あの禪院直哉が、こんなにデレるはずがない。 作:masuda028
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。
◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。
お気に入り10記念です。ありがとうございます……
→ふたりのお買い物デート
ショッピングセンターの照明が白く反射して、せいらの髪がふわりと揺れた。
「はわわ、なおちゃん……わたし、さっきまた走り回ってたから汗かいちゃってるよぉ?
こんな高い洋服、試着して汚しちゃったらどうしよう……」
不安そうに見上げてくるその顔に、俺は鼻で笑った。
心配なんぞ、するだけ無駄や。
ブラックカードを店員の鼻先に突きつけながら、当然のように言い放つ。
「何言うとんねん。試着するっちゅーことは、お前の肌がその布に触れるっちゅーことやろ。
お前の汗が染み込んだもんを、他の雑種に売らせるわけないやろボケ」
「えっ?」
「試着するほど気に入ったんなら、その時点でそれは『お前の所有物』や。
汚れようが破けようが、俺が全部買い取ったる。
店主、この列の服、せいらが袖を通した瞬間に全部売約済みにしとけ。
一ミリの汚れも、俺への“独占権”の証拠やからな」
店員は引きつった笑顔で頷いた。
(……この客、怖すぎるけど売上がえげつない……!)
「なおちゃん、ありがとう!! 嬉しいけど……いいのかなぁ?」
せいらが頬を染めて笑う。
その瞬間、胸の奥がじり、と熱くなるのを感じた。
……あかん、可愛い。
──
試着室のカーテンが開いた。
その瞬間、俺の時間は完全に停止した。
「なおちゃん! 見て見て! これ、似合ってるー?」
白や淡いピンクのワンピース。
光を吸い込むようなシルク、柔らかい最高級コットン。
せいらの肌の色と、恐ろしいほど調和していた。
脳内が完全にエラーを起こす。
(……ッ。なんやこれ。美しすぎて処理落ちしとるやんけ……)
店員が恐る恐る声をかけてくる。
「お客様、いかがでしょうか? こちら、大変お似合いで……」
俺はゆっくりと店員に顔を向けた。
「……おい、店主」
「は、はいっ!?」
「これ、包め。
それと今あいつが着たやつ、型紙から焼却処分しろ。
他の女に、一ミリたりとも同じ格好させるな」
店員は震えながらメモを取った。
──
ショッピングセンターでの俺は、
まさに“歩くATM(せいら専用)”やった。
「これと、これと、これ。あ、そこの靴も全部。
あ、自分、せいらに触る時は手袋しろや。穢れるわ」
傲慢さMAXで買い漁る俺の横で、冥冥がそろばんを弾きながら笑う。
「おや……禪院家の次期当主様は、ずいぶん景気がいいことで。私の仲介手数料、上乗せしても?」
「なんやねん仲介手数料って! 馬鹿にしとんのか!」
「ふふ。同性から出来るアドバイスというものもあるからね。
せいらには窮屈な服より、開放感のある服を好む。次はこれはどうだい?」
「ふにゃ? 着てみるねぇ」
──
そして、事件は起きた。
「なおちゃん! これ、後ろがスースーするよー!
涼しくていいかなー? どう? アリさん入ってくる?」
無邪気に振り返り、背中を見せるせいら。
俺の脳内は、再び24フレームどころか完全停止。
(……ッ!!
あかん、綺麗や。……いや違う!!
何晒しとんねんボケェ!!)
反射で自分の上着をひったくり、
せいらの背中に叩きつけた。
「アホか!!
誰がこんな破廉恥な服着ろ言うた!!
隠せ、今すぐ隠さんかい!!」
せいらはぽかんと目を丸くした。
「なおちゃん……?」
顔が熱い。
せいらの肩をぐいっと引き寄せながら、心の中で叫ぶ。
(……誰にも見せるか。アホ。俺だけのもんやろが)
口には出さへん。
絶対に出されへん。
けど胸の奥では、確かにそう呟いていた。
──
「なおちゃん……怒ってるの……?」
せいらが不安そうに覗き込んでくる。
その顔がまた、俺の理性を削っていく。
(……あかん。泣きそうな顔すんなや。
悪いんは服や。服が悪いんや。お前は悪ない)
深呼吸して、できる限り落ち着いた声を装う。
「怒ってへん。
ただな……お前は、もっと……その……」
言葉が詰まる。
普段なら五百語くらい連続で罵倒できるのに、
せいら相手やと語彙が壊滅する。
冥冥が横から口を挟んだ。
「つまり、“他の誰にも見せたくない”ってことだろう?
はいはい、若いっていいねぇ」
「黙れや鳥女ァ!!」
即座に噛みつく俺。
だが冥冥は涼しい顔でそろばんを弾き続ける。
「せいら、次はこれなんてどうだい?
動きやすいし、風通しもいい。君に似合うよ」
「ほんと!? 着てみるねぇ!」
ぱたぱたと試着室へ駆けていくせいら。
その背中を見送りながら、俺は眉間を押さえた。
(……なんでや。なんであいつは、あんな無防備なんや。
あれじゃあ、どこの誰でも惚れてまうやろが……)
胸の奥がざわつく。
嫉妬とも違う、もっと原始的な“危機感”や。
(……守らなあかん。
あいつは、俺が守らなあかん)
そんな決意を固めていると、
試着室のカーテンがまた開いた。
「なおちゃーん! 今度のはね、動きやすいよ!
ほら、こんな感じで──」
くるり、と回るせいら。
ふわりと広がるスカート。
柔らかい布が光を受けて揺れ、
せいらの笑顔が花みたいに咲いた。
また固まる。
(……綺麗や。
なんでこんな……)
店員が恐る恐る声をかける。
「お、お客様……こちらも大変お似合いで……」
俺はゆっくりと店員に向き直った。
「……包め。
あと、今せいらが着たやつ全部、展示から下げろ。
“似合いすぎる”服は、他の客に見せる必要ないやろ」
店員は震えながら頷いた。
せいらは嬉しそうに笑う。
「なおちゃんと一緒にお買い物するの楽しいね!
いっぱい買ってくれてありがとう!」
その言葉に、胸が一瞬だけ跳ねた。
(……やめろや。
そんなこと言われたら……
もっと甘やかしたくなるやろが)
だが口に出すのは、いつもの調子だ。
「当たり前やろ。
お前が欲しい言うたら、全部買うに決まっとるやんけ」
せいらは嬉しそうに笑い、
俺はその笑顔を見て、
また財布を開く覚悟を固めた。
(……しゃーない。
せいらが喜ぶなら、破産してもええわ)
冥冥が横でそろばんを弾きながら、
にやりと笑った。
「ふふ……今日の売上、すごいことになりそうだね」
「黙れ言うとるやろがァ!!」
ショッピングセンターの一角で、
俺の怒号と、せいらの笑い声が響き続けた。
──
【禪院直哉のセルフコメンタリー】
「……おい、自分、確信犯やろ。
俺の脳内メーカー、今『せいら』と『独占』と『破産』の三文字で埋め尽くされとんねん!!
(顔を覆いながら)
なんやねん、あの『後ろがスースーするよー!』って……。
あんな無防備に、あの白骨(しらほね)みたいな綺麗な背中晒されたら、俺の理性が24フレームどころか原子レベルで粉砕されるわボケ!!
『アリさんが入りそう』?
入るんはアリさんやなくて、俺の殺意(他の男への)や!!
冥冥の奴も……!
『他の誰にも見せたくないんだろ?』やて?
図星すぎて反論できんかったわ!!
あいつ、わざと露出度の高い服ばっかり勧めて、俺の動揺を『手数料』に変えよって……。
商魂たくましいにも程があるやろ。
(試着室から出てくるせいらの笑顔を思い出して)
……あかん。
『なおちゃんと一緒にお買い物するの楽しいね!』
……その一言で、俺の通帳の残高が全部溶けたわ。
いや、通帳どころか俺の人生そのものが、コイツの笑顔一つで買い叩かれとる気がする。
『似合いすぎる服は、他の客に見せる必要ない』
……自分で言うてて、ちょっとかっこええ思てしもたけど、客観的に見たらただのヤバい客やな。
せやけど、しゃーないやろ!!
あんな綺麗なもん、公共の場に置いとく方が間違っとるんや!!
ええか、せいら。
今日買った服はな、全部俺の許可制や。
朝、俺が検品して、『よし、これなら俺以外の男の視線から防御できる』って判断したやつしか着たらあかん。
……って言うとるそばから、また美味しそうにクレープとか食べよって。
口の横、クリームついとるぞ。……取ったるから、こっち来い。
……もう、好きに書け。
俺がどれだけデレようが、財布を空にしようが、せいらが笑っとるなら……。
……あー!! 今の無しや! 記録から消せ!! 焼却処分や!!」
ここまでご覧いただきありがとうございました。
本エピソードは初出の書き下ろし※です。
書き下ろしは毎日更新以外のタイミングで投下するので、タイトルに★つけときます。
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