(面倒なことになったのだ)
道で立ち止まりそう考える。さっきまで普通の路地を歩いていたはずだ。
(いつ迷い込んだのだ?雰囲気的に異界……妖精の道っぽいのだ なんでこう路地の見た目を取るかな いやまぁ、気づくタイミングはいくらでもあるけどさ)
両側にあるブロック塀にはどこまで行っても玄関へつながる門が見えない。所々に曲がり角があるだけだ。
(いやまぁ僕は別に妖精だし大した問題はないのだ 僕は)
「どうしたんだ?」
「今更忘れ物にでも気づいたとかですか?」
後ろにいる二人の人間を見やる。
一人は茶髪にナタの髪飾りをした少女、東北きりたん。
もう一人は髪色と同じ大きな青い帽子をかぶっている少女、音街ウナ。
(妖精の道は人間には有害……大人ですら1時間も耐えられないってのに どうするのだ)
「なぁとーほく こんな道あったっけ」
「さぁ?わたしは別に路地マニアではないので ずんだもんは?」
「しらねーのだ 迷子になる前に引き返すのだ」
二人を連れ引き返す。妖精の道で長く人間を保たせるには妖精の道にいることを自覚させないことが大事だ。伝えるわけにはいかない。バレるわけにはいかない。
「あれ、迷子なんですか?ずんだもんはおっちょこちょいですねぇ」
「ウナたちも気づいてなかったんだから人のこと言えないぞ」
「いや、先導してたのはずんだもんなんですから……」
幸いにも二人がずっと喋っているおかげで周囲の異様な静けさには気付かれない。
(しばらくは大丈夫そうなのだ しかし何処からが妖精の道になってたのだ?)
今妖精の道に迷い込んでからどれくらい経ったのか。ずんだもんの時間感覚では一時間も一瞬である。迷い込んだことに気づけたのもきりたんに話しかけられたからだ。
(まー有害っつっても妖精化するだけだし多少は長居しても問題ねぇのだ コラテなんたらってやつなのだ)
「………」
きりたんはずんだもんの変化気づいていた。突然何かを隠すように振る舞い始めた上、頭の枝豆が立ち上がっている。
(突然周囲に気を配り出してバレないとでも?いつもはぼーっと歩いてるから目立つんですよ)
きりたんは呆れたとばかりにため息をつく。
(そもそもそういうなんでも知らせずに解決しようとするのが癪に障るんですよ、貧弱なくせに守ろうと躍起になるの)
しかし別に言葉ほどは怒っていない。長女のイタコなど含めきりたんにはどうにもできない事には見慣れている。しかし。
(もっと信頼してほしいんですよ もう)
「音街、そういえば学校の課題の話なんですけど………)
(だから少しは話題逸らしに協力してあげます 感謝してください)
きりたんの話題が尽きた頃、やっと元の路地に戻った。
(あー、やっと戻って来れたのだ あとで市役所に文句入れるのだ)
ひとまず目に見えて変異はしていなさそうに感じる。
「きりたん、ウナ、体調はどうなのだ?」
「? 別にもんだいないぞ」
「右に同じく」
「うなー」
全員がその場で固まる。突然帽子が喋り出したのだ。
「お、おお音街そのそれ帽子は一体………」
「えー!なにこれオタマン帽がしゃべった!」
「………まあ面白いしいいのだ」
「いやよくないでしょ ………もしかして私のナタも」
「ナタは変わってねえのだ ただ髪がちょっとガラス風に変わってるのだ」
「とーほくの頭キラキラしてる!」
(んま死んでないし本体は妖精化してないし構わねえのだ)
ずんだもんはそう判断し、帰路に二人を引っ張る。
「ちょっとずんだもんこれは一体、説明してください」
「嫌なのだ 死んだわけじゃないから気にすんななのだ」
「気にしますよ! あああこれ散髪はどうすれば」
「うなー」