──本日も、夏が始まり暑い暑い朝。
そう言えば、文化祭が終わったら夏休みだー。
卯月くんと、プールとか……?
キャー!♡///
あー、でも……なんか恥ずかしいなぁ〜。
[朝蔵 大空]
「暑い……食欲無ぁーい」
体力の無い私は、夏バテでこのとおりすっかり、食欲を無くしている。
[朝蔵 葵]
「ちゃんと食べなさーい、大空! 食べなきゃ体、動かないんだから〜」
それは、そうだけど……。
それにこんなに暑くても、学校に行かなきゃいけないんだよねー……。
[加藤 右宏]
「ばくばくばくっ!!」
真正面のミギヒロは、物凄いスピードで茶碗のご飯を、口にかき込んでいる。
今日も今日とて、行儀が悪いなぁ……。
[朝蔵 葵]
「ほら、ミギヒロちゃんを見習ってー」
こんな
[朝蔵 葵]
「はい頑張って、ご飯もう一杯!」
そう言って、私の茶碗に白飯を足して、渡してくるお母さん。
[朝蔵 大空]
「いや、もう要らないんだってば……」
でも仕方無い、一度よそってしまわれた物は、食べるしかない。
私は気合いで食べようと、茶碗を手に取った。
[朝蔵 千夜]
「おっはよー♪」
その時、リビングのドアが開けられて、お兄ちゃんが入って来た。
[朝蔵 大空]
「あれ、今日は早いんだね」
今は、私も学校へ行く前の時間。
この時間なら、お兄ちゃんはいつも寝ているはず。
[朝蔵 千夜]
「って言うか、朝帰り♡」
また、
それでこの元気さは凄い、私も見習ったほうが良いかな?
[朝蔵 葵]
「あら千ちゃん、ご飯食べるの?」
[朝蔵 千夜]
「うん! 頂こうかな♪」
そして、お兄ちゃんもテーブルに加わって、私達は一緒に朝ご飯を食べ始める。
[朝蔵 千夜]
「ねーねー、もうすぐ土屋の文化祭だよね? 君達、クラスで何やるの?」
食べてる最中でお兄ちゃんが、私達に文化祭のことについて話し掛けてくる。
そう言えばお兄ちゃんも、
[朝蔵 真昼]
「普通に屋台」
真昼は答えるのが面倒臭いようで、お兄ちゃんの顔を見ずにそれだけ答える。
[朝蔵 大空]
「私のところはクラスで、って言うか……何故か、合同っぽくなってるんだよね」
[朝蔵 千夜]
「合同?」
[朝蔵 大空]
「うん、劇をやるんだけどね。 演目は、白雪姫」
って言っても、もはや普通の白雪姫じゃないんだけど……。
ほんとに、あのストーリーで大丈夫かな?
[朝蔵 千夜]
「へー! 面白そうじゃん! お兄ちゃんも、遊びに行って良いよね? 劇見たいし!」
[朝蔵 大空]
「うん! 見に来てほしい!」
文化祭当日は、人がたくさん来てくれると良いなー。
その分緊張することになりそうだけど、全然人が来ないとかよりは嬉しい。
[朝蔵 千夜]
「真昼ちゃんも良いよねー?」
続けて真昼のほうにも、許可を取ろうとするお兄ちゃん。
[朝蔵 真昼]
「どうぞ」
真昼はやっぱり、里沙ちゃん以外には冷めてるよね。
あ、でも学校には一応
お兄ちゃんと会わせたら、また喧嘩しだしそうだな。
ふたりは、昔から仲悪そうだったし、そこだけ気を付けなきゃ。
……。
──午前の、文化祭の準備でのこと。
ざわざわ……ざわざわ……。
[2組男子A]
「うわ、マジで居るじゃん嫉束界魔」
[2組男子B]
「こりゃ俺ら、もう目立てねぇな」
[2組男子C]
「横に居るのは、笹妬吉鬼……?」
モブ男子達が、舞台の上で
[笹妬 吉鬼]
「緊張してる?」
[嫉束 界魔]
「うん、ちょっと」
2組のメンバーの中に混ざる、嫉束と笹妬。
[朝蔵 大空]
「あれっ!?」
体育館の端に嫉束くんと、笹妬くんが居ることに、私は気付いた。
なんで笹妬くんが、こんな所に居るの!?
[朝蔵 大空]
「笹妬くんじゃん!」
私は笹妬くんの名前を呼んで、彼の元まで駆け寄る。
[笹妬 吉鬼]
「ん。 まあ、一応……」
笹妬くんは、あからさまに気まずそうだった。
もしかして、笹妬くんも王子役に……!?
[朝蔵 大空]
「えっ! 笹妬くんも入ってくれるの?」
[笹妬 吉鬼]
「違っ、俺は
嫉束くんの、付き添い……?
そんなのもったいない!!
[卯月 神]
「…………」
少し離れた所から卯月が、大空達のことを観察している。
[朝蔵 大空]
「えっ! えっ、入ってよ! 笹妬くんカッコ良いし、絶対似合うと思う! 絶対! 絶対!」
私は興奮して、ガチ勧誘をしてしまう。
まるで、街の怪しいお店のキャッチみたいに。
[笹妬 吉鬼]
「えぇ……」
笹妬くんは、困った様な表情を浮かべていた。
[卯月 神]
「…………」
[永瀬 里沙]
「……!」
[永瀬 里沙]
(ちょっと、ちょっと大空〜。 彼氏の前でそう言う振る舞いは、良くないんじゃないかしら〜? 貴女の彼氏は、卯月くんなのよ〜?)
里沙も少し離れた所で、大空達のことを視察していた。
[笹妬 吉鬼]
「お、お前がそこまで言うなら……まあ、やってやらなくもない」
意外と簡単に、押されてしまう笹妬。
[朝蔵 大空]
「ほんと!?」
やった!
笹妬くんみたいなイケメンが入ってくれたら、文化祭が更に盛り上がるよね!
[嫉束 界魔]
「……吉鬼も押しに弱いね」
[笹妬 吉鬼]
「な、なんだよ」
[嫉束 界魔]
「ま、好きな子の頼みは断れない。 それは、僕も共感するよ。 でも、負けないから」
[笹妬 吉鬼]
「はい?」
なんのことなのか、笹妬は理解出来ていない。
[朝蔵 大空]
「里沙ちゃ〜ん、やったよー! 笹妬くんも、入ってくれるってー!!」
笹妬くんが、入ってくれることになって私は……。
喜びながら、里沙ちゃんの元まで走って抱き着く。
[永瀬 里沙]
「えっ、マジで?」
喜びまくる大空に対して、ビビるような反応をする里沙。
[朝蔵 大空]
「これでイケメン揃ったね!」
[永瀬 里沙]
「文島くん、本番も入ってくれるんだよね?」
[文島 秋]
「あ、うん。
このとおり、実は文島くんも練習の時、代理として入ってくれていた。
[木之本 夏樹]
「い、いつの間にこんな増えたんだよ!?」
[永瀬 里沙]
「知らん! よーし、皆そろそろ打ち合わせするよー!」
皆を集めて体育館で、劇の練習を始めようとした時だった。
……ガチャン。
体育館の扉が、開かれた音がした。
[刹那 五木]
「すまん、遅れた! まだ間に合う?」
[永瀬 里沙]
「……!?」
あれ、五木くんだ。
[永瀬 里沙]
「え。 ちょ、なんの用?」
[刹那 五木]
「……? おれもやるんだけど、王子」
[嫉束 界魔]
「うわ」
[笹妬 吉鬼]
「出た」
嫉束も、笹妬も里沙も、刹那の突然の登場に表情が強張る。
[刹那 五木]
「お前、言っとけって言ったじゃん」
[朝蔵 大空]
「あ、ごめん忘れてた」
そう言えば!
里沙ちゃんに五木くんのこと、言うの忘れてたよ!
[永瀬 里沙]
「え……嫌なんだけど、私」
[朝蔵 大空]
「なんで?」
私には、里沙ちゃんが五木くんを嫌がる理由が、分からなかった。
[永瀬 里沙]
「なんで、って……? それは、あんたもよく……」
[刹那 五木]
「里沙」
五木くんが、里沙ちゃんの肩に手を置いた。
[永瀬 里沙]
「ひっ、何?」
[刹那 五木]
「ちょっと外、来てくれるかな?」
[永瀬 里沙]
「……」
あ、里沙ちゃんが大人しく、五木くんに着いて行っちゃった……。
里沙ちゃんと五木くん、外で何話すんだろう?
そして、取り残される私達……。
……。
[永瀬 里沙]
「で、何?」
[刹那 五木]
「気付いてる? あいつが、記憶喪失になってんの」
いきなり、本題を出してくる刹那。
[永瀬 里沙]
「!! ……大空が?」
刹那の言葉に、驚く里沙。
[刹那 五木]
「そっ。 原因は、分からないけど。 中学の時の記憶が、ちょこっと消えてるっぽい」
[永瀬 里沙]
「まさか……あの子、忘れてるの?」
[刹那 五木]
「うん」
[永瀬 里沙]
「中学の時にあんたが、大空を……
刹那は里沙から、目を逸らした。
[刹那 五木]
「……うん。 だから、おれは別の中学に行ってたことにしちゃった。 あいつ今、元気にしてんでしょ? だったら……」
[永瀬 里沙]
「最低っ! あんたが、いじめをやってた事実は変わらないし。 大空にも……今からでも本当のこと、言いつけてやるから。 もう、帰って!」
里沙は刹那に、帰るように怒鳴る。
[刹那 五木]
「大空に、おれのこと言うの? 忘れてるなら忘れたままに、させたほうが良くない? また学校、行けなくなるかもよ?」
[永瀬 里沙]
「えっ……」
[永瀬 里沙]
(こいつ、ほんとに……)
私はそこで、言葉に詰まってしまう……。
[刹那 五木]
「おれも、あの時のことは後悔してるし。 今の大空が、気にしてないのも事実でしょ? それを、わざわざ言うのも違うと思うんだ」
私はこいつのことが、昔から怖くて仕方が無い。
[刹那 五木]
「そうだね、感謝するよ。 今まで、大空の傍にいてくれてありがとう。 1年の頃はもう少し、元気が無さそうに見えたんだけどなぁ……。 お前ひとりの力で、あそこまであいつが回復出来たのは、素直に凄いと思う!」
[永瀬 里沙]
「……」
ダメ……だ。
こいつの前だと、言葉が上手く出て来ない。
[刹那 五木]
「……本当はね。 もう二度とあいつの前には、現れないって決めてたんだよ? でも、あいつから話し掛けて来たんだから……仕方無い、よね?」
こんなの嘘だ。
でも、逆らえなかった。
[刹那 五木]
「それに、おれみたいなのが一番……良い
[永瀬 里沙]
「……」
私は、頷くしかなかった。
……。
[刹那 五木]
「と、言う訳で! おれも、参戦することになったんで! よろしくお願いしまーす!」
[嫉束 界魔]
「このメンバーで戦うんだね! 負けないよぉ〜! 王子役を勝ち取るのは、僕だよ!」
その瞳に、炎を燃やして奮起する嫉束。
[狂沢 蛯斗]
「貴方、何言ってるんですか?」
[嫉束 界魔]
「え、僕なんか変なこと言った?」
[巣桜 司]
「あ、あれ? 王子って、7人必要でしたよね?」
[刹那 五木]
「ふーん、そう言うことか」
この会話の意味を、刹那は一瞬で察してしまう。
[木之本 夏樹]
「つぅか……」
その時、木之本があることに気付く。
[男性陣]
「「「……?」」」
[木之本 夏樹]
「なんか人数、多くね?」
[文島 秋]
「6、7、8……あ、ほんとだ。 そこの
なんと、イケメン定員オーバー!!
[刹那 五木]
「……君は固定なんでしょ?」
刹那は、先ほどから
[卯月 神]
「ん、まあ……」
気まずそうに、刹那から目を逸らしてしまう卯月。
[嫉束 界魔]
「…………よーし分かった、エビくんを外そう」
" エビくん " ……つまりは、狂沢蛯斗を蹴落とそうとする、嫉束。
[狂沢 蛯斗]
「ボク!?」
[刹那 五木]
「よし、狂沢くんを外そうっ!」
刹那も、それに乗っかっていく。
[巣桜 司]
「あっ……あっ! それはダメです! ぼくには、狂沢くんがいないとぉー……」
[狂沢 蛯斗]
「なっ!?」
[刹那 五木]
「へぇ……ふたりって、そう言う関係なんだ? ヒュー、ヒュー! じゃあ、ふたりまとめて
狂沢と巣桜に向かって、刹那は冷やかす。
[巣桜 司]
「えっ!」
[文島 秋]
「あ、大丈夫。 僕が抜けるからさ……」
[狂沢 蛯斗]
「ぐぬぬ、ボクに恥をかかせないで下さい! 巣桜くん!!」
狂沢は、巣桜に怒りを抑え切れない。
[巣桜 司]
「ご、ごめんなさーい!」
[嫉束 界魔]
「ちょ……ちょ、ちょっと待って! 王子役って、ひとりじゃないの? 7人もいるの!? 僕、聞いてないよ〜!!」
ようやく状況が分かってきた、嫉束。
[笹妬 吉鬼]
「あほくさ」
[木之本 夏樹]
「おかしいよな!」
[文島 秋]
「お前の案じゃなかったっけ?」
[木之本 夏樹]
「俺は!! " 7人 " も要るなんて、言ってない!
そう言って木之本は、里沙のほうを指さす。
[永瀬 里沙]
「何よ! あと、あんた達うるさいから! 少し静かにして!」
[朝蔵 大空]
「あははは……」
[文島 秋]
「てか待って……別に、僕が抜ければ良い話だよね? 元々、数合わせなんだし……」
[刹那 五木]
「よし! 皆っ!! ここは正々堂々、ジャンケンで決めよう!」
[狂沢 蛯斗]
「良いでしょう!」
[文島 秋]
「聞いてる?」
何故か、終始無視されてしまう文島。
[刹那 五木]
「ほら、君も」
刹那が、ジャンケンの
[卯月 神]
「え? はい」
[刹那 五木]
「せーのっ!」
そして、刹那の掛け声と共に……。
[文島 秋]
「あ、聞いてないね」
全てを諦めた、文島の姿がそこにあった。
[永瀬 里沙]
「もう、男子って。 ほんと馬鹿……」
つづく……。