悲恋の大空   作:暴走機関車ここな丸

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第11話「火炎ボール」前編

 ──愉快な、朝。

 

 

 卯月はトコトコとひとり、登校して来ました。

 

 

 

[卯月 神]

 (何やら朝蔵さんが、『ダブルチーズバーガー』……と言うものを、本気で企んでいるようですが。 まさか、あの " 本 " が本当に効いた、と言うのでしょうか?)

 

 

 

 

 

 ドン!

 

 

 

 

 

[卯月 神]

 「あっ、ごめんなさい」

 

 

 

 曲がり角で誰かにぶつかってしまった卯月は、反射的に謝ってしまう。

 

 

 卯月の、目の前に居たのは……。

 

 

 

[原地 洋助]

 「すみません」

 

 

 

 この男、原地洋助。

 

 

 

[卯月 神]

 「貴方は……」

 

 

 

 冷静な卯月も、これにはさすがにびっくり〜!!

 

 

 

[原地 洋助]

 「ちょっと、お話。 よろしいでしょうか?」

 

 

 

 卯月より(わず)かに背の高い原地が、卯月のことを見下ろす。

 

 

 

[卯月 神]

 「お……おぉ」

 

 

 

 ……。

 

 

 

[永瀬 里沙]

 「ねーねー。 もう、あの人で良いじゃん?」

 

 

 

 今は里沙ちゃんと、校門をくぐった先の道を歩いている。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「あぁ、リンさんは……ちょっと……かなり変わってる人だから」

 

 

 

 リンさんって天使だし、それがバレたらきっと、まずいことになるんじゃないかな?

 

 

 里沙ちゃん達には、出来れば近付けたくなーい……とんでもないトラブルに、繋がってしまう気がする。

 

 

 

[永瀬 里沙]

 「顔さえ良ければ良い!!!」

 

 

[朝蔵 大空]

 「……ううん! ダメ!! 絶対、仁ノ岡くんに会ってもらうんだから!」

 

 

 

 早く里沙ちゃんに、仁ノ岡くんを見せたい!

 

 

 

[永瀬 里沙]

 「はぁ……なんで学校、来ないのかねー」

 

 

 

 仁ノ岡くんが、同じ学校に通っていることは分かっている。

 

 

 でも、極たまにしか来ないらしい。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「それは……分からない。 何か、事情があるのかもしれないけど」

 

 

 

 学校に来ない理由、何か悩みがあるのかな。

 

 

 もしかして、『いじめ』……?

 

 

 そう考えたら、胸が苦しくなる。

 

 

 勝手な想像だけど、もしそうだったら……私ひとりが背負うには、難しい問題だ。

 

 

 

[永瀬 里沙]

 「学校に来ない、ね…………」

 

 

 

 里沙ちゃんが歩みを止め、後ろで立ち止まる。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「ん?」

 

 

 

 里沙ちゃん、なんで止まったんだろう?

 

 

 

[永瀬 里沙]

 「あ、いや……大空はさ、学校楽しい?」

 

 

[朝蔵 大空]

 「えっ? 何、急に?」

 

 

[永瀬 里沙]

 「いや別に? なんとなく」

 

 

 

 里沙ちゃんが、気まずそうにそっぽを向いた。

 

 

 なんで今、そんなこと聞くんだろ……?

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「うーん…………楽しい、よ!」

 

 

[永瀬 里沙]

 「それは、どうして?」

 

 

[朝蔵 大空]

 「えーと、うん。 やっぱり、卯月くんが転校して来てくれた辺りから。 私の毎日に、()()が出たと言うか……」

 

 

[永瀬 里沙]

 「う、うん」

 

 

[永瀬 里沙]

 (また、卯月……)

 

 

[朝蔵 大空]

 「それから、もっと人生楽しみたい! って、気持ちになれた……みたいな?」

 

 

[永瀬 里沙]

 「大空……」

 

 

 

 私の言葉に、里沙ちゃんは安心する様な表情を見せる。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「それに何より、里沙ちゃんのおかげ!」

 

 

[永瀬 里沙]

 「え? ……ふふ、嬉しいこと言ってくれるじゃない!」

 

 

[朝蔵 大空]

 「ふふっ!」

 

 

 

 私達は、顔を見合わせて微笑み合う。

 

 

 

[永瀬 里沙]

 「……」

 

 

[永瀬 里沙]

 (確かに卯月が来てから、大空は明らかに変わった。 もちろん、良い方向に!! でも、卯月……って、改めて思うとなんなんだろう)

 

 

[朝蔵 大空]

 「あぁ、もーー!! 一体どこに居るんだろー、仁ノ岡塁く〜ん」

 

 

 

 頭をワシャワシャと、掻きむしる大空。

 

 

 

[永瀬 里沙]

 (あいつのことが、1番分からない。 大空は、あいつにゾッコンだけど。 あの人はなんで、大空のことが好きなの? 影薄いし、いつもボケーッ……と、してて。 大空以外の人間とも、関わろうとしない)

 

 

[朝蔵 大空]

 「せめて、写真とかあればなー。 撮る……? あー、でも盗撮はダメだしー」

 

 

[永瀬 里沙]

 (ダブルデート……出来るか分かんないけど、その時に。 卯月、あいつに聞いてやろう! 大空とどうする気なのか、詳しく!)

 

 

 

 その時、里沙が異変に気付く。

 

 

 

[永瀬 里沙]

 「……?」

 

 

 

 

 

 バサバサバサっ……。

 

 

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「どうしたの? 里沙ちゃん」

 

 

[永瀬 里沙]

 「なんか、誰かに見られてる気がして……」

 

 

 

 里沙ちゃん、何を気にしてるんだろ!?

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「えっ!」

 

 

[永瀬 里沙]

 「気のせいかな……」

 

 

[朝蔵 大空]

 「里沙ちゃん、霊感あるっけ?」

 

 

 

 幽霊的な何かじゃないよね……?

 

 

 

[永瀬 里沙]

 「無いけど。 ん〜……まぁ、ただの気のせいよね。 教室、行こっ」

 

 

[朝蔵 大空]

 「うん、行こう!! 早く、卯月くんに会いたい! 待っててねー!! 愛しの卯月く〜ん!!!」

 

 

 

 1秒でも早く、卯月くんに会いたい私は、無我夢中で教室まで突っ走る。

 

 

 

[永瀬 里沙]

 「あ、あんたほんとに変わった……変わってるわねー」

 

 

 

 ……。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「えっ!!! 卯月くん、休み!!?」

 

 

[永瀬 里沙]

 「みたいね」

 

 

 

 朝のホームルームが終わっても、卯月くんの席が(いま)だ無人のままだ。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「そんなぁ」

 

 

 

 今日一日、卯月くんと会えないなんて……。

 

 

 耐・え・ら・れ・な・い!

 

 

 耐えられない!!!

 

 

 

[木之本 夏樹]

 「あいつが今日、いないってことは……」

 

 

[文島 秋]

 「あぁ。 いくらでも朝蔵ちゃんに、アタックし放題だ」

 

 

[木之本 夏樹]

 「ゴクリ……」

 

 

[文島 秋]

 「さぁ、行ってこ……」

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「大空さん! 顔色が悪いようですが!」

 

 

[巣桜 司]

 「げ、元気出して下さい! 大空さん!」

 

 

 

 積極的に大空に話し掛けて行く、狂沢と巣桜。

 

 

 

[木之本 夏樹]

 「あぁ!?」

 

 

[文島 秋]

 「おーっと、木之本またしても先を越されたー!」

 

 

[木之本 夏樹]

 「う、うるせぇ! お前はいちいち、ふざけるな!」

 

 

 

 木之本くん達、何騒いでるんだろ……。

 

 

 仲良いなぁ。

 

 

 あー、心配してくれるのは、とっても嬉しいけど。

 

 

 今は正直、ほっといてほしいなー。

 

 

 今日はもう、モチベーションが出ません。

 

 

 さよなら、今日の私。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「かぁー」

 

 

 

 底に沈む勢いで、私の体から力が抜けて行く。

 

 

 

[永瀬 里沙]

 「ちょっと、あんた! マジでしっかりして! さっきまでの威勢は、どうしたのよ!」

 

 

 

 ダラけて椅子から、崩れ落ちそうな私を抱え、私のほっぺたを叩く里沙ちゃん。

 

 

 私は僅かな力で、バッグからケータイを取り出す。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「うぅ、『卯月くん大丈夫? 風邪でもひいた?』……っと」

 

 

 

 卯月くんを、心配するメッセージを送った。

 

 

 

[永瀬 里沙]

 「……連絡無かったの? 相変わらず冷たいわねー、あいつ。 『今日は休む』……ぐらい、言ってやれば良いのに」

 

 

[朝蔵 大空]

 「うん。 でも、それが卯月くんだから」

 

 

[永瀬 里沙]

 「何その理屈ダル」

 

 

 私は、あることを思い出す。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「あっ、1限目なんだっけ?」

 

 

[永瀬 里沙]

 「あっ! 今日、男女合同じゃね」

 

 

[朝蔵 大空]

 「えー! 体育〜!? 更に無理なんですけど〜」

 

 

 

 どうやら1限目は、男女一緒に行われる体育らしい。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「休んじゃおっかな〜……」

 

 

[永瀬 里沙]

 「馬鹿なこと言ってんじゃないわよ! さっ、着替えるよ」

 

 

 

 この精神状態で、体育は無理〜!!

 

 

 ……。

 

 

 ──その頃、卯月達は……。

 

 

 

 

 

 ドンッ!!!

 

 

 

 

 

 卯月が原地に、壁ドンされていた。

 

 

 

[原地 洋助]

 「だからっ! 付き合ってるのか、付き合ってないかで。 答えてくれれば、良いですってば!!」

 

 

[卯月 神]

 「うっ……お、落ち着いて下さい」

 

 

[原地 洋助]

 「……そうじゃなくて。 何度も言わせないで下さいよ。 卯月先輩、でしたっけ? 大空先輩と付き合ってるのか、今すぐ教えて下さい」

 

 

[卯月 神]

 「……」

 

 

[原地 洋助]

 「なんで、すぐ黙るんだよ!」

 

 

[卯月 神]

 「だって……」

 

 

[卯月 神]

 (本当は今すぐ。 『付き合ってます』……って言いたい、僕だって……)

 

 

[原地 洋助]

 「あぁ? ボクは回りくどいのが、大嫌いなんです。 早く、答えて下さい!」

 

 

[卯月 神]

 (考えろ〜、考えなくては。 この人が、納得してくれる答えを)

 

 

[卯月 神]

 「君は、朝蔵さんのことが好きなんですか?」

 

 

[原地 洋助]

 「……? そうですけど。 あの、今話してほしいのは……!」

 

 

[卯月 神]

 「僕も、今」

 

 

[原地 洋助]

 「えっ?」

 

 

[卯月 神]

 「僕も今、彼女に恋をしています!」

 

 

[原地 洋助]

 「は、はい?」

 

 

[卯月 神]

 「まだ、ちゃんとは付き合ってません」

 

 

[原地 洋助]

 「付き合ってない? えっ、『ちゃんと』……って、なに」

 

 

[卯月 神]

 「だから! お互い、良い恋敵として。 頑張りましょう、よろしくお願い致します!」

 

 

[原地 洋助]

 「ほんとに、付き合ってないの?」

 

 

[卯月 神]

 「はい。 狂沢くんとかが、勝手に妄想して。 僕と朝蔵さんが恋人、だなんて言ったんでしょう。 朝蔵さんと僕は……少し、仲が良いだけですよ」

 

 

[原地 洋助]

 「ふ……ふーん、分かった。 付き合ってないなら、良いよ。 " 恋敵 " ね。 ふんっ、了解」

 

 

 

 納得がいった原地は、解放する様に卯月の傍から離れる。

 

 

 

[卯月 神]

 「でも朝蔵さんと現在1番近しい異性は僕ですのでではさようなら失礼します」

 

 

[原地 洋助]

 「えっ?」

 

 

 

 去り際、卯月は早口で言い残して、スタスタと逃げ去る。

 

 

 

[原地 洋助]

 「あ! ちょ……ちょ、待てよ」

 

 

 

 原地が引き留めるも、卯月には無視されてしまう。

 

 

 

[原地 洋助]

 「な、なんだよあの捨て台詞(ぜりふ)……」

 

 

 

 ……。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「やれば終わるやれば終わる」

 

 

[永瀬 里沙]

 「そうよー大空、その意気よー」

 

 

 

 秋には体育祭もあって、その前に()()()宿()もあったよねー。

 

 

 もー! 体力無い私に、厳しい行事が秋に詰め込まれてて、今から嫌になる〜!

 

 

 早く、夏休みにならないかな……。

 

 

 あ、その前に期末テストもある。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「あぁ、暑い……汗かく」

 

 

[卯月 神]

 「すみません、遅れました」

 

 

[朝蔵 大空]

 「!?」

 

 

 

 今、卯月くんの声が聞こえた気がする。

 

 

 

[体育教師]

 「おう卯月、具合でも悪かったか?」

 

 

[卯月 神]

 「そうなんです」

 

 

 

 声がしたほうを振り向くと、先生と卯月くんが話しているのが見えた。

 

 

 

[永瀬 里沙]

 「あれ? 居るじゃん、休みじゃなかっんだー。 良かったね、大空」

 

 

[朝蔵 大空]

 「卯月くん!!♡」

 

 

 

 今日は皆んなで、サッカーをやるようで……。

 

 

 

[巣桜 司]

 「むんっ」

 

 

 

 あ、司くんがゴールキーパーやらされてる……。

 

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「……」

 

 

 

 相手チームの狂沢くんが、ボールと共にゴール前まで駆けて来る。

 

 

 

[巣桜 司]

 「こ、来いっ……!」

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「巣桜くん、退きなさい」

 

 

[巣桜 司]

 「え……」

 

 

 

 狂沢くんが、ゴールに立つ司くんに退くよう命令する。

 

 

 

[巣桜 司]

 「あ、はい、すみません……」

 

 

 

 司くんはそれを真に受けて、あっさり膝を揃えて退いてしまう。

 

 

 !?

 

 

 司くん!!?

 

 

 

[文島 秋]

 「今だ! 狂沢くん!!」

 

 

 

 

 

 

 ○●○!!!ゴーーール!!!○●○

 

 

 

 

 

[文島 秋]

 「ナイスだよ、狂沢くん!!」

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「ふふん、これくらい朝飯前ですよ」

 

 

 

 え!? 普通に、ズルだよね?

 

 

 

[木之本 夏樹]

 「な……に、してんの?」

 

 

[巣桜 司]

 「ハッ! ぼ、ぼくは何を……す、すみません! すみません、すみません!! すみません、すみません!!」

 

 

[木之本 夏樹]

 「お、面白いから良いけどさ……」

 

 

 

 司くんが木之本くんに、何度も頭を下げて謝る。

 

 

 

[永瀬 里沙]

 「木之本〜! あんたが、点取り返しなさいよー」

 

 

[木之本 夏樹]

 「えぇ、なんで俺が」

 

 

[文島 秋]

 「良いとこ見せれば、惚れてくれるかもしれないしな」

 

 

[木之本 夏樹]

 「!!」

 

 

 

 その瞬間、木之本くんがボール目掛けて走り出した。

 

 

 

[男子A]

 「うわぁ!! なんか急に、木之本が本気出し始めたぞ!」

 

 

[女子A]

 「きゃあ! 私こわーい!!」

 

 

 

 次は私らのチームかぁ、やりたくないなぁ。

 

 

 私は、辺りを見渡す。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「あっ」

 

 

[卯月 神]

 「……」

 

 

 

 前方の少し離れた所に、卯月くんが座っているのが見えた。

 

 

 私はそれに、そろりそろり……と、近付いて行く。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「……ん」

 

 

 

 卯月くんの後ろに立って、彼の服の裾を引っ張る。

 

 

 

[卯月 神]

 「……っ! 朝蔵さん?」

 

 

[朝蔵 大空]

 「……」

 

 

 

 って、恥ずかし!///

 

 

 授業中なのに、皆が見てるかもしれないのに、何やってんだろ私!

 

 

 

[卯月 神]

 「……ダメですよ」

 

 

[朝蔵 大空]

 「朝、居なかったから寂しかった」

 

 

[卯月 神]

 「そうですか……ごめんなさい」

 

 

 

 そう言われたと思ったら、私の頭に卯月くんの手が伸びて来る。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「へっ?」

 

 

 

 私もしかして今、卯月くんに頭触られて、まさか撫でられてる!?

 

 

 一体、どこでそんなこと覚えたの卯月くん?!!

 

 

 

[文島 秋]

 「君達、もう次のゲーム始まるよ?」

 

 

[大空&卯月]

 「「!!?」」

 

 

[文島 秋]

 「イチャついてる場合じゃ……」

 

 

[卯月 神]

 「いえ。 朝蔵さんの頭に、()()が這っていたので。 取っていただけです」

 

 

[文島 秋]

 「ふーん、そ」

 

 

 

 文島くんはニヤつきながら、木之本くんの所に戻って行った。

 

 

 毛虫!!?

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「へっ!!? どこどこ!?」

 

 

[卯月 神]

 「……貴女の髪は黒いから、熱が……熱い」

 

 

[朝蔵 大空]

 「!!」

 

 

 

 しまった……私の髪の毛が黒いせいで、卯月くんに熱い思いをさせてしまった!!!

 

 

 私、明日から丸刈りにしまーーす!!!

 

 

 

 

 

 つづく……。

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