あの禪院直哉が、こんなにデレるはずがない。   作:masuda028

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※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。

◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。


第十五話 消えない苛立ち

 ようやく8番出口の階段が見えてきたっちゅーところで、隣の阿呆がまた大声を出しよった。

 

「わかったーーー!!!」

 

「……なんや。耳元で叫ぶなや」

 

 見れば、これ以上ないほど目をキラキラさせとる。ったく、これやからせいらは……。

 

「何を思い付いたんか、言うてみぃ」

 

「あのね! ゲームにすればいいんだよ!」

 

 せいらが抜かしたんは、呪霊を「祀る」だの「ゲームに移す」だの、到底正気とは思えん提案やった。せやけど、不思議と説得力があったんは、この場所そのものが「見てほしい」という呪霊の歪んだ欲求で満ちとったからやろ。

 

「とりあえず俺たちの任務は人命優先や。これでお開きでえぇやろ」

 

「そうだね。お疲れ様」

 

「──お前もな」

 

 柄にもなく労ってやろうと肩に手を置いた瞬間、あの畜生(まーくん)のしっぽにピシャリと弾かれた。……自分、後で絶対に毛ぇむしり取ったるからな。

 階段を上がり、外の空気を吸った瞬間。

 

「あっ! すぐるーー!!」

 

 俺の横から、金色の塊が弾丸のように飛んでいきよった。

 そこには補助監督と、胡散臭い笑顔を浮かべた夏油。

 せいらは迷いもせず、あいつの胸に飛び込んでいきおる。

 

「直哉もお疲れ。せいらを守ってくれてありがとう」

 

 夏油が勝ち誇ったような、余裕のあるツラで俺を見てきよった。……お前に礼を言われる筋合いなんか、一ミリもあらへん。

 

「楽しかったよ! ねー! なおちゃん!」

 

 せいらが夏油に抱きしめられたまま、無邪気に俺を振り返る。

 

(……阿呆が。自分、さっきまで泣きそうな顔して『すぐるの幸せが幸せ』とか抜かしとった癖に。そんなん、こいつ(夏油)はこれっぽっちも知らんのやぞ)

 

 そう思うと、無性に腹が立って言葉を飲み込んだ。

 夏油に抱かれて笑うとるせいらを見て、その時は「任務が終わって良かった」くらいにしか思うてへんつもりやった。

 

 ……せやけど、後になって。

 

 あいつが笑うとるのを見て、どこか安心しとった自分がおることに気づいて、猛烈に腹が立った。

 

 なんで俺が、あいつの幸せを「良かった」なんて思わなあかんねん。

 俺が、俺の手で、夏油なんか忘れるくらいに……。

 

「まーくん! あと一人ちゃんとぺっして!」

 

 せいらが猫を撫でとる。……チッ。

 次は、あの猫の席も、夏油の席も、全部俺が奪い取ったるからな。

 

──

 

【禪院直哉のセルフコメンタリー】

 

「おい。今すぐ後半の文章を黒塗りにしろ。

誰が『後から腹が立った』やねん。俺はな、任務が終わってせいらを夏油に押し付けられた開放感に浸っとっただけや。

……せやけど、夏油。

あいつ、自分がどれだけ重たいもんをせいらに背負わせとるか、一ミリも分かっとらへん。

『せいらを守ってくれてありがとう』?

ふん、当たり前やろ。俺は禪院直哉や。守るべきもんは完璧に守る。お前に言われんでもな。

あいつの腕の中で笑うせいらを見て、一瞬だけ『これでええんか』と思った自分がおったんは……まぁ、認めんでもない。

あんなに不器用で、自分を殺してまで他人の幸せを願う阿呆が、せめて今この瞬間だけでも笑っとるなら、それは……。

……あー!! クソッ!!

なんで俺がこんな殊勝なこと考えなあかんねん!

せいら! 次は絶対あんな顔させへんからな。俺の隣で、俺のことだけ見て笑わせたるわ。

え? あの猫、中身『真人』やったん!?

……おい、せいら! そんなん、撫でるな言うてるやろ!

不潔や! 今すぐ手ぇ洗え! 消毒や!!」




ここまでご覧いただきありがとうございました。
本エピソードは本編の遷光編●20 の内容です。

旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅
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