[???]
「大丈夫かよ?」
……誰?
後ろを振り返って見えたのは、私が知らない男の子。
明るい茶髪に赤色の瞳のイケメン。
正直、かなり私のタイプの男の子だった。
[朝蔵 大空]
「ぐすっ……うわぁん……」
なのに私の顔は涙でぐちゃぐちゃ、最悪だよ。
せっかく目の前に、好みのイケメンが居るって言うのに。
こんな顔見られたくない!!
[???]
「おいっ……大丈夫なのかよ?」
私はその場に顔を隠すように泣き崩れる。
怖かった、助かった、さっきの本当に怖かった。
もしかして、この人が来たからあの子達は去って行った?
だとしたらこの人は一体何者!?
[???]
「おい!」
どうしよう、泣けちゃって上手く話せない。
[朝蔵 大空]
「うっ……」
[???]
「……そこ、座るか」
私は彼に腰や腕を掴まれ、近くにあったベンチに座らされる。
[朝蔵 大空]
「ぐすっ……ぐすっ……うぇ……ぐすっ」
[???]
「あははっ……泣きすぎだよ」
大声で泣いてたら笑われた、恥ずかしい。
穴があったら入りたい。
息がすっごくし辛い……。
[朝蔵 大空]
「うっ、私……私……」
こう言う時、何を話したら良いのか。
どう頼れば良いのか、私には分からない。
[???]
「……落ち着いてからで良いよ」
男の子は本当に私が泣き終わるまで、一緒に座って待っていた。
静かに、何も言わず。
あまりにも静かなので、不安になった私は『居なくなったのかな?』と男の子が居るほうをチラ見してしまう。
その度に彼は、必ずこちらに気付いて視線をくれる。
なんて優しいのだろう。
[朝蔵 大空]
「お、落ち着きました」
[???]
「おう」
男の子の顔を見ると、
私の胸が高鳴る。
学校の男の子にこんなに優しくされたの、初めて。
私なんかがこんなに良くされて良いんですかね?
[朝蔵 大空]
「ごめんなさい、私もう……」
『もう帰ります』と言いかけた時……。
ぐー。
あっ!?
今のは、お腹の……音??
しかも結構大きな音!!!
私の! 腹から!!
[朝蔵 大空]
「あっ……」
[???]
「お腹空いてるの?」
そう言えば、まだご飯食べてなかったな。
授業終わって里沙ちゃんと食堂に行こうとした時に、ちょうどあの子達が来たから……。
私がコクっと
[???]
「あった、これ食べて良いよ」
カバンの中からお
[朝蔵 大空]
「い、いいの?」
[???]
「良いよ」
私はその手からお煎餅を受け取って、有難く頂いた。
美味しい醤油煎餅。
[朝蔵 大空]
「パリパリ……」
[???]
「これも飲んで良いよ」
渡されたのは、小さなパックに入ってるりんごジュース。
私はりんごジュースが大好き。
本当に嬉しい、助かる。
[朝蔵 大空]
「ありがとう……!」
凄い、こんな優しい人いないわ……。
しかもこんなイケメン、うちに居た?
気になるのはこの人なんで、ひとりでこんな所に来たんだろうってこと……。
[朝蔵 大空]
「ねぇ、あっあの……」
[???]
「ん?」
横を見ると彼は握り飯を食べていた。
多分……手作りのものを。
[朝蔵 大空]
「えと……おにぎり、食べてるんですね」
[???]
「欲しい?」
そう言って彼は、口を付けていないほうのおにぎりを私に渡そうとする。
[朝蔵 大空]
「えっ、それもくれるの? いや違うの! そうじゃなくて……てかさすがに悪いよ」
さっきから私が優しくされっぱなし、色々貰われっぱなしだ。
なのに、おにぎりまで貰ったら申し訳無い。
[???]
「遠慮すんなって」
[朝蔵 大空]
「ああいや……あ! 名前! 名前なんて言うの?」
そう言えば名前をまだ聞いていない、彼が着けてるネクタイは赤色、私と同じ2年生だと思うんだけど……。
[???]
「名前? ……
笹妬くんは自分の名前を言う時、少し躊躇った様な気がした。
[朝蔵 大空]
「笹妬……くん?」
[笹妬 吉鬼]
「う、うん」
[朝蔵 大空]
「あ、私は朝蔵大空! えっと、笹妬くんって優しい人だね!」
私は泣いた後でも、精一杯の笑顔で伝える。
[笹妬 吉鬼]
「お前……知らないのか?」
[朝蔵 大空]
「え? 何が?」
笹妬くんが黙って私の目を見つめてくる。
なんかちょっと怖い。
でも同時に、照れる様な気持ちもあった。
何故なら、笹妬くんの顔はすっごくカッコ良いので。
……だ、大丈夫かな?
私、顔赤くなってないかな!?
[朝蔵 大空]
「な、何?」
そんなにマジマジと見られると困るのですが!!
でもこんなイケメンに見つめられたら、誰だってこんな反応するよね?
[笹妬 吉鬼]
「いや悪い、知らないならいいから」
私は笹妬くんの視線から解放された。
[朝蔵 大空]
「う、うん?」
[笹妬 吉鬼]
「お前の名前、大空……だっけ?」
[朝蔵 大空]
「う、うん! 合ってるよ」
[笹妬 吉鬼]
「そっか……覚えといてあげるよ」
笹妬くん、暗い人ではないけど何故か何処かミステリアス。
気になるような人……。
でもとっても優しい人。
[笹妬 吉鬼]
「なぁお前、さっきのは……」
[朝蔵 大空]
「え?」
[笹妬 吉鬼]
「なんでひとりで泣いてた?」
[朝蔵 大空]
「あぁ……色々あって」
[笹妬 吉鬼]
「……そっか」
笹妬くんはそれ以上、何も私に聞いてこなかった。
そして少しの沈黙の後……。
[笹妬 吉鬼]
「分からないけど。 大空、お前は悪くないよ」
[朝蔵 大空]
「あ、ありがとう。 そう言ってもらえるとほんとに……」
この人どこまで優しいの?
こんな初対面の可愛いくもない、地味で暗そうな私なんかに。
それと本当にどうしてこの人は、ここにひとりで来てるの?
[笹妬 吉鬼]
「ん、俺そろそろ行くわ。 じゃあな」
[朝蔵 大空]
「あ、うん」
笹妬くんは背中を向けて行ってしまった。
……またどこかでお礼したいな。
同じ学校ならきっといつか、また何処かで会えるよね。
私もひとりで居るとまた絡まれそうなので、急いで教室に戻った。
[永瀬 里沙]
「大空〜!!」
[朝蔵 大空]
「里沙……ちゃっ!?」
里沙ちゃんが、教室に戻って来た私を見つけると、走って私に抱き着いて来た。
この人の
[永瀬 里沙]
「うわ、あんた泣いてんじゃーん!」
[朝蔵 大空]
「ああ、うん、まあね」
ああ、里沙ちゃんが友達で本当に良かった。
[木之本 夏樹]
「おい、何かあったのか?」
[永瀬 里沙]
「木之本はどっか行って!!」
[木之本 夏樹]
「な、なんだよ……」
里沙ちゃん、貴女は最高の親友だよ……。
[永瀬 里沙]
「さっきの、嫉束のファンでしょ?」
[朝蔵 大空]
「うん、そうだった」
[永瀬 里沙]
「なんかあったの?」
私達は出来るだけ、教室の隅っこに寄って話す。
[朝蔵 大空]
「……バレちゃったの」
[永瀬 里沙]
「バレた? 何が?」
どうしよ、でも里沙ちゃんは信頼出来るし。
いつだって私のこと守ってくれるし、ここはちゃんと話そう。
[朝蔵 大空]
「里沙ちゃん、絶対に……絶対に驚かないでね? 大きい声も出さないで……」
[永瀬 里沙]
「わ、分かった。 なんでも来なさい?」
[朝蔵 大空]
「耳貸して」
ごにょごにょごにょ。
[永瀬 里沙]
「え……そんなことが?」
私は里沙ちゃんに全部話した、昨日怪我を嫉束くんに手当てしてもらったこと。
嫉束くんと友達になったこと、放課後に嫉束くんと連絡先を交換したこと。
それが多分、一部のファンクラブの人達にバレてしまったこと。
[永瀬 里沙]
「大空、あんた凄いわね」
[朝蔵 大空]
「えっ?」
[永瀬 里沙]
「だって……あの、S氏と……ねぇ?」
私もあの時は、結構勢いで行っちゃったところはあるからな、まあその勢いのせいでちょっと大変なことになってる訳だけど……。
[朝蔵 大空]
「う、うん……あっそうだ」
[永瀬 里沙]
「何?」
[朝蔵 大空]
「私、絶体絶命だったんだけど、助けてもらったの」
私は裏庭で、笹妬くんと出会ったことも話そうと思った。
[永瀬 里沙]
「誰に?」
[朝蔵 大空]
「えっとね」
キーン♪ コーン♪
カーン♪ コーン♪
[二階堂先生]
「よーしお前ら、午後も頑張ろーなー」
あっ、タイムオーバーになってしまった。
まあ、また今度話せばいいや。
……話すの忘れてるかもしれないけど。
[二階堂先生]
「えーっと……朝蔵!」
[朝蔵 大空]
「はひっ!?」
うわ、ボーッと授業聞いてて急に名前を呼ばれたから、思わず変な声が出てしまった。
[二階堂先生]
「大丈夫かー? 元気出せよ〜」
[朝蔵 大空]
「はーい……」
私、そんなにヘコんで見える?
普通にしてたつもりなのに、やっぱり誰かしらにバレるもんなんだなぁ。
私ってそんなに分かりやすいのかな?
テストの為にも、ちゃんと授業聞かなきゃ。
もう2年生だし!!
[朝蔵 大空]
「はぁ……恥ずかしい」
[卯月 神]
「……」
[朝蔵 大空]
「ハッ……!」
横の人に見られてる気がする!
この子は本当になんなんだろう?
でも私、本当にこの子のこと覚えてないしなぁ……。
時は過ぎ、放課後。
[永瀬 里沙]
「じゃあねー! 今日も部活行って来まーす!」
[朝蔵 大空]
「うん! 頑張って」
今日も里沙ちゃんは、プール目掛けて駆けて行く。
元気、元気。
[二階堂先生]
「おい永瀬走るな!!」
里沙ちゃんは先生を無視して走る、元気が良すぎるなぁ。
[卯月 神]
「……」
卯月くんが教室から出て行こうとしている。
[朝蔵 大空]
「むっ」
やっぱり気になる!
勇気を出して話し掛けてみよう!
[朝蔵 大空]
「卯月くん!」
[卯月 神]
「……! はい」
卯月くんは私に呼ばれて一瞬戸惑ったが、すぐにいつもの無表情に戻る。
[朝蔵 大空]
「ちょ、ちょっとお時間よろしいでしょーかー?」
[卯月 神]
「……良いですよ」
良かった、とりあえず話を聞いてもらえそう!
[朝蔵 大空]
「えとー、あのー」
やばい、何話すか全く決めてなかった。
[卯月 神]
「……朝蔵さん?」
[朝蔵 大空]
「卯月くんは……なんで昨日はあんなことしたの?」
私は思い切って、1番気になってることを聞いてみた。
果たして卯月くんはこの質問に答えてくれるだろうか?
[卯月 神]
「……それについては本当にごめんなさい」
[朝蔵 大空]
「うん、まあ別に良いんだけどさ。 意味を聞きたいの!」
[卯月 神]
「……やっぱり覚えてないんですね」
えっ、覚えてないんですね……ってやっぱり何か私が忘れてるのかな?
[朝蔵 大空]
「ご、ごめん……私、記憶力無くて」
[卯月 神]
「……そう言えば朝蔵さん、もうミギヒロくんには会いましたか?」
[朝蔵 大空]
「えっ?」
ちょっと待ってよ。
……な、なんで卯月くんの口から、急にミギヒロの名前が出てくるの?
卯月くんとミギヒロは知り合いなの??
[朝蔵 大空]
「あいつのこと知ってんの!?」
[卯月 神]
「ええ、まあ。 それで、今はあの人は?」
[朝蔵 大空]
「ミギヒロは……私の家に居ます」
もしかして、卯月くんはミギヒロと同じ……魔法使い?
もし本当にそうだったら!
[朝蔵 大空]
「ねぇ! 卯月くんも魔法使いだったりする?」
自分が意味不明な質問をしてるのは分かってる。
[卯月 神]
「は? 魔法使い? ……あの人がそう、言ったんですか?」
[朝蔵 大空]
「えっ……私はミギヒロは魔法使いだって聞いたけど……」
私はミギヒロから、自分は魔法使いで私に謎の呪いを掛けてしまった、とあの夜の夢で聞いている。
ミギヒロはまだ何も教えないと言ってるけど、卯月くんなら何か教えてくれるかもしれない!
話を聞いていると、ミギヒロのこと知ってるみたいだし。
[卯月 神]
「嘘つかれてますね」
[朝蔵 大空]
「え?」
嘘? ミギヒロが私に?
……何を?
──その頃のミギヒロ。
[加藤 右宏]
「はっ……クショーン!! 誰かがオレの噂をしている〜」
居候先でくしゃみをしていた。
「優しい鬼」おわり……。