それでも僕は魔法の後継者だと言い張る   作:唯野葦也

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第6話:旅立ち

「改めてお初にお目にかかる。魔王の後継者、クロード。お前を倒す者だ」

 

 

 

 「魔王の後継者だと……?確かに魔法が使えることは魔王の、いやしかしお前の髪色は……!」

 

「そう、どんなに変化してもお前ら銀髪赤眼にはならん。後天的体質もあるが元々の髪色が金髪碧眼だってだけだ」

 

 

 

 口論が続く中魔王は術式を次々と編む、しかしクロードはそれを魔術式を付与した鉄棒を投げるだけで次々と霧散させていく。

 

 

 

「こらクロ。遊ぶのもいい加減にしなさい」

 

「へいへい」

 

 

 

 クロードは目つきを改めると一気に術式を編むそれは流動的な魔王式ではなく数式のように公式のある魔術式。だがそれを幾層にも積み上げさらにX軸Y軸Z軸に平面でありながら伸ばす所業は難解で複雑で、まるで魔法式のごとく書き換えれば何が起こるか分からない多層魔術式、それをクロードは鼻歌でも歌うかのように書き上げる。

 

 

 

「じゃあな、三流魔王。ただの魔術で防げると思うなよ」

 

「たかが魔術如きで私がやられるわけがッ……!」

 

 

 

 そしてそれは成った。

 

 

 

 ”魔術術式:存在証明の打ち消し”

 

 

 

 魔術で再現できない魔法の域の、そのたかだか魔術で魔王の存在は元からなかったかのように消え去ったのだった。

 

 

 

 その一部始終を影より観察していた二人はそれぞれ違う場所で同じ感想を抱いたのだった。

 

 

 

 

 ((あぁ、なんて綺麗な式なのだろう))

 

 

 

 

奇しくも二人はそれらの術式に焦がれたのだった。

 

 

 

 

+++++

 

 

 

 

 ここは水と花の都アモーラ市、そこは一年中花の香りが絶えず、中央噴水広場より流れる川には綺麗な水でしか生息できない魚たちが優雅に泳ぐ街。

 

 そんな身も心も清まるこの街で、川の底に溜まった泥水をすすり花の蜜を栄養素に生きてるようなやつがいた。

 

 

 

 黒髪黒目、魔力を全く持たない、通称”無魔”と揶揄される人間の特徴を持つ、目つきの悪い20歳頃の男性、名をクロードという。

 

 しかし、それも過去の話。最近の彼は羽振りは良い。二人の弟子候補のせいで。

 

 一方は金髪碧眼の、魔術師としての才が認められる外見をした商家の少年ノエル。

 

 一方は黒髪黒目の、一見無魔に見えるが銀髪赤眼だった過去を持ち、何より。

 

 

 

「貴方の術式。綺麗だったからもう一度見せて」

 

 

 

 と、いきなり宿を訪れてきて無魔には視覚出来ない術式を言及したかつての名家だった家柄を持つ童女、アリス。

 

 

 

 二人に金を恵まれ食だろうか衣住までも充実してきそうだったクロードだが、見かねた師匠に表の労働を命じられ、渋々今日も日雇いの求人へ行く。しかし子供二人を連れた免許も学歴もないクロードは当然断られ続けるも、それが結果として師匠へのアピールになるため就活は一応継続していた。あえて、身の丈に合わない求人を受けにいっているのは気のせいではないが。

 

 

 

 そんなお守をしながらぐーたら過ごしてる中、宿の自室を訪ねてきた者がいた。

 

 

 

「げっ、師匠……」

 

 

 

 それは高身長で美しい銀髪を長く伸ばし赤い眼を光らせいたずら気に口角を釣りあげている師匠の姿だった。

 

 

 

「よぉ、クロ。最近はずいぶんと羽振りが良いみたいじゃないか」

 

「いや、それはですね……」

 

 

 

 思わず後ずさりして壁にへばりつくクロードに向かってずかずか歩み寄ると壁に手を勢いよく打ち付けると顔を近づけてさらに嗤うのだ。

 

 

 

「そんな貴様に良い依頼をやろう。ちょっとお前の故郷の魔術学院へ行ってこい」

 

 

 

 お前に付き纏う子供を連れてな。という。クロードは嫌な顔を一瞬するも真面目な顔で尋ねる。

 

 

 

「やっぱアリスの事か」

 

「あぁ、アレは色々おかしい。無魔の特徴を持つのに魔術式が見えてるようだったし、何より髪色が変わったり……色々符合するんだよクロ、お前とな」

 

 

 

 鉛と雨の魔人は髪をかき上げる。

 

 

 

「正直、私はお前同様その症状の解決策を知らなんだ。しかし、お前は確かに成った。ならば鍵もそこにあるのだろう? ついでに貴様の魔力も取り戻してこい」

 

 

 

 馬車は宿前に用意してあるからな。と嘯き、旅支度もろくにさせず旅立ちを要求する。しかしこちらの事情も聞かず突然の依頼を出してくるのはいつもの事だった。そしてそれが自身のためになる事でもあった。

 

 

 

「……あのガキどもはいまどこにいる?」

 

「あぁ、おまけ諸共先に伝えておいた。今頃旅の支度を済ませとっくに馬車に乗ってるだろうよ」

 

 

 

 後はお前だけだとでも言うように扉から去る師匠をしり目に溜息を吐きながら身支度を整え旅に出る。

 

 

 

 結構気に入ってたんだけどな、この街。俺に似合ってて

 

 

 

 それはない。とどこかでツッコまれるであろう心の呟きは風の中に消えた。

 

 




これで第1章完結です。またしばらく書き溜めに入ります。
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