、何!?」
嫉束くん!?
そんな、地面に転がって汚いよ!!
[嫉束 界魔]
「お願いします! 僕を、王子役にして下さい! なんでもしますから!」
「持つべきもの」おわり……。