悲恋の大空   作:暴走機関車ここな丸

9 / 47
[嫉束 界魔]
 「優しくないよ、あいつは」



 『優しくない』……どうしてだろう。


 私は笹妬くんのことを、とっても優しい人だと思ってるし、実際優しくしてもらって私は、あの時間救われたし。


 嫉束くんは知ってて私が知らない、そんな彼がいるってことなの?



[朝蔵 大空]
 「えっと……でもね! 笹妬くんは泣いてる私に、ずっと寄り添ってくれたし。 ジュースとかくれたんだ!」



 私はあの時、笹妬くんに優しくしてもらった内容を、嫉束くんに説明する。



[嫉束 界魔]
 「泣いたの?」


[朝蔵 大空]
 「あっ」



 ──『墓穴を掘る』。



[嫉束 界魔]
 「やっぱり……何かされたんだね」



 やばい、嘘ついたってバレる!


 あの子達に、酷いことを言われたなんてバレたら、なんか嫉束くんに悪い気がするし。


 ここは誤魔化さなきゃ!



[朝蔵 大空]
 「いや? 私が転んじゃって……こ、高校生にもなって転んで泣くなんて。 だ、ダサいよね! あはっ、あははは」



 私は笑って誤魔化した、そしたら嫉束くんが話題を変えた。



[嫉束 界魔]
 「あいつには、近付かないほうが良いよ」



 ……ど、どうしてそんなことを言うの?


 そんな念を押すように言われたら、笹妬くんを見る私の目が、変わってしまいそうになる。


 それとも出会い方がたまたま良かっただけ?



[朝蔵 大空]
 「そ、そうなんだね」



 第三者からの情報を『真に受けるべきではない』そうは思っても、嫉束くんにそう言われると気になる。



[嫉束 界魔]
 「うん……ごめんね、変なこと言っちゃって。 でも、大空ちゃんには傷付いてほしくないから」



 私が笹妬くんと関わると、私が傷付くことになる?



[嫉束 界魔]
 「ほら、友達だからさ!」


[朝蔵 大空]
 「あ……そうだね」



 そうだった、嫉束くんとは友達ってことになってるんだった。


 全然、実感湧かないなぁ。


 そもそも私と嫉束くんとじゃ、周囲からの人気度とか、住む世界が違いすぎて……。


 あぁ酷いな私、自分から友達になろうって言ったのに。


 でも、友達がいなくて辛いって気持ちは私にも分かるから、せめて私だけでもって思ったんだよね。


 こんな私だけど。



[嫉束 界魔]
 「……」


[朝蔵 大空]
 「あっ」



 数人の話し声と、確かな気配を感じる。


 もうすぐ私と嫉束くんの元に、人が集まってくる……。


 そう察した私は、『どうしよう』とアワアワする。



[嫉束 界魔]
 「大空ちゃん、もう行ったほうが良いよ」



 嫉束くんに気を使わせてしまった。



[朝蔵 大空]
 「う、うん。 じゃあね」



 私は学校(がい)に出るように走り出した。



[SFC会員C]
 「あー♡ 嫉束くんだ〜」


[SFC会員D]
 「何してんのー? もしかして、テニス戻る気になった?!」
 


 嫉束を見つけた女子生徒達が、嫉束を囲むように群がる。



[嫉束 界魔]
 「……ごめんね」



 嫉束はそれに構わず彼女達から離れ、背を向け歩き出す。



[SFC会員D]
 「あーん、行っちゃった〜」


[SFC会員C]
 「あんたが余計なこと言うから!」


[SFC会員D]
 「な、なによ〜」



 嫉束が帰り、一同が残念に思う中、隙あらば喧嘩をしだす彼女達。



[嫉束 界魔]
 「…………あーあ、嫌だな。 チッ」



 嫉束は顔に似合わない、行儀の悪い舌打ちをした。



[嫉束 界魔]
 「あれさえ無ければ……クソっ」



 誰も見てない所で不満を(つぶや)く嫉束界魔であった。


 ……。



[朝蔵 大空]
 「元気?」


[永瀬 里沙]
 『うん!元気よ』



 今は自分の部屋で友達の里沙ちゃんと通話中〜。



[朝蔵 大空]
 「よかった……」


[永瀬 里沙]
 『いやぁ2年に上がってから、先輩達のコキの使いようが半端無くってさ〜! さすがの私でも潰れちゃったわ』


[朝蔵 大空]
 「きゃー、大変だ」



 うわぁ……。


 やっぱ水泳部とか、運動部ってそう言うのあるんだ……。


 パワハラ、上下関係恐るべし!



[永瀬 里沙]
 『大空もいればなぁ? 楽しいのに〜』


[朝蔵 大空]
 「え、私は無理でしょ……運動苦手だし」


[永瀬 里沙]
 『たまには体動かした方が良いよー! 気分も晴れるしさ!』



 私はスポーツをしないから、こんな内気でボーッとした性格になっちゃったのかなぁ?


 なんだか急に、自分への危機感が……。



[永瀬 里沙]
 『あ、そうそう聞いて! 新しい1年生で、めっちゃ良い感じの子がいてさー』


[朝蔵 大空]
 「へぇ、部活の?」



 どうせイケメンがいるとか、そう言う話だろうな。



[永瀬 里沙]
 『そうそう! その子いっっっっっつもニコニコしてんの! 声も出るし、おまけにイケメンでもう、部の皆全員(ぜーいん)狙ってる勢いなの〜!』



 ほら、やっぱり。



[永瀬 里沙]
 『でも私はいいや。 ハキハキ系の後輩は可愛いけど〜、私のタイプではないかな〜。 男はやっぱ、クール系一択でしょ!!』


[朝蔵 大空]
 「へーそうなんだ? なんか凄いね、あんま想像つかないけど」


[永瀬 里沙]
 「あぁ、私にもクールでイケてる王子様が現れないかしらっ!」


[朝蔵 大空]
 「……」





 ガタン、ガタン。
 




 隣の部屋から物音がする。



[朝蔵 大空]
 「あ、部屋に真昼が居る……」


[永瀬 里沙]
 『てか、この前聞いた子その子なんだけど、ほんとに知らない? 原地(はらち) 洋助(ようすけ) って名前なんだけどー』



 あーあれか、先生が部活のポスター配ってた時に聞かされたあれか。



[朝蔵 大空]
 「うん、誰?」


[永瀬 里沙]
 『マジ? なんか大空のこと知ってる感じだったよー? でも、中学の後輩にいなかったと思うし。 てか、いたらあんな可愛い子私が忘れる訳無いもん』


[朝蔵 大空]
 「あははっ、そうだね!」



 原地 洋助、どんな子なんだろう?


 ちょっと気になる……。



[永瀬 里沙]
 『中学、東中(ひがしちゅう)らしいよー、あんた東中の人と、面識あったの?』


[朝蔵 大空]
 「え、他校とか私は全然……その子が言ってるの、ほんとに私?」


[永瀬 里沙]
 「いやーでも、大空の名前出してたし……」


[朝蔵 大空]
 「えっ」



 何それちょっと怖い、なんで他校の中学校の子が、私の名前知ってんの?


 他校と言うか、自分の中学ですらあんまり話す人いなかったって言うのに。



[永瀬 里沙]
 『まあいいわ、今度また詳しく聞いてみる。 なんか知らんけど、あの子私に1番絡んで来るのよね。 だから先輩達も、私に(ねた)んで色々仕事させてくるのよ!』


[朝蔵 大空]
 「ひー、女子って怖いね。 あんまり酷いようだったらまた言ってね?」



 私の里沙ちゃんに酷い扱いするなんて、たとえ先輩(がた)でも許せない!



[永瀬 里沙]
 『あはは! 私はそんなヤワじゃないわよー。 それに、そんなっ……まあアレじゃないから心配しないでー』


[朝蔵 大空]
 「そ、そっか?」



 なんだろう、里沙ちゃんが今何か言おうとしたみたいだけど、誤魔化された気がする。


 でも、追及(ついきゅう)はしない。



[永瀬 里沙]
 『まあ風邪ぶり返すの怖いから、今日は寝るわー。 切るね!』


[朝蔵 大空]
 「うんっ、また学校でね」





 ピッ。





[朝蔵 大空]
 「ふぅ……」


[加藤 右宏]
 「女子トーク終わったカっ!!」



 なんか隣に居るのが当たり前みたいになってない?



[朝蔵 大空]
 「うん。 ごめん、寝よっか」


[加藤 右宏]
 「ん」



 私は目を(つむ)って、眠りについた。


 ……。



[朝蔵 大空]
 「すぅ……すぅー……」



 大空は寝息を立てて完全に眠っている。



[加藤 右宏]
 「…………ヨし」



 皆が寝静まった夜、横になっていたミギヒロが体を起こす。



[加藤 右宏]
 「メンドクセーけど、やらなきゃいけないんダよなー……」



 ミギヒロは何も無い空間から、分厚い本を出現させた。



[加藤 右宏]
 「エーっと、『天使転生の儀』……あなたが天界人(てんかいびと)になりたければ、人を助け、人を癒し、人を愛すべき。 その人に心体(しんたい)を殺され、その命が尽きた時、(かみ)はあなたを(あわれ)れに思い、霊界ではなく、天の使いへの道へと導くでしょう……………ハぁっ、やっト噛まずに言えタ……長いんダよなこれ」



 慣れない詠唱(えいしょう)をして息切れをするミギヒロ。



[加藤 右宏]
 「よしノルマ終わり! 寝るッ」



 ……。


 ──そして土曜日の朝が来る。



[朝蔵 葵]
 「こんにちはー、お隣の朝蔵です〜」



 ん?



[朝蔵 大空]
 「なんだか外が騒がしい……」



 今日は、学校が無い休日。


 丸一日暇で、部屋でひとり漫画を読んでいるところだった。





 ガチャ。





 部屋に真昼が入って来たかと思ったら……。



[朝蔵 真昼]
 「外来てって、お母さんが」


[朝蔵 大空]
 「え?」



 なんだろう?



[朝蔵 葵]
 「あっ。 大空ー! こっちこっち〜」



 お母さんが、私に手招きをする。



[可愛めな奥様]
 「こんにちは♪」


[朝蔵 大空]
 「あっ、どうも。 初めまして」



 誰だろう?



[朝蔵 葵]
 「(つばめ) さんよ、巣桜(すざくら) 燕 さん。 うちの隣に引っ越して来てくれたの〜」



 なるほど、うちの隣ずっと空き家だったもんな。


 ここ数日、工事の人が居るなーって思ったら、そう言うことだったんだ。



[巣桜 燕]
 「大空ちゃんね、よろしくね!」


[朝蔵 大空]
 「は、はい!」



 わぁ、可愛いお母さんだなぁ……まあうちの母だって、負けてはないけどね?



[巣桜 燕]
 「可愛い娘さんね〜、うちの (つかさ) と同い歳よね? もぉ、お嫁さんに貰いたいぐらいだわー♪」


[朝蔵 大空]
 「えっ!?///」



 なんて突拍子(とっぴょうし)もない!!



[朝蔵 葵]
 「ちょっと燕さん! それは気が早すぎるわよ〜! 大空よりこの " 私 " を!!」



 それはもっと無ぇーよ。



[巣桜 燕]
 「うふふっ、あっそうだ……うちの息子、司って言うんだけど。 大空ちゃんのクラスに入るみたいだから、よろしくね!」



 私と同じクラスに入るって……まさか、転入してくるの?!


 ついこの前、うちのクラスには卯月神って言う子が、入って来たばかりなんですけど!?



[朝蔵 大空]
 「あっ……司くん? そうなんですか」



 で、その司くんって子はどこに?


 このインドアの私が、お日様の下に珍しく出てきたって言うのに、話題になっている人物は何処(いずこ)に??



[巣桜 燕]
 「でもあの子……友達出来るかしら? 心配だわ」


[朝蔵 葵]
 「ふふっ、大丈夫なんじゃないですか? だって大空がいるんですし」



 ……へ?



[巣桜 燕]
 「それもそうね! 大空ちゃん、司のことよろしくね!」



 よろしくね! と言われても、その私がまず友達作り、苦手なんだけどな……。


 でもこんなに頼まれたら、見捨てる訳にもいかないよ……。



[朝蔵 大空]
 「あの、その司くんは今日は……?」


[巣桜 燕]
 「あっごめんなさい。 司は滅多なことが無いと、なかなか部屋から出て来ないのよ。 ごめんなさいねっ!」


[朝蔵 大空]
 「あー……そうですか」



 何それ、引きこもりってこと?


 私も人のこと言えないかもだけど、雰囲気からして私より重度そうだな。


 私は冴えないオタクの顔をイメージする。


 とりあえず眼鏡掛けてて、髪はボサボサで目は死んでて、身なりが整ってない、典型的な…………オタク。


 あと臭い。


 ちょっと想像するとやだな。



[巣桜 燕]
 「でも安心して! 学校始まったら問答無用で引っ張り出してくるから♪」


[朝蔵 葵]
 「うふふっ、顔を出すのを楽しみにしていますわ!」



 あ、お母さんは司くんが、イケメンか美少年なのを期待しているな。


 私はどうしても、アレな男をイメージしてしまうんだけど。


 もちろん、燕お母様のほうはとっても可愛いけどね。


 どうかお母様の遺伝子を、色濃く反映されててほしい……。



[巣桜 燕]
 「司ってば、前の学校ではあんまり、上手く通えなかったみたいで……だから学校楽しいって思ってほしくて……」


[朝蔵 大空]
 「……そうなんだ」



 可愛い奥様。


 そんな話を聞かされたら、もう面倒を見るしかなくなるじゃないですか。


 私もこう見えて姉属性を持っている、ほっとけない。
 

 決めた、たとえどんな粗悪なオタクが出てきても、私は絶対(ひる)まないぞ!


 対面するとしたら、また月曜日。


 会えるのを楽しみにしているよ、巣桜 司 くん?





 つづく……。


第5話「新生活」前編

[嫉束 界魔]

 「優しくないよ、あいつは」

 

 

 

 『優しくない』……どうしてだろう。

 

 

 私は笹妬くんのことを、とっても優しい人だと思ってるし、実際優しくしてもらって私は、あの時間救われたし。

 

 

 嫉束くんは知ってて私が知らない、そんな彼がいるってことなの?

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「えっと……でもね! 笹妬くんは泣いてる私に、ずっと寄り添ってくれたし。 ジュースとかくれたんだ!」

 

 

 

 私はあの時、笹妬くんに優しくしてもらった内容を、嫉束くんに説明する。

 

 

 

[嫉束 界魔]

 「泣いたの?」

 

 

[朝蔵 大空]

 「あっ」

 

 

 

 ──『墓穴を掘る』。

 

 

 

[嫉束 界魔]

 「やっぱり……何かされたんだね」

 

 

 

 やばい、嘘ついたってバレる!

 

 

 あの子達に、酷いことを言われたなんてバレたら、なんか嫉束くんに悪い気がするし。

 

 

 ここは誤魔化さなきゃ!

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「いや? 私が転んじゃって……こ、高校生にもなって転んで泣くなんて。 だ、ダサいよね! あはっ、あははは」

 

 

 

 私は笑って誤魔化した、そしたら嫉束くんが話題を変えた。

 

 

 

[嫉束 界魔]

 「あいつには、近付かないほうが良いよ」

 

 

 

 ……ど、どうしてそんなことを言うの?

 

 

 そんな念を押すように言われたら、笹妬くんを見る私の目が、変わってしまいそうになる。

 

 

 それとも出会い方がたまたま良かっただけ?

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「そ、そうなんだね」

 

 

 

 第三者からの情報を『真に受けるべきではない』そうは思っても、嫉束くんにそう言われると気になる。

 

 

 

[嫉束 界魔]

 「うん……ごめんね、変なこと言っちゃって。 でも、大空ちゃんには傷付いてほしくないから」

 

 

 

 私が笹妬くんと関わると、私が傷付くことになる?

 

 

 

[嫉束 界魔]

 「ほら、友達だからさ!」

 

 

[朝蔵 大空]

 「あ……そうだね」

 

 

 

 そうだった、嫉束くんとは友達ってことになってるんだった。

 

 

 全然、実感湧かないなぁ。

 

 

 そもそも私と嫉束くんとじゃ、周囲からの人気度とか、住む世界が違いすぎて……。

 

 

 あぁ酷いな私、自分から友達になろうって言ったのに。

 

 

 でも、友達がいなくて辛いって気持ちは私にも分かるから、せめて私だけでもって思ったんだよね。

 

 

 こんな私だけど。

 

 

 

[嫉束 界魔]

 「……」

 

 

[朝蔵 大空]

 「あっ」

 

 

 

 数人の話し声と、確かな気配を感じる。

 

 

 もうすぐ私と嫉束くんの元に、人が集まってくる……。

 

 

 そう察した私は、『どうしよう』とアワアワする。

 

 

 

[嫉束 界魔]

 「大空ちゃん、もう行ったほうが良いよ」

 

 

 

 嫉束くんに気を使わせてしまった。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「う、うん。 じゃあね」

 

 

 

 私は学校(がい)に出るように走り出した。

 

 

 

[SFC会員C]

 「あー♡ 嫉束くんだ〜」

 

 

[SFC会員D]

 「何してんのー? もしかして、テニス戻る気になった?!」

 

 

 

 嫉束を見つけた女子生徒達が、嫉束を囲むように群がる。

 

 

 

[嫉束 界魔]

 「……ごめんね」

 

 

 

 嫉束はそれに構わず彼女達から離れ、背を向け歩き出す。

 

 

 

[SFC会員D]

 「あーん、行っちゃった〜」

 

 

[SFC会員C]

 「あんたが余計なこと言うから!」

 

 

[SFC会員D]

 「な、なによ〜」

 

 

 

 嫉束が帰り、一同が残念に思う中、隙あらば喧嘩をしだす彼女達。

 

 

 

[嫉束 界魔]

 「…………あーあ、嫌だな。 チッ」

 

 

 

 嫉束は顔に似合わない、行儀の悪い舌打ちをした。

 

 

 

[嫉束 界魔]

 「あれさえ無ければ……クソっ」

 

 

 

 誰も見てない所で不満を(つぶや)く嫉束界魔であった。

 

 

 ……。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「元気?」

 

 

[永瀬 里沙]

 『うん!元気よ』

 

 

 

 今は自分の部屋で友達の里沙ちゃんと通話中〜。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「よかった……」

 

 

[永瀬 里沙]

 『いやぁ2年に上がってから、先輩達のコキの使いようが半端無くってさ〜! さすがの私でも潰れちゃったわ』

 

 

[朝蔵 大空]

 「きゃー、大変だ」

 

 

 

 うわぁ……。

 

 

 やっぱ水泳部とか、運動部ってそう言うのあるんだ……。

 

 

 パワハラ、上下関係恐るべし!

 

 

 

[永瀬 里沙]

 『大空もいればなぁ? 楽しいのに〜』

 

 

[朝蔵 大空]

 「え、私は無理でしょ……運動苦手だし」

 

 

[永瀬 里沙]

 『たまには体動かした方が良いよー! 気分も晴れるしさ!』

 

 

 

 私はスポーツをしないから、こんな内気でボーッとした性格になっちゃったのかなぁ?

 

 

 なんだか急に、自分への危機感が……。

 

 

 

[永瀬 里沙]

 『あ、そうそう聞いて! 新しい1年生で、めっちゃ良い感じの子がいてさー』

 

 

[朝蔵 大空]

 「へぇ、部活の?」

 

 

 

 どうせイケメンがいるとか、そう言う話だろうな。

 

 

 

[永瀬 里沙]

 『そうそう! その子いっっっっっつもニコニコしてんの! 声も出るし、おまけにイケメンでもう、部の皆全員(ぜーいん)狙ってる勢いなの〜!』

 

 

 

 ほら、やっぱり。

 

 

 

[永瀬 里沙]

 『でも私はいいや。 ハキハキ系の後輩は可愛いけど〜、私のタイプではないかな〜。 男はやっぱ、クール系一択でしょ!!』

 

 

[朝蔵 大空]

 「へーそうなんだ? なんか凄いね、あんま想像つかないけど」

 

 

[永瀬 里沙]

 「あぁ、私にもクールでイケてる王子様が現れないかしらっ!」

 

 

[朝蔵 大空]

 「……」

 

 

 

 

 

 ガタン、ガタン。

 

 

 

 

 

 隣の部屋から物音がする。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「あ、部屋に真昼が居る……」

 

 

[永瀬 里沙]

 『てか、この前聞いた子その子なんだけど、ほんとに知らない? 原地(はらち) 洋助(ようすけ) って名前なんだけどー』

 

 

 

 あーあれか、先生が部活のポスター配ってた時に聞かされたあれか。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「うん、誰?」

 

 

[永瀬 里沙]

 『マジ? なんか大空のこと知ってる感じだったよー? でも、中学の後輩にいなかったと思うし。 てか、いたらあんな可愛い子私が忘れる訳無いもん』

 

 

[朝蔵 大空]

 「あははっ、そうだね!」

 

 

 

 原地 洋助、どんな子なんだろう?

 

 

 ちょっと気になる……。

 

 

 

[永瀬 里沙]

 『中学、東中(ひがしちゅう)らしいよー、あんた東中の人と、面識あったの?』

 

 

[朝蔵 大空]

 「え、他校とか私は全然……その子が言ってるの、ほんとに私?」

 

 

[永瀬 里沙]

 「いやーでも、大空の名前出してたし……」

 

 

[朝蔵 大空]

 「えっ」

 

 

 

 何それちょっと怖い、なんで他校の中学校の子が、私の名前知ってんの?

 

 

 他校と言うか、自分の中学ですらあんまり話す人いなかったって言うのに。

 

 

 

[永瀬 里沙]

 『まあいいわ、今度また詳しく聞いてみる。 なんか知らんけど、あの子私に1番絡んで来るのよね。 だから先輩達も、私に(ねた)んで色々仕事させてくるのよ!』

 

 

[朝蔵 大空]

 「ひー、女子って怖いね。 あんまり酷いようだったらまた言ってね?」

 

 

 

 私の里沙ちゃんに酷い扱いするなんて、たとえ先輩(がた)でも許せない!

 

 

 

[永瀬 里沙]

 『あはは! 私はそんなヤワじゃないわよー。 それに、そんなっ……まあアレじゃないから心配しないでー』

 

 

[朝蔵 大空]

 「そ、そっか?」

 

 

 

 なんだろう、里沙ちゃんが今何か言おうとしたみたいだけど、誤魔化された気がする。

 

 

 でも、追及(ついきゅう)はしない。

 

 

 

[永瀬 里沙]

 『まあ風邪ぶり返すの怖いから、今日は寝るわー。 切るね!』

 

 

[朝蔵 大空]

 「うんっ、また学校でね」

 

 

 

 

 

 ピッ。

 

 

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「ふぅ……」

 

 

[加藤 右宏]

 「女子トーク終わったカっ!!」

 

 

 

 なんか隣に居るのが当たり前みたいになってない?

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「うん。 ごめん、寝よっか」

 

 

[加藤 右宏]

 「ん」

 

 

 

 私は目を(つむ)って、眠りについた。

 

 

 ……。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「すぅ……すぅー……」

 

 

 

 大空は寝息を立てて完全に眠っている。

 

 

 

[加藤 右宏]

 「…………ヨし」

 

 

 

 皆が寝静まった夜、横になっていたミギヒロが体を起こす。

 

 

 

[加藤 右宏]

 「メンドクセーけど、やらなきゃいけないんダよなー……」

 

 

 

 ミギヒロは何も無い空間から、分厚い本を出現させた。

 

 

 

[加藤 右宏]

 「エーっと、『天使転生の儀』……あなたが天界人(てんかいびと)になりたければ、人を助け、人を癒し、人を愛すべき。 その人に心体(しんたい)を殺され、その命が尽きた時、(かみ)はあなたを(あわれ)れに思い、霊界ではなく、天の使いへの道へと導くでしょう……………ハぁっ、やっト噛まずに言えタ……長いんダよなこれ」

 

 

 

 慣れない詠唱(えいしょう)をして息切れをするミギヒロ。

 

 

 

[加藤 右宏]

 「よしノルマ終わり! 寝るッ」

 

 

 

 ……。

 

 

 ──そして土曜日の朝が来る。

 

 

 

[朝蔵 葵]

 「こんにちはー、お隣の朝蔵です〜」

 

 

 

 ん?

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「なんだか外が騒がしい……」

 

 

 

 今日は、学校が無い休日。

 

 

 丸一日暇で、部屋でひとり漫画を読んでいるところだった。

 

 

 

 

 

 ガチャ。

 

 

 

 

 

 部屋に真昼が入って来たかと思ったら……。

 

 

 

[朝蔵 真昼]

 「外来てって、お母さんが」

 

 

[朝蔵 大空]

 「え?」

 

 

 

 なんだろう?

 

 

 

[朝蔵 葵]

 「あっ。 大空ー! こっちこっち〜」

 

 

 

 お母さんが、私に手招きをする。

 

 

 

[可愛めな奥様]

 「こんにちは♪」

 

 

[朝蔵 大空]

 「あっ、どうも。 初めまして」

 

 

 

 誰だろう?

 

 

 

[朝蔵 葵]

 「(つばめ) さんよ、巣桜(すざくら) 燕 さん。 うちの隣に引っ越して来てくれたの〜」

 

 

 

 なるほど、うちの隣ずっと空き家だったもんな。

 

 

 ここ数日、工事の人が居るなーって思ったら、そう言うことだったんだ。

 

 

 

[巣桜 燕]

 「大空ちゃんね、よろしくね!」

 

 

[朝蔵 大空]

 「は、はい!」

 

 

 

 わぁ、可愛いお母さんだなぁ……まあうちの母だって、負けてはないけどね?

 

 

 

[巣桜 燕]

 「可愛い娘さんね〜、うちの (つかさ) と同い歳よね? もぉ、お嫁さんに貰いたいぐらいだわー♪」

 

 

[朝蔵 大空]

 「えっ!?///」

 

 

 

 なんて突拍子(とっぴょうし)もない!!

 

 

 

[朝蔵 葵]

 「ちょっと燕さん! それは気が早すぎるわよ〜! 大空よりこの " 私 " を!!」

 

 

 

 それはもっと無ぇーよ。

 

 

 

[巣桜 燕]

 「うふふっ、あっそうだ……うちの息子、司って言うんだけど。 大空ちゃんのクラスに入るみたいだから、よろしくね!」

 

 

 

 私と同じクラスに入るって……まさか、転入してくるの?!

 

 

 ついこの前、うちのクラスには卯月神って言う子が、入って来たばかりなんですけど!?

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「あっ……司くん? そうなんですか」

 

 

 

 で、その司くんって子はどこに?

 

 

 このインドアの私が、お日様の下に珍しく出てきたって言うのに、話題になっている人物は何処(いずこ)に??

 

 

 

[巣桜 燕]

 「でもあの子……友達出来るかしら? 心配だわ」

 

 

[朝蔵 葵]

 「ふふっ、大丈夫なんじゃないですか? だって大空がいるんですし」

 

 

 

 ……へ?

 

 

 

[巣桜 燕]

 「それもそうね! 大空ちゃん、司のことよろしくね!」

 

 

 

 よろしくね! と言われても、その私がまず友達作り、苦手なんだけどな……。

 

 

 でもこんなに頼まれたら、見捨てる訳にもいかないよ……。

 

 

 

[朝蔵 大空]

 「あの、その司くんは今日は……?」

 

 

[巣桜 燕]

 「あっごめんなさい。 司は滅多なことが無いと、なかなか部屋から出て来ないのよ。 ごめんなさいねっ!」

 

 

[朝蔵 大空]

 「あー……そうですか」

 

 

 

 何それ、引きこもりってこと?

 

 

 私も人のこと言えないかもだけど、雰囲気からして私より重度そうだな。

 

 

 私は冴えないオタクの顔をイメージする。

 

 

 とりあえず眼鏡掛けてて、髪はボサボサで目は死んでて、身なりが整ってない、典型的な…………オタク。

 

 

 あと臭い。

 

 

 ちょっと想像するとやだな。

 

 

 

[巣桜 燕]

 「でも安心して! 学校始まったら問答無用で引っ張り出してくるから♪」

 

 

[朝蔵 葵]

 「うふふっ、顔を出すのを楽しみにしていますわ!」

 

 

 

 あ、お母さんは司くんが、イケメンか美少年なのを期待しているな。

 

 

 私はどうしても、アレな男をイメージしてしまうんだけど。

 

 

 もちろん、燕お母様のほうはとっても可愛いけどね。

 

 

 どうかお母様の遺伝子を、色濃く反映されててほしい……。

 

 

 

[巣桜 燕]

 「司ってば、前の学校ではあんまり、上手く通えなかったみたいで……だから学校楽しいって思ってほしくて……」

 

 

[朝蔵 大空]

 「……そうなんだ」

 

 

 

 可愛い奥様。

 

 

 そんな話を聞かされたら、もう面倒を見るしかなくなるじゃないですか。

 

 

 私もこう見えて姉属性を持っている、ほっとけない。

 

 

 決めた、たとえどんな粗悪なオタクが出てきても、私は絶対(ひる)まないぞ!

 

 

 対面するとしたら、また月曜日。

 

 

 会えるのを楽しみにしているよ、巣桜 司 くん?

 

 

 

 

 

 つづく……。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。