古い民宿の二階、仲のいい姉妹が住んでいる狭い部屋がある。人が二人住むには少し狭い間取りも仲の良い、苦難を共に乗り越えた二人には特に問題はない。
「ねーえーあおいー、トランプしよ?うちこの前100均でおもろいの見つけてん ほらこれ」
「んー?くろうばー、ぶーけ?」
「そそ 簡単にいえば数字の大きさ勝負のゲームや この前学校でやってな おもろいでこれ」
「ふーん いいよ やろう」
葵は快諾する。しかし葵は知っている。
(おかしいな こういう頭を使うゲーム苦手なはずだよね……そのがっこうの人はずいぶん手加減したんだろうね)
「ほな 手札は12枚、一枚ずつ出して勝負、ただし4だけは強さが逆や」
「逆?」
「そそ 4が出てる時だけ小ささ勝負になんねんて おもろいやろ」
「………なるほど わかった んじゃ一回めね」
「よっしゃぼこぼこにしたるで あ、使ったカードは戻さず3回勝負や」
葵は手札から迷いなく11を出す。裏向きに伏せ姉を待つ。
(どうせ4読んでの1出すでしょ ………読み合い苦手なのにこういうゲームばっかり持ってくるのはなんでかな)
葵の予想通り出たのは1。
「ええーようわかったな ほな次や 今度は負けんで」
今度は12を伏せる。今度も葵が4を出すのを狙うだろう。
(しかしお姉ちゃん遅いな やっぱり頭使うのが苦手なのは同じなんだよね 親譲りってやつ?)
そんなんことを考えているうちに2が出され、葵の2勝。三戦目を待つことなく勝ち越し。
「うーん 葵は強いなぁ もしかしてやったことあった?」
「いや、初めてやったよ あんまりトランプのゲームはやんないし」
「えぇ?でも完璧に読まれたやん コツとかあんねやろ?」
怪訝そうな視線に応えようとした時、玄関のチャイムが鳴る。その後に数回のノック。
「ん〜お客さん、いや郵便かな?お姉ちゃんなんか通販で買ったの?」
言いながら立ちあがろうとする葵を手で制する。
「葵、来客はウチが対応する。前決めたやろ?」
「………そうだね 頼んだよ」
立ち上がり玄関に向かうのを後ろから見送る。
「………バットは、あったあった」
玄関の開く音。葵はバットを握り、玄関に向かって全力で投げる。ピンク色の後頭部に赤い花が咲く。
「おかえり、お姉ちゃん」
「おう、葵 無事か〜」
緊張感のない声が聞こえる。
「またニセモンに入られたん?それともわざと?」
「うん、わざと 暇だし」
「あんなー暇なんはわかるで だからって家に人もどき入れんなや なんのために家の鍵があると思うとん?」
言いながらバットを拾い上げ玄関に倒れている死体を外に蹴り出す。
「ええか 外は危険や だから体の弱い葵は家で待機 ……だから、というか常識的にバケモンを家に入れるんはダメ」
「はーい……」
「そう落ち込むなや お姉ちゃんはな、怒っとるんやない 心配なんや ほれ、葵の好きなチョコミントアイスやで」
「……!お姉ちゃん大好き!」