ふふ さっすがとーほく わかってるね もちろんウナにネタがあるってわけ!
といってもただの噂話なんだけどね……
SNSには日々色々な人物がこれまた色々な投稿をし、やはり色々な人がそれを見る。多くの場合投稿する人も見る人も深く、あるいは何も考えていない。だからこそ不謹慎な内容に過剰な批判が飛び交う事さえある。それが日常でいちいち覚えてなんかいない。
しかし時々、見る側に本気で受け取る人がいる。
それはよくある不謹慎なオカルトだった。
「人の死体を七に分け、塩、黒糖、金草の汁、硫黄、鉄粉、鳩の血液、金吾の鱗、これらとともに一つずつ埋める。その後生えてきた草を煎じた物を飲むと人の枠を超えた怪物になれる。」
不謹慎だ。その一言に尽きるこの投稿は知ってか知らずかバラバラ殺人の発生の翌日に上げられた。普段から何も投稿していないアカウントの投稿である。
深く考えずともフェイクとわかる。なにせ金吾は実在しない。
しかしどうだろう。その他の六つはできはする。そのせいだろうか、とあるインフルエンサーグループのメンバーの一人があろうことかそれを作ってしまったと言う。
当然皆冗談だと思い批判した。しかし実際の写真が上がり、また発端のアカウントが反応したことで盛り上がりを見せた。DMではなく公開で行われるやり取りは野次など気にしないと言うように進み、金吾の鱗をインフルエンサーが入手したところで一度途切れる。
インフルエンサーのいたグループは彼と連絡が取れないと公表し、ニュースでは奇妙な姿の魚の死骸が見つかったと報道され、いよいよ手の込んだ冗談では済まされ無くなってきた頃、進展があった。
また公開の投稿で、草の汁を煎じるところまでは来たことがわかった。
「もう飲んでいいのか」
「ええ、どうぞ 完成までの最後の手順です」
数分の沈黙。次の投稿を待つ人々。しかし期待とは裏腹にインフルエンサーのアカウントが運営に削除された。多くの人が落胆し、離れていった。
実のところここまでは実際の出来事であり、今でもあることないこと囁かれているネットの怪事件だ。
しかしこの話には続きがある。ベタなことだが、その後に発端のアカウントがこんな投稿をした。
「確認しました 回収に向かいます その場から移動なされぬよう」
この投稿は驚くほど認知されていない。その当時の投稿を見ていけばすぐに見つかるのに。
「どう?とーほく 怖かったでしょ」
「えー、音街 その話オチがなくないですか 怪談なのに」
「でもこのまとめサイトはここで止まってるんだもん」
「まとめサイトとか信用に値しない情報源ナンバーワンでしょう」
呆れるきりたんをよそにウナはサイトの記録を見ながら続ける。
「ここからが怖いところなんだぞ この話を載せてるサイト、このまとめの後から一切更新がないんだ きっと”回収”されちゃったんだ」
「いや、単にオチが思いつかなくてやめただけでしょ はあ、聞いて損しました 時間の無駄ですね」
「えぇぇ〜」
そんな会話を繰り広げる二人を後ろからこっそりと観察している怪しい人影が一つ。呼吸も鼓動も漏らさずに隠れている。絶妙な距離を保ちながらゆっくりと物陰を移り追う。その目線は常に音街ウナに注がれている。
「おい お前 ちょっと面貸すのだ」
人影は無視して二人を追おうとする。
「お前だよ そこの白髪のお前」
人影がゆっくりと振り返る。表情は見えないが驚いているのが節々から見て取れる。フードで隠れた髪色を当てられたことか、または見つかったこと自体にか、あるいはその両方にか。ただ影の中から震える目が覗く。
「あいつらには手ぇ出されてると困るのだ お前が怪談のオチ部分なのはわかるけど見逃してくれねえのだ?」
ポケットに手を突っ込んんだままずんだもんが言う。
人影は平静を装って返す。
「そう言うわけにもいかないんだけどな どっちの方が面倒かな 君とあの二人」
「なんだ話せるのだ?だったらもっと単純に言うのだ あの二人だけ見逃せばあとはなんでもいいのだ 路地裏でバラされるよりはマシなのだ?」
怪しい人影は考え込むそぶりを見せる。脅しに怖気ついたわけではないが、面倒ごとの気配を感じたらしい。
「………まあいいよ 妖怪の恨みは怖いからね」
「妖怪じゃなくて妖精なのだ」
間髪入れずにツッコミが入る。重要だろうか、と眉を顰める。
「似たようなもんでしょ はぁ せっかく上質な薬が取れると思ったのに」
「それは心配しなくていいのだ あいつらが噂をばら撒いた奴から収穫すればいいのだ?」
一瞬、空気が凍り、恐る恐る人影が聞き返す。
「え?」