あの禪院直哉が、こんなにデレるはずがない。 作:masuda028
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。
◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。
1年2年夏の合同合宿。呪力強化と戦闘時の連携を高める目的で行われるという合同合宿……そして今は夜、三人一組で三箇所に設定された呪霊を祓いに行く。
──なんやこの組み合わせは。
せいらを間に、俺と夏油がせいらと手を繋いで山道を歩いとる。
「歩いてるよー♪ 歩いてるよー♪ わたしはー元気だよー♪」
夏油の奴はせいらの歌に合わせるように鼻歌をしとるが、時折こちらを睨みつけるのが気に食わん。そもそも俺とせいらの時間になんでこいつがおるねん。
「せいら、たくさん歩いて少し疲れてないかい? お菓子と飲み物を用意してきたから呪霊たちと少し休んできなよ」
「えぇ? いいの? すぐる! ありがとう!」
夏油から渡されたお菓子やらペットボトル飲料を両手に抱えて、せいらは「わーい!」と、少し離れた呪霊たちのいる場所に走っていく。
「おい、夏油。俺に何か用でもあるんか? 邪魔やねんけど」
「いや? 君が何か勘違いしているようだから、教えてあげようかと思って」
「…………」
いけすかん奴。雑種のくせにそこそこ顔がえぇところが余計に腹立つ。
「せいらと何か幼少期の特別な思い出があるようだけど、あまり自惚れない方がいい……彼女にとって人に優しくしたり、褒めたりすることは当たり前のことだから」
「フン、そんなこと、わざわざお前なんかに言われるまでもないわ、ボケが」
「──そう。君がせいらにとっての特別だと思っていないのなら良かったよ」
ハァ? 頭沸いとるんか? まさか自分こそが、せいらの特別やとでも思っとるんちゃうやろな。
「ああ? お前、俺を試すとでも言うとんのか? 身の程知らずめ」
「とんでもない。真面目な話さ。勘違いしてると思ったから、早めに教えてあげようと思って」
「この禪院直哉に喧嘩売っとんのか?」
「だとしたら?」
「面白い。買ってやるわ、その喧嘩!」
格闘戦が始まる。喧嘩を売るだけのことはあるようやな、こいつ……戦い慣れとる! かわす、いなす──俺も夏油もこれという一撃が入らぬまま組み手のようになっとる。不意に夏油の顔の守りを薄くした。頭は狙わんと思ったんか馬鹿め!!
俺の拳が夏油の顔に当たった。勢いよく夏油の身体が吹っ飛んだが、正直そこまでの力は入れておらんかった。せいらが慌てて夏油に駆け寄って抱き起こす。
「すぐる! どうしたの! だいじょうぶ!?」
「あぁせいら……私はどうやら禪院くんを怒らせるようなことを言ってしまったみたいなんだ。顔が痛いよ──」
「すぐるー」
せいらは両目に涙を浮かべて、夏油が今にも死にそうで心配しとるような様子やった。頭のまわる奴や、タイミングを合わせて自分から後ろに跳んで衝撃を逃しおって──。
「せいら、いつもみたいに痛いのとんでけのおまじないしてくれるかい?」
「うん! 痛いの痛いのとんでけぎゅー!!」
はぁぁぁぁ!? 夏油の奴、せいらの胸に顔を埋めてにやついとる!!! こいつ!!! せいらの無垢な優しさを己の欲望に利用しおって!!!
「すぐる? だいじょうぶ?」
フザけたことしおって! こんな奴に、せいらの純粋な優しさを食い物にさせるわけにはいかん!! この俺が、黙って見とれるかいな!!
「もー! なおちゃん! ちゃんと聞いてた? すぐるはあやまったよ! なおちゃんもあやまって!!!」
せいらの声に我に返る。夏油は謝ったやと? どうせ蚊の鳴くような声で謝ったふりをしただけやろがい! しかし、せいらがあないな様子では俺が謝るまで事がおさまらんのは目に見えとる。ぎゅーされとる夏油の顔がごっつムカつく! ごっつムカつくが! 少しでも早くせいらを夏油から解放してやりたい──。
「……チッ、悪かったな。
──お前の面汚しな顔が、さらに汚れたことについては」
「なおちゃん!」
ぱぁとせいらの表情が明るくなる。後半はボソッと言ったからか上手く聞こえんかったようや。そしてせいらに手伝わせて夏油も立ち上がり。
「じゃあ二人とも! 仲直りのあくしゅ!」
せいらに促されてしゃーないなと握手をする──痛っ!? 夏油の奴俺の骨を折る勢いで握ってきよる!! 負けてられへんと俺も力を込めた。
「仲直りできて良かったね」
せいらはにこにこ笑うとるが、フン! まさかこの俺が、こんな雑種に遅れを取るわけないやろが!!
──
【禪院直哉のセルフコメンタリー】
「おい。今すぐこのシーンを削除しろ。誰や、これを記録しとったカスは。
まず、俺の拳が当たった瞬間、夏油の奴が吹っ飛んだんは、アイツが『自分から後ろに跳んで』被害者面を作ったからや。投射呪法の使い手である俺の目は誤魔化せへん。あれはもう、特級呪術師やなくて『特級大根役者』やろ。反吐が出るわ。
……それと、せいらがアイツを抱きしめとった時の俺の心境についてやけどな。
あれは『嫉妬』とかそんな安いもんやない。『聖域に泥足で踏み込む害獣を駆除せなあかん』という、選ばれた人間としての義務感や。……え? 目が血走っとった? 節穴か自分。あれは山の寒暖差で血管が拡張しただけや。
『痛いのとんでけぎゅー』やと?
……あんなん、俺やって幼少期に……いや、なんでもないわ。
とにかく、あんな汚らわしい男の顔面にせいらの純粋な優しさをぶつけるなんて、神への冒涜や。俺はそれを正そうとしただけや。
最後の握手?
あいつ、絶対骨折るつもりで来とったからな。俺の美しい手を壊そうとするなんて、卑怯にも程があるわ。
……せいらが『仲良くなれて良かった』とか言うて笑うから、しゃあなしに握り返してやったけどな。
ええか、次に夏油がせいらにあんな顔近づけたら、今度は24フレームの速さで物理的に引き剥がしたるからな。覚えとけよ、前髪野郎!」