悲恋の大空   作:暴走機関車ここな丸

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第4話「強引な契約者」後編

[朝蔵 大空]

 「あー」

 

 

 

 里沙ちゃんが居ないと1日が長すぎる。

 

 

 やっと午前の授業が終わったところだよ。

 

 

 寂しいな、里沙ちゃんに会いたい。

 

 

 お見舞いは要らないって言ってたけど、帰ったら電話してみようかな?

 

 

 ゆっくり休めてると良いんだけど。

 

 

 ……。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「何食べよう……」

 

 

 

 昼休みに食堂にやって来た、ひとりで。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「はは」

 

 

 

 ぼっち飯ぐらい慣れたもんだ。

 

 

 

 私はひとりで堂々と、孤独に唐揚げ定食を食す。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「いただきます、モグモグ……」

 

 

 

 旨い、やっぱり私唐揚げ大好き!!

 

 

 ちなみにこの学校では、全ての定食メニューを500円で食べられる。

 

 

 主食、副菜2品、汁物、サラダ、デザートまで付いてこの値段なのだから安い!

 

 

 

[???]

 「あ、麺少なめでお願いします」

 

 

 

 ──数分後。

 

 

 

 

 

 ガシャッ。

 

 

 

 

 

 私の座っているテーブルに何かドンっと置かれた。

 

 

 これは……お蕎麦(そば)??

 

 

 急に目の前に『そば定食』が現れた。

 

 

 小盛(こも)りでなんだかお上品!

 

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「おひとりですか?」

 

 

 

 げっ、またこの子。

 

 

 狂沢くんが勝手に向かいの席に座ってきた。

 

 

 何しに来たの?

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「な、何?」

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「大空さんが、ひとりでとても寂しそうに食事をしてらしたので!」

 

 

[朝蔵 大空]

 「あ、そう」

 

 

 

 寂しいとかは無いし、別にほっといてくれていいのに。

 

 

 しかも貴方なんかと一緒に居たら、地味に目立つんですけど?

 

 

 

[女子生徒A]

 「ねぇアレ、カップルかな?」

 

 

 

 違います……。

 

 

 なんなら今まで一度も喋ったこと無かったし。

 

 

 

[女子生徒B]

 「かもね、男の子可愛い〜」

 

 

 

 見られている、しかも私達が可愛いんじゃなくて、狂沢くんだけ可愛いって言われるんだね。

 

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「……」

 

 

 

 構わず麺(すす)りだした……。

 

 

 この子、なーんにも周りを気にしてないみたい。

 

 

 あー、なんか私だけ意識してて悔しい、私も気にせず、とっとと食べちゃおう。

 

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「ごくっ……」

 

 

 

 お箸を持つ手が美しい、静か……食べ方、綺麗だな。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「……」

 

 

 

 私は狂沢くんを、ジーっと観察してしまう。

 

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「あの、文島くんに言われたんですけど。 さっきはごめんなさい、ボク空気読めなくて……もうしません」

 

 

[朝蔵 大空]

 「え? うん」

 

 

 

 ……ふ、普通に謝ることも出来るんだ?

 

 

 へぇ、結構可愛いとこあんじゃん。

 

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「ごくっ」

 

 

 

 それにしても本当に少食なようで、お肉とかちゃんと食べてるのかな?

 

 

 めっちゃチビチビ食べてるし、実際チビだし。

 

 

 ……本人には言えないけど。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「……はい」

 

 

 

 私は、空いたお皿に自分の唐揚げをひとつ盛って、狂沢くんにそれをあげた。

 

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「えっ」

 

 

[朝蔵 大空]

 「食べなよ」

 

 

 

 狂沢くんは背もそうだし、色んな所がサイズ小さくて心配になる。

 

 

 目と態度は大きいけどね!

 

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「い、頂きます」

 

 

 

 狂沢くんは唐揚げを箸に取って口に運ぶ。

 

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「あ、熱っ」

 

 

[朝蔵 大空]

 「き、気を付けて……」

 

 

 

 もしかして唐揚げ食べたこと無いのかな?

 

 

 ただ単に食べ慣れてないだけ?

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「ふーふーしなよ」

 

 

 

 私は冷ましてから食べることを、狂沢くんにアドバイスする。

 

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「……ふぅ、ふぅ」

 

 

 

 あーなんか、親が開業医なんだっけ?

 

 

 もちろん里沙ちゃん情報だけど。

 

 

 里沙ちゃんってば、ちょっと顔が良い男の子のことなら、何故か詳しいから。

 

 

 確かに親がお医者さんだと、唐揚げとか食べたこと無さそう、偏見になっちゃうけど。

 

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「美味しい……」

 

 

 

 本当に初めて食べたみたいな顔してる!

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「ふふっ、あはは」

 

 

 

 私はなんだか微笑ましくて、笑いだしてしまった。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「ファースト・カラアゲだ」

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「え……なんですか? それ」

 

 

[朝蔵 大空]

 「ううん、なんでもない」

 

 

 

 一緒にご飯食べてくれてありがとう。

 

 

 意外と一緒にいて楽しいかも。

 

 

 この気持ちは……恥ずかしいから胸の内に仕舞っておこう。

 

 

 ……。

 

 

 そして、時は過ぎて放課後。

 

 

 私は狂沢くんに、中庭まで連れて来られた。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「ねぇ、部室とかって……」

 

 

 

 入部する気があるかと聞かれたら、正直無い!

 

 

 でも約束した以上、今日の見学だけは誠実に向き合おう。

 

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「無いです。 部員はボクひとりなので昨年、没収されてしまいました」

 

 

[朝蔵 大空]

 「えぇ、狂沢くんひとりー?!」

 

 

 

 ひとりなんかーい!

 

 

 それはもう部活と言っても良いのか怪しい、ただの狂沢くんの趣味だよー!!

 

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「はい……だから寂しくて。 なので大空さん、お願いします」

 

 

 

 今めっちゃ狂沢くんに詰められてます、助けて下さい。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「そっか、そっか、ちょっと離れて」

 

 

 

 私は狂沢くんの肩を、そっと押して私から離れさせる。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「でー、部活内容って何するの?」

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「もちろん、『写真を撮る』ですね〜」

 

 

[朝蔵 大空]

 「あ、ほんとにそれだけなんだ……」

 

 

 

 簡単そう、なんか私でも出来そう!

 

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「質問に答えて下さい、大空さんは……」

 

 

[朝蔵 大空]

 「ん?」

 

 

 

 何を聞かれるんだろう、怖い。

 

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「撮るのと撮られるの、どっちが好きなんですか?」

 

 

 

 何その質問、初めてされた。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「えっ」

 

 

 

 考えたこと無かったなー、でも撮られるって……モデルさんとかじゃないし。

 

 

 撮るほうも、別に大した経験も技術も無いしなぁ。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「どっちもどっちかなー? あははっ、答えられなくてごめん」

 

 

 

 ここは当たり障りの無い返答をしておこう。

 

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「そうですか……」

 

 

[朝蔵 大空]

 「狂沢くんは? どっちのほうが好きなの?」

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「ボクは撮る専門です、撮られるのは嫌いなんです……恥ずかしいから」

 

 

 

 へぇ、そう言うところはシャイなんだぁ?

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「へー」

 

 

 

 その時、狂沢くんの首に掛けてある、大きなカメラが目に入る。

 

 

 うわぁ、きっとお高いんだろうなぁ……。

 

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「あ、気になりますか?」

 

 

 

 狂沢くんは、私がカメラを見ていることに気付く。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「う、うん!」

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「お貸ししますよ、どうぞ!」

 

 

 

 狂沢くんは、自分のカメラを私に押し付ける。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「あ、うん。 じゃあ〜……」

 

 

 

 私は起動しているカメラを、狂沢くんに向けて……。

 

 

 

 

 

 パシャ。

 

 

 

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「……!? なんでボクを撮るんですかー! 撮られるの嫌いって、言ったじゃないですか!」

 

 

[朝蔵 大空]

 「あははっ、ごめんごめん! でも可愛いじゃん」

 

 

 

 写真の狂沢くんは、なんだかいつもより間抜けそうな顔をしている。

 

 

 ちょっとこの写真欲しいかも。

 

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「返して下さい、消します」

 

 

 

 カメラが狂沢くんの手元に戻っていく。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「仕返しに私のことも撮ってみれば?」

 

 

 

 私はニカっと笑って、片手でピースサイン。

 

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「え?」

 

 

[朝蔵 大空]

 「ほら、今がチャンスだよー」

 

 

 

 狂沢くんは私に向かってカメラを構えた。

 

 

 

 

 

 パシャ。

 

 

 

 

 

 その時、木々を激しく揺らすほどの、強い風が吹き込んだ。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「わっ! 急に何、もう!」

 

 

 

 風のせいで、私の髪が乱れて最悪だ。

 

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「……綺麗だ」

 

 

[朝蔵 大空]

 「嫌味?!」

 

 

 

 こんな頭ぐしゃぐしゃなのに、綺麗な訳ないよっ!

 

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「あ、あっ、貴女はやっぱり良いな!」

 

 

 

 髪の毛を直す私に、狂沢くんがまた詰め寄って来る。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「はい?」

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「もっと貴女を撮らせて下さい!!」

 

 

 

 狂沢くん、息遣いが変……興奮していらっしゃる。

 

 

 かなり恐怖を感じた、逃げよう。

 

 

 やっぱりこの子はなんか、頭おかしい気がする。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「ご、ごめん私もうそろそろ帰るねー!」

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「御冗談でしょう? 貴女が部に入ると言うまで、帰しません!」

 

 

 

 うわー、強引すぎる。

 

 

 そんなに強い力で腕掴まれたら痛いよー。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「ちょっと! やめてよ!」

 

 

 

 

 

 バンッ!

 

 

 

 

 

 急に横からカバン? のような物が突っ込んできた。

 

 

 私の腕から、狂沢くんの手が離れる。

 

 

 これで逃げられるようになったけど、一体何が起こったの?

 

 

 今はそっちのほうが気になって、逃げようとはならなかった。

 

 

 

 

 

 バンッ! バンッ!

 

 

 

 

 

 !?

 

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「痛っ……痛いです!」

 

 

 

 狂沢くんが痛そうな声を出す。

 

 

 誰かが学校カバンを狂沢くんに、一心不乱(いっしんふらん)に叩き付けている。

 

 

 

[嫉束 界魔]

 「大空ちゃんをいじめるなー! このケダモノー!」

 

 

 

 なんとその誰かは、嫉束界魔くんだった。

 

 

 助けに来てくれたの?

 

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「……」

 

 

 

 狂沢くんは動けず、ただ耐えている。

 

 

 絶え間無い嫉束くんの攻撃が続く。

 

 

 このままじゃまずい、止めないと。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「し、嫉束くん? ちょっと……やめて……ねぇ!」

 

 

 

 これ私の声聞こえてるのかな嫉束くん……。

 

 

 狂沢くんは貧弱そうだから、本当にやめてあげてほしい!

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「やめて!!」

 

 

[嫉束 界魔]

 「あれ? あっ、僕なんてことを……」

 

 

 

 嫉束くん、我を失ってたの?

 

 

 私の大声に気付いた嫉束くんが、ようやく狂沢くんへの攻撃をやめる。

 

 

 狂沢くんは少し涙目になりながら、(ひる)んで横になっている。

 

 

 可哀想だけど、私は狂沢くんを慰めには行けない。

 

 

 

[嫉束 界魔]

 「大空ちゃん逃げるよ!」

 

 

[朝蔵 大空]

 「きゃっ……ちょ、うわぁ〜」

 

 

 

 私の手を取った嫉束くんが走り出す。

 

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「カメラが……」

 

 

 

 どうやら狂沢くんのカメラが、嫉束くんの攻撃により少し傷が付き、変形してしまったようだ。

 

 

 

[狂沢 蛯斗]

 「あれは3組の嫉束界魔……絶対、許さない!!」

 

 

 

 ああ、もう彼とは距離を取ろうと、そう思った。

 

 

 ……。

 

 

 

[嫉束 界魔]

 「あいつ、追い掛けて来なかったね」

 

 

[朝蔵 大空]

 「う、うん」

 

 

 

 助けてもらったくせに言わせてもらうけど、本当は私……貴方と居るのも怖い。

 

 

 

[嫉束 界魔]

 「僕さあの子と中学一緒だったんだけど、うん……前から変わった子だよね」

 

 

[朝蔵 大空]

 「だ、ダメかと思った……」

 

 

 

 あのままじゃ確実に強制入部だった、無理やり……。

 

 

 

[嫉束 界魔]

 「大丈夫? 何もされてない?」

 

 

[朝蔵 大空]

 「うん、私は大丈夫……それより狂沢くん、置いて来ちゃった」

 

 

 

 ボッコボコにされてたもんな、犯罪者予備軍相手でも少し心配にはなる。

 

 

 

[嫉束 界魔]

 「大丈夫だよ。 あの子しぶといから、" いじめ " られても」

 

 

[朝蔵 大空]

 「…………そうなんだ?」

 

 

 

 ふたりはよく知ってる仲なのかな?

 

 

 遠慮無くボコボコしてたから、少なくとも友達同士ではなさそう。

 

 

 嫉束くんが助けに来てくれてよかった。

 

 

 

[嫉束 界魔]

 「んまぁ狂沢くんのことは置いといて、大空ちゃんさ……」

 

 

[朝蔵 大空]

 「ん?」

 

 

[嫉束 界魔]

 「ファンクラブの子達に、なんか言われたでしょ?」

 

 

 

 はい、昨日言われたばかりです……。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「あ、うん」

 

 

[嫉束 界魔]

 「あれクラスの女子。 君の話してて、怪しかったから問い詰めたら、動画見させられたよ」

 

 

 

 動画とは例の私が、嫉束くんのケータイを無理やり奪って、連絡先を交換させたように見える動画のことだろう。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「あっ! あれなんか誤解されてて……」

 

 

[嫉束 界魔]

 「うん知ってるよ。 でも誤解は解いといたから、あと盗撮したことも怒ったよ。 だから多分もう、何もしてこないと思うよ」

 

 

 

 何もしてこないって言われても、完全には安心出来ないかな……。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「……」

 

 

[嫉束 界魔]

 「大空ちゃん、あの子達に何もされてない?」

 

 

 

 何かされたと言われると、酷い言葉を浴びせられたことぐらい。

 

 

 言われた言葉だって充分傷付いた。

 

 

 でも、それを言うのは嫉束くんになんか悪い。

 

 

 " 自分のせい " と、責任を感じさせてしまうだろうから。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「ううん、ただ話を聞かされただけ」

 

 

[嫉束 界魔]

 「そうなんだね」

 

 

[朝蔵 大空]

 「うん! あとあの時は、助けてもらったんだ!」

 

 

[嫉束 界魔]

 「そうなの? 誰に?」

 

 

[朝蔵 大空]

 「えっとね、笹妬くんって子」

 

 

[嫉束 界魔]

 「え、笹妬って……吉鬼のこと?」

 

 

 

 あれ? 友達なのかな?

 

 

 それにしてはなんか、反応が……。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「う、うん。 とっても優しかった!」

 

 

[嫉束 界魔]

 「優しくないよ、あいつは」

 

 

[朝蔵 大空]

 「え……」

 

 

 

 

 

 「強引な契約者」おわり……。

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