転生ハンターがダンまちをモンハン世界だと間違っているまま黒竜を狩る話 作:シャリ
アストレア・ファミリア主催の神の宴から数日後。
ハンターはヘスティア、アルフィアと共に、穏やかな日常を過ごしていた。
新しい集落に到着したら、まずは景観と施設を一通り見て回る。そんなモンハンワイルズを遊んだ時の動きにならい、嫁たちとのデートも兼ねて、オラリオの店や景色を楽しんでいたのだ。
とはいえ、オラリオは広大な都市。すべてを見て回ろうと思えばキリがない。しばらく堪能したら街の散策には区切りをつけ、ようやくオラリオにしかない場所に向かうことにした。
それはもちろん……ダンジョン。
ハンターはヘスティアとアルフィアにソロ探索すると告げ、ダンジョンへと足を踏み入れた。
「マップを埋めてキャンプも各階層にいくつか設置しておこう。ギルドナイト関係で潜ったときは、のんびり探索する暇がなかったしなぁ」
ハンターは一階層から丁寧に進む。
焦らず、じっくりと隅々まで歩き回ってミニマップを埋め、採取ポイントを見つけては採取し、現れるモンスターを狩っていく。
モンハンで初めて来たフィールドで遊ぶのと同じく、ダンジョンという未知の環境を楽しんでいる。
「見たことないモンスターも多いし、地上とはまた違う感覚で面白いな」
手にした武器は、無属性の高火力型ハンマー『マグニチュード』。
無属性だからこそ属性相性に左右されず、相手を選ばないで戦えるG級のハンマー。
ダンジョンに生息するモンスターは、地上のモンスターより強いことが多いが、ハンターに怯む様子はなかった。
相手の意表を突いて先手を取り、動きを観察して隙を見つければ、そこへ容赦なくハンマーを叩き込む。
一般的な冒険者なら戦いを避ける階層主に遭遇しても、ハンターにとってはむしろ幸運な出会い。
「おっ、階層主じゃん。ラッキー!」
軽い調子で討伐して、気分良く次の階層へ進む。
未知だった場所を、ひとつずつ既知へと変えていく。
◆ ◆ ◆
赤緋色の鱗と雄黄の瞳が特徴的なリザードマンのリド。
彼は、荷物袋を片手に携えてダンジョンの通路を走っていた。
もう片方の手には、冒険者の遺品である直剣を握っている。
荷物袋は、もともとダンジョン内で命を落としたサポーターの遺体から剥ぎ取ったリュックに詰めていたものだ。
しかし、直前に襲撃を受けた際にリュックは壊れてしまった。その際に散らばった物をとっさに拾える分だけ荷物袋にまとめ、どうにか運んでいるのが今の状態になる。
「またか!」
進行方向を塞ぐように、ゴブリン上位種のホブゴブリンの群れが現れた。
彼らはリドを逃がす気はないようで、敵意を向けている。
リドは人間の遺品で防具と武器を装備しているが……見た目はリザードマンであり、ダンジョン産まれのモンスター。
ただし、彼は普通のモンスターではない。
ダンジョンが生み出すモンスターの中には、人間的な感情と心を獲得して人間の言葉も理解するモンスターが種類問わず低確率で生まれることがある。
彼らは、神々の言葉で『異端』の意味を持つ【ゼノス】と呼ばれていた。
ゼノスは他のダンジョン内モンスターから敵として見なされ、人間相手と同じく殺そうと襲いかかってくるのだ。
人間とモンスター、その両方から命を狙われるゼノスたちは、生き延びるために仲間同士で集まり、ダンジョンに身を隠して暮らしていた。
そのゼノス集団のリーダー格の一人がリドである。
仲間たちのために魔石と食料を集めるために探索に出ていた彼は、運悪くホブゴブリンの群れに目をつけられてしまったのだ。
リドは直剣を振るい、迫り来るホブゴブリンを何匹か退ける。
だが片手では限界がある。荷物を守ろうとすれば動きが鈍り、守らなければ物資が失われる。
「このままじゃキビシイ」
荷物袋を捨てて逃走する選択肢が頭をよぎった。
袋の中身はたいして多くない。量だけで考えれば、失ったところで致命的な損失ではない。
「とはいえなァ……」
脳裏に浮かぶのは、空腹に苦しむ仲間たちの姿だった。食料はもちろん必須だ。
魔石の方は、食っても腹は膨らまないが、強くなれる。敵だらけのダンジョン内を生き延びるためには必要なもの。
少しであっても捨てるのは惜しい……。
一番の問題は、すでにリュックを失っていることだ。ここで荷物袋まで失うのは痛すぎる。
モンスターである自分たちは地上やダンジョン内にある店でこういった物は買えない。
遺品を探すのが手間なのもあるが、モンスターに襲われて命を落とした冒険者やサポーターの持ち物は、たいてい壊れている。まともに使える道具を再び手に入れられるのが、いつになるかも分からない。
「だったらムチャを通すしかねぇか!」
──リドが覚悟を決めて歯を食いしばった、その時。
高台から、一人の人間が……ハンターが飛び降りてきた。
視覚外の頭上からハンマーを叩きつけられたホブゴブリンがグシャリと潰れる。
「なんだよ、いるじゃねぇか! オトモ枠がよぉ!!」
場違いなほど楽しげな声をあげて現れた乱入者にホブゴブリン達は一瞬、浮足立つ。
だが、すぐに思考力が低いダンジョンの通常モンスターらしく、目の前の新たな敵へと襲いかかる。
「そこの赤いの! 手を貸すぜ!」
テンション高めのハンターは返事を待つこともなく、次々とホブゴブリンを消滅させる。
「エェ……? お、おおう?」
冒険者まで現れて大ピンチだと思ったら、まさかの加勢するノリ。予想外すぎる展開についていけなくてリドは戸惑う。
しかし、とりあえず差し迫った脅威への対処が先だと考え直す。改めて剣を握る手に力を込め、ホブゴブリンに斬りかかる。
即席パーティな二人組は、あっという間にホブゴブリンの群れを殲滅。
安全が確保された確認すると、ハンターはハンマーを収め、リドへと振り返った。
「大丈夫だったかー? 怪我しているなら回復薬あるぞ。遠慮せず言ってくれ」
リドは、まるで幻覚でも見せられているような気分だった。
「……な…………」
「な?」
「なんで……モンスターのオレっちを心配してくれるんだ?」
リドは冒険者に見つかって逃げた経験がある。
覚えているのは冒険者から向けられた敵意と殺意。
木や石の
それが普通である。少なくとも、リドが実際に経験してきた人間との遭遇はそういうものだった。なのに、目の前の男からはそんな感情をまるで感じない。
警戒や嫌悪を隠して騙しにかかっているような雰囲気もなく、穏やかな目で、当然の如く話しかけて、こちらを心配している。
そもそも『モンスターである自分が直剣を握ったまま』なのに武器を収めていることがあり得ない。男が持つ強さからの油断とは違うようにも見えて不思議だった。
「なんでもなにも仲間なら当然だろ? こうして話せてるし、さっき一緒に戦えたしな」
──俺が遊んでいたモンハン原作では人の言葉を話すモンスターが存在する。
代表的なのは【アイルー】。
アイルーはハンターのオトモとして、人間が作った武器と防具を身につけ、一緒に戦ってくれる。
他にも、役立つ食事を作ってくれるアイルーもいれば、自分たちだけで探検に出かけるアイルーもいる。
とはいえ、アイルーなら誰でも友好的というわけではない。言葉を話さず、ハンターに襲いかかってくる野良の個体も存在する。
それにアイルー以外にも、人間の言葉を話しオトモとして戦ってくれるチャチャブーがいる。
作中では獣人族の扱いだが、見た目はモンスターそのもので人間と取引してくれるモリバーがいる。
共通しているのは、人間の言葉を話すモンスターはモンハン世界において人間の友であり、味方であり、隣人でもあるという点だ。
人間の装備を身に着けて、縄張り争いでもないのに襲われていた様子から古代モンハンにおけるオトモ枠だと判断したが……正解だったな!
こうして会話できているのが疑いようのない状況証拠だ!
「なかま……」
リドが確かめるように言われた言葉を呟く。嬉しさから胸がじんわりと温かくなった。
「というわけで自己紹介だ。俺の名前はハンター」
スッと握手を求めて手を差し出す。リドと知り合えて心底嬉しいとばかりにハンターが明るい笑顔を見せる。
「あ、オ……オレっちはリド」
おずおずとリドは剣を一度置き、手を握った。
「よろしくな、リド!」
人間相手に初めて握手しながら、リドも自然と笑みを浮かべていた。
互いに名乗った後、ハンターが荷物袋について尋ねてリドが中身と集める理由を説明した。
「じゃあ一緒に食べ物と魔石を集めてまわろうぜ。俺があげてもいいんだけど、せっかくだから二人で遊びたいしさ」
「よろしく頼む。オレっちとしても、ただ恵んでもらうのは望んでねぇからな。それならありがたい」
因みにリドは、ゼノスについて知る神や人間の連絡役などを担当している魔術師フェルズから人間には近づかないように言われていたが、ハンターを信じたくて差し出された手を取ったのだ。
ハンターとリドの臨時パーティによる魔石と食料を集めは順調に進んだ。
リド一人では立ち入れなかった深い階層まで足を延ばし、二人でモンスターを狩っては魔石を回収。
採取ポイントを見つければ、木の実や薬草、キノコなども摘み取り、リドの荷物袋へと詰め込んでいった。
「魔石のレア度も上の階より高いな。リドの仲間たちの強化にはちょうどいいだろ」
「助かる。オレっち一人じゃ、ここいらの魔石は集められなかった」
「いいってことよ。俺の素材集めとマップ埋めにもなっているしなー」
二人が階層を回り始めてから、しばらく経った頃。
荷物袋は魔石と食料で満杯になり、リドの顔にも安堵の色が浮かんでいた。
「もう十分だ。これだけあれば仲間たちも……」
続く言葉が途切れた。
近くの薄暗い影の中から、一人の人影がゆっくりと現れた。黒いローブで全身を覆い、顔は深くフードで隠されている。
「フェルズ」
名前を呼ばれた相手はフードの影からリドを見つめた。
リドは荷物袋を抱え直し、頭を下げる。
「すまねえ。言いつけを破っちまった。でもよォ、ハンターの旦那はオレっちを敵じゃなくて仲間として見てくれて……」
「別に構わない」
フェルズの声に責めるような響きはなかった。それよりも、とばかりにハンターに声をかける。
「私はフェルズ。ウラノスとリドたちゼノスの連絡役を務めている。キミたちの行動は見守らせてもらった」
そう告げたフェルズはゆっくりとフードを外した。露わになったのは、肉も皮膚もない骸骨の頭部。
「その姿はまさか……!?」
驚きを見せるハンターにフェルズが頷く。
「そうだ。キミがお察しの通り。私は元ニンゲ」
「スカル装備だな! 俺と同じモンハン転生者がいたとは!」
「待て。違う。全然察していないじゃないか」
フェルズは自分が元ニンゲンで賢者の成れの果てだと教えて勘違いを正した後、ウラノスが会いたがっていると伝えた。
ハンターは軽い調子で了承。まずはリドをゼノス達が隠れ住む場所の入り口まで送り届けてからフェルズについていくことにした。
「そんじゃ、またな~」
「アァ……また、な」
人間相手にまた会う意味の挨拶をする喜びを噛みしめて、リドは彼らを見送った。
ギルド本部の地下にある祭壇『祈祷の間』。
少し高い位置に玉座が設置されており、周囲を照らしているのは、玉座のそばに立つ四本の松明だけ。
薄暗い空間の玉座に腰を下ろしているのは、男神ウラノス。無表情で長身の老神だ。
「結論から伝えておこう。私はゼノスと人間の融和を実現させたいのだ」
ウラノスはハンターを見つめる。
「そのためにも、三大クエストのモンスターを倒した冒険者でありながら、ゼノスを敵としなかった君に話を聞きたかったのだ。私でも知らないゼノスという存在について、何か知っているのではないかと思ってな」
「なるほど。そういうことなら何もかも話すぜ」
先にウラノスが、自らの知るゼノスの存在と彼らが置かれている現状を説明した。
聞き終えたハンターは、モンハンに出てくる言葉が通じるモンスター……主にアイルーの話になってしまうが詳しく解説して伝えきった。
「なんと……本来の未来ではゼノスと人間は共に生きる道を進めたのか……」
このダンまち世界は誤解からモンハン世界だと神会で認定されてしまっている。そのせいでハンターが知るモンハン世界は黒竜が倒されず、世界が一度滅んだ未来の姿だとウラノスからも勘違いされていた。
結果として、話し合いでアイルーやチャチャブーといった存在はゼノスの生き残りであると誤解が発生した。
ハンターが力強い言葉を投げかける。
「俺が未来を変えちゃったけど、人間とゼノスの共存は俺たちが生きるこの世界でも実現できる。絶対にだ。俺も協力するからさ!」
神々の持つ嘘を見抜く力にも引っかからない、心からの確信と言葉。
そもそもハンターからすると、モンハン世界なんだから人間と話せるモンスターの共存はできて当然だろ感覚。モンハン思考で最初から結論ありきなので、信じる信じないを選ぶ過程そのものが無い。
「……動くべき好機が来たのだな」
ウラノスは、ハンターの言葉を信じる選択を下した。
そして、ハンターが考案した計画を実行するため、ウラノスはゼノス全員にファルナを授けることを決めた。
◆ ◆ ◆
流れから計画が決まってからの報告になってしまったが、ハンターはヘスティアとアルフィアにもゼノスの存在と自分が考えた融和の計画についてすべて話した。
「ボクが元々持っていた知識だけで言うと難しいと言わざるを得ないね。でも、本来のモンハン世界ではそういうものだったと知った上で考えたら……いけるかも? 例えそうじゃなかったとしても、ボクはハンター君の味方だから応援するよ」
ヘスティアは、そう言って笑った。
一方、アルフィアは少し考え込んでから口を開く。
「私の考えでは……おそらく成功する。夫のやることだから無条件に肯定する、なんて浅い考えからではない。ここがオラリオだからという理由だ」
ヘスティアが首を傾げる。
「うん? どういう意味なんだい、アルフィア君」
「そうか。ヘスティアはオラリオに来てそう長くはないから、あまり実感していないか。オラリオ……もとい冒険者というのは……良くも悪くも実力が物を言う世界だ。それに自分たちに利があると分かれば、手のひらは簡単に返される」
◆ ◆ ◆
ある日、ギルドから正式にゼノスについて発表された。
発表時には、ゼノスはモンスターでありながら人間と同じ心を持っており人間の味方だと保証する……といった旨をハンターがリドと肩を組んで大々的に発言。
さらに、ギルドの隣にゼノス関連の施設を新設し、ギルドの運営による新サービス『オトモゼノス』を開始することも発表された。
どのファミリアでも一定期間、オトモゼノスを雇用できるというのがサービス内容だ。ゲームのようにずっと雇用されるわけではない理由は、オトモとして働いて得たお金を自由に使える時間を用意するためである。
オトモゼノスは戦いが得意な者や、戦う意思を自ら見せたゼノスたちが選ばれている。
魔石で強化した身体とファルナで得たステイタスを活かして、モンハン原作のオトモアイルーのように冒険者と組んで戦ったり素材を集めたりする役割だ。
オトモゼノスの装備に関しては、アイルー用の装備をハンターから提供されたヘファイストス・ファミリアがモンハン装備の研究と開発の一環として仕上げてくれた。もちろんモンハン装備にはまだまだ程遠いが、これまでゼノスが使ってたボロボロな冒険者の遺品装備より性能が良いのは明らかだ。
当然ながら、あまりにも突然の発表に人々は驚愕。
人間と同じ心を持ち、人間の言葉を話すモンスターがいる。それどころか、彼らを冒険者の仲間として雇用させるというのだ。
普通に考えれば、反発や反対意見が殺到してもおかしくはない。
だが、実際の反応は驚かれた割にはヘスティアが予想していたよりも、ずっと穏やかなものだった。
ギルドの公的な発表だからという理由もあるが、なによりも──。
「三大クエストを単独制覇して、そのうえオラリオに長年巣食っていた深い闇をギルドナイトとして切り払った生きる伝説の大英雄が大丈夫だって言うのなら……まぁ心配いらねぇか」
──ゼノスを肯定するハンターの功績があまりにも大きかったからだ。
オラリオの冒険者は、特に実力主義の傾向が強い。ギルドのお世話にならない程度なら、素行が悪くても強ければ正しいと主張する者も少なくない。
そんな粗暴な冒険者からも、純粋な気持ちで英雄に憧れる冒険者からもハンターは絶対的な存在として見られている。
ハンターがゼノスを認めたなら、こちらも認めざるを得ない……といった流れ。
ネットミームのセリフ的に言えば、次のようになる。
「ま…まあ あんたほどの実力者がそういうのなら………」
ハンターのデカすぎる功績によって、ゼノスの存在自体は受け入れられた。
とはいえ、実際にオトモゼノスを利用するかどうかとなると、話は別になる。
どのファミリアも様子見の段階だった。
◆ ◆ ◆
信頼を得るため、ハンターはリドと二人で、冒険者の多い上層や中層を連日探索した。
人目につく場所で一緒に狩りを行い、ときには困っている冒険者に無償で手を貸す。そんな地道な活動を続けながら、ゼノスが人間にとって危険な存在ではないことを示してオトモゼノスの宣言を行った。
また、ハンター以外にもゼノスの好印象を人々に与える協力者がいる。
事前にハンターから事情を伝えられた
彼女たちもオトモゼノスと共に街の見回りやダンジョン探索を行ってくれた。ゼノスは人間の敵ではなく、共に暮らせる隣人なのだとアピールを続けた。
さらに、身内となったゼウス・ファミリアとヘラ・ファミリアも協力した。
そうした地道な活動と協力者の影響が実を結び、ついにハンターの身内や関係者ではないファミリアから、オトモゼノスの利用希望が舞い込んだ。
「ウチらもオトモゼノス利用してみっか~。前々から戦力不足だしね」
最初に手を挙げたのは、女性団員の多い商業系ファミリアだった。主神は、カールがかかった金髪で若い女神である。
大抵の商業系ファミリアは、その名のとおり商売に多くの時間を割いている。そのせいで、団員の大半は低レベルの冒険者であり、戦闘そのものを得意としていない者も多い。
商品の材料となる素材を集めるために、中層以上のダンジョンへ自力で潜るのは難しい。なのでギルドに採取クエストを発注するのが定番だったが、依頼を出すたびに費用がかかるうえ、必ずしも都合よく受注してもらえるとは限らない。
他にもオラリオでは各ファミリアは基本的には競争相手なのもあってか、
「依頼を受けてやったんだから今度おれ達が買うときに安くしろ。じゃなきゃ次から受けてやんねぇぞ」
などと、要求をされて困るケースもあった。
一方で、オトモゼノスはギルド関係者であるウラノスのファミリアに所属している。
どこのファミリアが利用しても競争意識や対立関係が起きず、アイテム購入時の値下げをねだってくるようなことも無い。
雇用は期間限定かつ費用は発生するものの、採取クエストを毎回発注し、受注してもらえるのを待つよりは安上がりで効率もよかった。
戦力面では、そこらの冒険者では叶わない強さと頼もしさがあった。
彼らはもともとダンジョンで暮らしていた存在だ。各階層のモンスターに関する知識があり、ダンジョンの構造にも詳しい。生き抜くため、安全なルートを選ぶことにも長けていた。
こうした知識と経験は、共に探索する冒険者たちの生存率を大きく引き上げた。
冒険者たちはオトモゼノスにカバーしてもらいながら経験値を貯めれて、自分たちだけでは行けなかった階層で素材を集めることができた。
「レイちゃん雇ってマジ正解だったわ~。あんがとね!」
「雇用期間が終わってもまた雇いたいなぁ」
「わっかる~」
「あとさ、地上に戻ったらあたしらと一緒に買い物しよ! レイちゃんのキレーな羽の色に合いそうなネックレスをプレゼントしてあげっから」
でも、向けられる好意が嬉しくて……照れながらも微笑みを返した。
探索系ファミリアの中で、初めてオトモゼノスを雇用したのはヴィーザル・ファミリア。
団員の多くが獣人なのが特徴のファミリア故に、他の探索系ファミリアよりも雇用する踏ん切りが早かった。
彼らに選ばれたオトモゼノスの名前はヘルガ。
種族はヘルハウンド。仔牛ほどの大きさをした、黒い犬の姿が特徴的なモンスターだ。
……実は、ダンまち原作におけるヴィーザル・ファミリアは、ダンジョン探索中に副団長が命を落とし、最終的にはファミリアごとオラリオを去ってしまう。
しかし、この世界線ではオトモゼノスを雇用するようになった影響で不幸の未来は回避された。
もっとも、ダンまち原作を知る者がいないので、そんな原作改変が起きたなんて誰も気付かないのだった。
◆ ◆ ◆
最初は様子見に徹していたファミリアも、オトモゼノスの好評を受けて少しずつ動き始めた。
オトモゼノスは探索に有用で問題も起きず、利益をもたらしてくれる。
そしてギルド主体だからファミリア間の摩擦が起きるリスクも無いならば使わない手はない……とばかりに、オトモゼノスのサービスを利用するようになっていた。
今ではオトモゼノスを含めた冒険者パーティが街を歩く姿も珍しいものではなくなりつつある。
ハンターの隣で、変わりゆくオラリオの様子を見たリドが涙ぐむ。
「くぅ……オレっち達が夢見ていた……太陽の光を浴びれる地上で過ごせる時がホントウに来たんだなって……。ハンターの旦那にはいくら感謝しても足りねェ」
「俺だけの成果じゃないさ。アリーゼ達も協力してくれたし、オトモゼノスたち自身も頑張ったからこその結果だ。つまり、みんな偉い! それに満足するにはまだ早いぜ。次の計画に進むぞ!」
オトモゼノスの宣伝活動は、ひとまずここまで。
「次はキッチンゼノスだ」
モンハンのキッチンアイルーを元にしたサービス開始に向けて動き出す。
この展開のためにも、先にギルドナイト編やる必要がありました。
次回でゼノス編は終わる予定です。