悲恋の大空   作:暴走機関車ここな丸

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第9話「魔の手」前編

[原地 洋助]

 「罰ゲームじゃないです」

 

 

[朝蔵 大空]

 「!!」

 

 

 

 罰ゲームじゃなかったら……何?

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「……」

 

 

 

 とりあえず一旦、彼の話を聞いてみよう。

 

 

 

[原地 洋助]

 「って、言うか」

 

 

[朝蔵 大空]

 「……?」

 

 

 

 何??

 

 

 

[原地 洋助]

 「罰ゲームだなんて酷いです……ボク、勇気出して先輩に告白したのに……」

 

 

 

 あぁっ……!

 

 

 原地くんを、泣かせてしまった!

 

 

 手で顔を覆って、すすり泣く声が聞こえる。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「……!! だよね! ご、ごめん! 無神経なこと、言っちゃって……だから、泣かないで?」

 

 

[原地 洋助]

 「……先輩?」

 

 

 

 私が好きなのは卯月くん、それは絶対変わらない。

 

 

 考えろ、考えろー、私。

 

 

 この子が出来るだけ傷付かず、私を諦めてくれる方法!

 

 

 そうか、分かったぞ……幻滅してもらえば良いんだ!

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「で……で、でも、私なんか全然ダサいよ? 友達とか少ないし、勉強は並だし、運動は超大苦手だし」

 

 

[原地 洋助]

 「……?」

 

 

[朝蔵 大空]

 「原地くんみたいな、明るくてスポーツ出来そうな男の子とは、不釣り合いだと思うなー。 てへへ……」

 

 

 

 喰らえ! ネガティブ発言〜。

 

 

 これで、ちょっとは引いてくれたんじゃない?

 

 

 

[原地 洋助]

 「……」

 

 

 

 反応無し、まだ足りないか!

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「わ、私! 鼻毛出てても気にしないで、そのままにするタイプで……」

 

 

 

 今、めちゃくちゃ顔がアッチッチ。

 

 

 恥ずかしくても、卯月くんの為にこう言うしか無い!!

 

 

 

[原地 洋助]

 「そうですか」

 

 

[朝蔵 大空]

 「それで……それで」

 

 

 

 私は干上がる勢いで、頭をフル回転しようとしていた。

 

 

 

[原地 洋助]

 「分かりました!」

 

 

 

 え!? 原地くん、笑ってる……?

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「えっ?」

 

 

[原地 洋助]

 「もう良いです、聞きたくないです。 嘘だって、分かりますから!」

 

 

 

 最後に言ったこと以外は、本当だけどね。

 

 

 てか、全然……。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「全然、泣いてないじゃん! そっちが、嘘じゃん!」

 

 

 

 さっき泣いてたのは、演技だったのね!

 

 

 一生懸命慰めようとしてた、私が馬鹿みたい!

 

 

 

[原地 洋助]

 「あぁ……あはは!」

 

 

 

 のんきに笑ってるよ、この人。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「なんなの、君?」

 

 

 

 怒れた私は、冷めた反応を見せる。

 

 

 

[原地 洋助]

 「え?」

 

 

[朝蔵 大空]

 「……」

 

 

 

 もう、『付き合ってる人がいますから』って、言いたい。

 

 

 だけど、それは卯月くんが嫌がるみたいだから、言えないのがもどかしい。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「もういい? ごめんね」

 

 

 

 私はそれだけ言い残して、彼の前から強引に去った。

 

 

 里沙ちゃん達の所に戻ろう、私の()()()はあそこだ。

 

 

 私の…………居場所?

 

 

 ……。

 

 

 

[原地 洋助]

 「……」

 

 

[不尾丸 論]

 「おーい、大丈夫か?」

 

 

 

 立ち尽くす原地に、不尾丸が笑みを浮かべて近付く。

 

 

 

[原地 洋助]

 「……見てたの?」

 

 

[不尾丸 論]

 「まぁ、偶然だよ」

 

 

[原地 洋助]

 「あぁ、そう」

 

 

[不尾丸 論]

 「お前さ。 その性格で、なんで今までアタックしてなかったの? 一応、知り合いなんでしょ?」

 

 

[原地 洋助]

 「はぁ……」

 

 

 

 そう尋ねる不尾丸に、原地は深い溜め息を吐く。

 

 

 

[原地 洋助]

 「あの人。 おれのこと、覚えてないかも」

 

 

[不尾丸 論]

 「覚えてない?」

 

 

[原地 洋助]

 「うん。 入学式の時だって、話し掛けたよ。 でも、先輩……」

 

 

 

 ──今年の、4月。

 

 

 原地の回想、開始。

 

 

 

[原地 洋助]

 『先輩!』

 

 

[朝蔵 大空]

 『へ?』

 

 

[原地 洋助]

 『お久し振りです! 洋助です!』

 

 

[朝蔵 大空]

 『えと……』

 

 

[永瀬 里沙]

 『大空大空大空! やばいやばい! イケメン! イケメン1年生いたー! 早く早く! 来て見てよー!!』

 

 

[朝蔵 大空]

 『里沙ちゃん……あ、ごめんね』

 

 

[原地 洋助]

 『あ……先輩っ……!』

 

 

 

 ──原地の回想、終了。

 

 

 

[不尾丸 論]

 「全く相手にされてない……」

 

 

[原地 洋助]

 「ふん」

 

 

[不尾丸 論]

 「まあまあ、ドンマイ! 恋愛より友情、エンジョイしようぜ」

 

 

 

 不尾丸が、原地の背中に擦り付く。

 

 

 

[原地 洋助]

 「暑いのでくっつかないで下さーい」

 

 

[不尾丸 論]

 「えー。 だって足、疲れたんだもーん」

 

 

[原地 洋助]

 「自分の力で歩いて下さーい。 ボクは、貴方の保護者じゃないので」

 

 

[不尾丸 論]

 「えーん、ケチ〜」

 

 

 

 ……。

 

 

 

 私は里沙ちゃん達を探して、元の場所まで戻って来た。

 

 

 

[永瀬 里沙]

 「おぉ。 大空、戻って来た……」

 

 

[朝蔵 大空]

 「里沙ちゃん! あの子、やばいよ!」

 

 

[永瀬 里沙]

 「原地くん、どうなったの?」

 

 

[朝蔵 大空]

 「普通に断りました」

 

 

 

 だって私は、卯月くんと付き合ってるんだもん、ラブラブなんだもん。

 

 

 早いとこ、公認カップルになりたいなー。

 

 

 

[永瀬 里沙]

 「ホッ……なんか、安心〜。 あの子も人気、あるからさぁー」

 

 

[朝蔵 大空]

 「あの子、怖いよ! なんで人気あるのー?」

 

 

 

 ああ言う、グイグイ攻めて来る感じの子は苦手!

 

 

 

[永瀬 里沙]

 「えー? 凄い良い子じゃない? 好青年、って感じの……」

 

 

 

 もー! 皆、絶対騙されてるよ!

 

 

 

[嫉束 界魔]

 「大空ちゃーん!」

 

 

[朝蔵 大空]

 「!!」

 

 

 

 

 

 ドドドド……!!!

 

 

 

 

 

[永瀬 里沙]

 「わぁ! 何よ、あんた達〜!!?」

 

 

 

 嫉束くんを筆頭に、男子達がこちらに押し寄せて来る。

 

 

 それを避けた里沙ちゃんが、壁にへばりつく。

 

 

 

[刹那 五木]

 「告白の返事は?」

 

 

[木之本 夏樹]

 「どどど、どうなったんだよ!?」

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「まさか、OKしてませんよね??」

 

 

[巣桜 司]

 「大空さーん……」

 

 

 

 みーんな興味津々、ミーハーか。

 

 

 

[永瀬 里沙]

 「くーっ、完全にハーレムじゃない! 羨まし過ぎるわよ、大空〜! 目の保養、だけど……」

 

 

 

 指を(くわ)えて、こちらを見ている里沙ちゃん。

 

 

 何やってんの、里沙ちゃん?

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「いやいや。 全然知らない子だし、断ったよ。 多分、罰ゲームかなんかの嘘告白、だと思う……」

 

 

 

 あぁ、もう……ほんとになんだったんだろ、あの原地くんって子。

 

 

 掴み所の無い子だった。

 

 

 何度も言うけど、私の苦手な部類の子、そして無駄に賢いような子。

 

 

 

[笹妬 吉鬼]

 「なんだ、くだらない」

 

 

[嫉束 界魔]

 「良かったぁ……」

 

 

 

 なんで関係無い皆が、安心したみたいな反応するの……?

 

 

 

[卯月 神]

 「……」

 

 

 

 そして、少し離れた所から見ている卯月くん、今日も冷静だぁ。

 

 

 私は、卯月くんのそんなクールな所が好き!

 

 

 

[文島 秋]

 「誰を見ているのかな〜? 朝蔵ちゃん」

 

 

[朝蔵 大空]

 「え? あ、えーっと……」

 

 

 

 私ったら、知らぬ間に卯月くんを見て、ハート目でもしていたのだろうか。

 

 

 

[卯月 神]

 (……はぁ。 もう完全にバレてますね、これ。 どうしましょうか、何より朝蔵さんが……)

 

 

 

 卯月くん!♡(大空の心の声)

 

 

 

[卯月 神]

 (僕に夢中すぎる……朝蔵さんにはもっと、沢山の()()()()()してもらわないとなのに……)

 

 

 

 来年の文化祭までには、公認カップルになって。

 

 

 もっと堂々と、一緒に文化祭を楽しもうね!

 

 

 卯月くん!

 

 

 ……。

 

 

 この前の文化祭から、彼……里沙ちゃんの後輩の。

 

 

 原地くんは、何かと私に絡んで来るようになった。

 

 

 

[原地 洋助]

 「里沙先輩! ……大空先輩、おはようございます」

 

 

[朝蔵 大空]

 「ひっ!」

 

 

[永瀬 里沙]

 「おはよっ!」

 

 

 

 朝だってこうやって、毎日挨拶しに来るし。

 

 

 まあ、挨拶自体はとても良いことだけど。

 

 

 

 

 

 ……ドンっ!

 

 

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「……きゃっ! ごめんなさい」

 

 

 

 廊下を歩いていて、角を曲がった時も……。

 

 

 

[原地 洋助]

 「こちらこそ、すみません! お怪我は……あっ! 大空先輩じゃないですか! 偶然ですね!」

 

 

 

 彼が、いる。

 

 

 絶対、絶対絶対、待ち伏せしてた……。

 

 

 

[不尾丸 論]

 「どーも」

 

 

 

 たまーに、おまけみたいに隣に付いてくる子もいる。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「あ、不尾丸くん? そこ、友達だったんだ?」

 

 

[不尾丸 論]

 「まあ……同じ施設(そだ)……」

 

 

 

 次の瞬間には、原地くんが不尾丸くんの口を、手で塞いでいた。

 

 

 

[原地 洋助]

 「それは言うな」

 

 

 

 原地が、大空には聞こえないように、不尾丸と話す。

 

 

 

[不尾丸 論]

 「なんで?」

 

 

[原地 洋助]

 「……なんか、ちょっとカッコ悪いから」

 

 

[不尾丸 論]

 「ひでー……」

 

 

[原地 洋助]

 「ごめんなさい先輩! こいつのことは、どうか気にしないで。 ボクとお話しましょ!」

 

 

[不尾丸 論]

 「ひでー……」

 

 

[朝蔵 大空]

 「ごめん! 私、もう行くね!」

 

 

 

 私は、隙をついて逃げる。

 

 

 

[不尾丸 論]

 「あら、逃げられたよ?」

 

 

[原地 洋助]

 「……諦めないよ、先輩」

 

 

 

 ……。

 

 

 

[原地 洋助]

 「〜♪」

 

 

 

 その時間、原地は2年のクラスの廊下を、ひとり歩いていた。

 

 

 

[2年女子A]

 「あ、見て。 原地じゃない?」

 

 

[2年女子B]

 「ほんとだー、原地くんだ」

 

 

[2年女子A]

 「最近、よくこっち来るよね」

 

 

[2年女子B]

 「里沙に会いに来てるんじゃないの?」

 

 

[2年女子A]

 「それが違うみたい……」

 

 

 

 原地が、大空達の教室に顔を出そうとする。

 

 

 

[原地 洋助]

 「こんにちはー、大空先輩居ますかー?」

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「ちょっと待ちなさい」

 

 

 

 そんな原地に、狂沢が後ろから声を掛ける。

 

 

 

[原地 洋助]

 「……? なんですか?」

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「貴方、原地くんですよね?」

 

 

 

 狂沢は腕を組んで、原地と対面する。

 

 

 

[原地 洋助]

 「はい、そうですけど。 あ! 同じクラスの方ですか? 大空先輩、居ます?」

 

 

[巣桜 司]

 「……」

 

 

[巣桜 司]

 (け、喧嘩にならないと良いけど……)

 

 

 

 狂沢の横には、巣桜が付いている。

 

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「大空さん達は今、御手洗です。 用が無いなら、帰りなさい」

 

 

[原地 洋助]

 「え? 用なら、あるんですけど。 おれ……ボク、大空先輩に会いに来たんで!」

 

 

 

 原地は、悪びれる様子も無く。

 

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「教室まで来るだなんて……さすがに迷惑だって、分からないですか?」

 

 

[巣桜 司]

 「狂沢くん、やめとこーよー……」

 

 

 

 耐えきれなくなった巣桜が、狂沢を止めに入る。

 

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「貴方は黙ってて下さい!」

 

 

[巣桜 司]

 「えーん……」

 

 

 

 狂沢が怒鳴ると、巣桜は簡単に怯む。

 

 

 

[原地 洋助]

 「迷惑? あはは! 先輩、誰だか知らないですけど、面白いこと言いますねー! 大空先輩はぁ、恥ずかしいだけですよ」

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「なかなか、おめでたい頭をしていらっしゃるようですが……無いです」

 

 

[原地 洋助]

 「えぇ〜? 何故、そう言い切れるんですかぁ?」

 

 

[狂沢&巣桜]

 「「……!?」」

 

 

[狂沢 蛯斗]

 (いちいち、人を煽るような喋り方をする人ですね……)

 

 

 

 めげずに言い返して来る原地に、狂沢と巣桜はひと焦りする。

 

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「大空さんには既に、交際相手がいらっしゃるようなので……」

 

 

[原地 洋助]

 「……彼氏ってこと?」

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「そう言うことですね」

 

 

[原地 洋助]

 「それって誰ですか?」

 

 

 

 原地が、狂沢に一歩近付く。

 

 

 

[巣桜 司]

 「えとー……それは」

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「……多分、彼」

 

 

 

 狂沢は顎を使って、原地の視線を別の誰かに向けようとする。

 

 

 

[卯月 神]

 「……ぎくっ」

 

 

 

 それはこの男、卯月神である。

 

 

 

[原地 洋助]

 「……」

 

 

[卯月 神]

 「……!」

 

 

 

 卯月と、原地の目が合う。

 

 

 原地が卯月を若干睨んだ後、卯月の姿を下から上へと、品評するかのように見る。

 

 

 

[卯月 神]

 (まずい……)

 

 

 

 卯月は急いで、視線を逸らして窓のほうを見る。

 

 

 

[原地 洋助]

 「ははっ」

 

 

[卯月 神]

 (笑われた……)

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「さぁ、もう満足したでしょう?」

 

 

[原地 洋助]

 「有益な情報、どうも」

 

 

 

 そう言い捨てて、原地は去って行ってしまった。

 

 

 

[巣桜 司]

 「あっさり帰っちゃいましたね……」

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「刹那くん以上に、食えない人そうですね」

 

 

[巣桜 司]

 「狂沢くーん……ああ言う人種に喧嘩を売るのは、なかなかリスキー……」

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「ふふん、たかが1年生でしょう? リスクがなんですか。 大空さんを、原地の魔の手から守りますよ。 セコムです」

 

 

 

 狂沢の背に、大きな炎が燃え上がる(※イメージです)。

 

 

 

[巣桜 司]

 「ふえぇ……」

 

 

 

 

 

 つづく……。

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