[原地 洋助]
「罰ゲームじゃないです」
[朝蔵 大空]
「!!」
罰ゲームじゃなかったら……何?
[朝蔵 大空]
「……」
とりあえず一旦、彼の話を聞いてみよう。
[原地 洋助]
「って、言うか」
[朝蔵 大空]
「……?」
何??
[原地 洋助]
「罰ゲームだなんて酷いです……ボク、勇気出して先輩に告白したのに……」
あぁっ……!
原地くんを、泣かせてしまった!
手で顔を覆って、すすり泣く声が聞こえる。
[朝蔵 大空]
「……!! だよね! ご、ごめん! 無神経なこと、言っちゃって……だから、泣かないで?」
[原地 洋助]
「……先輩?」
私が好きなのは卯月くん、それは絶対変わらない。
考えろ、考えろー、私。
この子が出来るだけ傷付かず、私を諦めてくれる方法!
そうか、分かったぞ……幻滅してもらえば良いんだ!
[朝蔵 大空]
「で……で、でも、私なんか全然ダサいよ? 友達とか少ないし、勉強は並だし、運動は超大苦手だし」
[原地 洋助]
「……?」
[朝蔵 大空]
「原地くんみたいな、明るくてスポーツ出来そうな男の子とは、不釣り合いだと思うなー。 てへへ……」
喰らえ! ネガティブ発言〜。
これで、ちょっとは引いてくれたんじゃない?
[原地 洋助]
「……」
反応無し、まだ足りないか!
[朝蔵 大空]
「わ、私! 鼻毛出てても気にしないで、そのままにするタイプで……」
今、めちゃくちゃ顔がアッチッチ。
恥ずかしくても、卯月くんの為にこう言うしか無い!!
[原地 洋助]
「そうですか」
[朝蔵 大空]
「それで……それで」
私は干上がる勢いで、頭をフル回転しようとしていた。
[原地 洋助]
「分かりました!」
え!? 原地くん、笑ってる……?
[朝蔵 大空]
「えっ?」
[原地 洋助]
「もう良いです、聞きたくないです。 嘘だって、分かりますから!」
最後に言ったこと以外は、本当だけどね。
てか、全然……。
[朝蔵 大空]
「全然、泣いてないじゃん! そっちが、嘘じゃん!」
さっき泣いてたのは、演技だったのね!
一生懸命慰めようとしてた、私が馬鹿みたい!
[原地 洋助]
「あぁ……あはは!」
のんきに笑ってるよ、この人。
[朝蔵 大空]
「なんなの、君?」
怒れた私は、冷めた反応を見せる。
[原地 洋助]
「え?」
[朝蔵 大空]
「……」
もう、『付き合ってる人がいますから』って、言いたい。
だけど、それは卯月くんが嫌がるみたいだから、言えないのがもどかしい。
[朝蔵 大空]
「もういい? ごめんね」
私はそれだけ言い残して、彼の前から強引に去った。
里沙ちゃん達の所に戻ろう、私の
私の…………居場所?
……。
[原地 洋助]
「……」
[不尾丸 論]
「おーい、大丈夫か?」
立ち尽くす原地に、不尾丸が笑みを浮かべて近付く。
[原地 洋助]
「……見てたの?」
[不尾丸 論]
「まぁ、偶然だよ」
[原地 洋助]
「あぁ、そう」
[不尾丸 論]
「お前さ。 その性格で、なんで今までアタックしてなかったの? 一応、知り合いなんでしょ?」
[原地 洋助]
「はぁ……」
そう尋ねる不尾丸に、原地は深い溜め息を吐く。
[原地 洋助]
「あの人。 おれのこと、覚えてないかも」
[不尾丸 論]
「覚えてない?」
[原地 洋助]
「うん。 入学式の時だって、話し掛けたよ。 でも、先輩……」
──今年の、4月。
原地の回想、開始。
[原地 洋助]
『先輩!』
[朝蔵 大空]
『へ?』
[原地 洋助]
『お久し振りです! 洋助です!』
[朝蔵 大空]
『えと……』
[永瀬 里沙]
『大空大空大空! やばいやばい! イケメン! イケメン1年生いたー! 早く早く! 来て見てよー!!』
[朝蔵 大空]
『里沙ちゃん……あ、ごめんね』
[原地 洋助]
『あ……先輩っ……!』
──原地の回想、終了。
[不尾丸 論]
「全く相手にされてない……」
[原地 洋助]
「ふん」
[不尾丸 論]
「まあまあ、ドンマイ! 恋愛より友情、エンジョイしようぜ」
不尾丸が、原地の背中に擦り付く。
[原地 洋助]
「暑いのでくっつかないで下さーい」
[不尾丸 論]
「えー。 だって足、疲れたんだもーん」
[原地 洋助]
「自分の力で歩いて下さーい。 ボクは、貴方の保護者じゃないので」
[不尾丸 論]
「えーん、ケチ〜」
……。
私は里沙ちゃん達を探して、元の場所まで戻って来た。
[永瀬 里沙]
「おぉ。 大空、戻って来た……」
[朝蔵 大空]
「里沙ちゃん! あの子、やばいよ!」
[永瀬 里沙]
「原地くん、どうなったの?」
[朝蔵 大空]
「普通に断りました」
だって私は、卯月くんと付き合ってるんだもん、ラブラブなんだもん。
早いとこ、公認カップルになりたいなー。
[永瀬 里沙]
「ホッ……なんか、安心〜。 あの子も人気、あるからさぁー」
[朝蔵 大空]
「あの子、怖いよ! なんで人気あるのー?」
ああ言う、グイグイ攻めて来る感じの子は苦手!
[永瀬 里沙]
「えー? 凄い良い子じゃない? 好青年、って感じの……」
もー! 皆、絶対騙されてるよ!
[嫉束 界魔]
「大空ちゃーん!」
[朝蔵 大空]
「!!」
ドドドド……!!!
[永瀬 里沙]
「わぁ! 何よ、あんた達〜!!?」
嫉束くんを筆頭に、男子達がこちらに押し寄せて来る。
それを避けた里沙ちゃんが、壁にへばりつく。
[刹那 五木]
「告白の返事は?」
[木之本 夏樹]
「どどど、どうなったんだよ!?」
[狂沢 蛯斗]
「まさか、OKしてませんよね??」
[巣桜 司]
「大空さーん……」
みーんな興味津々、ミーハーか。
[永瀬 里沙]
「くーっ、完全にハーレムじゃない! 羨まし過ぎるわよ、大空〜! 目の保養、だけど……」
指を
何やってんの、里沙ちゃん?
[朝蔵 大空]
「いやいや。 全然知らない子だし、断ったよ。 多分、罰ゲームかなんかの嘘告白、だと思う……」
あぁ、もう……ほんとになんだったんだろ、あの原地くんって子。
掴み所の無い子だった。
何度も言うけど、私の苦手な部類の子、そして無駄に賢いような子。
[笹妬 吉鬼]
「なんだ、くだらない」
[嫉束 界魔]
「良かったぁ……」
なんで関係無い皆が、安心したみたいな反応するの……?
[卯月 神]
「……」
そして、少し離れた所から見ている卯月くん、今日も冷静だぁ。
私は、卯月くんのそんなクールな所が好き!
[文島 秋]
「誰を見ているのかな〜? 朝蔵ちゃん」
[朝蔵 大空]
「え? あ、えーっと……」
私ったら、知らぬ間に卯月くんを見て、ハート目でもしていたのだろうか。
[卯月 神]
(……はぁ。 もう完全にバレてますね、これ。 どうしましょうか、何より朝蔵さんが……)
卯月くん!♡(大空の心の声)
[卯月 神]
(僕に夢中すぎる……朝蔵さんにはもっと、沢山の
来年の文化祭までには、公認カップルになって。
もっと堂々と、一緒に文化祭を楽しもうね!
卯月くん!
……。
この前の文化祭から、彼……里沙ちゃんの後輩の。
原地くんは、何かと私に絡んで来るようになった。
[原地 洋助]
「里沙先輩! ……大空先輩、おはようございます」
[朝蔵 大空]
「ひっ!」
[永瀬 里沙]
「おはよっ!」
朝だってこうやって、毎日挨拶しに来るし。
まあ、挨拶自体はとても良いことだけど。
……ドンっ!
[朝蔵 大空]
「……きゃっ! ごめんなさい」
廊下を歩いていて、角を曲がった時も……。
[原地 洋助]
「こちらこそ、すみません! お怪我は……あっ! 大空先輩じゃないですか! 偶然ですね!」
彼が、いる。
絶対、絶対絶対、待ち伏せしてた……。
[不尾丸 論]
「どーも」
たまーに、おまけみたいに隣に付いてくる子もいる。
[朝蔵 大空]
「あ、不尾丸くん? そこ、友達だったんだ?」
[不尾丸 論]
「まあ……同じ施設
次の瞬間には、原地くんが不尾丸くんの口を、手で塞いでいた。
[原地 洋助]
「それは言うな」
原地が、大空には聞こえないように、不尾丸と話す。
[不尾丸 論]
「なんで?」
[原地 洋助]
「……なんか、ちょっとカッコ悪いから」
[不尾丸 論]
「ひでー……」
[原地 洋助]
「ごめんなさい先輩! こいつのことは、どうか気にしないで。 ボクとお話しましょ!」
[不尾丸 論]
「ひでー……」
[朝蔵 大空]
「ごめん! 私、もう行くね!」
私は、隙をついて逃げる。
[不尾丸 論]
「あら、逃げられたよ?」
[原地 洋助]
「……諦めないよ、先輩」
……。
[原地 洋助]
「〜♪」
その時間、原地は2年のクラスの廊下を、ひとり歩いていた。
[2年女子A]
「あ、見て。 原地じゃない?」
[2年女子B]
「ほんとだー、原地くんだ」
[2年女子A]
「最近、よくこっち来るよね」
[2年女子B]
「里沙に会いに来てるんじゃないの?」
[2年女子A]
「それが違うみたい……」
原地が、大空達の教室に顔を出そうとする。
[原地 洋助]
「こんにちはー、大空先輩居ますかー?」
[狂沢 蛯斗]
「ちょっと待ちなさい」
そんな原地に、狂沢が後ろから声を掛ける。
[原地 洋助]
「……? なんですか?」
[狂沢 蛯斗]
「貴方、原地くんですよね?」
狂沢は腕を組んで、原地と対面する。
[原地 洋助]
「はい、そうですけど。 あ! 同じクラスの方ですか? 大空先輩、居ます?」
[巣桜 司]
「……」
[巣桜 司]
(け、喧嘩にならないと良いけど……)
狂沢の横には、巣桜が付いている。
[狂沢 蛯斗]
「大空さん達は今、御手洗です。 用が無いなら、帰りなさい」
[原地 洋助]
「え? 用なら、あるんですけど。 おれ……ボク、大空先輩に会いに来たんで!」
原地は、悪びれる様子も無く。
[狂沢 蛯斗]
「教室まで来るだなんて……さすがに迷惑だって、分からないですか?」
[巣桜 司]
「狂沢くん、やめとこーよー……」
耐えきれなくなった巣桜が、狂沢を止めに入る。
[狂沢 蛯斗]
「貴方は黙ってて下さい!」
[巣桜 司]
「えーん……」
狂沢が怒鳴ると、巣桜は簡単に怯む。
[原地 洋助]
「迷惑? あはは! 先輩、誰だか知らないですけど、面白いこと言いますねー! 大空先輩はぁ、恥ずかしいだけですよ」
[狂沢 蛯斗]
「なかなか、おめでたい頭をしていらっしゃるようですが……無いです」
[原地 洋助]
「えぇ〜? 何故、そう言い切れるんですかぁ?」
[狂沢&巣桜]
「「……!?」」
[狂沢 蛯斗]
(いちいち、人を煽るような喋り方をする人ですね……)
めげずに言い返して来る原地に、狂沢と巣桜はひと焦りする。
[狂沢 蛯斗]
「大空さんには既に、交際相手がいらっしゃるようなので……」
[原地 洋助]
「……彼氏ってこと?」
[狂沢 蛯斗]
「そう言うことですね」
[原地 洋助]
「それって誰ですか?」
原地が、狂沢に一歩近付く。
[巣桜 司]
「えとー……それは」
[狂沢 蛯斗]
「……多分、彼」
狂沢は顎を使って、原地の視線を別の誰かに向けようとする。
[卯月 神]
「……ぎくっ」
それはこの男、卯月神である。
[原地 洋助]
「……」
[卯月 神]
「……!」
卯月と、原地の目が合う。
原地が卯月を若干睨んだ後、卯月の姿を下から上へと、品評するかのように見る。
[卯月 神]
(まずい……)
卯月は急いで、視線を逸らして窓のほうを見る。
[原地 洋助]
「ははっ」
[卯月 神]
(笑われた……)
[狂沢 蛯斗]
「さぁ、もう満足したでしょう?」
[原地 洋助]
「有益な情報、どうも」
そう言い捨てて、原地は去って行ってしまった。
[巣桜 司]
「あっさり帰っちゃいましたね……」
[狂沢 蛯斗]
「刹那くん以上に、食えない人そうですね」
[巣桜 司]
「狂沢くーん……ああ言う人種に喧嘩を売るのは、なかなかリスキー……」
[狂沢 蛯斗]
「ふふん、たかが1年生でしょう? リスクがなんですか。 大空さんを、原地の魔の手から守りますよ。 セコムです」
狂沢の背に、大きな炎が燃え上がる(※イメージです)。
[巣桜 司]
「ふえぇ……」
つづく……。