あの禪院直哉が、こんなにデレるはずがない。 作:masuda028
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。
◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。
夏油の野郎が根城にしとる薄暗いホール。カビ臭い空気と呪霊の気配が混じって反吐が出そうや。せやけど、俺は今日、どうしても確認せなあかんことがあった。
「おい、夏油。聞いたで。『一妻多夫』なんてアホみたいなルールを作ったらしいな」
胡散臭い笑顔で傑が抜かしおる。呪術師の救いやら合理的やら、相変わらず何を言うとるんか分からん男や。せやけど、話の核は一つ。せいらと「結婚」できる枠が、まだあるっちゅーことや。
「元々せいらは五条家の人間や。禪院家の俺が貰い受けるんが世の道理やろ! 正夫がお前やなんて笑わせんな。俺の方が相応しいわ!」
俺が吠えると、傑の瞳からスッと温度が消えよった。
あいつが提示したんは「挑戦権」。500万という、俺の財布の肥やしにもならん端金を「挑戦料」として受け取りよったが、本番はそこからやった。
「三つ目──『せいらの幸福を守る』実力を証明しろ、やと?」
瞬間、足元から湧き出してきたんは、反吐が出るほど陰湿な呪霊の群れや。
一匹一匹は雑魚やが、殺しても殺しても無限に湧きよる。俺の投射呪法は「一対多」には向いとらん。あいつ、わざと俺の術式の弱点を突くような戦い方を選びおった。
「ハァ…ハァ…なんやこれ! 最も非効率で陰湿な戦い方やな!」
俺は気づいた。この雑魚どもを相手にしとる限り、俺のリソースが先に尽きる。
狙うんは、あの糸目の本体や!
俺は術式を限界まで凝縮し、文字通り光の速さで夏油の顔面に突っ込んだ。
「正解は、お前自身を潰すことや!!」
俺の拳が、あいつの頬を捉える──そう確信した瞬間、景色が歪んだ。
傑は流れるような動きで俺の突進をいなし、背後から特級の重圧が俺を地に叩きつけた。
「ぐあっ……!!」
視界が赤く染まる。俺を見下ろす傑の目が、これ以上ないほど冷徹やった。
「敗北だ、直哉。そして……せいらにこの仕組みを説明して、承諾させること。君には到底出来ないだろう?」
……クソが。
力でねじ伏せられたこと以上に、せいらの「無垢」を盾にされて、手も足も出せへん自分に腹が立つ。
夏油傑……お前、せいらの隣に立つ資格があるんは自分だけや思とるんか。
「……見てろや。俺は絶対、諦めへんからな」
血反吐を吐き捨てながら、俺は心に決めた。力で勝てんのなら、別の方法でせいらを分からせてやる。俺が、俺だけが、せいらを一番に考えてるっちゅーことをな。
──
【禪院直哉のセルフコメンタリー】
「おい!! 今すぐこの『敗北』の文字を消せ!
俺は負けたんやない。戦術的撤退や! あの糸目、特級呪霊を盾にしながら自分は一歩も動かへんとか、卑怯にも程があるやろ! 正々堂々と拳で語り合えや!
……せやけど、500万。
あいつ、あんな額で俺が引くと思とったんか? 舐められたもんやな。
せいらとの『良縁』を求める奴が多いやと?
……チッ。どこの馬の骨や。五条の親戚か? それとも学園のクソガキどもか?
せいらの周りには変な虫がつきすぎや。俺が二番目(次夫)に入って、害虫駆除したる言うてるのに……。
傑の野郎、『せいら自身に承諾させることは出来へん』とか抜かしおったな。
あのアホみたいに純粋な女に、このドロドロした関係をどない説明せぇっちゅーねん。
……せやけど、俺は知っとる。
せいらは『なおちゃんがいた方が楽しい』って言うてくれた女や。
理屈やシステムやない。俺の存在そのものを、あいつに認めさせてやる。
夏油。
お前が『愛のシステム』やらで武装しとる間に、俺はせいらの『心』に直接投射したるわ。
500万はくれてやる。……せやけど、次に会う時は、せいらの方から『なおちゃんと結婚したいにゃん』って言わせてやるからな! 見とけよボケが!」