転生ハンターがダンまちをモンハン世界だと間違っているまま黒龍を狩る話 作:シャリ
ハンターがダンまち世界に転生してから数ヶ月後。
相変わらず深き森に彼は居たが、装備と実力は成長により変化している。
レア度は低いが属性武器のストックが増え、状況に応じた換装も可能になっている。
戦闘のリズムと狩りの動きは体に染みついた。最初は手探り感もあった武器の間合い管理も今では呼吸のように自然だ。
「そろそろ森を出て人里くらい探すか~」
森の中での狩猟生活に不満はない。いつでも自由にキャンプ設営できるのもあって、生活環境は快適ですらある。
しかし……。
「さすがに一文無しのままってのもね。それに情報も欲しいし、俺が作れない新装備も見たいし、他エリアのモンスターも狩りたいしな」
ハンターが挙げた中だと最後が一番の理由だったりする。
というわけで、彼はようやく森の外を目指した。
ハンターが森を出て、数週間後。
時おりモンスターを討伐しながらも、密度の薄い木々を抜けて広い草原を通り、荒野との境目にある丘を登りきった。
「おぉ~、村を発見! ようやくだな」
丘の上から見下ろす視線の先には、小さな集落。
木造の家々が点在し、畑が広がり、煙突からは煙が立ち昇っている。柵で囲まれた、人の営みと温かさがある村だ。
「ココット村みたいな、のどかな雰囲気で良いねぇ」
モンスターハンターポータブルを思い出しながら、ゆっくりと村へ近づいた。
「旅人か? 珍しいな、この辺りに一人で来るなんて……。まぁとにかく、問題さえ起こさなきゃ構わん。好きなだけゆっくりしていけ」
門番からは深入りされず、軽い忠告されただけで済んだ。
村人たちは簡素な服装で、武装も最低限。どうやらこの辺りは、モンスター被害が少ない場所のようだ。
老人の一人に教えてもらい、村に唯一ある商店を訪れた。
扉を開けて入った店の中は薄暗く、木の棚に雑多な品が並ぶ。
保存食、布、簡単な道具類と、いかにも田舎の雑貨屋といった風情だ。
「いらっしゃい……っと」
カウンターの奥にいた中年の男店主が顔を出す。
「見ない顔だな。何か必要かい?」
「いいや、売りたいものがあってな。コレなんだが」
アイテムボックスから余っている魔石をいくつか取り出し、カウンターに転がす。
「ほう?」
店主の目が細まる。魔石を手に取り、しっかり見定める。
「ほう……この辺じゃ見かけない上物の魔石だ。お前さん、相当腕が立つみたいだな」
「ふふん、ハンターとしてやる気に満ち溢れていた功績だぜ! つっても、まだ全身下位装備だけどな」
店主が「カイ?」と不思議そうに呟くのを他所に、追加分として魔石を取り出して更に置いていく。
「……おいおい、そんなに出されてもこっちの金が足りん。買取きれんぞ」
「そっか。じゃあ追加で出した分の金はいらないから代わりに、村の周囲やこの世界やモンスター関係とか情報をなんでもくれ!」
最初に出した魔石以外は金銭不要だと分かった途端、店主の顔は嬉しそうにほころむ。
「そういう提案は大歓迎だよ。まずは先に出された魔石の買取からいこうか。これらだと買取額は──」
◆ ◆ ◆
ハンターが村で金と情報を得てから一か月後。
その日、オラリオを出発した商人一団が、歌劇の国メイルストラへと向かう馬車を連ねて進んでいた。
護衛についている傭兵は屈強自慢の狼人で構成された十五名。
オラリオを出てからも一匹か二匹のモンスターと遭遇した程度で力を持て余している。
このまま目的地につくまで何事もなさそうだ……という彼らの考えは突如として否定される。
不幸にも、突然のモンスターの群れに遭遇してしまったからだ。
時に集団で活動すると知られている、アルマジロとトカゲを合わせたような姿をしたモンスター『ハードアーマード』の群れ。その数は五十を超える。
傭兵たちは盾と片手剣で応戦するも、損失なしでやり過ごせる戦いではないとすぐに悟る。
「クソがぁ! 数が多すぎる。逃げろ! 荷物は捨てていけぇ! 俺たちが少しでも時間を稼ぐ!」
傭兵のリーダーが叫ぶが、もう遅い。
抑えにかかる傭兵たちをすり抜けた何匹ものハードアーマードが先頭馬車に近づいていく。
馬車の御者には盾も防具もなく、馬から馬車を外す猶予もない。
もう間もなく訪れる死の恐怖で御者の身体は固まってしまう。
その時。
シャキンッ!
空気を裂く鋭い金属音が響く。
一匹のハードアーマードが文字通りに一刀両断された。
続けて二匹、三匹と消えていく。
現れたのは、一人の男。
鋼色の軽装鎧と両手で握る長い獲物である太刀が目立つ。
この世界で唯一のハンター。
彼はとある理由で、一か月前からあてもなく歩き回っていた。そんな中で偶然にも一団のピンチを見て救援に駆けつけた。
さながら、モンハンワイルズでオンライン上の救難信号を受け取って現れる野良のハンターだ。
太刀の赤い軌跡が弧を描き、モンスターの群れを薙ぎ払う。
手に握られているのは、日本刀らしい刃文が目立つ鉄刀【神楽】 。
赤く輝く気刃を全開にして放たれる気刃大回転斬りが、ハンターを囲う位置についた十頭近いハードアーマードをまとめて斬り伏せた。
血しぶきが舞い、生命力が尽きたモンスターが黒く溶ける。
モンスターが優先順位を変えて、傭兵や馬車ではなくハンターへと向かう。ハンターは慌てず、軽やかに舞うように動き、ひたすら撫で斬りにしていく。
「すんげぇ……!」
御者はさっきまでの恐怖なんてすっかり忘れていた。荷物を捨てる覚悟をした商人たちも含めてハンターの狩りに見入っていた。
特に商人たちはオラリオで長く過ごしている分、先の美しくも一方的な戦いを見て分かったのだ。あのモンスターが今の数倍いても彼に全て倒されるなと。
次々と個体が減っていくハードアーマード達は策をこうじた。
自分らには頑丈な鱗がある。一体で通用しないならば、これまでやってきたように壁を作って潰せばいいのだと。
残ったハードアーマードはハンターから距離を取り、合体するかのように密着して一つの大きな壁を作りあげた。
こうなると、ただでさえ頑丈な身体は相乗効果で更に硬くなり、物理攻撃どころか魔法攻撃ですらほとんど通用しなくなる。そして、このまま動いて壁の硬さと質量を叩きつければ強い人間だろうと金属製の馬車だろうと全て押し潰せた。
まさに、彼らにとって無敵の鉄壁形態。
対峙するハンターは出来上がった壁を一瞥し、大きく上に跳躍。
太刀を大きく振り上げた状態から壁に向かって振り下ろす。
──兜割り
幾人もの命をすり潰してきた壁は刃をはじき返すこともできず、まるで紙のように真っ二つに裂けた。
大きな悲鳴をあげてハードアーマードたちが崩れ落ちる。
ハンターは着地と同時に刃を返す『練気解放無双斬り』により複数の斬撃を飛ばす。その斬撃が走った後はモンスターが消えゆく粒子のみが舞い上がる。
他の個体は、ただ簡単な作業として太刀で始末されていく。
鉄刀【神楽】がハンターの背に納刀された時には、地面に魔石と素材を残してモンスターは全て消え去っていた。
静寂が戻る。
馬車の御者は口を半開きにしたまま固まり、傭兵たちは盾を下ろすのも忘れていた。商人は予想を超えたハンターの実力に飲まれていた。
やがて、最初に動いたのは傭兵のリーダーだった。彼はよろよろと近づく。
「と……とんでもねぇな……お前さん。たった一人であいつらを……! って、ワリィ。礼が先だった! 本当にありがとうな。今回ばかりはダメかと思ったからよぉ!」
頭を下げた傭兵をきっかけに、他の者たちも駆け寄って声をかける。口々に褒められているが、ハンターの表情はほとんど変わらない。ただ、わずかに頷き、薄く息を吐くだけだ。
そのまま話の流れとして、目的地まで護衛の依頼をされた。一団を助けた分の謝礼とは別に報酬を出すとも言われている。
「わかった。他にやることもないしな……」
先の戦いでの姿と違って、彼は無気力に見えるほど熱が無い。実に簡潔な返事だった。
その日の夜。
馬車の一団から少し離れた場所で、ハンターは倒れた枯れ木の幹に腰を下ろし、夜空を見上げていた。
今の彼には一か月前に村で情報を手にするまで持っていた熱意が無い。彼の背中はただ冷たく、重い。
やる気が消え失せた理由はただ一つ。
「ここは……モンハン世界じゃなかった」
深いため息と共に、彼は手にしている情報と推測を再確認する。
1、この世界にはモンスターがいる
どう考えてもモンハン。
2、モンスターの素材で武器や防具を作ったりしている
やはりモンハン。
3、モンスターが死ぬと死体が残らない
モンハンと言えなくもない。
ゲームでも一定時間で死体は丸ごと消えていたし、モンハンポータブルの時とかランポスが飛びかかってきた瞬間に斬ると死体が残らずに消失する場合があった。あと、剝ぎ取りがオミットされたタイトルと考えたら不自然ではない。
4、ファミリアとかいう集まりがある
これはモンハン。
モンスターハンターフロンティアのハンターが集まるチーム機能の『旅団』と同じ。
ファミリアのトップは『神』だとか。まぁ『神』と称されるほどの神プレイでモンスターを狩っているんだな。トップが強いのは当然の話だ。
5、オラリオという町に、モンスターが出る深い階層のダンジョンがある
あまりモンハンらしくない。
モンハンワイルズだとマップが複雑かつ階層もあったが、そういうのとは別モノっぽい。とはいえ、モンスターを仲間にするモンハンストーリーズみたいな本家モンハンと異なる外伝作ならダンジョンが存在してもおかしくはないかも。
もしくはここがモンハンのソシャゲ世界で、ソシャゲ特有のやたら多いステージがそういう形になっていると考えたらありえなくもない。
そんなこんなで、ここまでならまだモンハンの範疇だった。
次で、俺は世界が異なっていると理解した。
6、お金の単位が『ヴァリス』
モンハンじゃない!!
大陸が違っても辺境の村だろうと単位が『ゼニー』なのがモンハン世界だ。
なんだったら同じゲーム会社で別のゲームシリーズのロックマンやストリートファイターもゼニーだったはず。
つまり、この世界は別のゲーム会社のモンハン以外のゲーム世界!
やったことがあるゲームの中で思い当たるものは無い。
まぁダンジョンがあるわけだし風来のシレンだか、なんたらの不思議なダンジョンだのそんな感じのゲームソフト世界だな。どれもプレイしたことないから詳しくは知らんけど。
……もう何もかもやる気が起きない。
大好きなモンハン世界に転生したと思ったら、転生チートがモンハンなだけで世界自体は知らんゲームの世界だったのかよと。
これを知る前の俺は本当に心の底から嬉しくて、ずっと夢の中な浮かれポンチになっていただけに落差のダメージがデカい。
心の傷が深すぎて、村を飛び出して適当にフラフラ彷徨っていたまである。
「ハァ~~~……」
ハンターは、このダンまち世界をモンハンではなく別ゲー世界とまた別の勘違いを起こしていた。
振り返ったせいで再び意気消沈し、ため息をつく。
そんな彼の背後から足音が近づいてきた。重く、ゆったりとした歩み。溜まったお腹の肉がプニョンと揺れる、特徴的な音。
「はっはっは! 今宵は良い夜ですなぁ、ハンター殿」
声の主は一団のリーダーである商人だ。名前はガリオン。腹がふくよかで丸々としており、頰も丸く、笑うと目が細くなる中年の男。
オラリオで古参の商人らしく、商売の勘は鋭いが、根は陽気で話しかけやすい雰囲気づくりに努めている。
今日の戦いで一番興奮していたのも彼だった。ハンターはゆっくりと振り返り、薄く微笑んだ。
「……ああ、そうだな」
声に力がない生返事だった。昼間の戦いで見せた、武人の鋭さはどこにもない。ただの疲れた旅人みたいな口調。
ガリオンは構わず、隣に腰を下ろす。
「いやはや、わたくし目の一団は実に運が良かったですぞ! 絶対絶命のピンチの場にハンター殿が舞い降りたのですからねぇ。うちの傭兵や若い衆も、皆ハンター殿の戦いを酒の肴にしてましたなぁ」
「…………そうか」
返事は相変わらず素っ気ない。
ガリオンは笑顔を崩さず、腹を軽くさすりながら褒め続ける。
「んふふっ、まさしく惚れ惚れする太刀裁きでした。ハンター殿ほどの強者ならば、伝説の【黒龍】だって倒せるかもしれませんなぁ!」
上手いプレイヤーの狩りって動画で見るだけでも夢中になれていいですよね。
もちろん下手なプレイでも実況動画とか友人とプレイ中とかなど楽しいです
因みにハンターさんは名前を忘れたので、
デフォルトネーム「HUNTER」としてハンターを名乗っている状態です。
次回は原作キャラが出ます。
お気に入り、評価、感想、などありがとうございました。
頑張ります。