あの禪院直哉が、こんなにデレるはずがない。 作:masuda028
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。
◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。
さっきまで俺は冷房の効いたレクサスの後部座席でふんぞり返っていた。それがどうや? こんなクソ暑い中で、まさか俺が待ちぼうけを食らう羽目になるとはな。
せいらとの待ち合わせ場所を『入り口』に集合、なんて曖昧な言い方をしたのが悪かったっちゅうんか? せいらの奴は寮の入り口に、俺は高専の入り口(車が乗り付けられるところ)で、まさかずっとお互いが来んのを待っとったとはな……!
──しかもなんで通話の途中で切れんねん、アホが!
高専の入り口まで来い、と指示を出す前に、突然せいらとの通話は切れた。運転手に寮まで乗り付けさせようかとも思ったが、高専に部外者が入るのはそれなりに面倒らしく、無駄に手間をかけるのも腹立たしい。
「アホらし! こんな茶番に付き合っとる暇があるか。
もうええわ、俺が迎えに行ってやる!」
ほどなくして寮の入り口に到着。せいらはしゃがみ込んで茂みの中を覗いている。
「──なにしとんねん」
「アリさんがねー。行列してるんだよー。
あ!! なおちゃーん! おはようー!」
俺の声に途中で振り返り、せいらは無邪気に抱きついてきた。
このクソみたいな暑さの中、散々待たされたっちゅーのに、せいらは文句の一つも言わん。どころか、無邪気に笑って俺に抱きついてきよる。
「お前はホントに──」
「ん?」
「……ほんま、ようわからん女やな。行くで」
そして当然のように、にこにことせいらは手を繋いできた。
レクサスの後部座席になんとか乗り込んで、運転手に指示を出す。
──で、その格好は? 俺のジト目に気付いたのかせいらが「今日はショッピングセンターにでも行くのかなーって思って!」ダボっとしたTシャツにジーンズ。鞄は猫の顔をした斜めがけのポシェット。
「お前、いつもそんな服着とるんか」
「え? そうだよー。動きやすいし、洗濯しやすいし」
せいらの持っている服について聞いてみると、どうも安物の服しか持っとらんようやった。
五条家に世話になってるんなら、もう少し小遣いも貰うておるんかと思ったが、そうではないらしい。
俺の考えていた完璧なデートプランは今崩れ去った。
……相手はあの"てん"やもんな。
運転手に行き先の変更を伝えた。
「どこに行くの?」
せいらは車の外の景色を珍しそうに眺めている。
「今日は、お前の服を買いに行く」
「わたしの服?」
俺を見つめて頭を傾げた。
「せや。俺が今日買うてやる服を着て、今度また付き合え」
「なおちゃんの買い物に付き合うだけじゃなくて、わたしの服まで買ってくれるのー!? ありがとー!!」
言いながら俺に抱きついてくる。
「ええ加減にせえ!」
バックミラー越しに、微笑ましそうな表情の運転手と目が合った。
──
【禪院直哉のセルフコメンタリー】
「おい、誰や。今の俺を見て『結局自分から迎えに行くとか、犬かよw』とか書いたカスは。
俺はな、時間を無駄にするんが一番嫌いなんや。あのアホ面したせいらが、いつまでもアリの行列見て日が暮れるのを防いだだけや。これは合理的な判断であって、断じて『会いたくて我慢できんかった』わけやない。
……それと、あいつのあの格好。
ダボダボのTシャツに、猫の顔したポシェット? 正気か?
そんなん、隣に歩いとる俺の格に関わるやろ。禪院直哉が安物の服着た女を連れとるなんて噂が広まってみろ。御三家のメンツ丸潰れや。
せやから、これは俺の『慈善事業』や。五条の奴がケチでせいらに服も買うてやらんのなら、俺がこの手で『本物の美』っちゅーもんを教えてやるしかないやろ。
レクサスの中で抱きついてきた時?
……あれはな、車内が狭かったから、物理的にそうなっただけや。俺の心拍数が上がったんは、外が暑くて熱中症の初期症状が出てたからや。
運転手! お前、バックミラーでニヤニヤすんな。後で減給したるからな。
ええか、今日買うてやる服は、全部俺の好……いや、俺の美学に基づいたセレクトや。
それを着て、次はもっと高級な場所(俺しかおらんところ)に連れてったるからな。せいら、感謝しいや!」