──前回、私は……。
[朝蔵 大空]
「不尾丸くん?」
車椅子の少年、不尾丸論くんと再会してしまった。
[不尾丸 論]
「……あぁ、あんたか」
反応からして私のこと、覚えててくれてたみたい!
そう言えば、同じ学校だったね。
[永瀬 里沙]
「び、美少年……えっ! 知り合い!?」
不尾丸くんとは、この前知り合ったばかりなんだよね。
あの日、溝にハマってたこの子を助けて……。
[朝蔵 大空]
「うん、ちょっとね」
[不尾丸 論]
「先日はお世話になりました、朝蔵先輩」
不尾丸くんは、首を掻きながらダルそうにしていた。
[朝蔵 大空]
「あははっ、どういたしましてー」
私はお礼を言われて、つい嬉しくなってしまう。
[朝蔵 大空]
「あっ! もし時間あったらさ、13時に体育館来て!」
暇なら、この子にも来てほしい!
[不尾丸 論]
「体育館? ……何?」
不尾丸くんは意味が分からなかったのか、私に聞き返してきた。
[朝蔵 大空]
「劇をやるの! 見に来てほしいな〜」
[永瀬 里沙]
「ぜ、是非!」
[不尾丸 論]
「……面倒臭いかな」
!?
『面倒臭い』って、そんな!
[永瀬 里沙]
「ふぁっ!?」
里沙ちゃんが、隣で気まずそうに立っている。
[朝蔵 大空]
「わ、私主役なんだけど……!」
[不尾丸 論]
「えっ、あんたが? ……ふっ」
笑われた……鼻で、馬鹿にする様に。
なんだか、失礼な子ね……。
[朝蔵 大空]
「な、なによ」
[不尾丸 論]
「あんた、そう言うタイプには見えない」
それって私に、オーラが無いってことかな!?
この子は私に、何を言いたいの〜?
[朝蔵 大空]
「色々あって……でも! 頑張るつもり! なんです……」
泣いても笑っても、今日が本番だし……!
[不尾丸 論]
「ふーん、そっ」
不尾丸くんがそう言って、私から目を離す。
[不尾丸 論]
「でもね。 人の " 根 " って、そう簡単には変わらないんだよ」
不尾丸くんが車輪を回して、私に近付いて来る。
[朝蔵 大空]
「えっ……」
人の根?
私の、根……?
[不尾丸 論]
「まっ、精々頑張って」
そんな冷たいセリフを、吐き捨てる様に……。
不尾丸くんは、私達の横を通り過ぎて行ってしまった。
[朝蔵 大空]
「あっ……」
[永瀬 里沙]
「……ちょっと感じ悪いねぇ」
里沙ちゃんの言う通り、感じが悪い。
前に会った時も、あんなんだっけ……?
[永瀬 里沙]
「まっ。 今どきの1年坊主なんて、皆あんなもんよねー」
……それとも、何かあった?
[朝蔵 大空]
「あはは……」
[永瀬 里沙]
「まあ、
原地……確か、里沙ちゃんの水泳部の後輩くん、だよね?
[朝蔵 大空]
「その子、そんなに良い子なの?」
私はまだ、その子の姿すら見たことが無いのだけれど。
[永瀬 里沙]
「うん、なかなか居ないんじゃないかしら? あっ、劇見に来てくれるって〜。 良かったね、大空!」
と言って里沙ちゃんは、私の脇腹を肘で刺してくる。
[朝蔵 大空]
「え? あ、うん……私その子のこと、知らないけどね」
その原地くんとは、違う中学だったって言う話だし。
[永瀬 里沙]
「会ったら、分かるんじゃない? 今日、会うと思うし」
[朝蔵 大空]
「うーん」
別に私は、その子に会いたくは無いかな。
[朝蔵 真昼]
「……? あ! 里沙さん!」
[永瀬 里沙]
「ひっ……! 真昼くんっ……」
里沙ちゃんは、真昼の姿を見た瞬間に、全速力で逃げて行く。
[朝蔵 真昼]
「里沙さん? なんで逃げるの?」
そして真昼が、すぐに追い掛けに行く。
[朝蔵 大空]
「うーん……」
原地……洋助くん…………。
誰なんだろう、ほんとに。
……。
[不尾丸 論]
「13時か」
[不尾丸 論]
(そう言えば、洋助も行くって言ってたな……)
……。
[卯月 神]
「また、人が増えてきましたね」
[加藤 右宏]
「だナ! このまま着実に外堀を埋めてってェ〜……くーーっ! 結末が楽しみだナ!」
[如月 凛]
「シン〜!! ミギヒロ様〜!!」
リンが、卯月達に向かって走って来る。
[卯月 神]
「リン? 来てたんですか」
[加藤 右宏]
「なんだヨ、大天使様」
[如月 凛]
「なんか! 向こうで『ダジャレ天国』って、言うのがやってるみたいです! すごーく楽しそうじゃないですかぁ〜!? 行ってみましょうよ!!」
そうふたりに、提案するリンの瞳は輝いていた。
[卯月&ミギヒロ]
「「ダジャレ……天国?」」
……。
──あれから、数時間が経った。
[永瀬 里沙]
「はぁ、はぁ……やっと逃げきれた」
やっと里沙ちゃんが、ステージ裏に戻って来た。
里沙ちゃんってば、息切れしてる……。
何かあったのかなぁ??
[永瀬 里沙]
「はいはい! 準備終わった人から並んで、並んで!! もうすぐ本番だよ〜」
……つ、ついに始まるのね!
バタっ……!!
[嫉束 界魔]
「すみません! 遅くなりました!」
[笹妬 吉鬼]
「すんません」
嫉束くんと笹妬くんが、遅れてやって来る。
キラキラキラ……☆
[永瀬 里沙]
「鼻血ブシャーーー!!!」
[朝蔵 大空]
「!?」
里沙ちゃん、鼻血吹いてどっか飛んでったーー!!
……こ、これは!!
[刹那 五木]
「おぉ、やっぱイケメンは違うね」
[笹妬 吉鬼]
「……? あぁ」
[嫉束 界魔]
「着替える時間無くて……そのまま」
これは、執事!!!
嫉束くんと笹妬くんの、タキシード姿〜!!
ちょっと、直視出来ません!
[刹那 五木]
「そう言えば、喫茶店と掛け持ちか! お疲れっ! はい、着替え」
五木くんが、ふたりの分の衣装を渡す。
[笹妬 吉鬼]
「うぃっす」
[嫉束 界魔]
「ありがとう! 着替えてくる!」
[永瀬 里沙]
「あぁ……もう少し見させて。 執事、性癖……執事、がはっ……!」
え…………?
里沙ちゃん、生きてる??
[巣桜 司]
「が、頑張って下さい! 狂沢くん!!」
[狂沢 蛯斗]
「べ、別に貴方に言われなくとも……あ、ありが……」
[木之本 夏樹]
「おい! そこ、イチャつくなよ! 本番だぞ!? 真剣にやれ、真剣に!!」
[巣桜 司]
「ひゃっ!? ご、ごめんなさい! 焼きそば買って来ますっ!」
[文島 秋]
「木之本、シー……」
木之本くん達も、張り切ってるなぁ……。
って言うか、『焼きそば』とか聞いたら、お腹空いてきちゃう。
[刹那 五木]
「じゃあ……遅く参戦した者同士、頑張りましょうかね」
[嫉束 界魔]
「おー!」
[笹妬 吉鬼]
「おう」
あっちも、謎の結束力が出来ている!
どうしよう。
私、実は……めちゃくちゃ緊張してるんだよねー!!
さっきから胸がドクドク苦しくて、舞台に立ったら頭真っ白になっちゃいそう!
[朝蔵 大空]
「くっ……」
何かで、緊張が
そう思って、私は周りを見渡した。
[卯月 神]
「朝蔵さん」
[朝蔵 大空]
「ん? 何、卯月くん?」
卯月くん、どうしたんだろう?
[朝蔵 大空]
「……?」
[卯月 神]
「布団が吹っ飛んだ!」
[朝蔵 大空]
「えっ」
[卯月 神]
「……」
まさか。
[朝蔵 大空]
「な、なんにも面白くなかったけど。 ありがとう」
私がそう言うと、卯月くんは何も言わずに男子達のほうに戻って行った。
い……今の、何ーー!?
卯月くんなりに、私の緊張を解こうとしてくれた、ってことー?!
集中、出来なくなっちゃうよ!
[朝蔵 大空]
「でも……」
さっきより、緊張がマシかも。
[永瀬 里沙]
「皆〜、失敗しても良いから。 とびきり、楽しいものにしよーねー!」
今なら、行ける! 行くしかない!
──さぁ、舞台へ!
……。
ざわざわ……。
薄暗い体育館には、それなりに人が集まっている。
[不尾丸 論]
「洋助!」
不尾丸が、ゆらゆらと杖をつく。
[洋助と言う男]
「……?」
[不尾丸 論]
「やっぱお前、見に来てたんだな……やっぱり、" 大空先輩 " 目当て?」
[洋助と言う男]
「……まあね」
やがて舞台に、役者達が出て来る。
[朝蔵 大空]
『こっ……小鳥さーん、歌をうたってみてくれなーい?』
[小鳥役]
『『『ぴよぴよぴよぴよぴよぴー』』』
もちろんそこには、衣装を身にまとった大空が、一生懸命演じている。
演技力は素人らしく、並だ。
[不尾丸 論]
「あははっ、
不尾丸は、舞台の上の大空を指さして笑う。
[朝蔵 大空]
「……? なっ……!」
あの子、見に来てるじゃない!
[不尾丸 論]
(くだらな。 これなら、幼稚園児のお遊戯会のほうが、まだ良いわ。 こんなの見ても、時間の無駄だな)
[洋助と言う男]
「先輩……大空先輩」
そんな大空に、見とれる男がここにひとり。
[不尾丸 論]
「洋助……?」
[嫉束のファンA]
「ねぇ、嫉束くんの出番まだー?」
[嫉束のファンB]
「私ら、こんな小娘のド下手な演技、見に来た訳じゃないんだけど」
[嫉束のファンC]
「早く嫉束くん出してー、時間の無駄〜」
観客には、SFCの一員だと思われる生徒も見られる。
[不尾丸 論]
「ふふんっ」
不尾丸は、それを見て静かに笑う。
[不尾丸 論]
(そうだ、馬鹿みたいじゃん。 こんなの……)
[洋助と言う男]
「無駄じゃない」
[嫉束のファンC]
「……は?」
ファン達が、こちらに振り向く。
[不尾丸 論]
「!?」
[不尾丸 論]
(おいっ……!)
[嫉束のファンB]
「何あれ、1年? うちら先輩なのに、生意気じゃない?」
[嫉束のファンA]
「水泳部の、
[原地 洋助]
「……」
原地は、鋭い目付きでファンを睨む。
[嫉束のファンB]
「はっ? 良い子で素直、って評判と全然違うじゃん、怖……」
[嫉束のファンA]
「めんどいから、あいつが居ないとこ行こ」
[嫉束のファンC]
「チッ……そだね」
原地のひと言で、気分を悪くした嫉束のファン達は、どこかへ移動して行った。
[不尾丸 論]
「すげぇな、お前」
[不尾丸 論]
(塁の奴もそうだけど、こいつもおかしい。 なんで洋助、あの先輩のことになると……)
[原地 洋助]
「…………だーって。 ボクの、大好きな大空先輩が悪く言われて、ムカついちゃったんだもーん!」
原地は声色を変えて、調子の良い喋りをする。
[不尾丸 論]
「き、キモい……」
不尾丸はそれに対して、ちょっと引いてしまう。
[原地 洋助]
「もー! キモいとか言わないでよ〜! もー!!」
[不尾丸 論]
「やめろやめろ」
[不尾丸 論]
(なんだよ、洋助まで……)
[永瀬 里沙]
『それでは皆さんお待ちかね……王子の登場です!!』
キャーーー!!!
[不尾丸 論]
「うるさ……」
非常に低クオリティ。
と言うか、安物のコスプレ衣装を身にまとった美男子達が、舞台に出て来る。
[モブA]
「あー、なるほど。 小人の代わりに、王子を7人にした、ってことか……」
[モブB]
「ちょっと面白いじゃん」
体育館内はよく盛り上がり、もはやアイドルのライブ会場。
そして、なんだかんだあって……。
[永瀬 里沙]
『大変! 姫が倒れてしまいました! 姫を眠りから救うことが出来るのは、愛のキス……そう、つまり
[不尾丸&原地]
「「は?」」
!?
[嫉束 界魔]
「きた……!」
[笹妬 吉鬼]
「お、俺パス……うわぁあ」
[嫉束 界魔]
「頑張ろう!!」
嫉束と笹妬が、顔を近付け合う。
[刹那 五木]
「凄げぇ! ほんとに、キスしてる様に見える! 狂沢くん! あ、間違えた。 エビト王子! おれ達も!」
[狂沢 蛯斗]
「っ! 何言ってんですか、貴方」
狂沢は、顔を近付けて来る刹那を拒む。
[木之本 夏樹]
「……クソっ! ヒデアキ! 気合い入れろ!」
[文島 秋]
「おう!」
次々と、王子達が
ギャーーー!!!
観客は喜ぶ者も居れば、目の前の光景に目も当てられない者も居る。
[二階堂先生]
「がーははははっ!!!」
こうやって、馬鹿笑いをする者も居る。
[原地 洋助]
「エ"ッ……」
[不尾丸 論]
「もっとキモいのきたわ」
[朝蔵 大空]
『皆! ありがとう! 皆のおかげで、目覚めることが出来たわ〜! 皆、愛してる〜!!』
[卯月 神]
『姫。 私は、姫以外の人とキスを交わすのは、どうしても出来ませんでした。 だけど、信じてほしい。 私の貴女に対する愛は、本物です。 だから、私と結婚して下さい』
卯月の棒読みが、舞台に響く。
[朝蔵 大空]
『わ、私も! 貴方のことを、1番に愛しているわ! 私は、貴女の愛を信じる!』
音楽も流れ、感動のクライマックス。
[不尾丸 論]
「……2年生って、馬鹿だな」
と、言葉を
つづく……。