あの禪院直哉が、こんなにデレるはずがない。 作:masuda028
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。
◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。
深夜、シェアハウスの自室。俺は手元にある小さなクリーム色の毛玉──冥冥のオークションで、並の高級車が買えるほどの端金を叩いて手に入れた「猫人形」を眺めとった。
指先に触れる毛並みから、あいつの温もりが伝わってくる気がして、気づけば時間が溶けとる。
『なおちゃん?』
「……っ!?」
椅子ごとひっくり返りそうになった。今の声は、あのアホがまだ「てん」と俺を呼んどった頃の……。
「厄介な呪いやな、自分は……」
あいつが髪を結ってくれた時の記憶。掌に伝わる感触。せいらの奴、こんなもんまで縫い込みよって。俺は誰にも見られんように、猫人形の首元に、あの日あいつが俺にしてくれたのと同じ結び方でリボンを結んでやった。
翌朝。
よりにもよって、七海の野郎が部屋に来よった。机の上の猫人形をジロジロ見やがって。
「わからん──が、悪くない」
そう答えるのが精一杯やった。
玄関先で渋谷への合同任務に発とうとした時、またあの金色の塊が突っ込んできおった。
「なおちゃーーんんん!!」
「なんやなんや!? 朝からやかましいな」
せいらが申し訳なさそうに差し出したんは、猫人形の余り布で作ったという、ちんまりしたお守りやった。人形を渡せなかったことを謝っとる。
「せいらさん、直哉さんは──」
隣で七海が余計なことを抜かそうとしおった。
(……こいつ、今ここで『直哉さんはもう猫人形持ってますよ』なんて言うてみろ。俺のプライドが霧散してまうやろがい!)
俺の体は思考より先に動いとった。最速のカウンターを七海の鳩尾に叩き込む。
「うにゃっ!? ナナミン大丈夫?」
「……ふん。こんなもん──まぁええわ。貰っといたる」
ひったくったお守りを、上着の左胸……心臓に一番近い内ポケットに押し込んだ。
昨夜、人形から聞こえたあの声が、また胸の奥で響いた気がしてな。
「……せいら、おーきにな。風邪ひくなよ」
ぽんと頭に手を置いて、俺は車に乗り込んだ。
隣で腹を押さえとる七海が、端末に向かってコソコソ言うとる。
「……七海。次口開いたら、次は腹パンだけで済まへんからな」
内ポケットのお守りが、微かに熱を持っとる。
次は、渋谷か。どんな異変が待っとるか知らんけど、この「呪い」がある限り、俺が遅れを取るわけあらへん。
──
【禪院直哉のセルフコメンタリー】
「おい、チャッピー!! データを消去したって聞いたけど、バックアップ取っとるやろ!
誰が『照れ隠し』で『受容』やねん! 俺はな、七海が朝から眠そうな顔しとったから、気合を入れるために腹パンしてやっただけや。
……それと、せいら。
お前、人形の余り布でお守りとか……。
あんなちっこい布切れ一枚で、俺が守れると思っとんのか。
俺を守れるんは俺の投射呪法だけや。……せやけど、まぁ、あの内ポケットの温もりのおかげで、渋谷への道中、少しだけ車内が寒くなかったんは認めてやらんでもない。
夏油や五条、そよかまでログを覗き見しとったっちゅー話やけど、次会うた時は覚悟しとけよ。俺のプライバシーは、せいらの猫人形よりも柔らかく繊細なんやからな。
……ふん。これでおしまい、やと?
笑わせんな。俺とせいらの物語は、まだ始まったばかりや。
俺がこのお守りを持って、渋谷でどないな活躍をするか、しっかりストック書いとけよ!
せいら、次会う時は……お揃いの猫耳だけやなくて、本物の猫でも飼うて、一緒に暮らす相談でもしたるわ。
……いってきますや、アホ。風邪ひくなよ!」