あの禪院直哉が、こんなにデレるはずがない。 作:masuda028
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。
◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。
「……負け犬、やと?」
地面に這いつくばりながら、俺は夏油の冷たい言葉を噛み締めていた。
背中にのしかかる重圧。肺が潰れそうで、視界は真っ赤や。せやけど、俺の耳は聞き逃さへんかった。あの、軽やかで無警戒な、世界で一番愛おしい足音を。
「うにゃっ!! すぐるー!! ここにいたの?」
……来た。勝機や。
夏油が必死に隠そうとしとるのが、背中越しに伝わってくる。俺の背中を踏みつける足に力がこもる。痛い。痛いけど、笑いが止まらん。
「なおちゃんもここに来てるってさっき聞いたんだ」
せいらがこっちに来ようとする気配。傑が必死に嘘をついて追い返そうとしとる。
俺は指先を動かし、自分の血溜まりをピシャリと弾いてやった。
「!?」
せいらが駆け寄ってくる。夏油が慌てて足をどけよった。
「なおちゃん!?」
血の海に膝をつくのも構わず、せいらが俺を抱き上げる。
……あぁ、柔らかい。夏油の冷たい呪霊とは比べもんにならん温もりや。
「おぉ、お前……よく来たな」
わざと掠れた声で、血を吐き捨ててやった。
「俺は、お前ともっと遊べるようになりたかったんやが、夏油に邪魔されて……ほんま情けないわ」
せいらの目が涙で潤んどる。
あぁ、ええ気分や。傑、お前の負けや。
俺はあいつが「てん」と呼ばれてた頃の、あの日々をあいつに思い出させた。
「── ずっと昔、お前に一つだけもろうたもんがあんねん」
「……うん」
「お前が……"てん"が、"お天道様"みたいに周りを照らして、俺もよう笑わせられてな……」
昔を思い出すように、俺は遠くを見るような表情を浮かべた。
「俺はお前と会っとらんかったら、きっとドブカスみたいな最低な男になっとったと思う」
自虐の笑みを浮かべ直哉は小さく息を吐く。
俺がどれだけあいつを必要としとるか、どれだけあいつに救われてきたか……全部、血の混じった言葉に込めて。
「最後にあれやってくれ。全身がバラバラになりそうなんや……痛いの飛んでけってやつや」
「うん! 痛いの痛いのとんでけぎゅー!!」
せいらの胸に顔を埋める。
最高や。夏油の野郎、あっちで拳から血ぃ流して震えとるのが見えるわ。
システム? 愛の構造? 笑わせんな。
最後はな、こうやって『弱ったフリ』して甘えられた奴が勝つんや。
この温もり、死んでも離さへんからな。
──
【禪院直哉のセルフコメンタリー】
「おい、夏油!! 見たか!!
誰が負け犬や! 最後にせいらの胸でお休みしとるんは、この俺や!!
お前の『愛のシステム』は、せいらの『情』に一瞬でハッキングされたんやな! ざまぁないわ!!
……あぁ。せやけど、マジで死ぬかと思ったわ。
あいつの特級呪霊、ホンマに加減知らへん。
せやけどな、この痛みのおかげで、せいらの『痛いのとんでけぎゅー』が手に入ったんや。安いもんやろ。500万よりよっぽど価値あるわ!
せいらが俺のために泣いてくれた。
『なおちゃんと一緒にいると楽しい』って言うてくれた。
傑、お前がどれだけ俺を排除しようとしても、俺とせいらの間には『積み重ねた時間』があるんや。お前がせいらを囲い込もうとすればするほど、俺はこうやって隙間に滑り込んだる。
……にしても、せいら。
お前、血まみれの俺を抱きしめて……服、汚れとるやろ。
後で俺が、最高級の服、なんぼでも買うたるからな。
お守りも人形も、全部この日のためにあったんや。
夏油、次夫の条件、これで一つクリアやな。
『せいらに承諾させる』?
……もう、この『ぎゅー』で半分承諾したようなもんやろ!
震えて待っとれ、正夫さんよぉ!!」