あの禪院直哉が、こんなにデレるはずがない。   作:masuda028

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※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。

◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。


第六話 せいらの頼み事

「はぁ? なんや、朝から騒がしいな」

 

「おねがーい! おねがいだよぉ!」

 

 文化祭二日目、朝っぱらから顔を合わせたかと思えば、せいらが縋った声で頼み事をこじつけてきた。なんでも、そよかの様子が昨日からおかしいらしい。

 

「そよか……そよかねぇ……」

 

 てん──せいらと再会した時に、せいらとついでとばかりにそよかの身辺も探らせていた。せいらとそよかは、かつて五条悟が呪霊から助け出した双子ということになっとる。だが、それだけではない。妙な引っかかりが、俺の胸中に燻っていた。

 

「──なんでわざわざ俺に頼むん? 夏油でも七海でも、他に頼みやすい相手はおるやろ?」

 

「え? なおちゃんは人より洞察力が鋭いし、人の内面を引き出すような話術が堪能だからだよ!」

 

「ま"──」

 

 当たり前、とでも言うようにせいらはにこやかに微笑む。くそ、口車に乗せられた気分や。だが、悪い気はせぇへん。この、無邪気で真っ直ぐなとこが、昔から変わらんなァ……。

 

「まぁええわ。引き受けたる。ただし、人に頼み事するっちゅうことは、どういうことになるか分かってるんやろうなァ?」

 

「うん! 何かお礼するね! 何がいい?」

 

「……ほな、今度買い物にでも付き合えや」

 

「わかった! 楽しみにしてるねー!」

 

 そう言って、せいらはぴょんぴょん跳ねながら猫耳メイドに着替えるために更衣室へ消えていった。やれやれ、面倒なことになりそうや。だが、少しばかり胸が高鳴っているのも否定できへんかった。

 

 

 せいらから聞かされていた待ち合わせ場所へ向かうと、そよかがぼんやりと佇んでいた。癖のない長い黒髪と、清楚な雰囲気。まぁせいらも黙っとりゃあ似た雰囲気を纏っとるが。髪の色は違うても、双子っちゅうのは不思議なもんやな……周囲の声をかけようか迷うとる雑種共がいらん気を出さん内に合流しておくか。

 

「待たせたな」

 

「直哉さん……おはようございます」

 

「おう、おはようさん。ほないこか」

 

 そよかの横に並んで腰に腕をまわして歩き出す。

 

「えっ? あの……」

 

「物欲しそうな顔で突っ立っとるから、周りの男共が期待した目で見とったで。相手がおると思わせた方が、静かに周れるやろ」

 

 出店の前を通るたび、そよかはほんの少しだけ足を止めた。わたあめ、ヨーヨー釣り、写真部の展示──

 興味はあるけれど、自分から何かを言うでもなく。ただ、周囲に馴染もうと努力しているような印象を受けた。

 

「──ほんま、真面目やなァ」

 

「え?」

 

「別に皮肉ちゃうで。そないな顔せんでもええ。せやけど、ずっと周りにばっか合わせとったら疲れるやろ」

 

 そよかは、はっとしたように俺の顔を見る。反応があるというのは、やっぱり何か引っかかっとる証拠や。

 

「思ったことがあるんなら言えや。俺に良い顔しようなんて思わんでええぞ。お前は──五条悟の"女"なんやろ?」

 

「!?」

 

「なんや違うんか? お前は五条悟にあてがわれた女やって御三家では噂されとるんやが」

 

「悟は私を──友だちとして接してくれているわ」

 

「友だちぃ? ……ふぅん。せやけどな、そんなん友だちの顔ちゃうわ」

 

 そよかの顎を掴んで顔を近付ける。

 

「お前の顔は何もかも諦めて受け入れた女の面をしとるぞ──見覚えがあるんや、その顔。禪院家の女も、同じような目をしとったわ。なにもかも諦めて、ただ耐えるだけの顔──」

 

 ボソリとそよかの耳元で囁く。

 

「五条悟は高専に入るぐらい頭のいかれた奴やから、侍らす女もさぞイキのいい女を侍らすんやと思っとったが。やっぱり御三家の血ぃ引いとる、女を生かさず殺さずはお手のもん──所詮は御三家のお坊ちゃんだったっちゅーわけか!!」

 

 勢いよく頬を叩かれた。

 

 さっきまでの死んだような目をした女は目の前にはもうおらん。炎のような熱量の光が両目に宿っとる。ぞくりと背筋が震えた。

 

「やめなさい!! 悟は違うわ。

私を悪く言うのはいい。私は恋愛もろくにわからない半端者だから。でも悟は、こんな私でも好きだと言ってくれるの、そんな悟の悪口を言うことは許さない!!」

 

 なんや、やっと火ィついたやんけ……てっきり“従順な五条の犬”かと思とったけど。

 

「ふーん」

 

「……」

 

 俺が誰だったのかを思い出して、やってもうたという表情になりかけてはおるな。

 

「おもろいやん」

 

 俺を平手打ちした手首を掴む。

 

「!?」

 

「恋愛もろくにわからない半端者。詳しく聞かせてもらおか? 禪院直哉様の頬を叩いたツケは高くつくでぇ?」

 

 そよかの手のひらに頬擦りする「ヒィ」と小さく悲鳴を上げて可愛いいもんや。

 

──

 

【禪院直哉のセルフコメンタリー】

 

「おい。今すぐこの記録を抹消しろ。

誰が女の手に頬擦りしとる変態やねん。あれはな、叩かれた場所の『衝撃のベクトル』を物理的に解析しとっただけや。投射呪法を使う者として、動体の軌跡を確認するのは当然の行為やろ。

……まず、せいらの頼み事や。

『なおちゃんは話術が堪能だから』やと? ふん、分かっとるやないか。せいらは昔から、俺の隠しきれん才能を見抜く力だけはあるわ。あんな顔で頼まれて、断れる男がおるか? いや、おらん。せやからこれは、あくまで『せいらの願いを叶えてやる』という、俺の慈悲の心からの行動や。

……それと、そよかの件や。

あいつ、最初に出会った時、反吐が出るようなツラしとったわ。禪院家の、あの腐りきった伝統の中で魂を殺された女どもと同じ目ぇしおって。

五条悟……アイツも大概やな。最強やなんや言うて、結局は『御三家の枠』の中で女を型に嵌めとるだけやないか。そう思ったら、無性に腹が立ってな。

あえてあんな言い方して火ィつけてやったんや。……案の定、えぇ面しよる。

あそこで俺を引っぱたいた時のあいつの目は、せいらの姉妹(ふたご)にふさわしい、生きた人間の目やったわ。

……え? 『頬擦りしてヒィとか言わせるのが趣味』?

節穴か自分。あれはな、俺を叩いたことの重大さを分からせるための『精神的格付け』や。……ちょっとだけ、あいつが赤くなって震えとるんが愉快やったんは否定せぇへんけどな。

せいら、見てたか? 俺、ちゃんと仕事したで。今度の買い物、楽しみにしてるからな」




ここまでご覧いただきありがとうございました。
本エピソードは本編の静謐編●17 の内容です。

旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅
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