あの禪院直哉が、こんなにデレるはずがない。 作:masuda028
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。
◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。
廊下まで響くガキどもの騒ぎ声に、俺はこめかみをピクリと動かした。
「……ほんま、どいつもこいつも」
一般クラスの講義を終えたばかりの俺の耳には、隣の教室の喧騒が毒のように刺さる。
俺は迷わずドアをバーンと蹴破るように開け放った。
「はーい、お前らー……話し声が大きい!! 自習で待ってろと言われとるんやから、静かに待っとれ!!」
教室の中には、真希をはじめとした呪術クラスの面々。
俺は懐から愛用の財布を取り出し、教え子の一人……いや、姪のような存在の真希に視線を向けた。
「真希ちゃん。真依が毎日寂しがっとったで。月に一回ぐらいは顔見せに行ったらどうや? 交通費ぐらいおじさんが出したるわ」
あいつが──せいらがおった時は、こんな小言を言う必要もなかった。あいつが笑っておれば、真希も真依も、もっと素直に寄り添っとったはずや。
せいらがおらんなったこの学園で、誰かがその「絆」の代わりを務めなあかんのなら、それは俺の役目やろ。
「ちょっとー、おじさん。教室内での金銭のやり取りは控えてもらえますー?」
「しゃけ」
パンダと棘の雑種どもが抜かしおる。……誰がおじさんや、俺はまだ若……いや、もうええ。
「……まぁ、お前の言う通りにしたるから、機嫌直せや」
かつて地下通路でせいらに言うたセリフが、ふと脳裏をよぎる。
教室を出て中庭を見下ろせば、五条の野郎が新入りの乙骨を連れて歩いとるのが見えた。
幼等部のガキどもが「五条せんせー!」と群がっとる。
……賑やかなもんやな。せいらが目指した「みんなが笑顔で過ごせる場所」は、皮肉にもあいつがおらんなってから、より強固な形になりつつある。
(……せいら。見てるか。
お前がおらん間、この学園は俺が守ったる。
五条の野郎が「知らないことを知るって楽しいよ」なんて乙骨に説いとるけどな、俺が教えてやりたいんは一つだけや。
『お前が戻ってくる場所は、俺が世界一綺麗に整えといたぞ』ってことだけや。
ガキどもの笑い声も、真依の寂しがりな電話も、全部俺が受け止めたる。
せやから、お前は安心して戻ってこい。
……その時は、またあの柔らかい手で、俺の手ぇ握ってくれるんやろな?)
──
【禪院直哉のセルフコメンタリー】
「おい。誰が『直哉おじさん』やねん。表出ろ、24分割してやるわ。
俺はまだ現役バリバリの禪院家当主、兼……今は『一般クラスの教師』っちゅーやつや。
せいらがおらんなって、この学園のあちこちにアイツの面影が残っとる。
アイツが『みんなが笑える場所にしたい』なんて青臭いこと抜かしよったから、俺が形にしてやってるだけや。あのアホがいつ戻ってきてもええように、この『呪術学園』を世界一の場所に整えとく……それが当主としての『管理能力』や。
真希に金を出すんも、投資や。真依が寂しそうにしとるんが鬱陶しいから『姉妹なら直接会え』って言うただけや。合理的な判断やろ。パンダやら何やらが口挟んできよったけど、俺の財布の厚みで黙らせてやったわ。家族の不和は組織の弱体化に繋がるからな。
……それと、乙骨。
あいつ、せいらがおったら間違いなく『ゆーたくーん!』とか言うて抱きついとったやろ。そう思ったら、あいつが今ここにおらんのは、俺の精神衛生上、えぇことかもしれんわ。
あいつも『みんなが笑顔で』なんて、せいらみたいなこと抜かしおって……村みたいやと? ふん、せいらがおった時はもっと賑やかやったわ。畑を耕したり、ガキどもと追いかけっこしたりな。
幼等部のガキどもが笑っとるのを見ると、たまに鼻の奥がツンとしよる。
地下通路でせいらが『すぐるの幸せがわたしの幸せ』なんて抜かしおった時、俺は猛烈に腹が立った。せやけど、今なら少しだけ分かる気がするわ。
この場所を、みんなの笑顔を、せいらに見せてやりたい。そのために俺は、嫌われ役の『おじさん』でも教師でも、何でも演じてやる。
……せいら。
お前がおらんと、豆腐の角に頭ぶつけるよりも痛い、退屈な毎日やけどな。
俺は負けへんで。お前が帰ってきた時、『なおちゃん、凄いね』って言わせるまで、俺はこの場所を絶対に見捨てへん。
せやから……早よ、帰ってこい。
俺の隣を空けて、待っとるからな」