STARWARS バクトゥールの地で【脚本風版】   作:バケツ頭 小説もどき家

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プロローグ

◇◇コルサント 夕方

 

 摩天楼の間を無数のスピーダーが飛び交う。光の帯が幾重にも重なり、空は星空のように輝いている。

 エアスピーダーを追い越すスピーダーバイク。後部の冷蔵ケースには『マグラの新鮮寿司』と書かれている。

その操縦者――ファマ・アディソン。茶色の髪をなびかせ、前傾姿勢をとる。

 

 

ファマ:

(小声) ……ギリギリか。

 

 スロットルを調整し、無理をしない速度で流れに乗る。

 

 巨大ビルの発着ポッドが近づく。

 着陸し、エンジンを停止させる。

ファマ:

(安堵のため息をつき) よし

 

 振動する腕のコム。

 ファマはコムのボタンを押す。

 

ファマ:

 はい、マイド!こちらマグラの――

 

顧客:

 今どこにいる!?

 

 ファマ、顔をしかめる。

 

顧客(コム):

 到着時間を過ぎてるぞ!

 

女(コム):

 ねぇ~まだ? お腹すいた。

 

顧客(コム):

 もう少しだ(声を再び荒げる)早くもってこい!!

 

ファマ:

 もうすぐです!(エンジンをつけ、空ぶかしをする)全速力で向かってます!! 到着時間は三分、いえ四分――かな?

 

顧客(コム):

 ふざけんな!! 今持ってこい! 今! すぐ!

 

ファマ:

 直ちにお届けします──という気持ちでやらせて頂きます。すいませんが、私も人間なもんで。へへへ。

 

顧客(コム):

 何笑ってやがる小娘! バカにしてんのか?! 

 

女(コム):

 ガンダークみたいな声あげないでよ! サイアクなんだけど!

 

顧客(コム):

 ちょっと! おい……!

 

 静まり返るコム。

 

ファマ:

 ……注文キャンセルなさいます?

 

顧客(コム):

 黙れ!! クレーム入れてやるからな!!

 

 通信、ブツッと切れる。

 

ファマ:

 もしもし? もしもし? (ため息) はいはい……。

 

 本店への短縮ボタンを押そうか迷うファマ。

 その時だった。

 

トルーパー(軍曹):

 待て!! 止まれ!!

 

 二人のトルーパーに追いかけられている男。

 黒いジャケットを羽織った男は通行人を突き飛ばしながら、ファマの元へと走ってくる。

 

男:

 バイクを貸せ! バイクを寄越せ!

 

 男はピストルをファマに向けて大声をあげる。

 

ファマ:

 やるもんですか! バイクを盗られたらクビ確定だもん!

 

男:

 いいからどけ!

 

ファマ:

 いやだ!!

 

 必死に抵抗するファマ。

 

トルーパー:

 彼女から離れろ!

 

 トルーパーがスタンを放つ。

 射撃を躱すと、男はピストルで応戦し、ファマから離れていく。

 

 男、近くに駐機されていたエアスピーダーに飛び乗る。

 

 バックでビルに激突した後、急発進する黒のエアスピーダー。

 

 トルーパー達の放ったブラスター光が夜空を彩る。

 

トルーパー:

 至急応援を要請する! 対象はエアスピーダーで逃走! 機種は──

 

トルーパー(軍曹):

 おい! 君!

 

 ファマ、ハンドルを握りしめ、エアスピーダーを追いかける。

 

 小さくなっていく機影。トルーパーは顔を見合わせる。

 

 

女性(コム):

 状況は?

 

密売人:

 当局は撒いた。問題ない。だが、取引場所と時間を変更してく──。

 

 窓を叩く音。自分を見つめる緑色の瞳。

 男は目を丸くした。

 

ファマ:

 観念したら!?

 

密売人:

 クソ!

 

女性(コム):

(戸惑った声で)どうしたの?

 

ファマ:

 人に銃を向けといてタダで済むと思ってるの?(窓をガンガンと叩く)

 

女性(コム):

 エヴォン……もしかして追われてるの?

 

 密売人、コムを無視してハンドルを切る。

 寸前のところで体当たりを躱す、ファマ。機体をエアスピーダーの後ろから滑らせ、運転席側に回る。

 

 激しく叩かれる窓。

 

女性(コム):

 保安部隊に追われてるなら取引は中止よ。組織を危険には晒せない。

 

密売人:

 違う! 俺を追ってるのは小娘だ!

 

女性(コム):

 え、は? 何? 小娘?

 

密売人:

 掛け直す!

 

 コムを乱暴に切り、窓を開けてピストルを乱射する男。

 

ファマ:

 やば!

 

 ファマは頭を下げて光弾を避ける。

 

 機体をぶつけてやろうと、再びハンドルを切る男。

 しかし、機体は言うことを聞かない。

 

 男が後ろを振り返ると、そこには当局のパトロール艇がしっかりとついていた。

 

 トラクタービームに捕捉された事を悟り、目を閉じる男。

 

 

 

◇◇コルサント 夜

 

 

 静かな機内。

 涙目で後部座席に座るファマ。

 しばらくすると、ホロニュースの音声が流れる。

 

女ドロイド(音声):

 速報です、コルサント保安部隊は違法薬物の密売人エヴォン・デストを拘束しました――容疑者はエアスピーダーで逃走を図りましたが、当局の迅速な対応により──

 

 顔を上げ、表情を緩ませるファマ。

 

ファマ:

 今の聞いた? 私のおかげ──

 

女ドロイド(音声):

 当局は一般市民に対し、危険な追跡行為を控えるよう警告します。無謀な正義感は予期せぬ二次被害を招く恐れがあり――

 

 再び顔を下に向け、体を縮こませるファマ。

 

 グラードン、ミラー越しにファマを見る。

 

グラードン:

 少しは反省したか?

 

ファマ

 ……うん。

 

 頷いた後、顔を上げるファマ。

 

ファマ:

 でもさ……CSFも酷くない? 私のおかげで捕まえられたのに――

 

グラードン:

 まだ言うのか。お前が何をした? 捕まえたのは当局だろ。

 

 ミラーに映る叔父の顔。ファマは目をそらした。

 

グラードン:

 厳重注意で済んだのを感謝しろ 学校に連絡が行けば退学もあり得た。

 

ファマ:

 そうだけど……でも……。

 

グラードン:

出た。“でも”だ。

 

ファマ:

 ……私がやらなかったら 逃げてたかもしれないでしょ

沈黙。

グラードン:

 ……かもしれないな。

 

 ファマ、顔を上げる。

 

グラードン:

だがそれは結果論だ 運が良かっただけだとも言える。お前が怪我してたら? 誰か巻き込んでたら?

 

ファマ:

 ……考えすぎよ

グラードン

お前が考えなさすぎなんだ。何で首を突っ込まずにいられない? 何故行動する前に考えないんだ?

 

ファマ:

 ……わからない

 

 ため息をつくグラードン。

 

グラードン:

 正義感はいい。お前なりに人のためを思って行動したんだろう。だけど、少しはリスクを考えろ。(静かに後ろを振り返る)お前に何かあったら悲しむ人がたくさんいるんだから。

 

 鼻をすすり、静かに頷くファマ。

 

 

 

 

◇◇マンション発着ポッド・夜

 

 

 着陸するエアスピーダー。

 

 グラードンは運転席から降りると、後部座席のドアを開ける。

 

 コツと響くブーツの音。

 ファマは機内からゆっくりと出た。

 

ファマ:

 ……お母さん、怒ってると思う?

 

グラードン:

 怒ってない。心配してる。(軽く笑う)しばらくバイクは禁止だろうがな。

 

ファマ:

 ……だよね

 

グラードン:

 バイトも禁止だろう。

 

ファマ:

……分かってる。文句ないよ。

 

 静かな通路に二人の足音が響く。

 

 エレベーターに乗り込むファマとグラードン。

 

 扉が閉まると、エレベーターはゆっくりと上昇し、二人を上層フロアへと運ぶ。

 

アナウンス:

 48上層階アディソン邸です。

 

 機械的なアナウンスと共に扉が開く。

 

老女の声:

 だから言ったろう? あの子は姉に比べてまともじゃないのよ──。

 

女の声:

 そんなこと言わないでください。あの子は──。

 

 聞こえてくる祖母と母の声。

 ファマの足が止まる。

 

 扉の向こうで交わされる声は、決して大きくはなかった。だが、妙にはっきりとファマの耳に届いた。

 

マルナ(ファマの祖母):

 ヘイルはあんなに優秀なのに、あの子ときたら──。

 

ファマ:

 ただいま……。

 

レイナ(ファマの母):

 ファマ!

 

 レイナは立ち上がり、ファマを見る。ほっとしたような顔を浮かべると、すぐに心配そうに娘を見た。

 

レイナ:

 ……怪我は?

 

ファマ:

 ないよ。

 

 ファマは小さく首を振った。

 

レイナ:

 良かった(グラードンを見て)あなた達が中々帰ってこないから凄く心配してたのよ。

 

グラードン:

 大丈夫。この通り、傷一つないよ。何も問題ない。

 

 

マルナ:

 何も問題ないですって?

 

 祖母の声が空気を切り裂く。

 ファマを睨むように見るマルナ。

 

マルナ:

 よくもそう言えたもんだ! こんな騒ぎを起こしといて!

 

グラードン

 母さん……今日はもう十分だ。さぁ、行こう。意地悪な老人は家へ帰る時間だよ。

 

マルナ:

 黙りな、グラードン。

 

 マルナは立ち上がり、ファマに近づいた。

 

マルナ:

 みんなに迷惑をかけて満足かい?

 

 ファマは喉を鳴らす。

 

マルナ:

 満足だろうね。

 

グラードン:

 ……母さん、ファマは何もわざとやったわけじゃない。

 

マルナ:

 それじゃ、馬鹿だってこった。

 

 孫を睨むマルナ。

 

マルナ:

 おかしなもんだ。こんなにも似てるのに中身は別物とはね。ヘイルとは真逆だわ。出来損ない。

 

グラードン:

 母さん!

 

ファマ:

 ……そうだね。私はお姉ちゃんと違って優等生じゃないから……」

 

 その声は微かに震えていた。

 すすり泣くレイナ。

 

マルナ:

 おや、まぁ! 分かってるじゃないか。そうともさ。あんたは姉と違って問題児。アディソン家の厄介者だよ

 

グラードン:

 母さん! いい加減にしろ!

 

マルナ:

 なんだい! 事実じゃないか!

 

グラードン:

 何がだ! この性悪──

 

 溢れ出てくる涙。表情が保てなくなる事を悟ったファマは叔父と祖母の親子喧嘩の隙をついて自室へと走る。

 

レイナ:

 ファマ?! ちょっと!

 

グラードン:

 おい! ファマ!

 

 後ろから呼ぶ母と叔父の声。

 

 ドアを閉め、ベッドに腰を下ろす。窓から差し込むスピーダーの光が彼女の白い肌を照らす。

 

 

 

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