転生ハンターがダンまちをモンハン世界だと間違っているまま黒竜を狩る話   作:シャリ

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5話:ハンターが水中戦をした話

 

 エルソスの遺跡を出た後。

 

「マップを見るに、もう大陸の端っこなんだよな。……せっかくだから、このまま隣の大陸に向かってみるか」

 

 その場の軽いノリで隣の大陸に渡り、ハンターは黒龍を探し続けた。

 未知の光景に喜び、狩りをしつつ、マップを埋めていく。

 

 

 探索が目的の旅だが、ハンターが旅人や行商人や村人を助ける場面も少なくなかった。

 

 地上のモンスターがダンジョン内と比べて弱いことが多くても……ファルナを持たず、傭兵や兵士ではない民間人からすれば十分脅威になる。そして多くの神はオラリオに集まっており、どの集落でもファルナを持たない人間の方が多い。

 また、人間の生活圏や人間が使う旅路ではモンスターとの遭遇率が低くても危険性はゼロではない。

 

 誰かが助けを求めていると……ゲーム本編でクエスト説明文に書かれているモンスターに困っている村や相手からのクエストをこなす感覚や救難信号で駆けつける感覚で彼は助けていく。

 モンスターを狩る以外でも、納品クエストのノリで危険地帯にしか生えない植物などを代わりに取ってあげたり等の行為も珍しくなかった。

 

 要は……彼にとってのハンター仕草をすることでリアルモンハンを遊んでいた。

 

 感謝する人々に対して、彼は明るく返す。

 

「なぁに、ハンターとしての務めを果たしたまでさ!」

 

 彼の言葉や表情には重い恩着せがましさは一切なく、まるで近所にいるお気楽兄貴が手を貸した後のような軽やかさ。

 それが逆に人々の心を掴み、去りゆく彼の背中に「また来てくださいね!」と温かい声がかけられていった。

 

 一か所に留まらず各所の現地民と関わり、周辺地域の情報も集めていく。

 そんな日々を過ごしているうちに気がつけば、別大陸を一周しきっていた。

 

 マップを埋め終えて情報も集まったが、黒龍の痕跡は一度も見つからなかった。

 ここは黒龍が居ない大陸だと判断を下し、オラリオがある大陸に戻る。

 

 ハンターが元の大陸に出戻りした時点で、アンタレス討伐から数年が経過していた。

 

 

 

 

 

 ──オラリオがある大陸の砂漠にて。

 

 ハンターは陸の王者ベヒーモスを偶然発見し、それがベヒーモスだと知らないまま討伐を終えていた。

 

「アカムトルムとウカムルバス辺りと似てたな。砂漠の龍級生物ってところか。やっぱ、一度滅んで生態系が変わる前の古代モンハンなだけあって未知のモンスターだらけなの面白いなぁ」

 

 

 身体の熱を散らしてくれるクーラードリンクをグイっと飲み、リラックス。

 

「暑い砂漠に長居したし……お次は海の方に行こう! 港町なら情報が集まるし、海で気分転換にもなるしな~」

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 ハンターが陸の王者ベヒーモスを狩猟してから一ヶ月後。

 

 港町メレンから離れた沖合の海。

 

 

 

 海の中は、静寂と暴力が同居する世界。

 その海の支配者としてリヴァイアサンは、数百年、いや千年を超える時を生きてきた。海ならば、どこであろうと彼の狩場である。

 

 

 ──自分を討伐するため、大きな船が群れを成して来たこともあったが、そんなものなど造作もなかった。

 船体をへし折り、人間たちを水面から引きずり落とせば終わり。

 

 人間たちが両足で立てる陸上でどれほど強かろうと、水中ではただ鈍い動きをする肉塊でしかない。

 最期は決まって息苦しさと共に、恐怖に歪んだ顔で海の藻屑になるだけ。

 

 いつだってそのはずだったのに……例外が現れた。

 

 

 

 リヴァイアサンは己の巨体を大きくくねらせ、再び体当たりを仕掛ける。

 その巨躯は白い盾に受け止められた。

 

 ゴォンッ!

 重く、鈍い衝撃音が水中で鳴る。

 

 ハンターは槍と盾を構えたまま、後退せずに受けきった。しかも、受けた勢いを返すかのように鋭い突きを繰り出す。

 

 雷属性ランスの"雷槍【ナルカミ】"が、リヴァイアサンの鱗を貫いて肉まで届く。

 加えて、ランスから迸る雷が肉と神経にダメージを与える。

 

 リヴァイアサンが受けた痛みは大きい。

 だが、痛みの苦しみ以上に胸の奥を刺激するのは三つの感情だった。

 

 

 一つ目は、困惑。

 

 この人間は他とは違う。人間ならば水中での長時間の戦闘など不可能だ。息を吸うために必ず水面へ上がらねばならない。

 なのにコイツは時折、どこからか取り出した玉を口に入れるだけで平然と動き続ける。

 

 水の抵抗がないかのように槍の扱いは素早く、構えて突進もしてくる。

 攻撃を仕掛けても盾で巨体を受け流し、カウンターを叩き込んでくる。

 

 

 

 二つ目は、恐怖。

 

 海王となった自分と戦える相手が現れるなんて想像すらしたことがなかった。

 しかも自分のような海で強い存在ではなく、陸上でこそ強いはずの人間がそうなるとは。

 畏怖とはこういう感覚だったのだな。

 

 

 

 三つ目は、闘争心。

 

 相手が強いからこそ、殺さないといけない。

 逃がせば、あの時に仕留めておけばといずれ後悔する。

 

 同時に、海王として逃げるわけにはいかない。

 逃げれば、海の支配者という自認を保てなくなる。

 

 

 だからこそ……戦い抜く以外の選択肢はないのだ!

 

 

 

 リヴァイアサンは海底に向けて咆哮を上げた。

 水圧を伴った咆哮が海を震わせ、砂底の砂を巻き上げて視界を悪くする。その間にハンターの背中に回り、巨体を活かした尾の一撃を横薙ぎに放つ。

 

 際どいタイミングになったが、その方向へ盾を構えて防ぐことに成功。

 強烈な攻撃をガードしきれたのは、アンタレス素材を使って『ガード性能+2』のスキルを発現させていたからだ。

 

 

 ガードの構えを解き、左腕に装着したフックスリンガーを射出。

 リヴァイアサンの身体に繋がったワイヤーを巻き取って密着。

 

 取り出したナイフを三回刺して傷口をつくり、そこをランスで何度も突く。

 

 傷口破壊ダメージでリヴァイアサンに激痛が走る。

 体をくねらせてハンターをどうにか振り払う。

 

 

 一度距離を取って……大きく口を開け、体内に水をため込む。

 

 蓄えた水と魔力を一気に口から解放。

 高圧の水流がレーザーの如く一直線に放たれた。

 

 ハンターはすんでのところでステップ回避。

 

 外れた水流は海底の岩を粉々に砕いた。

 巨大な体が海中で暴れ回るたび、大量の砂と泡が巻き上がる。

 

 海の中で、ディザスター映画ばりの嵐が起きているかのようだった。

 

 

 ハンターがランスの突進で距離を詰めて、再び近接戦闘が起こる。

 

 血が流れ、海が赤く染まっていく。

 

 

 

 

 

 ────やがて、戦いが終わりを迎えた。

 

 

 敗北したリヴァイアサンの意識が沈んでいく。

 

 王として負けた悔しさ。

 王座を降りることによる気の緩み。

 初めて全力を尽くした戦いに対する満足感。

 

 それら全ての感情ごと、母なる海に抱かれている。

 

 

 リヴァイアサンの魂は色褪せず……幸せな気分で海に溶け込んだ。

 

 

 

 

 

 素材を回収したハンターが水面に顔を出す。

 

「ふぅ〜、水中戦も独特で楽しいもんだ。てかモンハントライやってる気分になれたな。ナバルデウス系だったし」

 

 

 水中戦を堪能した彼の元へ、一隻の漁船が近づいてきた。

 

 船の上から、肩幅が広くがっちり体型の女性で……海のオカンなんて言葉が似合う年の女船長が声を張り上げる。

 

「おぉーい! あんたぁ、大丈夫かー!」

 

 軽く手を振り、親指を立てて勝利を伝える。

 慌てずに船まで泳いで乗り上げる。

 

 

「ついに海の悪魔リヴァイアサンが死んだ! 今後は、漁師達み〜んな安心して漁ができるさねぇ。あんたには感謝するよ!」

「いいってことよ。俺も楽しい狩りが出来て満足だ! 新しいG級素材も手に入ったしな」

 

 二人はちょっとした知り合いである。

 

 ハンターは港町メレンに訪れてまず、黒龍の手がかりがないかと大型モンスターの情報を集めていた。

 そんなハンターに声をかけたのがベテラン女船長の彼女。

 

 様々な繋がりがある彼女から話を聞き、各港町や海上で黒龍の目撃情報は無いという情報を得る。

 その際、リヴァイアサンが住み着いている海域についても教えてもらったのだ。

 

 ハンターはその海域への案内を彼女に依頼し、情報代も兼ねて多くのヴァリスを提示した。リヴァイアサンがいる海域は近づくだけでも危険だったが、彼女はハンターの力強い眼を信じることにした。

 送り届けた後は安全のために距離を取って、戦いが終わるのを待っていたというわけだ。

 

 

 

 女船長が大きな手で、ハンターの背をバシバシ叩きながら喜ぶ。

 

「港に戻ったら、皆でお祝いしないとねぇ! あんただったら何日でもタダで飲み食いさせてあげるさぁ。好きなだけアタシの家に泊まっておいき! うちの旦那もあんたみたいな強い男が好きさねぇ」

 

 対してハンターは、ちょっと申し訳なさそうな顔になる。

 

「あー……、じゃあ一泊はありがたくさせてもらうよ。でも連泊の方は、せっかくの誘いだが遠慮しとくぜ。長居すると面倒な勧誘とかが来ちまうからな。それに、海周りに黒龍がいないことも教えてもらえたし、次は山の方に行く予定なんでね」

 

 

 

 港町メレンに戻った後、女船長の呼びかけもあって、リヴァイアサン討伐を祝す宴が大人数で開催される。

 

 交易が多い港町メレンではビールの材料も上質な素材が集まるので、町中ならどこで飲んでもビールが美味いと評判だ。

 自然と『メレンビール』の名で町人から愛飲されていた。

 

 ハンターは振る舞われたメレンビールを飲んでMH3G『タンジアの港』の《タンジアビール》を連想し、それの宣伝文句を元に気分よく歌ってみた。

 するとビール好きの漁師たちに大ウケ。

 酒場の主人も「その歌ええやんか! 今後ウチでも使わせてもらうでぇ!」と好感触。

 

 その様子にハンターも喜び、この場にいる全員に向けて言う。

 

「みんなも一緒に歌おうぜ!」

 

 

 朗らかな笑顔で、皆がビール片手に歌う。

 

『みんなで飲もうぜ《メレンビール》!

 レッツ・ドリンク《メレンビール》!

 ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ……。

 プハー!

 狩りの後のこの一杯!

 海を見ながらもう一杯!

 みんな、酒場でさぁいっぱい!』

 

 

 明るい雰囲気の宴で漁師たちと飲み食いしたあと、ハンターは事前に言った通り一泊だけして山脈へ旅立った。

 

 漁師たちにとっての英雄が去った後も、港町ではお祭り騒ぎは終わらない。何日間も続いた。

 また、少し先の話になるがメレンビールはリヴァイアサン討伐の英雄も愛飲したビールと宣伝され、英雄本人が提唱した歌も合わせて大反響。わざわざ遠方から飲みにくる人間が増えて、港町メレンにある酒場はどこも売上を伸ばすことに成功した。限定的な部分とはいえモンハン文化に侵略されたというか持ち込まれた結果である。

 

 

 

 ──あのリヴァイアサンが一人の男によって討伐されたという情報は拡散され、オラリオにも届く。

 

 ベヒーモスとリヴァイアサン、そして最大の脅威である黒竜が討伐対象の三大クエスト達成を目標に掲げているゼウスとヘラの二大ファミリアにも……。

 




水中戦のランスはカウンターも機動力の高さも便利だし強いですよね。
ハンターが口に入れていたアイテムは酸素玉です。

・酸素玉
酸素が詰まった玉。水中で息切れしそうな時にはありがたい便利品。

・ビールの宣伝文句
原作ゲームで《達人ビール》と《タンジアビール》の二種類が存在する。
因みに作者も友人と行った公式コラボBAR『モンハン酒場』で飲めるビールは《乾杯ビール》なので別モノ。

・ハンター仕草による人助け
困っている人がいたら助けてあげたいよなー、という人情面が半分。
狩人ムーヴがイェーイ!タノシー!なエンジョイ精神面が半分。


【その他】
前回日刊ランキング1位になり、多くの方に見てもらえました。
嬉しかったです、ありがとうございました!!

前回から1週間が経ってしまいましたが、仕事もあるため最初ほどの更新速度はできないかもです。
最初と違って返信もできないですが、評価コメントも感想も全て読んで楽しんでいました。お気に入りやここすき等も糧にし、執筆する活力にしています!
更新こそが、作者ができる一番のお返しですしね。
(読者としてハーメルンを利用時、読んでる作品がエタると悲しくなるだけに)
あと、誤字報告にも助けられました。ありがたい…。

後書きに長々と書くのもアレなので簡単に例えるとシステムエンジニアな作者の仕事状況は、仕事の卵を抱えてブルファンゴがいるエリアを移動中な感じです。
とにかく、完結を目指して頑張りますので気長にお待ちくださいね。

[仕事の卵がっ!]


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