あの禪院直哉が、こんなにデレるはずがない。 作:masuda028
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。
◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。
高専の文化祭。柄にもなく浮き足立つ雑種どもを尻目に、俺は戦場(レジ)に立っとった。
「え? すみません。もう一度お願いします!!」
受付の灰原が間抜けな声を出しおる。俺はこれ以上ないほど明快に、禪院家次期当主としての『正当な要求』を突きつけたった。
「──だから、何度も言わせんなや。せいらのチェキ、あるだけ全部って言うとるやろ!!」
当たり前やろ。せいらのあんな破廉恥な……いや、愛らしい姿が記録された紙切れを、どこの馬の骨とも分からん奴らの手に渡してええわけがない。市場に出回る前に俺が全て回収(買い占め)し、厳重に保管するのが義務っちゅーもんや。
せやのに、この灰原ときたら。
「いやー残念ながら買い占めは出来ないことになってまして!!」
「午前中は出来たやろ!! なんで午後になったらあかんねん!! こっちは全部買うつもりで銭用意しとんねん、詐欺やないか!!」
必死に抗議する俺の前に、あの守銭奴の女が立ちはだかった。
「直哉くん? 需要と供給という言葉を知っているかな?」
「……ッ!」
冥冥の奴、あの冷徹な目で俺を睨みよる。……チッ、大人げないわ。こっちは正当な対価を払おうとしとるんやぞ。
引くに引けずガン飛ばし勝負になっとるところに、今度は七海が通りかかりよった。
「灰原、状況が変わりました。プランBです」
「プランB! あはっ! いよいよか! 禪院くん! 行こう!」
「おい、離せ! 灰原、自分、人の手を引くな言うとるやろ──!」
有無を言わさぬ勢いで、俺は店内の奥へと引きずり込まれた。
(……なんや、この薄暗い部屋は。なんやその手に持っとる『猫の耳』みたいな気色悪いもんは。……やめろ、俺の頭に近づけるな!!)
厨房の方からは、あの髭ダルマ(夜蛾)が「屋台番長」やなんや言うてノリノリな声が聞こえてくるし、高専の奴らはどいつもこいつも正気やない。
抵抗も虚しく、俺は鏡の中に立つ『猫耳を付けた自分』と対面することになった。……最悪や。俺の美しさが、こんな安っぽい仮装で台無しや。
せやけど、店内のステージから聞こえてきた声に、俺の思考は一瞬で上書きされた。
「みんなごめんにゃ〜。そよかにゃんががんばりすぎてしまったのにゃん」
せいら。
猫耳を揺らして、あざとい……いや、この世のものとは思えん可愛さで謝罪しとる。
「そよかが倒れたんじゃあ、俺が出るしかないよな」
「僕は燃えているよ! 猫耳執事! 最高だね!」
五条に夏油、七海まで。アイツら、せいらと一緒の舞台に立つためにノリノリやないか。
特にあの前髪野郎。
「なおちゃーん! 猫耳の色お揃いだね!」
「せいら、私はどうかな?」
「すぐるーー!! 最高だよ!」
……あかん。殺意で呪力が爆発しそうや。
なんで、俺がせいらとお揃いの猫耳付けて屈辱に耐えとる時に、アイツがせいらに『最高』なんて言われなあかんねん。
「なんで俺までやらなあかんねん!!」
叫びは虚しく店内の喧騒に消えていく。
せやけど、せいらが俺の耳を見て「なおちゃんもお揃い!」と嬉しそうに笑いよった。……チッ。
しゃあない。せいらが『猫耳執事』をやれ言うんなら、やったるわ。
こうなったら、この店で一番『チェキ』を撮られるんはこの俺や。
夏油より、五条より、俺の方がせいらの隣にふさわしいっちゅーことを、雑種どもに教育したるわ……!
──
【禪院直哉のセルフコメンタリー】
「おい。今すぐ『猫耳執事』とかいう単語を検索履歴から消せ。
俺がレジでゴネたんはな、何度も言うけど『せいらの肖像権の保護』や。あんな無防備な写真、俺以外の奴が持っとるだけで公序良俗に反するやろ。冥冥も冥冥や。あいつも大概にせい。
……え? 猫耳付けた自分を鏡で見て『案外悪くない』と思ったやろ、やと?
節穴か自分。あれは『どうすればこの滑稽な状況を俺の美貌でねじ伏せられるか』を検討しとっただけや。
だいたい、せいらと耳の色がお揃いやったんは……まぁ、偶然や。ホンマに偶然や。……ちょっとだけ、悪くない気はしたけどな。
夏油、お前は絶対許さん。せいらのマドレーヌ、俺の分だけ特別に大きいの焼いてもらうからな。見とれよ!」