あの禪院直哉が、こんなにデレるはずがない。   作:masuda028

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※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。

◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。


第二十一話 血溜まりの中の執念

「……負け犬、やと?」

 

 地面に這いつくばりながら、俺は夏油の冷たい言葉を噛み締めていた。

 背中にのしかかる重圧。肺が潰れそうで、視界は真っ赤や。せやけど、俺の耳は聞き逃さへんかった。あの、軽やかで無警戒な、世界で一番愛おしい足音を。

 

「うにゃっ!! すぐるー!! ここにいたの?」

 

 ……来た。勝機や。

 夏油が必死に隠そうとしとるのが、背中越しに伝わってくる。俺の背中を踏みつける足に力がこもる。痛い。痛いけど、笑いが止まらん。

 

「なおちゃんもここに来てるってさっき聞いたんだ」

 

 せいらがこっちに来ようとする気配。傑が必死に嘘をついて追い返そうとしとる。

 俺は指先を動かし、自分の血溜まりをピシャリと弾いてやった。

 

「!?」

 

 せいらが駆け寄ってくる。夏油が慌てて足をどけよった。

 

「なおちゃん!?」

 

 血の海に膝をつくのも構わず、せいらが俺を抱き上げる。

 ……あぁ、柔らかい。夏油の冷たい呪霊とは比べもんにならん温もりや。

 

「おぉ、お前……よく来たな」

 

 わざと掠れた声で、血を吐き捨ててやった。

 

「俺は、お前ともっと遊べるようになりたかったんやが、夏油に邪魔されて……ほんま情けないわ」

 

 せいらの目が涙で潤んどる。

 あぁ、ええ気分や。傑、お前の負けや。

 俺はあいつが「てん」と呼ばれてた頃の、あの日々をあいつに思い出させた。

 

「── ずっと昔、お前に一つだけもろうたもんがあんねん」

 

「……うん」

 

「お前が……"てん"が、"お天道様"みたいに周りを照らして、俺もよう笑わせられてな……」

 

 昔を思い出すように、俺は遠くを見るような表情を浮かべた。

 

「俺はお前と会っとらんかったら、きっとドブカスみたいな最低な男になっとったと思う」

 

 自虐の笑みを浮かべ直哉は小さく息を吐く。

 俺がどれだけあいつを必要としとるか、どれだけあいつに救われてきたか……全部、血の混じった言葉に込めて。

 

「最後にあれやってくれ。全身がバラバラになりそうなんや……痛いの飛んでけってやつや」

 

「うん! 痛いの痛いのとんでけぎゅー!!」

 

 せいらの胸に顔を埋める。

 最高や。夏油の野郎、あっちで拳から血ぃ流して震えとるのが見えるわ。

 システム? 愛の構造? 笑わせんな。

 最後はな、こうやって『弱ったフリ』して甘えられた奴が勝つんや。

 

 この温もり、死んでも離さへんからな。

 

──

 

【禪院直哉のセルフコメンタリー】

 

「おい、夏油!! 見たか!!

誰が負け犬や! 最後にせいらの胸でお休みしとるんは、この俺や!!

お前の『愛のシステム』は、せいらの『情』に一瞬でハッキングされたんやな! ざまぁないわ!!

……あぁ。せやけど、マジで死ぬかと思ったわ。

あいつの特級呪霊、ホンマに加減知らへん。

せやけどな、この痛みのおかげで、せいらの『痛いのとんでけぎゅー』が手に入ったんや。安いもんやろ。500万よりよっぽど価値あるわ!

せいらが俺のために泣いてくれた。

『なおちゃんと一緒にいると楽しい』って言うてくれた。

傑、お前がどれだけ俺を排除しようとしても、俺とせいらの間には『積み重ねた時間』があるんや。お前がせいらを囲い込もうとすればするほど、俺はこうやって隙間に滑り込んだる。

……にしても、せいら。

お前、血まみれの俺を抱きしめて……服、汚れとるやろ。

後で俺が、最高級の服、なんぼでも買うたるからな。

お守りも人形も、全部この日のためにあったんや。

夏油、次夫の条件、これで一つクリアやな。

『せいらに承諾させる』?

……もう、この『ぎゅー』で半分承諾したようなもんやろ!

震えて待っとれ、正夫さんよぉ!!」




ここまでご覧いただきありがとうございました。
本エピソードは本編の炎陽編●7 の内容です。

旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅
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