あの禪院直哉が、こんなにデレるはずがない。 作:masuda028
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。
◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。
地獄や。ここは間違いなく、現世に現れた地獄の門や。
なんで俺が、こんな薄暗い部屋で雑種ども相手に「にゃん」などと抜かさなあかんねん。
(……落ち着け。これは修行や。禪院家の当主たるもの、どんな理不尽な状況でも『美』を維持せなあかん。……せやけど、あの前髪野郎(夏油)と白髪(五条)のノリ、なんやねん。アイツら、呪術師やめてこっちで食うていくつもりか?)
周囲の連中は「シャンパンありがとにゃ〜ん♡」だの「推し変しないで」だの、気色の悪い台詞を吐き散らかしとる。
そこに、いかにも「迷い込みました」と言わんばかりのヌルいガキどもが入ってきよった。
俺は「なおや」と書かれた名札を指で弾き、仕方なしにそいつらの席へ向かう。
……あかん。慣れへん接客で口が勝手に「禪院直哉」に戻りそうや。
「おい。どないしたん? 水ばっかり飲んでても可愛げないやろ。まずはメニューでも見んかい……にゃん」
……死にたい。今すぐこの「にゃん」を言うた口を縫い合わせたい。
ガキどもが怯えたようにメニューを受け取りおる。当然や、俺の覇気に当てられたんやろ。
「なにか気になるもんでもあったんか? あんたみたいなヌルい客は、推しも早めに決めとかんと別の誰かに取られるぞ。知らんけど」
(……っていうか、せいら! 自分、さっきからあっちのテーブルで夏油と何楽しそうに話しとんねん! 誰が「最高」やねん! 俺を見ろ! この屈辱の猫耳姿を拝めるんは今だけやぞ!)
目の前の客が「ウザい」とか抜かしおった。
俺に向かってウザい? ほぉ、ええ度胸やないか。
「ウザい? はっ、まさかあんた、こんなとこまで来て、俺みたいなモテ男にウザい言うてんのかい? せっかくメニュー持ってきてやったっちゅーのに、感謝の一つもあらへんのか、お嬢さん?」
少し顔を近づけて、格の違いを教えてやった。
ガキどもが真っ赤になって固まっとる。……ふん、チョロいな。
だが、俺の心は一向に晴れへん。
「……にゃ? 本気で沼に落ちても知らんぞ。俺は、弱い女には興味ないからにゃ」
捨て台詞を吐いて背を向ける。
(……あかん、今の「興味ない」は、あっちでデレデレしとるせいらに向けて言うべきやった。なんで俺はこんな見ず知らずのガキ相手にマウント取っとんねん。……っていうか、七海! 自分、なんやその『猫の舌』って! 設定凝りすぎやろ、本職か!)
鏡に映った自分の猫耳が、心なしかさっきより力なく垂れ下がっとる気がした。
せいら。後で絶対に、俺の猫耳を「世界一かっこいい」って言わせたるからな。見とれよ!
──
【禪院直哉のセルフコメンタリー】
「おい。これ書き残した奴、ちょっと面貸せ。
誰が『ウザい』やねん。俺はな、不慣れな環境で戸惑う客に対し、あえて厳しく接することで自立を促しとっただけや。教育的配慮や。
……それと、あの『にゃん』。
あれはな、俺の喉が乾燥して変な音が漏れただけや。猫の鳴き真似なんか、この俺がするわけないやろ。
だいたい、せいらが夏油にばっかり構うから、俺も少しは『目立たなあかん』と思って……いや、なんでもない。忘却しろ。
『沼に落ちても知らんぞ』って言うた時、実はちょっとだけ格好ええポーズ決めたんは内緒や。
七海の奴、あいつはあいつでノリノリやったし、五条は五条で客の財布空にする勢いやったし……。
高専の奴ら、呪術師よりホストの方が向いとるんとちゃうか?
……まぁ、一番人気(チェキ数)は、最終的に俺が掻っ攫ったけどな。……当然やろ、格が違うねん」