あの禪院直哉が、こんなにデレるはずがない。   作:masuda028

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※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。

◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。


第十一話 きらきらの魔法

 電車を降りた瞬間から、不快な熱気と「浮かれた空気」が鼻につく。改札を抜ければ、視界に飛び込んできたんは悪趣味なほど派手な洋風の城や。

 

「……はっ。なんやこれ。アホらしい。よりにもよって、こんなクソみてぇな場所にわざわざ足を運ばなあかんのか、俺は」

 

 近づくにつれて増えていくカラフルな装飾に、これ以上ないほどだらしない顔をした客ども。こんなもんが楽しいとか、正気とは思えんわ。

 ……ま、せいらがあのメールを送ってくるくらい楽しみにしとるんなら、付き合うてやるんも強者の余裕っちゅーもんやけどな。

 せやけど、入場ゲート前のこの長蛇の列はなんや。

 

「は? ありえへんやろ。俺をこんな雑魚どもと一緒に並ばせるつもりか? さっさと中に入れろや」

 

 イライラを隠そうともせず、俺は前の奴の後頭部を睨みつけた。遠くから聞こえてくる陽気な音楽やキャラクターの甲高い声が、余計に神経を逆撫でしよる。

 

 ほんまに時間の無駄や。呪霊の一体でも祓うとった方がよっぽど有意義やろがい。……だいたい、俺がおらん間、あの前髪野郎は絶対ニヤニヤしながらせいらの隣をキープしとったに決まっとる。後で絶対潰したるからな。

 

「……にしても、ほんまに『猫』ばっかやな。キモいわ。俺に似合うんは猫やなくて虎やろが。虎。……まぁ、せいらが猫耳つけとるんは、似合っとったからええけどな」

 

 ようやく俺の番が来よった。不機嫌な面を隠しもせず先ほどせいらから送られてきたチケット写真を突き出す。

 

「ちっ……さっさとせいら見つけて、さっさと連れて帰ったるわ。こんなクソみてぇな場所、二度と来るか」

 

 そう毒づきながらゲートをくぐった、その時や。

 

「なおちゃーーんん!!」

 

 ドーン! と、金色の毛玉が正面からぶつかってきよった。

 見れば、クリーム色の猫耳としっぽをつけた、これ以上なくあざとい格好のせいらや。

 

「おぉ!? ……なんや、よう俺がわかったな」

 

 驚きで一瞬声が裏返りそうになったが、内心ではこの合流の速さに「目が高いやないか」とニヤけそうになるのを必死で抑えた。

 

「えへへ。そりゃーわかるよー、なおちゃん目立つもん! まずはお揃いの猫耳と猫しっぽ買おうか? 行こ行こ!」

 

 躊躇いもなく俺の手を握りよる。さっきまでの行列の苛立ちなんか、こいつの体温を感じた瞬間にどこかへ消え失せよった。

 

「……しゃーないな。お揃いやないと、お前が迷子になった時に困るからな」

 

 自分でも呆れるくらい素直に、俺はせいらに引かれるままショップへと向かった。

 

 

《ミラクル・キャット・カーニバル》

(ランド側:ドリームパレードステージ周辺)

 

「リズムにのって、星の魔法をかけちゃおう! にゃんダフルなカーニバルの幕開けだよ☆」

 

キラキラに光るシャボン玉、星の紙吹雪、音楽に合わせて踊るキャットダンサーたち!

パレードのクライマックスでは、ゲストもステージに招かれ、“ミラクル・ステップ”で一緒に踊る”体感参加型パフォーマンスショー”!

 

• バブルステッキ(無料貸出)でバブル演出参加!

• キャストがランダムで選んだ“本日のミラクルスター”には特別なクラウンティアラが授与される!?

 

演出タイム:約15分(1日3回)

推奨年齢:全年齢(踊る気持ちがある人)

撮影OK!(※キャストの顔出しNGの演者除く)

ステージエリア:中央ドリームプロムナード

 

「なおちゃーーんん!! パレードだよー!!」

 

「見ればわかるわ! それがどないしたん!」

 

 シャボン玉やら紙吹雪やらが舞う中、せいらの瞳がさらにキラキラ輝きだしよる。

 

「ねぇなおちゃん、踊っていいやつだってー! ステッキ貸してくれるんだってー!」

 

「は? お前ほんまそんなん好きやな……」

 

 呆れて見とる間に、あいつはピンクのバブルステッキとかいう安っぽい玩具を手に、うきうき顔で戻ってきよった。

 

「ほらっ! シャボン玉飛んでるっ! わたしもいっくよ〜!」

 

 ステッキを振り回して、ガキどもと一緒に泡を飛ばしとる。

 

「なに……それ。お前も子供か」

 

「ちがうもーん! 楽しんでるおねぇさんなの!」

 

 ……まったく。

 せやけど、音楽に合わせて跳ねたり回ったりしとるせいらの動きは、無駄にキレがあって目を惹きよる。

 俺は少し離れたところで腕を組んで眺めとったが、周りの雑種どもが段々せいらに注目し始めとるのに気づいて、舌打ちが出た。

 

「おい。そんな前出んな。ぶつかるぞ」

 

 ……っちゅーか、俺以外の男に見せるなや。

 

「えへへ〜♪ だって褒められたんだもーん。ほら、“本日のミラクルスター”に選ばれたりして〜?」

 

 そんなフラグみたいなこと言うてたら、司会のアホがせいらを指し示しよった。

 

「──せいらさーんっ!!」

 

「わーい!! やったぁあ〜〜!!」

 

 こともあろうに、あいつはパレードの中央に導かれて、ティアラまで載せられてくるくる回っとる。

 

(……ほんま、ようわからん女やわ。なんであないに誰にでも愛想振りまけるんや)

 

 自分だけに向けられる笑顔やないことに、胸の奥がざわつく。

 ステージから戻ってきたせいらが、上気した顔で俺に手を差し出しよった。

 

「──なおちゃんも、一緒に踊ろっ?」

 

「……踊ったりせん。俺は」

 

「踊ろうよ! わたしはなおちゃんと踊りたいんだよ!」

 

 ……ずるいわ。

 そうやって、星屑みたいな泡を弾かせながら、一番の笑顔でそんなん言われたら。

 

「……一回、一回だけやぞ。俺のステップに付いてこれるか?」

 

 結局、俺の手はせいらの手を握りかえしとった。

 

 キラキラした世界なんて反吐が出ると思てたのに、その中心におるのがこいつやったら……まぁ、悪ぅない。

 

──

 

【禪院直哉のセルフコメンタリー】

 

「おい、誰や。今の俺を見て『並んどる間、ずっとせいらのこと考えてて健気w』とか言うたカスは。

俺はな、純粋に時間の無駄を嘆いとっただけや。あんな雑種どもの行列に混ざって、キモい猫の音楽聞かされて……禪院家の格が下がるわ。

……せやけど。

あの門をくぐった瞬間に、あの金色の毛玉が突っ込んできた時は……まぁ、その。俺の居場所を正確に把握しとったことについては、褒めてやらんでもない。

『なおちゃん目立つもん』やと?

当たり前やろ。俺のオーラは隠そうとしても漏れてまうねん。

猫耳? しっぽ?

……あんなん、断るに決まっとるやろ。俺は虎や言うとるやろ。

せやのに、あいつが『お揃い!』なんてキラキラした目で見てくるから、断ったら泣き出しそうな気がしてな。しゃあなしや。……しゃあなしやぞ! 鏡は見んようにしたけどな!

それと、パレードや。

せいらの奴、子供に混ざって何が『ミラクル・ステップ』やねん。

見てるこっちが恥ずかしいわ……と思ってたのに、あいつ、無駄に動きがえぇから目立ちおって。

『ミラクルスター』に選ばれた瞬間、周りの雑種どもがせいらを見て拍手しとるのを見て、無性に腹が立ったわ。

『俺のせいら』を、勝手に見るなや。あんな綺麗なもん、俺だけが見てればええねん。

『なおちゃんも、一緒に踊ろっ?』

……あのアホ。俺が踊るわけないやろ。

せやけど、あいつが差し出してきたその手が……泡にまみれてキラキラしとるのが、あまりに眩しくてな。

……しゃあない。ステップは踏まんけど、その手ぇ握って、あいつが転ばんように支えてやるくらいはしてやったわ。……ホンマに、手がかかる女やで」




ここまでご覧いただきありがとうございました。
本エピソードは本編の余燼編●7 の内容です。

旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅
https://syosetu.org/novel/391078/
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